日記14 大海へ! 目指すはパウス諸島! ①
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
ご了承下さい。
曇り空が目立つ日。私はファルソさんと魔法を打ち合っていた。
あくまで純粋な魔力の打つけ合い。そんなに派手な魔法の打つかり合いでは無い。
魔力の打つかり合いは、私とファルソさんの両者の間の空間に白い光を生み出していた。魔力同士が打つかったことによる反応だ。
ファルソさんは、浮遊魔法と純粋な魔力の連射を両立している。もう同時発動の感覚を掴んだらしい。
魔法の同時発動は中々な難易度だ。その頭の中に全く違う二つ以上の魔法の理論を頭の中で同時に進めることが必要であり、それをするならある程度の演算能力が必要だ。
私はお師匠様から相当鍛えられているから出来るが、ファルソさんは一人でここまで鍛えたのだろう。
すると、ファルソさんの浮遊魔法が不安定になり、その小さい体はそのまま地面に向けて落ちてしまった。
地面に打つかり直前に、ファルソさんの体を私の浮遊魔法で受け止めた。
「……ありがとうございます」
「どういたしまして」
ファルソさんは木陰に座り込んだ。私はそのファルソさんの隣に座り込んだ。
「カルロッタさんの戦い方を真似してみましたけど、あんまりですね」
「連射するのは良いんですけど、それを真っ直ぐ撃ってるのが問題ですね。私の撃ち方を思い出して下さい」
「……曲射している」
「そうです。お師匠様が言うには、『一回でも致命的な場所に当たれば良い。半分の攻撃力で二回攻撃する場合も、二回共弱点に当たれば何時もよりダメージは大きい』って言ってましたし」
「じゃあ強い一撃を入れた方が良い気がしますけど」
「一撃なら守る方法は沢山あります。数百発撃って一発だけでも心臓撃ち抜けば相手は死ぬんです!」
そう言う意味では、フロリアンさんは物量による飽和攻撃が出来るから中々に強い。まあ魔法は物量さえあれば勝てるって訳では無いけど。
実際フロリアンさんが私に負けた原因は、それ以上の物量を使った純粋な魔力の塊では無い。偶然にも手に入れていた魔法の発動による混乱と、操る対象の大きさが唐突に変わったことによる魔力の過剰使用だ。
「そう言えば、独自の魔法の開発はどうですか?」
「ある程度は。何とか使える物にします。そう言えば、カルロッタさんの独自の魔法は?」
「一応私が作った魔法はありますけど、殆ど私の魔力的特徴に沿った物じゃありません。ただ――」
すると、少し向こうからマンフレートさんの笑い声が聞こえた。
「ようやくだ! ようやく納得出来る魔法の改良が出来たぞ! ハーッハッハッハ!!」
……あの人は改良よりも……まあ、良いや。
あの人の魔力的特徴はとても優れた物なのに。
まあ、それを決めるのはあの人だ。私はただ助言するだけ。
……相変わらず、フォリアさんの顔が見えない。何時もなら朝に私のベッドに入り込んでいるはずなのに。
すると、ニコレッタさんがおどおどとしながら私に話し掛けて来た。
「あ、あのーカルロッタさん……フォリアさんが呼んでいました……」
「フォリアさんが?」
「は、はは、ははいぃ……。部屋にいるらしいです……」
何だか変だ。あの人は自分から動きそうなのに。
まあ、良いや。私はフォリアさんの部屋に向かった。
フォリアさんの部屋の扉の前に立ち、こんこんこんと扉を叩いた。
「フォリアさーん?」
「カルロッタ?」
扉の向こうから声が聞こえた。
「どうしました? 何だか最近顔を合わせてくれないから心配してたんですよ?」
「……まあ、入って。そうすれば分かると思う」
やはりおかしい。聞こえる声が元気じゃ無い。
扉を開けると、確かにフォリアさんがいた。何時も通りのちょっと怖い笑顔で、何故か上半身は服も着ておらず下着も着ていない。
私はすぐに扉を閉めた。
「何で上裸何ですか?! マンフレートさんじゃ無いんですから服着て下さ――」
フォリアさんの胸元を見ると、右胸に脇まで届く白い魔法陣が刻まれていた。その魔法陣の左下の腹部のお臍の部分に、それよりも一回り小さい白い魔法陣が刻まれていた。更にその魔法陣の左下の右の腰と鼠径部の部分に、三つの白い魔法陣が刻まれていた。
「何ですかその魔法陣。魔力からして……メレダさんだと思いますけど」
「……ちょっと色々あったの。呼んだ理由はこれ」
これは恐らく、呪いだろうか。何かしらの有益な物もあるかも知れないけど。
