日記28 休息日! ①
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
……く、苦しい……死ぬ……死んじゃう……!
私の体の上に乗っている人の重みがずっしりと、胸を押し込む。
どうやらもう朝の様だ。シロークさんとフォリアさんが私の上に体を乗せてすやすや眠っている。
もぞもぞと動くと、ベッドの隣で私の顔を覗き込んでいるヴァレリアさんが少しだけ心配そうな視線を向けた。
「あ、起きたわね? おはよう、貴方はつくづく不幸ねぇ」
「……おはようございます……」
少々昨日の記憶が無い。えーと、何か黒い髪の人に首を締められて、そのまま記憶が消えている。あ、もしかして気絶してたのかな?
あー道理で首がじんじんと痛いんだ……。
「……えーと、何から聞けば良いのか……」
「まずあの後のことでも言いましょうか。ギルド長と数十名のギルド所属者によってあの場にいた殆どは捕縛、抵抗が激しい者は全員その場で処刑。まあ、私達の大勝利と言えば……そうなんだけど……」
「……ヴァレリウスさんと、あの亜人に逃げられた。そうですよね?」
「そうそう。あの後色々あって……私まで聴取を受けたんだから……! それに事前に作戦教えてくれても良いじゃ無い? ねぇ!?」
「……そうですね。……あの、その、私の首を締めた人は?」
ヴァレリアさんは少々顔を顰めて話した。
「あれは……えーと、リーグの、親衛隊のパンドラ・ピトス。……なーんであんなことをしたのかは知らないけど」
「……何かあの人、見たことあるんですよね」
「初めましてでしょ?」
「そうなんですけど……こう、魔力を何処かで感じたことがあるんですけど、いや顔も見たことがある気が……?」
……何だか、不思議な気分だ。心がぽわぽわしないのに、妙な親近感を覚える。
うーん、思い出せない……分からない。
「……文句の一つでも言いたいけど……何せ一国滅ぼせそうな人なのが本当に……。どうする? この後苦情でも入れる?」
「……入れられるなら入れましょう」
「そのまま損害賠償をリーグに請求しましょう」
「相変わらずですね……」
「取れる所から取らないと勿体無いじゃない!」
ヴァレリアさんは悪どい笑顔を浮かべていた。……これくらいならお天道様も許すよね――?
――ソーマは渋い顔で、この国の国王であるセドリック・エルベール・アンセル・ノルダとの会合をしていた。
「……英雄ソーマ殿にしては、最近敵を逃がすことが多い様だが」
「……油断も怠慢もしてない、つもり何だがな」
ソーマはティーカップを傾けながらそんなことを言っていた。
「……分かっているのか? ギルドは信用で成り立っている。その信用が民間、もしくは国家の兵士の信用よりも下がれば、君達は英雄でいられなくなるのだ。英雄を育てると言う名分も失くなってしまえば……」
「分かってる。だからこそのあれだ。大規模捕縛だ。あれのお陰で無事にギルドの信用は更に上がった。何せ……えーと、数百名を二十五名でやったんだからな」
「……同時に、その頭の二つを取り逃がしてしまったことも広まっている。実質的なギルドの敗北だと思い込む馬鹿な民衆もいる。……その波紋は何れ広がる」
「……まー大丈夫だろ。懸念してるのは、世界大戦の方だが……」
セドリックはその言葉に僅かに反応を示した。
「……前にも、聞いたな。何故それが予見出来るのか」
「そうなるんだ。ルミエールの見解ではあるんだがな。あいつが言うには、星皇の失踪により、神の運命が――」
すると、その部屋の扉がヴァレリアによって蹴破られた。
「おらおらぁぁ!! ギルドちょっ――ちょっ……アッ……こ、国王陛下ァァ!?」
「だから言ったじゃ無いですかヴァレリアさん! 誰かと話してるみたいですって!!」
ヴァレリアの背後には、カルロッタが狼狽えながら彼女の腕を引っ張っていた。
「ああ、別に良いぞ英雄達よ。話は終わっている。それでは、私はこれで」
そう言ってセドリックはたった一人でその部屋を後にした。
「……で、何だお前等。国王陛下との会話に割り込んでまでの、重要な話なんだろうなぁ?」
「アッ……イエッ……アッ、アッ……ソノッ……」
ヴァレリアさんは体を小刻みに震わせながら、目を右へ左へ泳がせている。
「……パンドラ、サンガ……エト……」
「……ああ、カルロッタの件か。……いや、それに関しては本当に済まない。こちらでもある程度は責任を取るが……まあ、パンドラに謝らせた方が良いよな。ちょっと待ってろ。こっちから連絡をしてみる。今頃ルミエールの説教食らってるぞあいつ」
ソーマさんは口の端を僅かに上げながら水晶玉を取り出した――。
――パンドラは星皇宮の奥で、正座を強いられていた。彼女の前には、ルミエールが仁王立ちしながら腕を組み、その小柄な体格からは想像も付かない様な巨大な威圧感を放っていた。
