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魔法使いちゃんの予定無き旅  作者: ウラエヴスト=ナルギウ
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貼り付けた日記 魔法使いちゃんのいない二人

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

 第三試験の一日目。


 カルロッタが結界の解析を始めた頃、ヴァレリアは……。


「……うーん……困った」


 穴に落ちていた。


 自然に出来た穴と言うよりは誰かが故意的に作った穴だと良く分かる。すぐに分かる程深く、綺麗に作られているからだ。


「ヴァレリアー! 何処に行ったんだー!」

「シロークー! こっちー! 落ちたー!」

「落ちたー!?」


 良かった。シロークの走って来る音が上から聞こえる。ここからの視界は上に写る青い空しか無かった為不安だったが、どうやら意外と早く助かりそうだ。


 やがてシロークは私が落ちた穴を覗いた。


「何があったらこんなことになるんだい!」

「私が知りたいわよ。何時の間にか落ちたのよ」

「まあ、少し待っててくれないかい? 今降りるから」

「降りる……?」


 何だか不穏な言葉が聞こえたような気がする。大丈夫だろうか。


 私の希望はどうやら天には届かなかったようだ。シロークは穴の下に飛び降りて来た。


「何で降りて来たのよ! 縄か何か落としてくれたら良いのに!」

「背負って登った方が簡単だと思わないかい?」

「いーやいやいや、絶対縄を落とした方が簡単よ」

「大丈夫だよ。ほら、背中に乗って」


 心配だが、こんな自信満々な笑顔で語られると信じてみる気持ちになってしまう。ため息混じりに背中に乗った。


 そのままシロークは明らかに人間離れした怪力で穴の壁を手で登っている。しかも私を背負ってだ。もうこの子が人間だと思えない。


 やがて穴から這い出た。


「ふぅ……ちょっと疲れた」

「あれをちょっと疲れたで済ませるのはちょっと引くわ……」

「鍛えているからね!」

「鍛えているで済ませるのは難しいわ!」

「騎士だからね!」


 シロークの常人離れしている体に対しての彼女の答えは必ず「鍛えている」か、「騎士だから」だ。あれを出来る騎士がこの世界に何人いるのだろうか。


「それで、これからどうするんだい?」

「こっちで冒険者ギルドから依頼を持って来るからそれを私達でやる。数ヶ月はここで暮らせる分の金は稼がないと」

「数ヶ月もあれば少しは遠出出来そうだね」

「……まあ、必ずニールに戻れる所を中心によ」

「分かっているよ」


 私は馬代わりの機械の歯車を回して走らせ、シロークはあの可愛くない憎き馬に乗って走っていた。


 今から始めるのは少し危険な依頼だ。その分報酬は……ふへへへへ……!


 おっと、まずいまずい。人と言うのは気を抜けば簡単に死んでしまう程脆い存在だ。報酬を考えるのは依頼を達成した後だ。……ぐへへ……。


 カルロッタから渡されている……えーと……擬似的……擬似的何とかかんとか袋。擬似的何とかかんとか袋の中には私の様々な発明品が入っている。もちろん最近作ったあの……そう言えば名前を決めていなかった。