私は椅子に座りながら、その話を聞いた。
「これは国王代理に刻まれた魔法陣。カルロッタはもう分かってたらしいけど。この魔法の効果は――」
フォリアさんから、事情を説明された。
フォリアさんにとって相当辛い修行内容だ……!! と言うか私も耐えられるか……メレダさんの残酷さが恐ろしい……。あの人を子供みたいに思うと痛い目にあいそうだ……。
「――だから、今まで貴方に出会えなかったの。私がいなくて寂しかったでしょ?」
「はい」
そう返事すると、フォリアさんは予想外だったのか目を見開いた。そのまま視線だけを下に向け、そしてもう一度私に戻し、視線だけ右を向いた。
「……まあ、とにかく。これからは会える。余程のことが起こらない限りね」
「分かりました。ああ、それと……あの……」
「どうしたの?」
「……服着て下さい……」
「……それもそうね」
フォリアさんがそんな過酷なことをずっとやっていたなんて……私もルミエールさんに毎日やる様に言われていることはあるけど、流石にフォリアさんみたいに私が耐えられない過酷さでは無い。
そして、日は進んだ。
私は何時も通り教室の机の椅子に座った。
見渡すと、ちゃんとフォリアさんがいた。良かった。
すると、ヴァレリアさんが入って来ると同時に、難しそうな顔をした。
「あー……何と言うか、いきなりだけど、遠出の準備をして」
本当にいきなりだ。
「また別の場所で研修している騎士も同行するわ」
すると、フォリアさんが少しだけぎこちなく手を挙げた。
「目的地は?」
「……まあ、結構有名な場所よ。この大陸から南の海へ行くわ」
南の海……あ、そう言えば私は初めて海を見るのかも知れない。
初めて見る海の青さを想像して心を踊らせていると、アレクサンドラさんが声を出した。
「ヴァレリア様、まさか、パウス諸島に行く気では……」
「……残念ながら」
「……ヤッバイですわね!?」
「ヤバイわよ!」
な、何がヤバイのか私には分からないが、まあとにかくヤバイのは伝わった。
私の初めての海は、どうやら楽しいだけでは無いらしい。
外の世界は意外と色々あるのか、私が色々なことに巻き込まれているのか。……多分後者だ。
お師匠様も言っていた。『強いだけで色々面倒臭いことに巻き込まれることが多くなる。俺みたいにな!!』って。
あの人もこう言う体験が多かったのだろうか。
……いや、この言葉を良く考えるとお師匠様のちょっとした後悔が見える。巻き込まれたからこそ、あの吸血鬼の女性が死んでしまった。
……私は、守りたい人が守れるだろうか。
まあ、今はそんなことを考えなくても良いや。
その昼の内に、転移魔法で大陸の南端の港までやって来た。
そこでは、アルフレッドさんが先に待っていた。その遠くで、シロークさんが両手に大きな樽を肩に二つ抱えて何処かへ運んでいる姿が見えた。
「やあ、英雄の卵達。まず、目的を話そうか。まあもう分かっている者の方が多そうだが」
アルフレッドさんは少し面倒臭そうに俯きながら話し始めた。
「あー……ソーマ様は、と言うか同盟国は英雄の卵の孵化を急いでいる。前のセントリータ教皇国の事案があってな。つまりだ。君達には、英雄になって貰おう」
アルフレッドさんは顔を上げると、にやにやと笑った。
「この世界は三つの大陸に別けられる。とは言っても、この大陸にだけ人間族を中心に魔人と亜人族がいる。他の大陸には、生物や魔物はいるだろうが言語を使う存在はいない。まずまず移り住むには環境が兇過ぎる。だが、貴重な物資はある。その一つの大陸へ行く為にパウス諸島と言う島々を中継地点にするのだが、そこはもう放棄された」
アルフレッドさんは私達の前を右に歩いて左に歩いて、やがてまた前に立った。
「そのパウス諸島の周辺に、少々厄介な上くらい魔物が現れてな。君達には、その魔物の討伐を、お願いしたい。船で航海しておよそ一週間でパウス諸島に着く。出発は夕暮れ時。それまでは、各々好きに過ごしてくれて構わない。それでは、一旦解散」
その一声の後に、各々行動を始めた。
さて、私がすることはもう決まっている。
ヴァレリアさんを捕まえ、フォリアさんを捕まえ、何処かに行ってしまったシロークさんを探した。
やがて、ようやくシロークさんを見付けた。
「やあカルロッタ。……その紫髪の人は?」
「フォリアさんです。あ、そう言えばシロークさん寝てましたね」
