ギルド映像記録 ロレセシリル鎮圧記録
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
フォリアは翼を羽撃かせ、その杖を振るった。対峙している膨大な魔力を持っている山羊の亜人は、放たれる赤い水を大剣で切断した。
その強靭な身体能力で薙ぎ払われた大剣はフォリアの首筋に当たると同時に、彼の右腕はあっという間に切断され、大剣と一緒に吹き飛んだ。
「"二人狂い"」
切断された腕は、亜人の切断された断面から赤い炎が吹き出し、それが吹き飛ばされた腕の断面に繋がった。
その炎は引き伸ばされたゴムが戻る様に勢い良く短くなり、傷の断面と繋がり、そして傷は消えた。
亜人は大剣で身を隠し、フォリアの"二人狂い"を本能で防いだ。
「おめー強いな!」
「成程……人間と違う耳の所為で、頭部に効力が発揮出来ないのね。やっぱり亜人と戦うのは初めてだから知らないことも多いわ」
「強いならおめーでも良いや! どうせ強い奴二人貰ったからなー!」
「……強い奴? 二人……?」
フォリアの疑問を打ち消すことは出来なかった。何故ならあの亜人は頭が悪いからである。今もその「強い奴」が誰なのか分かっていないまま、そう言う奴が居たなとしか覚えていないのだ。
この戦いは、フォリアが劣勢かも知れない。彼女の最も強い魔法である"二人狂い"は、あの亜人の頭部、そして首にも効力を発揮出来ないのだ。
よって、彼女は人間が扱うには異質過ぎる紫色の炎を筆頭とする魔法を使うことを決定打にするしか無いのだ。そして、切断した腕さえもすぐに治るのなら、やはりフォリアがウリエルに勝つことは困難だろう。
だが、フォリアはそれを理解していないのか、将又理解しながらも自身の狂気性に踊らされているのか、それは分からない。
彼女の魔力はより高まり、より洗練され、より狂気に染まった。目の前に居る彼の死を見届け、そして美しくする為に。
彼女はこの激戦の中で、成長しているのだ。
大きく羽撃いた彼女の翼から落ちた羽根は、夜を不気味に照らす紫色の吹き出した。
「ああ……もっと、もっと出来るはず……! この胸に刻まれた方陣さえ無ければ!」
ウリエルは後ろに飛びながらフォリアに大剣を投げ飛ばした。その大剣にフォリアは杖を向け、大きく振り上げると、その辺りに散らばった紫色の不気味な炎が襲い掛かった。
その鉄は一瞬で赤熱し、蒸発し、赤味がかった液体は地面に落ちた。
後ろに飛んだウリエルは両手を後ろに向け、思い切り前へ突き出した。同時に彼の前に存在する空気は可燃性の気体へと変わり、両手に作り出した魔法の小火から引火し、大爆発を巻き起こした。
その爆炎は神が放った裁きの炎に似通っていた。それとも彼はそれを操る魔法使いだとでも言うのだろうか。
ならば、その炎を向けられたフォリアは、神に裁かれる罪人だろうか。
黒い羽根が雪の様に降っていた。それはちらちらと紫色の炎を見せながら、明かりを灯していた。
その中央、暗い夜空の中心に、彼女は羽撃いていた。紫色の炎を纏う彼女は、狂気的な笑みを浮かべていた。
あの炎は彼女にとっては無意味だった。むしろ彼女の規格外の才能を刺激させる。その感覚を、更に研ぎ澄まさせる。
「"不死の王女は糸に絡まり""星の下でパヴァーヌに身を任す"」
ウリエルが高く跳躍し、そのフォリアよりも高くから大剣を力強く、そしてメグムの様に大剣から炎を発し、加速させて振り下ろした。
その刃は、鉄を打つ音と共に静止した。フォリアとその刃の狭間には、彼女の強固な防護魔法が張っていた。
「"捧げよう""死せる王女にパヴァーヌを""奏でよう""星にセプテットを""祝福しよう""新たな王にデクテットデュオを""百合の彼女はソロで歌う"」
大剣を手放し、その柄を足場に、ウリエルは更に上へ、跳躍した。暗い夜空に紛れた彼は両手を合わせると、そこから岩石が溶けた溶岩が溢れ始めた。
思い切り広げれば、その溶岩は夜空を包み込み、巨大な剛腕へと変わった。
フォリアはそんなウリエルに視線を向けたまま、変わらずの笑顔を向けていた。余程彼の死に対しての好奇心があるのだろう。
溶岩の塊は、噴火口から吹き出した様に、一斉にフォリアへと向かった。同時に彼女の詠唱も終わりを迎える。
「"十二重奏の狂気"」
振り下げたその杖から放たれた魔法は、彼女がこの場において感覚だけで作り出した魔法。十二の紫色の炎が螺旋を描き一つとなり、それはドラゴンの形へと変わり、紫の翼を大きく羽撃かせ、その口を大きく開き、暗闇を飛んだ。
落とされた溶岩さえも飲み込み、更にその熱量を増し、そしてウリエルの体にまで届いた。