 ……そう言えば今乗っているこれにも名前を付けていない。依頼が終われば考えよう。


 整備されている道を走っている私達だが、目的地へ行くには整備もされていない場所だ。やがて私達は整備された道の端で一旦止まった。


「ちょっと待ってて。今からこれを分解するから」

「そんなに大きな機械を分解して組み立てられるのかい?」

「私を舐めないで欲しいわ」

「流石ヴァレリアだね」


 ……褒められるのは嫌いでは無い。むしろ褒めた人は少なからず私の技量を認めたと公言しているのだ。それで喜ばない人は相当な捻くれ者か精神破綻者だけだろう。


 素早く解体し、部品を擬似的何とかかんとか袋に入れた。本当に便利だ。カルロッタのお師匠様に感謝しなくては。


 やがて私は道とは言えない獣道を歩いた。何時もはこの中心にカルロッタがいるため違和感があるが、まあ、時期に慣れることだろう。


 ……ああ、でもあのもちもちほっぺが恋しい……。


 あのもちもちほっぺに恋い焦がれながら、私達は更に進んだ。


 隣を見ると、あの可愛くない憎き馬の手綱を引いているシロークの姿が写る。……やはり、美人だと思う。騎士をやるよりは貴族様をやってた方がまだ納得出来る。


 ……まあ、性格が根っからの騎士だからそれも難しいのだろう。それが良い所でもあるのだが。


 ……彼女のほっぺはもちもちなのだろうか。


 そう思った私の行動は意外と速く動いた。その両手でシロークの白いほっぺを揉んでみた。その白いほっぺは徐々に赤く染まっていった。


「……ど、どうしたんだいヴァレリア!?」

「……違う。これじゃ無い……」

「……ああ……納得したよ。カルロッタのほっぺが恋しんだね。僕もあのぷにぷにの頬が……」


 ヴァレリアは私の頬をつねり始めた。シロークも同じ気持ちらしい。


 すると、あの憎き馬が突然暴れまわり、私の髪の毛に噛み付き始めた。


「こんの馬がぁ! 私の髪を離せぇ!!」


 何度もけたたましく吠えながらシロークの背後に回ったこの憎き馬を、今度こそ捌いて肉にしてやろうと刃物を取り出そうとした。


 だが、その手もシロークに止められる。


「落ち着いてくれヴァレリア!」

「いーや! 一度目はカルロッタに免じて許してあげてもいいけど二回目は許さないわよこんの馬がぁ!!」

「逃げてー! クライブー!! 逃げるんだー!! 殺されるー!!」


 ……まあ、色々あったが、私達はようやく目的地に着いた。


 ある下に続く洞穴のような穴。底は太陽の光が届かず、良く見えないが、一つ分かることがある。照らす方法があるとしても、シロークには見せない方が良いだろう。


 この下には蜘蛛の魔物の巣が出来ている。しかも丁度卵が孵る時期だ。小蜘蛛が山のようにいるだろう。


 それを説明するとシロークは震え上がっていた。


「まさか討伐って言うんじゃ無いだろうね! 僕は無理だよ! 沢山いるのが無理だってヴァレリアにも説明しただろう!?」

「大丈夫よ。そんな大群相手に二人で勝てると思っている程私は馬鹿じゃ無いから。だけど私達には魔物には無い知能がある」

「……何か買い漁っていると思ったけど……その準備だったのかい?」

「もちろんよ。ふっふっふ……!!」


 そして私は、擬似的何とかかんとか袋からある物を取り出した。ガラスで出来た丸い容器で、中には鮮やかな青色の液体で満たされていた。


「何だいこれ」


 シロークのその問いかけに私は答えた。


「これは、空気に触れれば蒸発して気体になる毒よ」

「へー……。……つまり?」

「空気に毒が混ざる」

「あー成程。それで倒すって言う戦法だね! あ、でもそれは上に浮かぶと僕達も危ないんじゃ無いかい?」

「このガラス容器は少し特殊で日光のある波長だけを阻害するのよ。この毒は直接日光に当たれば勝手に毒性を無くすように調合済み。偶に洞窟にいる魔物を一掃するときに良く使ってた物よ。製造方法はまだ誰にも伝えていないわ。つまりこれを……ふふふふふふ」

「悪い顔をしているよヴァレリア……」

「まあとにかく。これを大体十個作って来たから、これを下に投げ込んで、数十分経ったら大体は日光に当たって毒性は無くなるはずよ。それじゃあシローク! 思いっ切り投げちゃって!!」

「分かったよヴァレリア!」


 そう言ってシロークは張り切りながら穴の底に向けてガラスの容器を全力投球している。


 私はここで見学をしているだけ。私はあの毒を作って何とか空気に触れさせず何とか日光に当てさせず容器に入れたのだ。これくらいしても神様は怒らない。毒を作っている時点で色々怒りそうだが、私は聖書を読んだことが無いから神様が何が良くて何が悪いと言ったのか分からないので知らなくても仕方無い。うん。仕方無い。


 つまり、毒を作ってはいけないことを知らなかったから仕方無い! 神様は怒らない!


