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魔法使いちゃんの予定無き旅  作者: ウラエヴスト=ナルギウ
第二章 ギルド
89/111

日記30 星王 ⑤

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「お前……犬と言うより、猫か?」


 黒い髪の上に、白いリボンが巻かれた黒い帽子を被る着物の女性は、伝わりもしない手話を隻腕の男性に試みた。


「ああ、そうか。喋れないんだったな。じゃあ――」


 その直後、男性の背後に金髪の女性が現れた。


 彼女の左の頬には、一本の縦線と二本の斜線で構成された文字らしき図形が暗い青色に輝いていた。彼女はその口で「ハガル、ウル」と叫んだ。


 言葉は一瞬の内に男性の赤い鱗の右腕に届き、それは肘の部分から灰となって破壊された。


 直後に着物の女性が走り出した。その左脚の踏み込みの度に、彼女の速度が上がっていく。男性は金髪の女性のことはもう気にせずに、その左腕を大きく着物の女性に向けて薙ぎ払った。


 その拳が着物の女性に直撃する直前、彼の左の拳はその場から消えた。消失と言う訳では無さそうだ。


 手の先の感覚はある。指が動く感覚もあり、空気に触れて風に産毛が揺れる感覚もある。ただ、腕の先がこの場から消えただけなのだ。


 良く見れば、その先に歪みが見える。腕は歪みの先を通っているのだ。


 男性は何故だか上を見た。予想通りなのか、はたまた偶然なのか、消えたと思われた腕の先は、10mは離れた頭上に浮かんでいる。


 感覚は繋がっている。動かせている。つまり歪みの出口があそこにあると言うだけのこと。引き抜けば、拳は戻る。男性の身体能力ならばまだ間に合うだろう。


 そう思い腕を引こうとした直後、得体の知れない激痛に襲われ、腕の先の感覚を失った。


 彼の視線は未だに、上空に浮かぶ自分の手にある。ただそれは、繋がりが切断され、血を落としながらこちらに落下して来る。


 世界の歪みは、既に閉じられている。世界の歪みに半端に通り抜けた状態で、それを閉じれば、どうなるか。その答えがこれである。


 どんな硬度でも関係無い防御不可能の切断となる。


 隻腕の男性の胸に、着物の女性はその両手に突如現れた太刀を突き刺した。何の抵抗も示さず、その刃はするりと胸に入り、そして血飛沫を上げながら背中にまで貫いた。


 男性の腕が再生した直後に、着物の女性と金髪の女性はほぼ同時に自分の後ろへ飛び込んだ。そこに世界の歪みはあり、また二人は別々の場所に現れた。


 金髪の女性は男性の前に、着物の女性が背後に現れた。


 金髪の女性はその手に勝利の剣を構えており、その剣にはそれを示す直線と斜線だけで作られた槍の様な記号が刻まれている。


 しかしその直後には、金髪の女性は赤髪の女性に蹴り飛ばされた。彼女の手の先は男性の背後にいる着物の女性にも向いており、そこから血が吹き出した。


 血流は槍となり、隻腕の男性の頭のすぐ横を通り、勢いのまま着物の女性に向かった。


 しかし着物の女性は右腕を向かって来る血から身を守る様に突き出した。その右手に血の槍は激突したが、本来人間の腕程度なら貫けるそれが弾かれ、辛うじて女性が足を擦りながら後ろへ大きく仰け反っただけだった。


 赤髪の女性はそんな光景を目にしながらも、目の前にいる金髪の女性に向けて、体を捻って回転の力も乗せた右足を落としたが、その直前に金髪の女性の背後に世界の歪みが現れた。


 金髪の女性はそれを通り抜け、着物の女性の隣に現れた。


 隻腕の男性は自身の傷を治しながら、少々の疑問を表情で現しながら振り向いた。


「お前……それ、義手……と言うか、腕が全部作り物か」


 着物の女性の右手の皮膚は、血を弾いた箇所からぼろぼろと剥がれ、黒い金属の重厚感ある機械が見えた。


「で、左脚も同じ……と、考えると、お前、何だ? おかしいぞ、お前」


 赤髪の女性が男性の横に立つと、その両手を着物の女性と金髪の女性に向けた。


 しかしそれを静止する様に男性はようやく治った長く赤い右腕で女性の両腕を降ろさせた。


「右腕を失ったんだろ? 右足を失ったんだろ? そして、左目も失ったんだろ? だがお前は……■■■■■■■じゃ無いのか? 何故俺と同じなんだ? ……それに、何故金色の目なんだ? 見た所、お前は女だが。それっぽく見えるだけなのか?」