パンドラの頬を七人の聖母の一人であるテミスが、剣の鞘で小突いており、その背後にはスティが背中を綺麗に曲げ、その前髪をパンドラの顔の前に傾けていた。
その横にはリュノがパンドラの肩をぽかぽか叩きながら、モシュネが少々物騒な拷問器具を組み立てていた。
「……さてパンドラ」
「……後悔はしてないわ」
「それはそれで問題なんだけどね……」
ルミエールの隣にはメレダがパンドラに分かり難い怒りの視線を向けていた。
「いやまあ、特に重篤になってる訳じゃ無いから良いんだけどさ……いや、やっぱり良くないんだけど……。何であんなことをしたの? ついでにモシュネは手を止めて」
パンドラはルミエールを睨み付けた。その瞳には憎悪と怨嗟があったが、決してルミエールに向けられている訳では無かった。
「……ねえルミエール、教えて。彼女は誰なの……彼女は何故産まれたの……彼女は誰から産まれたの……!! 何故彼女は――」
「星から愛されているのか、でしょ?」
ルミエールの背後には、セレネが変わらない表情のまま両手をピースにして奇怪な動きを繰り返し、パンドラを煽っていた。
パンドラはルミエールから、いやセレネから目線を逸らした。
「……何で私を見ないの?」
「……いや……その……後ろ」
ルミエールが後ろを見ると、セレネは両手を下に組み綺麗に立っていた。
「……何かやってる?」
「まさか。姉様程の賢い方ならパンドラの悪足掻きと言うことも分かるでしょう」
「……セレネは後でメレダの書類仕事の手伝い」
「辞めて下さい許して下さい本当に出来心なんですちょっと巫山戯たくなっただけなんです本当に、本当に辞めて下さいお願いします」
ルミエールがパンドラに視線を戻すと、そのまま話を進めた。
「まあまず、パンドラの結論は勘違いだよ。けど貴方が感じたそれは事実。結論が間違ってるだけ」
「……本当に……?」
「うん。本当に」
パンドラは顔を下に向けて、そのまま啜り泣いた。大粒の涙が一滴白い床に落ちると、パンドラは声を絞り出した。
「ああ……良かった……私、私は……。……だから、七人の聖母が動いたのね……?」
「うん、一応ね」
「……何時、気付いたの?」
「初めて出会った時から。……けど、あまり信じたく無かった。この世界にいるってことは、そう言うことだからね」
「……だからすぐに離れたの?」
「……そうしない方が、良いんだろうけど、何時か殺さないといけないからね。……情が移ったら大変」
ルミエールの表情は険しい物だった。それを必死に隠そうとしているのか、左手で口元を隠していた。
「……彼が帰って来るのなら、私は何だってする。例えカルロッタを殺すことになっても」
「……まあ、私もそうするわね。何なら今すぐ殺さないといけない理由も、私には無い」
「今のこの状況でカルロッタを殺すことになるのなら、この場にいる全員が貴方の敵になるけど」
「……辞めておくわ」
ルミエールはクスクスと笑った。
「じゃあカルロッタに謝っておくこと。最悪殴られそうだけど」
「……はぁー……気が滅入るわねぇ……」
そう言ってパンドラの体は黒い霧の様に霧散し、消えてしまった。
「……殺すつもりなのに相当鍛えてるみたいですが?」
モシュネがそう言葉を発した。その言葉はルミエールとメレダに当たり、二人の顔色を僅かに強張らせた。
「……最終決定は姉様達が決めることですが、何か甘くはありませんか? 本当に止められるとお思いで?」
「……まあ、十中八九、カルロッタを殺さないといけない状況になるだろうね。勝機が予想出来ないし」
「なら何故あそこまで親密に? 情を掛けない様に出来る限りの接触を控えると、姉様達が言ったのですよ?」
「……分かってる」
「分かっている様には見えないからこそ苦言を呈しているのです。……出来ないと言うなら、モシュネが彼女を殺しますが。……モシュネが優先するのは御主人様がこの場所に帰ること、そしてもう二度と離さないこと。その為なら、例え星の娘と言えど、モシュネは殺せます」
ルミエールはモシュネのそれを決して否定しなかった。覚悟も決意も、モシュネには備わっていた。自分よりも、メレダよりも。
「……ううん。大丈夫。私が、私が殺すから――」
――……えーと、うーんと、何だろうこの状況……。
私の周辺に、何だか恐ろしい気配を感じる黒い霧が纏わり付いて来る。何処かで感じたことのある強大な魔力と、抱えている数多の生命の息吹。
「……ソーマさん? 何ですかこれ……?」
「ああ、件のパンドラだ」
「いや……これ、何ですか……?」
ソーマさんは優雅にティータイムだ。黒い霧は私の周りにずーっと漂っている。それは少しずつ集まり、そして人間の体の部位の形になった。
黒い霧がより濃くなると、それは二本の腕になった。そのまま私を抱き締める様に動くと、それは一気に女性の体になった。