「ヴァレリア! 投げ終わったよ!」


 シロークが眩しいくらいの笑顔で手を振りながらそう叫んでいた。


 ……明るい性格は偶に私を消し去りそうなくらい眩しい……。


「けど、意外と早く終わったね。これで数十分待つだけなんて」

「実はもう一つ、暇潰し……じゃ無くて、金儲け……じゃ無くて、依頼があるのよ。近くの湖にいる魚の魔物を五体らしいわ」

「じゃあ行こう!」


 半ば強引に連れて来られたのは、太陽が良く反射している湖。波を一切立てず凪いでいるその大して広くも無い湖の底に、魚の魔物がいる。


「底にいるから倒して来て」

「分かったよヴァレリア! ついでに遊んで来る!」


 恐らく水遊びが目的なのだろう。即座に胸当てと手甲を外して剣一本で湖の底に潜った。


「……あ、水中で息が出来る薬渡すの忘れてた。……ま、大丈夫でしょ。シロークなら」


 私はただここで眺めるだけ。戦いは前衛のシロークに任せて私は後ろで開発。……なんて楽なのだろうか。


 私は好きなことが出来て、それだけでお金が貰える。シロークも楽しそうに水に潜っている。つまり、誰も嫌な思いをしていない! なんて快適なのだろうか。


 数十分経ってふと湖を見ると、シロークの影が見える。とんでも無い速度で水中を泳ぎ、何かを抱えているように見える。


 ……もしかして、この数十分息継ぎをしていない? ……何度も思うが、人間とは思えない……。


 やがてシロークは魚の魔物をきちんと五体尾鰭を両手で掴みながら出て来た。


 水に濡れている髪と笑顔が綺麗だと少しだけ思った。思ったが、明らかに魚の魔物のサイズがおかしい。


 ……いや、恐らくこれでも良いとは思うが、大人二人分くらいの大きさがあるような……。


 水中で、鎧を付けずに、あれを五体倒して、しかも息継ぎをせずに。……頼りになると表現しておこう。


 何とかその魚の魔物の死体を引きずりながら、あの洞穴に向けて歩いた。


 様子を見る限りでは、恐らく大丈夫だろう。どうにか気を付けながら洞穴を降りたが、シロークはただ何もせずに自由落下で落ちている。


 シロークは私より早く降り、こちらに向けて手を振っている。


 何とか底にまで辿り着いてランタンで辺りを照らすと、やはり小さな蜘蛛の魔物が引っ繰り返って息絶えている。その様子を見てシロークは発狂を始めた。


 これなら大丈夫だろう。……死体の処理はギルドの職員に任せよう。シロークを引っ張りながら地上に上がった。


「はぁ……! はあぁぁぁ……。水中に潜った時よりも疲れた……」

「報酬を受け取ったら甘味でも買ってあげるから何とか気を保って」

「本当かい!?」

「……出来れば安い物ね」


 この顔を見るだけならまだ何とか可愛い貴族家系から生まれた人間の騎士に見える。ただ……何度思い返しても明らかに人外の耐久力。何故出会った時にあんな傷を負っていたのか分からない程だ。


 そう思えば、確かに謎がある。何故シロークはあの時あんなに深い傷を負っていたのか。


 余程強かった魔物だったのだろうか。それは恐らくカルロッタが倒したから分からないけれど。


 ……カルロッタが強過ぎてどれ程強いのか分かりづらい……。


 あの子を鍛え上げたお師匠様と言う人の謎が更に深まった。恐らく魔人。それも千年単位を生きる長命種だとは思うんだけど……。


 だとすると無名の魔人なのが更に謎が深まる。私が買い被っているだけなのか、それとも表に立てない理由があるのか……。


 蜘蛛の魔物の巣の安全確保兼魔物の掃討、湖の底にいる魚の魔物を五体討伐。ギルドには危険な依頼が多いが、金儲けをするなら全然許容出来る。


 私は約束通りシロークに甘味をご馳走した。流石ノルダの首都。探せば簡単に店が見付かる。


 嬉しそうに菓子を食べているシロークを眺めながら、あることを思い出した。


「……あ、カルロッタにギルド所属の特典を教えてなかったわ」

「大丈夫じゃ無いかな。一度くらいはきっとギルド側から説明するはずだしね」

「……そうね」


 ギルド所属による特典、それは様々ある。


 まず同盟国共通の戦力と扱われる都合上、ある一定の信頼がある。それを使ってノルダから出ようとしたのだ。


 特典はまだある。ギルド発足当時から積み重ねられた情報資源。


 約五百年。失われた物も多いだろう。その断片的な情報とは言え、それを永久的な保存もギルドはやっている。難解な呪いを解く方法を探し求めてギルドの所属する人も多いらしい。


 その情報資源は多様であり、貴重である。噂ではあるが、その情報資源が眠っている場所の奥深くには禁忌とも言える歴史の闇に葬られた恐ろしき魔術が眠っているとか何とかかんとか。