 着物の女性は伝わりもしない手話を始めた。男性の視線は、自然と金髪の女性の方に向き、金髪の女性は手話を代弁した。


「(私はそれじゃ無い。私はあくまで貴方と同じであり、しかし貴方とは違う。それに何処からどう見てもこのきゅーとな顔は女性でしょうが)って言ってるわ」

「きゅーとかどうかは置いておいて。そうだとしても納得は出来ないな。お前は狂犬と言うより、好奇心で死んだ猫だろ」


 着物の女性はまた手話で会話を試みた。


「(成るべき者が成らずに、成るべきでは無い者が成った。たったそれだけのこと。故に私は、貴方よりも更にそれに近しい)って言ってるわ」

「……成程。あの男が狂犬に見えたのは、そう言う理由か」

「……貴方、戦うつもりが無いの?」

「ああ、悪い。んじゃ、続きをやるか」


 男性は赤髪の女性から腕を離すと同時に、その右腕を高く掲げた。その手に穢れた聖火と聖なる穢火(あいか)を燃やした。


 それこそが彼が真なる灰色の王であることを示す証拠であり、それこそが彼が真なる灰色の奴隷であることを示す証拠である。


 彼は一体何者だろうか。その答えは誰もが持っていながらも、誰もが知ることは出来ない。神秘のヴェールに隠された向こう側の彼こそが、硝子の向こうの硝子の向こうに存在するもう一つの知性と意思の源である。


 しかし結局、その全ては虚構なのである。だがそれは真実でもある。量子力学においては常識であることを元に考えれば、彼はまだ観測されていない。故に汎ゆる状態を内包しているのだろう。


 だが、つまりそれは彼は駱駝にすらなったことの無いただの人間であると言うことになる。完璧でありながらも不完全な人間なのだ。


 対する着物の女性は、その正体は確かに答えを持っている。故に赤子から大人にまで成長したのだ。


 終点に辿り着いたからこそ、着物の女性はここに存在している。希望も、絶望も体験したが故の姿こそ、完全な人間に最も近しい。


「お前が処女膜を破り、そして最初になったのか」


 男性は着物の女性に向けてそう言い放った。しかし着物の女性は何も答えなかった。


 瞬間、赤髪の女性の両手から赤血が溢れた。それは百の腕となり、それは鋭く穿つ銃弾となった。


 着物の女性と金髪の女性に向かった無数の血は、二人の前方に開かれた世界の歪みを通り抜け、赤髪の女性の背後に現れた。


 それが赤髪の女性を貫く寸前に軌道が変わり、その女性の周囲で回り続けたと思えば、今度は前方に世界の歪みが現れ、金髪の女性が構えた勝利の剣が突き出された。


 赤髪の女性は世界の歪みに手を入れ、そのまま金髪の女性の手首を掴み、こちらへ引き摺り出した。


 金髪の女性の手首を握る手から血を発したが、その瞬間に金髪の女性は「ラド」と唱えた。直後に赤髪の女性は大きく吹き飛ばされた。


 隻腕の男性は赤髪の女性を一瞥した後に、すぐ着物の女性に向けて走り出した。赤い鱗の長い右腕を大きく振り被ると、その右腕で開く一つの口が大きく開き、そこから穢れた聖火と聖なる穢火が混じった灰色の焔が吐き出された。


 だが、着物の女性はその手の太刀をはらりと振るうと、その焔はふつと両断された。


 瞬間に、男性の右手は着物の女性の喉元を掴んだ。すぐに女性はその腕の中間辺りに世界の歪みを作り上げたが、その先は繋がらずに男性の右腕は世界の歪みすらも打ち破った。


 右腕に開かれている一つの口から冷気が発せられ、右手が掴んでいる女性の喉元の皮膚が凍り付いた。冷気の棘は更に深く深くへと進んで行き、やがて体中を凍らせようと画策した。


 しかし、女性の突き出された刀を握る右腕が、人間の腕にしては不自然な程に大きく強く左へ捻った。勢い良く振り下ろされた刃は、男性の右腕をふつりと切り落とした。


 男性は気付かれない程度に舌打ちをした後に、後退しながらも三つの両腕を自身の周囲に出現させた。同時に女性の周囲にも、三つの両腕が現れた。


 女性の周囲に浮かぶ一つの両腕は白銀の焔に包まれ、もう一つの両腕は刃物か何かで刻まれた縦線と斜線で構成された文字がびっしりと書き並んでおり、もう一つの両腕は何処か幼さを感じる腕であった。


