挟まれた手記 嫉妬
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
裏切りの心情で御座います。
ご了承下さい。
初めて、あんなに可愛らしい子を見た。
始めはそんな感想だった。
カルロッタ・サヴァイアント。彼女の魔法の才覚は、試験の時に垣間見た。しかしあれで全力では無い。
その卓越した技術に、我は見惚れた。
まるで赤子の様に可愛らしく、汚れ一つ許さない清純な体、そして圧倒的な魔法の才覚。我はそれに憧れた。
我は背丈が伸びず、仕方が無いとは言え良く見下された。そんな時に、師が現れた。
両親から金貨三枚で売られ、閉じ込められている時に師が現れた。彼は我の恩人だった。他にも閉じ込められていた子供達を逃がし、師は我だけの手を握り締め、共に歩んだ。
師は、誰にも気付かれない山の奥深くの洞穴の中に、自分で作った木造の小屋に住んでいた。
見付かればならない人なのだと、子供ながらに何と無く知っていた。
師は魔法を教えてくれた。我には才能があったのだと、師の言葉で信じた。
師は我の恩人だ。そして一緒にご飯も食べてくれる温かい人。そんな人に恋をした。
師は時折いなくなる。その時は飛び切りお洒落をして、意中の相手に会いに行く。そんな雰囲気を感じた。
師は一体何者なのか。我は聞かなかった。
この時から、カルロッタであろう人物の話は偶に聞いていた。そして、その父、星皇の話も。
星皇は誰よりも強く、そして弱い人だったと師は言った。赤髪赤目の子は、その星皇の娘であるとも言っていた。
彼女は新たな世界へ人々を導く先導者であり、啓蒙者でもあると師は言っていた。
今なら、それも良く理解出来る。
師は、突然いなくなった。ようやく我が一人で金を儲け、暮らせる様になった頃に。
初恋は、叶う物では無い。誰かがそんなことを言っていた。それが誰だったのか、我はもう覚えていない。いや、師の言葉だったかも知れない。
我にとっては、長い日々が続いた。魔法を研磨する時間はたっぷりとあった。その魔法の才覚で、充分に金は稼げた。
一度、ギルドの試験を受けた。初めての第一試験で落とされた。次の年にもう一度受けた。
そこで、出会った。赤髪の子。師の話は本当だったのだと、胸が踊る感覚を覚えた。そしてまだ、我は師を愛しているのだと認識してしまった。
どんな人だろうか。会話をしてみた。
心優しい人だった。そこまでの魔法の才覚がありながら、これまで富も名声も必要とせずに、ただ慎ましく謙虚に暮らしていたその精神に、その心意気に、感動した。
彼女の隣にいると、自然と笑顔が増えた。
しかし、それ以上に、我の中にどんよりとした泥が底に溜まっていることに気が付いた。
カルロッタは愛されていた。当たり前だ。別け隔て無く接し、亜人魔人にも多少物知らずの所はあるが決して悪い目で見ていない。
愛想が良く、我よりも強く、誰よりも愛された。
太陽の前には、どんな星も輝こうとしない。師はそう言った。太陽の光に隠れているだけで、昼でも星は輝いているのだと。
彼女は、太陽だった。燦々と辺りを照らし、愛を平等に分け与える太陽であった。
そこで、星は輝けない。
嫉妬でどうにかなりそうだった。自分の部屋で、嫉妬に駆られ何度も杖を握り、彼女に自死を命じさせようと思い、そんな考えをしてしまう自分を憎んで、蔑んで、貶して。
しかしカルロッタは、変わらず笑顔を向けてくれる。彼女の隣にいるだけで、心が温まった。やはりあんな考えをする我こそが罪深いのだと、そう思えた。
何度も、彼女の強さを見た。彼女の賢さを知った。どれだけ手を伸ばしても届かない。もし届いてしまえば燃え尽きてしまう程の、才能を。絶望的な差を。
師は、何故我を選んだのだろうか。師は、何故こんな我に教えたのだろうか。
愛している。それも我にとっては真実。殺したい。それも私にとっては真実。
この矛盾に苛まれているのを、彼女は知っているのだろうか。毎晩床の中で我は、お主を殺そうと考えているのを、知っているのだろうか。
何度かカルロッタと話してみて分かった。師は、恐らく師は、カルロッタの兄弟子だ。
彼女は、ジークムントと言う男のことを、産まれた時から知っている。
パウス諸島近海で、師を久し振りに見た。しかし師は我のことなんて忘れたと言わんばかりに、ただ戦いを続けた。
我はそれでも良かった。
けれどやはり、我は……私を、見て欲しかった。
あぁ、カルロッタ。何故、何故だ?
師は彼女のことばかり考えている。私は師にとって都合が良かった。だから育てた。
そんなこと、知りたくなかった。始めからお主がいなければ、産まれなければ、我はこんな、こんなにも惨めな思いをせずに済んだのだ。
ああ、違う。八つ当たりも甚だしい。そんな自分が嫌になる。
本当に愛していたのだ。本当に愛していたのだ。本当に、愛していたかった。
ああ、分からない。もう何も、分からない。
小鳥が、騒がしい。こんなに雨が降っているのに、小鳥の声だけはやけに煩く泣いている。
あぁ、師よ。何故、カルロッタを殺そうと考えているのですか。貴方は彼女を大切に思っていたのでは無かったのですか。
我は、一体師は、私を何の為に育てたのですか。
ずっと、言いたかった。言いたいのに、貴方はすぐにいなくなる。いなくなったかと思えば、都合が良いタイミングで都合良く使って来る。
嫌いになりたいのに、愛してしまう。
カルロッタは、そうでは無かった。ずっと、ずっと、我は彼女のことが、嫌いだった。
そう、ずっと。あの愛想良く笑う顔も、優しい声も、あの、真っ赤な瞳も、全て――。
「ずっと、友達ですよ」
辞めてくれ。
私は、カルロッタが思っている様な優しい女では無いのだ。
ただ、愛されたいが為に、好きな様に扱われている売女の様な、娼婦の様な……あぁ……。
愛さないでくれ。笑わないでくれ。声を掛けないでくれ。
もう、我はお主のことで傷付きたくない。
もう、嫌だ。
辞めてくれ。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
この子の心理描写は前からちょっとずつやれば良かったですね。反省です。
勿論元ネタはイスカリオテのユダです。イスカリオテのユダの結末を知っていますか? まあ色々ありますが、基本的にはイエス・キリストを裏切り、その後に罰と言わんばかりに死んでいます。
首を吊ったり、落ちたり、まあ色々。
ですが、シャーリーはイスカリオテのユダではありませんので、ご容赦を。
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