 そしてもう一つ。私が冒険者ギルドに所属した大きな理由。


 商業的な大きな価値がある。これはカルロッタにはあまり恩恵が無いかも知れない。


 これは一定の信頼にも関係があるが、そんじゃそこらの行商人よりかも同盟国では信頼がある。


 つまり、商業的な信頼。それに付随する交渉の有利性。これがお金儲けでどれだけの価値があるのか。賢い人ならすぐに分かるはずだ。


 ……まあ、とにかく。大きな特典がある。


「そう言えば、ヴァレリアはどうやってギルドに所属出来たんだい?」

「……例えば、ある発明品があるでしょ? それがもしギルドに所属している人を救ったら……ね?」

「つまり他の人からの推薦ってことかい?」

「……ギルドが求めているのは英雄。その英雄って言うのは、決して強いからこそ成立する訳じゃ無いのよ」


 そうだ。冒険者ギルドとは言っている物の、内包している物は冒険稼業を斡旋するだけの組織では無い。英雄を斡旋する組織、世界規模の治安維持の為の組織。


 そのまま時間は過ぎ、日が落ちた夜。私は何とか眠たそうなシロークを引き摺りながらある場所を目指していた。


「何だいヴァレリア……まだ眠い……」

「昼に言ってたでしょ。何故か大量に発生したスライムの駆除だって」

「……んー。……ああ、思い出したよ」

「スライムなら夜に活動が鈍るから急ぐわよ」


 スライムと言う最早生物とも言えるかどうかの魔物。それを一定以上駆除すれば報酬を貰える。


 スライム如きなら何とかなる。それに夜。数がいたとしてもどうとでもなる。


 草木が眠っている平原。その場所に私でも鳥肌が立つ程に透明な魔物が跋扈している。


 やはりシロークは悲鳴と一緒に近くに木の後ろに隠れた。


「……いや……本当に無理なんだ……!! こればっかりは無理! 絶対に!!」

「大丈夫よ。動かないし。こんなに数がいるんだから手がいるわ」

「……いーや! 無理! 本当に無理!」

「……目を瞑って下に向けて剣を振るったら大体は倒せるんじゃ無い?」

「確かに」


 冗談で言ったのだが、本当にそれを始めた。何か文句を言いながら泣き喚くよりは楽だけど。


 私も駆除を始めた。


 火の魔弾が放てる銃、とりあえず付けた名前は"レッドマジックガン"。もう少し何とかなりそうだったが、私のネーミングセンスではこれが限界だ。


 スライム程度なら火の魔弾で簡単に貫ける。ただのナイフでも簡単に駆除出来る可能性もある。


 スライムは少し特殊な生態だ。高密度の魔力から生まれる粘性の液体に様々な器官が更に付いた魔物だ。


 故に生物と言えるかは謎が残る。私でも分かっている生態は日光が出ている間に活動する為夜では活動が鈍る。蜥蜴に近い生態だ。


 だが、このスライムの核とも言える魔石は欲しい。何とか合わせて高品質の魔石を作れる……ことは少し難しいが、それでも欲しい。


 一面にいたスライムの大体は駆除が終わった。何とか数匹見付かるが、これくらいなら別に大丈夫だろう。


 シロークが倒した魔石を一つ残らず回収した。


「ヴァレリアー! ここは何処なんだいー! 瞼を開けたく無いー!」

「もう殆ど掃討したから大丈夫よ」

「本当かい!? 嘘じゃ無いよね!!」

「……嘘って言って欲しい?」

「いや! 嘘じゃ無いって言って!」

「嘘じゃ無いわよ」


 シロークは怯えながら目を開けた。その視界に集合体がいないことを確信して、安堵の息を漏らしていた。


「良かった……」

「怯え過ぎよ。そんなに怖い?」

「もうゾワッと。それこそモワッと」

「擬音語のせいで訳が分からないわ」

「とにかく苦手なんだ。……昔本当に色々あってね」

「虫が体中に集ってきたり?」

「怖い話は辞めて欲しいな……」


 私達はそのまま帰ろうとした。だが、突然シロークは夜空を見上げた。


「どうしたの?」

「……何だか……懐かしい気配を感じる。……多分親衛隊の方だと思うけど……」

「親衛隊って……リーグ国王陛下直属親衛隊?」

「昔に色々お世話になった人達だからね。僕の剣技もお父さんとルミエールさんが教えてくれた物だから。……気配と言うよりかは魔力かな。多分――」


 すると、シロークはまた目を見開いた。


「ヴァレリア! 全力で――!!」


 その声が途切れるように、何かの咆哮が轟いた。そこから感じ取れる上位の生物としての威圧が、私の体に覆い被さった。


 月明かりの権化だと名乗るように、白い竜が舞い降りた。逆立った鱗は仰々しく、美しい頭はこちらに殺意を向けている。


 明らかにおかしい。こんなに近くにドラゴンがいるのならすぐに分かる。それ程までにこのドラゴンは美しい。つまり、突然湧き出た……いや、それこそ……。


 ……それに、わざわざ私達を狙う意味が……――。


 ――ジークムントと名乗った男性は、夜空に浮かんでいた。浮かびながら白いドラゴンとそれに相対しているヴァレリアとシロークを興味深そうに見詰めながら、薄ら笑いを貼り付けている。


「さて、お手並み拝見。彼女達がカルロッタに相応しい強さを秘めているのか……あれくらい倒せないとね」


 すると、ジークムントは夜空を見上げた。


「……星の光……か。確かに彼の光は星の光と形容する程に眩しい……。だからこそ狂った秩序の世界に混沌を齎すことが出来たんだろう? ……白と黒の王よ。僕も君の星の輝きに見惚れているのかも知れない――」


「――いーや! 流石にこんなに首都が近い所にドラゴンがいるはずが無いわ!」

「けど逃げられるはずも無い! やるしか無いよヴァレリア!」

「人間が勝てる相手じゃ無いわよ!」

「それでも! 生きるならやるしか無い……!!」


 シロークは即座に剣を抜いた。それと同時に、ドラゴンはその翼を広げ魔法陣を浮かべた。


 明らかにおかしい魔法の使い方。それから導き出した答え。


「何かに操られている……!」


 あれはカルロッタが教えてくれた魔法の使い方だ。私が知らないと言うことは一般的な使い方では無い。つまり相当な、それもカルロッタに匹敵する魔法の使い手だからこそ出来る物。