 男性の周囲に浮かぶ一つの両腕が女性に向くと、その腕が潰れて干からびてしまいそうな程に血が噴出した。


 銃弾、と言うよりは植物の枝だろうか。赤血は植物の枝の様に細く、そして何本にも別れ、ただ眼中にある敵を殺す為だけの激流であった。


 しかしその赤血は女性に届かない。その直前には世界の歪みを通り、全く別の場所へ行ってしまう。


 女性は左脚で踏み込むと、やはりその華奢な脚からは想像出来ない程に前へ低く遠くへ跳躍した。その勢いのまま体を横に捻り、その左脚を一瞬の内に曲げた。


 余りにも機械仕掛けのそれに負担を掛けたからか、着物に隠されている関節部分から白い蒸気が吹き出し、それが僅かに裾をふわりと浮かせた。


 男性はその一瞬で左手の拳を固め、力強く女性の顔面に殴り付けた。


 男性の拳と女性の顔面、その間に世界の歪みが開かれた。本来なら、その拳は世界の歪みも打ち破り、女性の顔面に届くはずである。


 しかし、その拳は世界の歪みを通った。見れば、その左腕に着物の女性の周りを漂う文字が刻まれた女性の腕が掴んでいた。


 世界の歪みの先に、ひらりと美しい赤髪が見えた。その硬い拳は、金髪の女性と交戦している赤髪の女性の顔面に叩き付けられた。


「■■■!!」


 男性は咄嗟に彼女の名前を叫んだ。その一瞬が駄目だった。着物の女性は左脚で真っ直ぐに蹴ると、その脚は新たな世界の歪みを通り、男性の背後に繋がった。


 機械仕掛けの重く鋭い蹴りは男性の背を力強く蹴り、拳が通った世界の歪みが大きく広がり、そこに押し込まれた。


 男性は、自身の拳が直撃した赤髪の女性に向けて咄嗟に左手を伸ばした。直後には、その左腕は金髪の女性が振り下ろした勝利の剣によって両断された。


 ようやく状況を冷静に判断することが出来た男性は、自身の周囲に漂う一つの両腕で赤髪の女性を抱えた。


 男性は両断された左腕を右手で掴み、その腕の口から吐き出された炎で灰へと変えた。すぐに再生した左手を振り上げると、地面が大きく削り取られる程の暴風が舞い上がった。


 金髪の女性はその華奢な体が吹き飛ばされそうになったが、「ソーン、イング」と口にするだけで彼女の足元に茨を持つ植物の蔦が現れ、それが彼女に絡み付いた。


 男性はその隙にもう一つの両腕で赤髪の女性の顔を撫でると、砕けた頬骨と罅が走った頭蓋骨と、内側から破裂した様な傷跡もすっかり治った。


 今まで気を失っていた彼女が目を開き、すぐに立ち上がった。


「大丈夫か?」

「……少し、頭が痛いです」

「済まなかったな。無理はするな」


 その言葉の直後に、彼女の足元に世界の歪みが現れた。突然のことに為す術無く落下して行く彼女に、男性は手を伸ばしたが、すぐに世界の歪みの扉は閉められた。


 一瞬の動揺。その隙を突かれ、金髪の女性は素早く駆け寄り、そのまま剣を振り上げた。


 普段の彼ならば難無く避けたひ弱な斬撃は、動揺している彼の腹から胸に美しい程に迷いの無い一線の傷を刻んだ。


 それが黒く輝いたかと思えば、彼の体は時が止まった様に静止した。


「その信仰の力、やっぱり貴方が一番使い熟せてないわ。私を前にするだけで、すぐに効力を失くしてしまうなんて」


 そう言って金髪の女性は男性の胸部に勝利の剣を突き刺した。本来は、そこで勝負は決まったはずなのだ。


 しかし、直後に男性は動き出した。その剣を掴み、引き抜くと同時に金髪の女性を力強く押し返したのだ。


 金髪の女性は男性とある程度の距離を取りながらも、疑問の視線を男性に向けた。


「成程、彼女が倒し切れない理由がようやく分かったわ」

「どいつもこいつも心臓ばっかり狙いやがって……! 貴方のハートを射抜きますってかあァ!?」

「……何言ってるの? 貴方」


 嘲笑でも無く、慈悲でも無く、ただただ困惑している表情を浮かべた彼女を見て、彼は少しだけ紅潮していた。


「……忘れてくれ」

「そう、分かったわ」


 淡白な返事にもほんの、ほんの少しだけ心に傷を負った男性は左手で目元を隠した。


 金髪の女性はそんなことも気にせず、僅かな思考の後に両手を合わせた。


 みるみる内に彼女の髪は白く染まり、その瞳は銀色に輝いた。奇しくもその風貌は、ルミエールと似通っていた。


「使わせて貰うわ。『姉妹(ビッグ・シスター)』」


 彼女の周囲にも、六つの片腕が現れた。それはまるで彼女の腕だと言い張る様に広がった。


 それは四つの両腕を持つ怪物の様にも見え、何処か麗しい聖女にも見えた。それは恐らく、ここでは無い何処かで全ての権利を持つ、天国の鍵を握り締める存在であろう。


 そして、その姿を見た男性は驚愕した。


「そうか……! □□□□□じゃ無かったのか! □□□□□、()()だったか!!」

「少し声量を抑えてくれる? 元気なのは好評だけれど」