「ああ、ヴァレリアが言ってたあの強い魔法使い。研修が終わったら一緒に行くのかい?」
「そのつもりです」
「カルロッタが選んだなら、良い人なんだろうね」
「良い人……うーん……うん、はい。まあ、いやーえーと……うーーーーん……私に対しては良い人です」
うん。間違いでは無い。嘘は決して言っていない。
「そんなことより! 海行きますよシロークさん! 海行ったことが無いんです! だから早く行きますよ!」
「何時もよりわくわくしてるね!」
私達四人は、僅かに見えている海へ向かった。
「うおー! よーやく来たー! 海だー! 青いー! 広いー!」
目が痛くなる青色がずっとずっと向こうにまで広がり、ただの湖とは違い独特の匂いが鼻を通る。
「ようやく来れた! よーやく!」
そのまま私は海に向かって走った。
靴を脱ぎ捨て靴下を脱ぎ捨て青い海の波に足をそーっと入れた。
普通の水では無い。何だかベトベトする。話に聞いていた様に塩とか色々混ざっているのは本当らしい。
カルロッタが燥ぎ、それと同じ様にヴァレリアも燥いでいる最中、シロークは何処か落ち着きながら砂浜に座り込んでいたフォリアと話していた。
「やあ、フォリア。初めまして」
「初めまして。貴方もヴァレリアと同じカルロッタの仲間?」
「そうだよ。研修が終わったら一緒に来るんだってね」
「ええ。そのつもり」
「……フォリアは燥がないのかい? カルロッタは遊んでいるけど」
「諸事情であまり動けないの」
「へー。……あ! 自己紹介がまだだったね! シローク・マリアニーニだ!」
「マリアニーニ……ああ、公爵くらいの。今のノルダの国王の妃が確かそのマリアニーニ家の当主の姉だったはず……貴族様ね。何でこんな所に?」
「貴族よりも騎士として扱われたいけど……。……まあ、元々家業は継ぐ気も無かったし、そう言うのは兄さん達に任せてる。僕は騎士として人生を歩むよ」
フォリアはシロークの碧い瞳を見詰めていた。
「……カルロッタには人誑しの才能があるみたいね」
「確かにそうだね」
シロークは、その碧い瞳で理解していた。あの時カルロッタが言い淀んだ理由を。
彼女の瞳の奥には、奥深く海の底の様に終わりが見えない闇が見える。それに怯えているが、それ以上に妙な親近感を抱いていた。
その親近感の理由は分からなかった。カルロッタを慕っていると言う共通点からなのかも知れない。
「……君は、何だか悲しい瞳をしているね」
「少なくとも今は、カルロッタのお陰でそんな気持ちにはならないからご心配無く」
フォリアは微笑みながらそう答えた。シロークは満面の笑みで返した。
「まあ、何があったのかは聞かないでおくよ。気にはなるけどね」
「特に面白い話は無いの。母親が嫌いなだけ」
シロークはそれ以上のことは聞かなかった。聞くことは出来なかった。
そして、時間は過ぎ夕暮れ時。
「……カルロッタ・サヴァイアント、何故そんなに濡れている。ヴァレリア・ガスパロットも」
ヴァレリアさんと海で燥ぎ過ぎた……。
もう疲れた……。これ以上動きたくない……。
「……まあ、良い。今回の旅路には、冒険者の研修生が全員、つまり騎士も同行する。その教員もな。さあ、船に乗れ。英雄になりたいのならな」
私達はその船に乗った。
十数人で乗るにはあまりにも大きい気がする。しかも船体が重々しい金属に覆われている。
木板が貼られている甲板に出ると、何故か右手の人差指だけで逆さ立ちしている男性がいた。その隣でシロークさんも同じ様に逆さ立ちしながら、体を下げて上げてを繰り返している。
「頑張れ! 出来る!」
「いやもう動けない……!! ほんっとに動けない……!! これするだけで精一杯……! 人差指が攣る……!!」
「じゃあ左手!」
「助けてー! 誰かー! この美人さん悪魔だー! 最初に出会った頃は美人さんだからちょっと邪な感情向けてたけどもう無理だこれ! 怖い! もうこの人が怖い!」
涙目で叫んでいたその男性は、剣士の研修生だろうか。一人だけなのは少しおかしいけど。
「魔法使いは全員研修を続けているのか」
その声が、私のすぐ背後から聞こえて来た。すぐに振り向くと、そこにも男性がいた。
マントを靡かれている眼鏡を掛けているその男性は、両方の手首と足首には黒い金属の輪を付けていた。何だか呪いの魔力を感じる。
そして腰には二本の長剣を携えていた。
それに……何だかニコレッタさんに似ている。気の所為だろうか。いや……それにしては……? うーん?