 それがドラゴンが出来るとは思えない。確かに相当な知能を持つドラゴンもいるが、相当な知能を持っていて尚且つ魔法陣を空中に作り出す魔法の使い竜は数が限られる。


 それならば、やはり外部からより細かい操作を可能にする魔法か能力か、それともそう言う何かを埋め込まれているか。


 とにかく、偶然にも襲って来た訳では無いことが分かる。それならやはり逃亡は不可能。何処かから操っている誰かが見ている可能性があるのなら、どうせ逃げられない。


 すると、ドラゴンは大きく口を開きこちらに向けた。そこから収束する魔力の塊が魔法陣を何個も通って放たれた。


 シロークが私の前で仁王立ちになり、剣を大きく振り下ろした。


 光線とも言える魔力の塊は、シロークの剣に切り裂かれた。


 ただ、私達の背後にあったであろう平原にその魔力の塊の威力を物語る裂け目が出来たことによって、私の傍に死の匂いが漂った。


「シローク! 分かってるわね!」

「分かってる! あくまで魔法陣を通したことによる威力の増大! しかも魔法陣を作る時に一瞬だけ動きが止まる!」

「そこまで分かってるなら充分! 勝機は多分ちょっとくらいあるわ!」


 シロークの身体能力ならその動きが止まる隙を何とか出来る可能性が高い。そこに加えてシロークを追う時に、私の発明品で更にダメージを与えられれば……多分何とか。


 翼を広げると同時に、辺りに魔法陣が作られた。そこから白い光線が真っ直ぐ放たれた。


「シローク! 私を守らなくても大丈夫! こっちはこっちで何とかする!」

「信じてるよ! こんな所で仲間を死なせる訳にはいかないからね!」


 シロークは無理矢理に胸当てを外し、それをドラゴンに向けて投擲をした。どうせ一発でも喰らえば死、奇跡的に致命傷だ。


 胸当ては頭に直撃し、そのおかげか一瞬だけ怯んだ。その隙にシロークは距離を詰め、白い鱗を切り裂いた。


 ……ただ、見間違いで無ければ、防護魔法を使っていたような気が……。……魔法を使うドラゴン。珍しいなんて言葉じゃ表せない。それ程までに珍しい。魔法陣を作るから今更か。やはり操られていると仮定した方が納得出来る。


 擬似的何とかかんとか袋から色々発明品を取り出した。


 爆弾はシロークにも当たる可能性がある。……いや、あれがあった。あれなら多分何とかなる。


 取り出したのはクロスボウ。ある目的の為邪魔にならない所に魔石が取り付けられ、速度と命中率の向上の為の色々機械が付けられているが、使い方はほとんど同じだ。


 そこで装填するのは少しだけ勿体無くて使って来なかった特殊な矢の形状にした鉄の塊。ここで使わなければ倉庫の肥やし……いや、擬似的何とかかんとか袋の肥やしだ。


 丁度シロークがドラゴンの背に飛び乗り、その強靭な腕で翼を無理矢理圧し折ろうとしている。それなら剣で切った方が楽だと思ったが。


 だが、タイミングはとても良い。私は特にクロスボウの腕前が上々と言う訳では無い。丁度当たりやすい体勢にしてくれた。


 引き金を引いたと同時に矢のような形状の鉄の塊が放たれた。


 あの鉄の塊には、魔法陣が刻まれている。と言っても私の魔力量じゃ大した物は作れない。それこそ魔石を使って使って体力を疲弊して何とか刻んだ物だ。だからこそあまり使いたく無かった。これをまた作ると考えれば……うぅ……。これからはカルロッタに頼もう……。


 一本、羽に突き刺さった。これで良い。


 刻まれている魔法陣は弱体化とでも言えば良いだろうか。とにかくあのドラゴンは脱力感に襲われるはずだ。


 やはりだ。明らかに弱っている。


 逃げるように羽ばたきを始め、上空から私達を見下ろした。ただ、人間離れした身体能力を持っている子がこっちにはいる。


 高い跳躍はドラゴンの羽ばたきよりも上空へ行った。体を回し、その剣を頭部に叩き付けた。


 だが、より鱗が硬いのか叩き落とすだけだった。それでも上出来だ。


 もう一つ魔法陣の種類が違う鉄の矢がある。それを装填し、地面に落下と同時に引き金を引いた。


 頭部の目に突き刺さったそれは火薬と熱と魔法の匂いが良くする。


 この矢に関しては、あくまで魔法陣はきっかけを作るに過ぎない。それは私の言葉で起動する。


「"起爆(バースト)"――!」


 力強く、それでいて微笑んで呟いたその詠唱にも近い物をきっかけに、ドラゴンの頭部の目に突き刺さっている鉄の矢が爆発した。


 赤い炎は火薬が燃える色。広がる匂いも火薬の匂い。肌で感じるのは発せられた熱。


 だが、予想の一つに入れていた最悪の出来事が起こった。それは、ドラゴンが回復魔法さえも扱える可能性。


 元々可能性の一つとしては考慮していた。だが、ドラゴンも生物な以上、扱える魔法に限界はあるはずだ。


 魔法は本来その人に適した使い方がある。適した使い方を外れると、その魔法の効力は無になる。だからこそ扱える属性は限られる。


 確かにカルロッタのような規格外はいるだろうが、ドラゴンも生物だ。扱える属性の魔法は限られると思っていたけど……。……いや、もしかしたら、回復魔法だけが使えるドラゴン……?