「スマン、趣味じゃ無い」

「私だってそうよ。第一男性に興味は無いの」

「ああ、同性愛者(レズビアン)か。そんな気配はしてたが」


 やがて二人の交戦は始まった。


 世界の歪みに落ちた赤髪の女性は、遥か上の今にも雨が降りそうな黒い雲が届きそうな程の空にいた。


 血を自在に操り、女性はそれを固めて足場にして空の上に立った。


 やけに、静かな時間が流れた。やけに重苦しい気配も、雨が降りそうな匂いも、汗が乾かないべたべたとした空気も、ただただ静かに流れた。


 それが止まったかと思えば、女性の左脚がふつりと両断された。血を操り止血したが、彼女は足場の血の上に臀部を落とした。


 見えなかった。反応も出来なかった。まず何処から攻撃はやって来たのか。女性はその全てを認識出来ていなかった。


 まだ、男性に殴られた箇所が痛む。それだけでも集中出来ないと言うのに、こんな状況に陥ってしまえば、焦燥感を抱き呼吸を乱すのは当たり前だった。


 女性はそのまま、切断された左脚の切断面から血を大量に吹き出させると、それを遥か上へ流した後に、降り注ぐ矢の様に何千と分裂させて落とした。


 何処にいるかも分からない。なら、何処にいても迎撃出来れば良いのだ。


 しかしそんな力技でも、気付かぬ内に右腕を両断される。


 だが、ようやく分かった。世界の歪みが見えた。そこから刀の刃だけが現れ、それがふつりと両断しているのだ。


 それが分かった所で、彼女は現状、どうすることも出来なかった。今で無ければ、この現状で無ければ何とでも対策出来ると言うのに、今この瞬間はどうすることも出来なかった。


 そのまま抵抗を示し続けたが、虚しく四肢は両断された。最後に女性の前に姿を現した着物の女性は、赤髪の女性を両足で踏み付けながら、構えた刀を胸部に突き刺した。


 落下する二人は世界の歪みを通り地面に到達すると、隻腕の男性は金髪の女性との戦いを放棄してそちらへ走り出した。


 赤髪の女性はそんな彼を拒絶しようともしたが、まず自分の不甲斐無さに憤慨した。四肢を失ったから何か。心臓を失ったから何か。


 まだ、生きているのだから。


「"制限解除"『愛人形(ラブ・ドール)』」


 その言葉の直後、女性の気配はがらりと変わった。黒く染まる髪、片方だけ銀色に輝く瞳、その内側に輝く恐ろしき闇。


 きっとそれは、知ってはならない物。知覚してはならない物。


 世界に存在してはならない。この世界に存在してはならない。決してあってはならない。


 故に力強く、故に儚く、故に恋い焦がれた女性の力。


 胸部の傷から、その体の中に流れているとは想像出来ない程に、血が勢い良く噴出した。それは先程とは動きも速さも異なっている。


 着物の女性が向かって来る攻撃に、前と同じ様に世界の歪みで何処かへ繋げようにも、そこを通る直前に超反応で軌道を変えらる。


 身の危険を感じた着物の女性は、刀を抜き取り世界の歪みを通って金髪の女性の隣にまで身を引いた。


 すぐに隻腕の男性は赤髪の女性に駆け寄り、周囲に漂う一つの両腕が赤髪の女性の胸を撫でた。


「大丈夫――って、声を掛けるのもおかしいな。明らかに大丈夫じゃ無さそうだ」

「……やはり、加減が難しいですね。……駆け付けてくれたのは、素直に言えば嬉しいですが、戦いに集中して下さい。後ろから刺されるのは貴方ですよ……?」

「聞けない望みだな。……思ったより不味いな。四肢はまた後で治療する。能力は使えるか?」

「ええ、問題無く。むしろ失って使いやすくなりました」

「……あんまり、そう言うジョークは好きじゃ無いんだ」


 男性は赤髪の女性の小さくなってしまった体を軽々と左腕で抱き寄せると、彼女は彼の肩に頭を傾けた。肩に猫の様に頬を何度か擦り付けると、冷たい視線で着物の女性と金髪の女性を睨んだ。


 着物の女性はその太刀を鞘に収めた。そして、口も開いていないのに儚く小さな声が響いた。


『"()()()()()()()()()()()()()()()()()■■■■■■■■"』


 彼女の背後に、樹齢が万年だと思える程に、大きく広い桜の木が伸びた。


 桜と言うのは八割咲けば満開と言う。しかしあの桜は、その枝に付けている蕾の全てに花が咲き誇り、十割の季節外れの狂い咲きであった。


 しかし、その艶やかな色は墨で塗られたかの様に黒く染まり、光の殆どを吸い込んでしまった。


 その桜は光を消す桜。その蛸の足の様に伸ばされた根の下には何の死体も埋まっていない。だからこそ、この桜は黒く、それもまた艶やかなのだ。


 舞い散った花弁は、通った軌跡にすらもその墨の黒さを、まるで水に落とした絵の具の様に伝わらせた。その黒に触れれば、生も死も何もかも無へとなる。それは虚無へと昇華する。