彼は魔法を防ぐ術を持っていない。その莫大な魔力は全て攻撃に転用され、防護魔法の一つも覚えていないのだ。無論、彼程度の魔力操作技術では、大した防護魔法も張れないからこそ結局ではあるのだ。
紫の炎のドラゴンは威圧を表す咆哮を発し、その偉大さと恐ろしさを証明した。その巨大な口にウリエルは飲み込まれ、そしてその体の全てを灰へと変えた。
彼の最後は何とも呆気無かった。その所為か、フォリアは少しだけ落胆の感情を顔で表していた。
「せめて、悲鳴は聞きたかったけど、まあ仕方無いか。さて――」
すると、フォリアは一瞬、カルロッタの魔力を感じた。
自分が心から愛している彼女の魔力を感じた。始めこそカルロッタがこの場に来たのかと浮足立ったが、その間違いは凄まじい光量によって否定された。
「……何だ。アレクサンドラの魔法か――」
――強い光によって照らされたロレセシリル上空の夜空。そこには、馬の居ない馬車が空を走っていた。馬が居ないのに馬車と言うのかはこの際右に置いて、その中には二人の兎の亜人が乗り込んでいた。
一人は、多種族国家リーグの第十二師団の師団長であるイナバであった。黒い兎の耳はひくひくと動いており、若干の喜びが滲んでいた。
もう一人は女性だった。彼女はイナバの部下に当たり、彼の双子の妹である"シロ"だ。兄とそっくりの漆黒の髪に長い兎の耳があった。その兄と違って丁寧に手入れされた髪は艷やかだった。
その銀色の瞳で、馬車の扉を開けて下を覗いた。
「うわー……何だあの魔法……こっわ」
「あえつはまだ生きちょーか?」
「ぽいぽい。しぶといねー」
「流石だな。やっぱりおらが行くしかなえか」
「じゃああーしは他の人止めに行く。にぃにはハポロスお願いね」
「にぃにきばーぞ!」
そして、シロは馬車から飛び降りた。その直後にイナバも槍を背負って飛び降りた。
その強靭な体は落下の衝撃でも体を壊さずに、師団長ともなればそこからすぐに攻撃に移行することが可能だ。
そう、アレクサンドラの魔法によって数百倍にまで威力が増幅され、放たれたカルロッタの火の初級魔法を喰らっても、ハポロスは無事だったのだ。
いや、無事とは言い難い。むしろ片腕が吹き飛ばされ、全身が熱によって灼かれていた。だが、その傷は徐々に治り、彼は辺りで暴れ回っている亜人に向けて敵意を向けていた。
彼は国を動かす才能は一切無い。だが彼はこの国を愛しているのだ。騙されているとは言え、彼の耳には爵くらい二人が殺され、冒険者ギルドが亜人を率いて攻めて来たと言う情報しか持っていない。
その拳が亜人に向く前に、イナバがやって来たのだ。
「てめぇ……リーグの師団長に居たなぁ……!」
「ちょっこしだけでも話を聞えてくれんか?」
「ああ!? 何言ってるか分かんねぇよ亜人がァ!!」
ハポロスはそのまま腕を大きく振るうと、それと共に黒い炎が燃え上がった。強力な爆発と共に消えない熱が発せられたが、イナバは悠々と避け、ハポロスの背後に回ると、瞬きの隙に振り払った槍の柄の中腹辺りをハポロスの腹部に叩き込んだ。
弱ったハポロスにとってその一撃は非常に重たく、辛い物であり、その場で膝を付いて呻き始めた。
「話を聞けだら者。大きな勘違いがあーんだ」
「あぁ……!? 勘違いだぁ……!? 何だよ、ギルドが攻めたことか!? それとも爵くらい二人が殺されたことか!? 亜人共が暴れ回っていることか!? アァ!? 全部、全部全部! 今起こってる事実だろうが!!」
「同盟国に入ったらやってはならんことを教わっただら? 言ーてみぃ」
「……奴隷精度廃止……だったか。後――」
「えぇえぇ。それだけでええ。暴れちょー亜人は奴隷で、それを助けてあげたのがギルドの連中で、おら達はその鎮圧に来た。爵くらいの二人が死んだのも、何か裏があーさげな」
ハポロスはぽかんと口を開けていた。
「……つまり、俺の勘違いだってことか?」
イナバは何度も大きく頷いた。ハポロスの呆気に取られた顔は更に強まった。
「……あぁ……その、何だ。ギルドの連中に悪いことしちまったな」
「分かってごしたならええ。われの一声で全兵士が手を止めーんだ。さあ、早う。早う声出せ」
二分後、タリアスヨロク国王ハポロスから正式に、ロレセシリルの全兵士に命令が下され、暴動に参加した亜人達の罪は正当防衛として処理された。
こうしてこの事件は幕を閉じた。この事件の全てが終わったのだ。謎を、多く残して。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
何故フォリアが乱入したのかは、次の話で書きます。多分。
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