 珍しいドラゴンだ。まず回復属性持ちの魔物自体が少ないとは思うけど。


 だが、それなら厄介だ。まずドラゴンと言うことは魔力量は簡単に人を超える。幾ら回復魔法は魔力の燃費が悪いと言っても、魔力切れは狙わない方が良いだろう。


 ……さて、厄介なことになった。最悪敗走も考えなくては。……逃げれるかはまた別の問題として。


「……シローク」


 私の隣に轟音と共に着地したシロークが少しだけ汗をかきながらこちらの声を聞いていた。


「……貴方がやることは特に変わりないわ。ただ、私が危なくなったら守って。そうしないと、両方とも死ぬ。死にたく無かったら、死ぬ気であのドラゴンの気を引いて、死ぬ気で私を守って。それが、貴方が言う騎士でしょ?」

「……そうだね」


 シロークはにっこりと笑っていた。


「……僕が弱気になってたら駄目だね。死ぬ気でやる。分かってる。……よーし。カルロッタに助けて貰った以上、死ぬ訳にはいかないからね!」


 一応勝てる方法は何とか思い付いている。ただ、時間はかかる。今は何とかシロークがあのドラゴンに殺されないことを祈るしか無い。信仰する神はいないけど。


 シロークは走り出した。手甲ももう外している。


 こんな所で死なせる訳にはいかない。……私は、人の死を嫌悪する。


 特に理由は無い。ただ、自己犠牲精神と言う私では絶対に出来ない馬鹿みたいな精神を持っている両親と私を離した死と言う概念を、私は嫌悪する。


 シロークはドラゴンの股の下の先を地面に体を擦り付けながら滑り込んでいた。


 そのまま足の腱を剣で切った。だが、それも簡単に回復魔法で傷が塞がる。


 大体二秒……! 僕だけなら傷がほとんど付かない……! だけど……ヴァレリアのあの金属の矢が当たってから動きが鈍ってる……! 魔法はそこまで詳しく無いけどそう言う魔法があるって言うのは理解出来る!


 シロークは更に速度を上げた。


 人間には体力がある。もちろん全力を出せば数秒で疲労で動きが鈍る為、意識的に全力の一歩手前を継続的に使うことが義務付けられる。


 だが、今は死ぬか死なないかの瀬戸際。全力を出さなければ死ぬだけ。全力を出せば、死ぬ可能性が少しだけ減る。


 この世界では弱者は生きづらい。故に強者になろうと、弱者は抗う。故に強者を喰らおうと、弱者は吠える。


 それが強者の証だからこそ。


 シロークはドラゴンの太い尾を両腕で締め付けた。逆立った鱗が鎧も無い腕に突き刺さるが、その痛みさえも彼女は自身の闘争心を掻き立て、更に心拍数を上げた。


 力強く腕を振り、ドラゴンの巨体を地面に引き摺らしながら後ろに投げ飛ばした。


 ドラゴンの抵抗も虚しく、地面に叩き付けられた。その未だに状況を把握していない目に魔断の剣を突き刺した。片足を高く上げ、治りかけている頭部に向けて勢い良く振り下ろした。


 衝撃を物語る音は火薬の爆発の音に酷似しており、その威力は決して人間とは思えない。


 ドラゴンの頭部は地面に叩き付けられ、その衝撃でさえも地面に罅を走らせた。


 だが、金属の矢に刻まれた魔法陣の効力が弱まったのか、ドラゴンは先程より力強く頭部を上げた。


 足を乗せていたシロークは当たり前のように上空に飛ばされた。自由落下中の不自由な体を狙うようにドラゴンはシロークに向けて三つの魔法陣を介した白い魔力の塊の光線を発した。


 それ以上の速度でシロークは上半身を捻り、遠心力が加わった魔断の剣を振るった。


 魔力を切り裂き、シロークは着地と同時にドラゴンを中心に右回りに走り始めた。


 最初の一歩の足跡が地面に力強く残る。それがシロークの異常な身体能力を物語る。


 すると、ドラゴンの体の周りに複数の魔法陣が作られた。それぞれからシロークを狙うように魔力の光線が放たれ、それを驚異的な速度でシロークは避ける。


 腰から外した鞘を左手でドラゴンの背に投げ付け、それはすぐに骨を折る打撲に変わった。


 肉が凹み骨が砕ける音が聞こえた直後に回復魔法で治されるが、ドラゴンはシロークを敵対に値する存在だと認識した。


 高い飛翔と共に尋常ならざる飛行でシロークの上空に来ていた。その前足の爪を振り、襲いかかったが、シロークの跳躍はドラゴンの前足に着地し、そこを地面として更に跳躍を繰り出した。