 しかし男性はそれすら気にせずに走り出した。分かっているはずだが、それでも。


 それは黒であるならば、白で塗り潰し灰色にすれば良い。彼は灰被りの王、灰色の奴隷。ならば白でもあるのだ。彼が灰色に出来ない理由は無い。


 直後に、着物の女性は天を指差した。地を指差した。それに答える様に、それに従う様に、空は変わり果てた。


 満点の暗い星空が輝きながら、雲一つ無い澄み渡る明るい青空が広がっていた。真夏の様に燦々と輝く太陽が、真冬の様に煌々と輝く月が、ただ笑って泣いていた。


 朝焼けだろうか。夕焼けだろうか。空はそれにも変わった。それが同時に、それが何の矛盾も無く、ただ同時に広がる。


 隻腕の男性の髪が真っ白に染まると、そのまま右腕を振るうと、その黒は白く染まり灰色となり、そこは確かに実在する場所になった。


 怯まずに進み続ける男性に、金髪の女性は勝利の剣の切っ先を向けた。


「『天頂へと届く光(アンブカジュラソン)』」


 白い輝きが無数に発せられた。それぞれは小さいが、数千の輝きは触れる物を自分の身を犠牲にしながら消滅させてゆく輝きである。


 男性の腕に抱かれた赤髪の女性は、その四肢から音すらも置き去りにさせる血液の放出した。それは弾丸の様に小さく別れていって、数千の輝きに衝突した。例外無く、輝きと共にそれは消滅した。


 そして、男性は高く飛び上がった。同時に、赤髪の女性の体中から血が噴出し、無数の鞭、腕だろうか。それが枝分かれしながらも、音を置き去りにしても、どんどんと加速した。


 しかし、その大部分が世界の歪みによって別の場所へ通り抜け、辛うじて残った血流は真っ直ぐに着物の女性へ向かった。


 だが金髪の女性は「イス」と唱えた。その直後に、彼女の視界の中に入っている全ての攻撃意思は凍結された。


 しかし、金髪の女性は自分の視界に疑問を持った。彼女の視界には、遥か天高くに飛び上がった隻腕の男性と赤髪の女性の姿が見える。


 だが、それは動き続けている。あの言霊で、こちらに攻撃する意思と知恵があるのなら、その動きは止まり、今すぐにでも落下して来るはずだと言うのに。


 それはつまり――。


「■■■!!」


 金髪の女性は着物の女性の名前を咄嗟に叫んだ。そして視界をそちらに向けた時には、もう遅い。


 赤い鱗に纏われ、何個かの口と何個かの瞳が蠢くその右腕は、着物の女性の胸を貫き心臓を握り締めていた。


「本当に……こんな退屈な戦いはねぇな」


 男性から見て左にいた金髪の女性は、すぐに剣を構えて薙ぎ払おうとした。しかし、その直後のことだった。


 風が、ぴたりと止んだ。不気味な程に、静かな時が流れた。時間は然程経っていない。金髪の女性の剣の刃が、赤髪の女性の血の流れによって遮られたのだから、数秒、いや、ひょっとすればそんなにも長く経っていないのかも知れない。


 その時の出来事だった。金髪の女性の胸元が、黄金色に輝いた。聖なる者はそれを見詰めて光を失い、邪なる者は咄嗟にそれから目を背ける輝きは、やがて彼女の心臓に突き刺さっている黄金の剣、と言うよりは針となりその体から飛び出した。


 男性は咄嗟に左腕に抱えている赤髪の女性を上へ投げ飛ばした。


 赤髪の女性では、その行動の真意が分からなかった。だが、その肌に突き刺さる、彼に向けられた明確な敵意だけは感じ取れた。


 四肢を失ったことにもどかしさを感じながらも、その血を盾の様に固めて男性の隣に流れさせた。


 しかし、飛び出た剣は一瞬の内に人の身長を越す大剣となり、血液の盾すらも貫通し男性の体に突き刺さり、やがてその大きさを縮め、その心臓に呪いとなって結び付いた。


「ルミエールめ……!!」


 男性の右腕は、世界の歪みを通り簡単に切断された。しかし、もうそんなことはどうでも良い。


 時間切れだ――。


 丁度一分前。ルミエールは探っていた。


 五十二秒前、ルミエールは目を見開いた。


「ぱん」


 五十秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながらその体が破裂し死亡。


「ぎゅぅ」


 四十七秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながらその体がまるで雑巾を絞る様に捻じれて死亡。