「はぁぁ……。疲れるのよねぇこれ。初めまして、カルロッタ。ああ、でも、初めましてじゃ無いかしら?」
「……どうも……。カルロッタ・サヴァイアントです……」
「パンドラ・ピトス。二つ名は"悪夢の軍団"。覚えておいて」
パンドラさんはルミエールさんの様な白い髪と銀色の瞳を持っていた。まるで月下美人みたいにも思える容姿は、少しずつ黒く染まった。
「ええ、ええ、成程。ああ、ええ、やっぱり私の見立ては間違っていない。成程、単純な話だったわね。……ああ、美しい……!」
パンドラさんは私の体に跨りながら、私のもちもちほっぺを愛おしそうに撫でていた。口角からちょっとだけ涎が溢れている。
パンドラさんはそれを拭うと、神妙な顔付きに変えて話を始めた。
「……ああ、まず、心からの謝罪を。勘違いとは言え、貴方のことを殺そうとして、本当にごめんなさい」
……何だか、心の底からそう思っている様には見えない。僅かに動く眼球と、その仕草から分かる。
むしろ私を殺そうとしている? 僅かな殺意がその奥に隠されている。
「……その、えーと、良いですよ。勘違いみたいですし」
嘘の可能性が高いとは言え、一応は謝罪の言葉を向けられた。なら私は受け入れるべきだ。
「あ、そうだ。あの時何で私を殺そうとしたんですか?」
「……貴方の母親を勘違いした。それだけよ」
「……ついでに、誰と思ったんですか?」
「誰かも分からない女。名前も知らないし顔も知らない何処かの誰か」
誰かも分からないのに? ……ああ、つまり私の母親は、パンドラさんが知っている人ってことか。
可能性としては同じ親衛隊の人達。だけど親衛隊の方々の人をあまり知らない。まずルミエールさんとパンドラさん以外に女性がいるのだろうか?
……もしくは親衛隊に近しい人、パンドラさんの個人的な交友関係……。それに、パンドラさんが私の母親を知ってるならルミエールさんも知っていそうだ。
……うーん? つまりパンドラさんの個人的な交友関係の人? それならそれで殺そうとする理由が見当たらない。
「……じゃあ、私はこれで。また会いましょうね、カルロッタ」
最後にパンドラさんは私のほっぺにキスをしてから黒い霧になった。そのまま霧散し、綺麗さっぱり消えてしまった。
うーん、何も分からない。何と言うか……不思議な人だ。……人? 人かな、あれ。
「要件は済んだか?」
紅茶を飲んでいたソーマさんがそう聞いた。
「あ、はい。勿論。……ちょっとした質問なんですけど、ソーマさんは私の母親を知っていますか?」
「……いや、知らないな。知っていたとしても、教える必要は無い。……まあ、俺は、本当に知らない。知らないからこれ以上聞かないでくれ」
……知らないけど、心当たりはあるって所かな。もしくは漠然とそうだと理解しているのか。
「……ついでにもう一個聞いても良いですか?」
「ああ、答えられる物なら」
「親衛隊に女性は何人いますか?」
「三人。……いや、パンドラは女性で良いのか……? まあ一応女性か。三人だ」
「私が知らない人は人間ですか?」
「いや、魔人だ。五百年前からな」
……じゃあパンドラさんの知人かな。私は人間だし。
ヴァレリウスさんも私の母親のことを知ってそうだし、もしかしたらって思ったけど、違いそう。
……まあ、期待はしない方が良いかな。父親も母親も、私の人生にはもう無い物だ。それを今更詮索する意味は、私の好奇心以上の理由は見当たらない。
私は知りたいのだろうか? 私は私が誰から産まれたのか知りたいのだろうか? ……私の父親代わりはお師匠様だ。そして家族はあの外見だけは小さな小屋にいたお師匠様とジークムントさんだ。
それで良い。産みの親を知ろうとするのは、私の知的好奇心だ。
「最後にもう一つ」
「魔法使いらしく疑問だらけだな。何だ」
「サヴァイアントって何ですか」
サヴァイアント。一応私の姓名だ。お師匠様が付けてくれた姓名。イノリさんはこの名前を何処か忌避している様に思えた。けど他の人はこの名前に大きな反応を示さない。あるとすれば珍しさからだ。
だけどリーグの、しかも相当上層に位置する位の人達だけは違う。それは大きな意味を持っているみたいだ。
そして、多分お師匠様もそれを理解して私に名付けている。もしこれが私の親の姓名なのなら……お師匠様も私の両親を知っていることになる。
そして、リーグの人達も。きっとソーマさんも知っている。
ソーマさんは私の顔をじっと見た。そして大きくため息を吐いた。
「サヴァイアント、お前には似合わない名さ」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
もう諦めました。伏線全部回収なんて出来る訳が無いッ! もうどーにでもなーれ!!
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