 腹の白い逆立った鱗に剣を突き刺し、上に振り上げ切り裂き、最後に横に切り裂き十字の傷を刻んだ。


 着地はシロークの方が速かった。着地を確認したと同時に、ヴァレリアは大きく声を張り上げた。


「シロークゥ!! こっちィ!!」


 ヴァレリアが両手で抱えるように持っているのは、前を向く三つの細い金属の筒とその中央にある太い金属の筒がある機械だった。


 形状から説明するにガトリング砲と形容することが一番正しいだろう。


 魔力が高まり、それでいて高密度に収束していることを危惧したのか、ドラゴンは口を開け魔力の光線を放った。


 だが、先回りをしたシロークの魔断の剣を振り下ろした。人を守る為に振るった剣は、確かに魔力を切り裂いた。


「体支えて! 多分このまま撃ったら私後ろに吹き飛ばされるわ!」

「了解!」


 シロークはヴァレリアの背に回り、腰に腕を回して足に地面をしっかりと踏み込んだ。


「魔力装填完了! 安全装置解除! 魔力高密度化完了!」


 やがてヴァレリアは様々なスイッチを降ろした。


「"(フル)高密度(ハイデンシティー)魔力(バレット)発射(ファイアリング)"――!!」


 太い金属の筒の奥底に、高密度に圧縮された高出力の魔力が収束していた。引き金を引くと、その魔力は赤く光り輝く光線となりドラゴンに向けられた。


 ヴァレリアはあまりの反動に後ろに吹き飛ばされそうになった。その吹き飛ばされそうなヴァレリアの体を何とかシロークが支えている。それでも地面を抉るように足元の地面が少しずつ崩れていた。


 それでもヴァレリアは発明品を離さなかった。その赤い光に辺りを包まれながらも白い鱗を何とか視界に収めていた。


 流石に回復魔法を使えるドラゴンと言えど、その瞬間火力で鱗を剥がし下の肉を消し飛ばした。


 やがて断末魔も叫ばずに、ドラゴンは塵に変わった。少しだけ残っているシロークの奮闘の証とも言える鱗が残っているだけだが、ヴァレリアはそれを嬉しそうに集めていた。


 だが、シロークはまだ緊張が解けずにいられた。何処か遠くに、感じ慣れた恐ろしい魔力があるからだ――。


「――おや、意外と速く倒されたね。これは良い予想外だね」


 ジークムントは遠く離れた山の崖の上に佇んでいた。


 ただ興味深そうに薄ら笑いを貼り付け、それでいて夜の闇に潜んでいる悪夢とも言える災害を見詰めた。


「……やあ、"()()()()"君」


 夜の闇には、黒い髪に、銀色に輝く瞳を持つその女性がいた。月下美人の花のように夜空の月光に美しく照らされていた。


「……初めましてじゃ無いのかしら」


 パンドラと呼ばれた女性は微笑みながら呟いた。


「ああ、そうだったね。君から見れば僕とは初めましてだね。僕の名前は――」

「ジークムント、知っているわ。ルミエールから聞いているから」

「なら良かったよ。僕も君が多種族国家リーグ国王陛下直属親衛隊に所属していることを知っているけれどね」


 パンドラの顔には薄ら笑いが浮かんでいた。


「貴方は第二最重要人物として指名手配が配られているわ。多種族国家リーグ第一最重要事項の『行方不明の国王陛下の捜索、保護』の為のね」

「ああ、そう言うことか。……確かに、僕はリーグの王の居場所を知っている。教えてあげようか?」

「……私は、五百年彼から発せられる星の光に恋い焦がれている。教えなさいジークムント、私の愛しの彼の、居場所を」

「うーん……どうしようかな。それはあまり僕の目的にそぐわないんだ。……そうだね。捕まえられたら、教えてあげようかな?」


 パンドラは更に口角を上げた。裂けるような程に上がった口角は、人間を遥かに超越した上位存在の風格を発している。


 パンドラの下腹部から黒い何かが溢れ出した。それは徐々に黒い光を全て吸い尽くす程の漆黒の体をしている何かに形を揃えた。


 数百体の何かが津波のようにジークムントに襲いかかった。


 一体は人間のように、一体は犬のような耳が生えた人間のように、一体は狼のように、一体は猪のような何か。


 それぞれに魂は宿っているが、明らかに魂が宿る生物としてはおかしな状態であることはジークムントは理解している。


 ジークムントは右手を横に振るった。それと同時に汎ゆる存在の体が二つに別れた。


 パンドラのその体も二つに別れた。ただ、黒い霧がその二つに別れた体を隠し、繋ぎ合わせた。


「……ああ、そうだったね。君のその体はあくまでその形をしている物だったね」

「……私の体のことを知っているのは、五百年前の英雄達だけよ。貴方は何者?」

「何者でも無い。僕はただここにいるだけ。それが、人間と言う自由な生物だろう?」

「……ああ、貴方は……私が求める光じゃ無い」

「当たり前さ。僕はただ白く黒いだけ」


 黒い肉体のドラゴンのような存在が、パンドラから溢れ出した。空を覆い尽くす程に巨大な翼を広げ、パンドラの傀儡に成り下がっている


 そこから更に上位魔物に匹敵する存在が無数に溢れ出し、作り出された。


 何処までも広がり続ける悪夢の霧。それが、パンドラだった。


 襲いかかった存在は、ジークムントでも片手間に倒せる存在では無かった。あらゆる魔法が飛び交い、様々な能力が跋扈する周辺において、ジークムントは腕を吹き飛ばされ頭を穿たれ胸を貫かれたとしても彼は動き続けた。