「じゅぅ」


 四十三秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながらその体が燃え上がり窒息して死亡。


「ぐるん」


 三十九秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら首が十二回縦に捻じれて死亡。


「からん」


 三十七秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら内側から全ての内臓が外へ飛び出して死亡。


「ぴん」


 三十二秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら頭部が弾き飛ばされ死亡。


「ぽかん」


 二十八秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら胸部が潰れて死亡。


「ぐしゃり」


 二十五秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら全身を踏み潰され死亡。


「ばらり」


 二十秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら無数の肉片になるまで切断され死亡。


「からっ」


 十七秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら全身の水分を失い干乾びて死亡。


「ぷしゅっ」


 十二秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら穴と言う穴から血を吹き出しながら死亡。


「どろり」


 五秒前、アリウス教団の一人が、苦難の表情を浮かべながら強力な酸を流された様に溶けて死亡。


 三秒前、彼等彼女等が握る自身の力を制限するその宝石を両手に集め、その手で砕き割った。


 一秒前、戦場に復帰。


 そして、現在に至る。


 まず彼女は、牙を見せる男性の方を向き、そこへ走り出した。


 男性からしてみれば、一筋の光線が走ったとしか見えないだろう。しかしそれが何かは理解していた。故にその体を一瞬だけ後ろへ動かした。


 直後に、その胸部に深々と切創が刻まれた。ついでの様に両腕が切断され、背中に白い刀が突き立てられた。


 一瞬だけ早く男性は上空へと飛び立ち、その刃は右の臀部に深々と突き刺さった。


 次にルミエールは黒い帽子の女性の方へ走り出した。


 これの決着は、欠伸が出そうな程にすぐに終わった。白い刃が彼女の胸を貫き、心臓に茨が冠の様に絡み付いた。


 その体内の刃から宝石の棘が伸び、そして体外へと貫いた。


 すぐにルミエールは走り出す。しかし自身と良く似た女性に微笑むと、女性もそっくりな微笑みを返した。


 そして、ルミエールは隻腕の男性の場所へと至ったのだ。


 彼の胸には、メレダが金髪の女性に突き立てた剣が突き刺さっている。それが茨を伸ばし食い付こうとした直後、彼は自らの右手で胸を貫き、心臓をその手に握った。


 心臓が炎に焼かれる様を見ながらも、彼は向かって来るルミエールの姿を目に映した。


「本当に……退屈な戦いだな」


 ルミエールは答えずとも、ただ静かに彼の言葉に頷いた。


 彼は心臓を捨て、今やるべき戦いを始めた。


 ルミエールが振るった刃を右手で受け止め、彼はそのまま脚を横に大きく回してその脛をルミエールの脇腹に叩き込もうとした。


 しかし、彼女の体は不自然にふわりと浮かび上がり、そこで足底を天に向け頭を地へ向けた。


「心臓、右肺、左肺、肝臓、脾臓、魂魄……五臓でも六腑でも無いんだ。もう一つは何処?」

「教えるかよ!」


 彼は左手をルミエールに向けると、そこから届けば空すらも割るであろう衝撃を発射した。


 しかし、ルミエールの姿はぱっと消えた。次に現れたのは彼の背後であり、ルミエールの周りに現れた一つの腕が、銀色の剣を構えて彼の右肺をそれで貫いた。


 茨はそこから伸び、彼の右肺を縛り付ける。


「貴方は希望どころか絶望も知らない。赤子どころか獅子にも、駱駝にもなれていない」

「だからこそ……! こうやって戦ってるんだろうが!! まだ産まれていなくとも!! その強さと、俺を、俺達を見てくれる為に!!」

「だから、貴方のテキストは敗北になってしまったの。強さだけ先に作られてしまった貴方、可哀想」


 ルミエールの姿は再度男性の前に現れ、一つの腕が持つ銀の剣が左肺を貫き、それを茨で縛った。


「理由無き拳がどれだけ虚しい物なのか、希望も絶望も知らない貴方には分からないだろうね。いや、分からないからこそ、理由無き拳を何度も振るうのか。やっぱり貴方は、可哀想な人だよ」


 一つの銀の剣は、脾臓を貫き茨で縛った。


「灰色の王、灰色の奴隷、貴方はまだ赤子では無い。貴方はまだ聖人では無い。貴方はまだ罪人では無い。そしてまだ王にも奴隷にもなれていない。力だけを得て、言葉だけを得て、姿だけを得て、九つの、いや、十の愛だけを得た哀れな子」