「剣士とは違い、今年の魔法使いは優秀な様だ。ただ……一人を除いて」
その男性はニコレッタさんに視線を移した。
「どうやって合格したニコレッタ。まだ、諦めていないのか」
「……兄様」
あ、やっぱり兄なんだ。ただ……関係は良好では無さそうだ。
「前にも言ったはずだ。あの村で一番の魔力を持っていた所で、卓越した才能があると言う訳では無いと」
「それでも――」
「祖母のことはもう忘れろ。無意味だ。あの亜人に復讐をするのか? その魔力の才も程々にしか無いニコレッタが? もう苦も無く暮らせるだろう。あのまま暮せば――」
「嫌です!」
ニコレッタさんにしては大きな声が聞こえた。
「……嫌……なんです。……此くらいの我儘、聞いて下さい。兄様」
「……本当に、何故この子を合格にしたのか。見る目は確かにあったはずなのに……」
うん。私はこの人が嫌いだ。
まあ、まあまあ、他人の家庭環境に首を突っ込むのは色々躊躇する。ここは――。
そう思っていた矢先、そのニコレッタさんのお兄さんは何処か悲しげな目をしていた。
あれ? この人……。……まあ、真相は分からない。あまり聞きづらい話でもある。
それにこの人、凄い強い。アルフレッドさんと似た様な感覚を持つ。
誰よりも強い訳じゃ無い。だけど何処か余裕がある。そんな雰囲気。
アルフレッドさんは、ニコレッタさんのお兄さんの横に立ち、説明をした。
「こいつは……そうだな。双子弟子とでも言おうか。ギルドお抱えの剣士の教員の一人である"ヴィットリーオ・ガリエナ"だ。そしてヴァレリア・ガスパロットと同時に教員として就任されたシローク・マリアニーニ。あのマリアニーニのご令嬢ではあるが……まあ、親しく接しても問題は無いだろう。そして今日まで研修を続けた唯一の剣士の――」
「僕はそんなに凄い人間じゃ無いんだー!!」
未だに逆さまになりながら、その男性は叫んだ。
「……"エルナンド・エリザベート・フロレンシオ"。謙遜はしているが、まあ優秀ではあるだろう」
「違う! なんか運良く残ってるだけ! ギャーシヌー!」
「……いや、やはり優秀では無いかも知れない」
アルフレッドさんはため息混じりで、小さく呟いた。
すると、大きな船の大きな帆は開かれた。
「それでは、出発しよう。降りるなら今の内だ」
誰も降りなかった。……いや、エルナンドさんは降りようとして、シロークさんに腹部を殴られて気絶させられたけど……。
そして、ゆっくりと、この大きな船は未だに水平線の向こうが見えない大海へ向かった。
久し振りの冒険らしい大冒険に、私の心は僅かに熱を帯びていた。
一週間で、目的地に着く。それまではこの海の青い景色を目に焼き付けておかないと。
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。
うーん……フォリアの描写は……大丈夫かなぁ……まあ、大丈夫でしょう。うん! だいじょーぶだいじょーぶ!
ああ、そうそう。パウス諸島のパウスはインドネシアで話されるジャワ語で鯨です。
Xは飼っているペンギンがやってます。てきとーにポストしたり宣伝したり予告したりするので、良かったら見に行ってあげて下さい。
いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