 決して死なない。だが、パンドラは詠唱を始めた。


「"悪夢を齎す災害たる霧""開かれる箱にあるのは絶望""故に愛すは星の光""無垢金色の輝く彼と""無垢銀色に輝く彼女は""やがてまぐわい瞳に宿す"」


 ジークムントは姿を消した。次に現れたのは、パンドラの背後だった。


 それは簡単な転移魔法では無かった。それよりももっと、異質な力の使い方。


 ジークムントがパンドラの背に触れると同時に、パンドラの体は吹き飛ばされた。だが、それでも彼女は詠唱を続けた。


「"求める愛は彼から貰う"『固有魔法』"パンドラの箱"」


 その詠唱が終わると同時に、ジークムントとパンドラは黒い空間に包まれた。


 パンドラの『固有魔法』"パンドラの箱"。それは簡単に言うと、自分以外にこの中に入っている人物にとって最も恐ろしく最も忌避すべき絶望を齎すことである。


 この中では死ぬことは出来ない。切り分けられた腕にも意識が残り、塵となろうとも意識は保たれ『固有魔法』が崩壊するまでそれは永遠に続く。


「この世に絶望を解き放ち、一抹の希望を与える者。だけれど、貴方には希望を与えない。ただ絶望に沈みゆく黒い箱の中で、永遠に」


 だが、何も起こらない。


 生物にとって最大の絶望とは死である。故に全員等しく死ぬ更に先の絶望を味わうはずの『固有魔法』の中で、何も起こらずジークムントは薄ら笑いを貼り付けながら佇んでいる。


 ジークムントは力強く腕を振るった。それと同時に黒い空間は崩壊し、星々が輝く夜空の空間に戻った。


 パンドラの固有魔法は、ルミエールの固有魔法のような外壁が存在しない物では無い。


 ソーマの固有魔法と同じような外壁が存在するものである。本来それが固有魔法としては正しい形ではあるのだが。


 その外壁にジークムントは触れもせずに、大きな衝撃を加え外壁を破壊した。


「残念。あれを使えばまだ何とかなったと言うのに。『固有魔法』に頼らず更に強い奥の手とも言える存在を出せば何とでもなっただろう? ……ああ、そうだったね。理由があったんだね。それなら全力を出せないのは仕方が無い」

「……もう無理ね」


 パンドラはため息をつきながら腕を下げた。


「私だと貴方を捉えられない。ルミエールも間に合わない」

「おや、良いのかい?」

「……また会えるかしら」

「もちろん」

「それなら良いのよ。この場は逃したとしても、何時か貴方に絶望をあげるわ」

「……さようならパンドラ君。また星の光の下で」


 そう言ってジークムントは姿を消した。


 パンドラは、薄ら笑いを浮かべながらケラケラと笑っていた。


「この憎しみは何れ返すわ。ジークムント――」


 ――私達は宿に戻っていた。


 シロークは疲労が溜まっているのか、すぐにベットの上に飛び込んだ。


「……あー……脚が痛い……。ドラゴンを相手に、しかも生き延びて、しかも倒すなんて……。……竜狩りの仲間入りになるなんてね」

「ま、今はしっかり休んで明日に備えるわよ。ほら早く寝る」

すると、シロークは布に包まりながら体勢を変えながら唸っていた。

「……ヴァレリア」

「……何よ」

「……カルロッタがいないと眠りにくいんだ」

「もうカルロッタに依存してるじゃ無い」

「……一緒に寝てくれないかな」

「……何もしない?」

「何か出来る体力が僕にあると思うのかい?」

「まあ確かに」

 私は渋々シロークの寝ているベットに潜り込んだ。


 シロークの頭を子供をあやすように撫でていると、シロークは何時の間にか綺麗な顔で眠っていた。

こう見れば見た目よりも精神年齢が幼いように思えてしまう。それとも精神を成長させるような経験を積んでいないのか。


 何方にしても、カルロッタとは別の方向で子供に近い。


 ……カルロッタが良く言っている、心がぽわぽわする感覚が、少しだけ分かった気がする。


「……寂しん坊のシローク、おやすみなさい」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


ヴァレリアとシロークの話にするつもりだったのに他の人を……人? を二人程出してしまった……。

まあ、ヴァレリアとシロークの大体の強さは分かったと思います。

一応補足しておきますが、ジークムントがルミエールとメレダ相手にぼっこぼこにされたのは純粋に二人が強過ぎたのが問題です。しかもルミエールとメレダはまだ本気じゃありません。メレダも固有魔法を使っていませんし。

パンドラもジークムントも本気では無かった物の、全力で戦うことさえ出来れば二人は互角です。

ジークムントも強いですし、パンドラも弱くはありません。ルミエールと比べると二人共稚魚に等しいだけです。


……どうでも良いですが、ヴァレリアがママみたいですね。母性がカンストしてる。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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