 ルミエールがその手に持つ刀を、男性の胸に向けて振り払った。血は出ない。あくまで肉体が狙いでは無く、それを器にしている魂である。


 しかし、肉体が不滅ならば彼の魂も不滅なのだ。それを破壊することは不可能である。


 ルミエールの白い刀の刃に、大きな釣り針の様な形の石が付いていた。その輝く石こそが彼の魂。それに、一つの銀の剣が貫いた。茨に縛られ、やがて彼の肉体に一人で帰った。


 次に、ルミエールの周囲に浮かぶ六つの両腕が手を祈る様に組むと、その腕の皮膚を突き破り銀色の樹皮を持つ植物が伸びた。


 それは十字架を作り上げ、彼の腰に枝を伸ばして縛り付けた。彼の抵抗を抑える様にその両手首に釘の様に銀色の樹皮の植物が突き刺さった。


 貼り付けの彼の脇腹の上にある脾臓に、ルミエールは銀色の剣を突き刺した。


「これで六つ、残り一つは――」


 その瞬間に、投げ飛ばされた赤髪の女性は地面に落ちて来た。四肢を失くした彼女にとって、もう抵抗は意味が無い物だ。


 それが分かっていながら、いや、分かっているからなのか、彼女は自身が愛する彼の無惨な姿に怒り、そして叫んだ。


「何をしたルミエール!!」

「簡単な話。彼に突き刺さってる剣は、メレダのを除いて全て私の肉片から作り出された銀の剣。茨が巻き付いて外れない様にして、そこを中心に『固有魔法』を発動させてる。彼の力が溢れる箇所を狙って突き刺せば、まあ信仰の力も暫くは発動出来ないまま。ただ、もう一つが見付からなかった。けど、ようやく見付けた」


 ルミエールは赤髪の女性の胸元を凝視した。


「……まさか、自分の妻の心臓にするなんてね。彼が言ったの? それとも貴方が提案したの? 少なくともこっちに来る前からそれを作ってたはず。簡単に言ってしまえば。それはまだ何も無い貴方達を存在させる為の基点でもあるからね。二人の存在を複数の基点で互いに観測し合って更に存在を安定させてる……それが、彼の強さの秘訣か」


 ルミエールは左手に銀色の剣を握り締め、それを赤髪の女性に向けた。


「こんなに、酷く退屈な戦いになってしまうのは、少し残念だよ。まあ、こっちからしたらそれで助かったから今があるんだけどね」


 赤髪の女性は全身から血を吹き出させた。しかしその抵抗も、ルミエールの周囲に展開されている"大罪人への恋心"によって勢いを失った。


「ごめんなさい。その愛だけは、ちょっとだけ、羨ましく思うよ」


 その言葉の直後、男性が両手首が裂けようともその腕を植物の枝から引き剥がし、右腕の口から黒く穢れた炎を吐き出した。


 全身が燃えようとも、その剣が突き刺さる肉体が痛もうとも、彼は暴れ続け、十字架を燃やし尽くして剥がれ落ちた。


 そのまま知性も感じない獣の様に走り出し、赤髪の女性の胸に剣を突き刺そうとするルミエールに向けて飛び掛かった。


 ルミエールの喉元に噛み付き、彼女の小柄な体を引き裂かれてもう使い物にならない腕で投げ飛ばした。


「そこまでの傷でまだ……!」


 ルミエールはそう言いながらふわりと体を浮かんで、ゆっくりと着地した。


 すぐに彼に視線を向けたが、彼はもう限界なのだろう。彼の傷は再生せず、血の代わりに白百合の花弁が零れ落ちている。


 意識すらも朦朧でありながらも、彼は覚束無い足でルミエールに向かって走り出した。


 しかし、ルミエールは相手にせずにひらりと躱し、赤髪の女性の方へ走った。彼はもうまともに戦えないのだ。ならば狙うのは、彼の弱点を持つ赤髪の女性に決まっている。


 ルミエールは僅かばかりに悲しそうに目元を歪ませ、銀の剣を逆手に持ち、赤髪の女性の心臓を狙って思い切り振り下ろした。


 もう、戦いは終わっている。故にそれは、本来意味が無い。あくまで念入りにやらなければ、後が怖いと言うだけ。


 だからなのか、ルミエールは少々後悔の念を、珍しく顔で表していた。


 男性は、うつ伏せになって赤髪の女性に覆い被さっていた。その身代わりも意味は無く、男性の胸を貫き女性の心臓にまで刃が侵入した。


 茨が絡み付き、それは機能を停止した。


 存在を確定させる七つの基点、その全てが無効化された。確かに存在している彼の力も意識も、全てが失くなった。


 死んではいない。生きているだけだ。


 彼は言葉を発しない。その動きは凍結されている。しかし何処か、満足そうに笑っていた。


 彼は、自身の為に、自身の弱点を持つ彼女を守ったのだろうか。それとも、自分から戦いに身を投じておきながら傷付く姿を直視したく無かったと言う、愛の行動だろうか。それを語る口は、もう動かない。


「……一発殴ろうとしてたけど、これじゃあ出来ないや。こんなのを、見せられたらね……。……羨ましいなぁ、大好きな人と、一緒にいれて」


 そう言ってルミエールは、その場を後にした。


 向かった先は、この戦いを始めたジークムントが声無き声を発している場所である。転移魔法で一瞬でそこへ行き、この戦いは終わった。


 狐の面を被った者達は、何時の間にか消えていた。逃げたのか、それともルミエールが逃がしたのか。それは定かでは無い。


 ただ、静かな、そして穏やかな時間が流れた。戦いが終わり、少しすれば赤髪の女性は涙を流した。


 そこに、両腕を失った牙を見せる男性が現れた。失った両腕は黒い鎖を集めて固めて義腕の様な物と作り出し、その腕で隻腕の男性と同じ状況である黒い帽子の女性を抱えていた。


「……大した負け犬っぷりだな。ここまで惚れ惚れする負け方があるか?」


 男性は猟奇的な牙を見せながらも、朗らかに笑った。


「よぉ、お前はまだ失くなって無いみたいだな。何れ剣に込められた力が底を突いて、勝手に解放されるだろう。まあ、目覚めても存在を証明する基点が無効化されたんだ。何らかの処置はしないと、本当に消えるぞ?」

「……私が、この戦いに着いて来なければ、こんなことには、ならなかったのでしょうか」

「負ける結末は、多分変わってないだろうな。いてもいなくても同じだろ」

「違う。……違う……。……この方は、ずっと私を気に掛けていた。だからこんなに、酷く退屈な戦いを、こんな無様な姿を――」

「それは流石に聞き捨てならないな」


 牙を見せる男性は離れることの出来ない隻腕の男性と赤髪の女性を鎖で巻き付け、そのまま背負った。


「お前は、本当に良い女だ。こんなことをするこいつの気持ちも良く分かるくらいにはな。だからこそ、さっきの言葉は聞き捨てならないな」

「……お前に何が分かる」

「分かるさ。俺にも愛する人が何人もいる。だから分かる」

「……何が、言いたい」

「こいつは、何で笑ってると思う?」


 赤髪の女性は俯いた。その様子に、牙を見せる男性は微笑んだ。


 何処に向かうのか、それは誰にも分からない。だが男性は仲間でも無い彼と、彼女等を担いで歩いたのだ。


「お前を救えたから、お前を守れたから笑ってるんだ。自分がどうなるかくらい分かってるはずだ。それでも、逃げれないお前を庇ったんだ。こんな格好良い負け様があるか? 自分の基点の一つをお前の心臓にした時から、こうなることを何と無く察してたんじゃ無いか?」


 男性の歩く先に、白い着物を身に纏う狐の面を被った白い長髪の女性が現れた。


「注意を心臓に向けて、お前の基点が狙われずに済んだ。お前の基点は右肺だろ?」

「……ええ」

「それじゃあやっぱりこいつは最高だ。本来なら動けないお前を逃げ出すのが最適解だった。流石に、俺が動けることは想像してなかっただろ? それならお前を置いて逃げ出すのが最適解だ。ルミエールがジークムントを狙うと同時にお前を回収すれば良いんだからな。だが、それだと右肺にある基点が見破られる。回収するとルミエールが見抜いてお前をずっと背負って戦うってことも、まあ可能だろう。そうなったらもうお前は消える。あの一瞬でこいつはそこまで考えたのさ」


 男性が白い長髪の女性の前に立つと、その女性は刀を地面に突き刺した。すると、その女性の背後に一種の門の様な、赤い塗装の木造建築物が現れた。


 二本の柱の上に一本の材木、その下に柱を固定する為であろうもう一本の材木が刺さっている。そんな門であった。


「せめて愛した女だけは、自分を犠牲にして守り抜く。分かったか? 一回自分の発言を思い返すと良い。これが悲惨か? 無惨か? お前を守り抜いたこいつの姿が? それじゃあ余りにも、こいつが報われない」

「……それでも私は、見捨ててくれた方が嬉しかった」

「ま、そう思うのは勝手だろ。俺はもう何も言わねぇ」


 男性は抱えたまま、その門を潜った。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


言ったでしょう? もう何が起こってるのかわけわからんことになるって。

簡単に言ってしまえば、無惨様と同じです。弱点同時に攻撃すれば死ぬでしょってことです。


見返してみると、ルミエールは結構心臓を狙って攻撃をしています。狐の面の四人と戦ってる時も、全員心臓ばっかり狙っています。隻腕の男性が右腕で着物の女性の心臓を抉り取ったのもそれです。


まあ、これにも例外はありますが。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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