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魔法使いちゃんの予定無き旅  作者: ウラエヴスト=ナルギウ
第二章 ギルド
21/111

日記12 ちょっとした一日

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


ご了承下さい。

「フォリア」


 メレダの幼い声がフォリアの耳に入った。


「……カルロッタと離れたからって――」


 メレダの視界には、不機嫌そうに目を見開き狂気的に笑っているフォリアの姿が写っていた。


「――そこまで不機嫌になるのは辞めて」

「……貴方には分からないでしょうね国王代理様」

「良く分かる。最愛の人ともう五百年も会ってない」


 その言葉に、フォリアは何も言い返せなかった。


「何千年生きて、初めて愛した初恋の人。それが彼。分かる? その人を救えなかった絶望と、後悔を。分かってたまるか。百年も生きていないお前如きに」


 そのメレダの顔は、怒りを見せていた。その怒りは決して、フォリアに向けられた物では無かった。むしろ、自分自身に向けている物だった。


「……まあ……今はどうでも良い。貴方には関係無い。今の貴方は英雄の卵。それを孵化させるのが私の仕事」

「それをするのはルミエールさんって聞いたけど」

「私もやる。仕事はもう終わらせた。緊急の何かが来なければ大丈夫……のはず。杖を抜いて」


 メレダの言葉と同時に、フォリアは杖を構えた。その様子をじっくりと凝視しながら、メレダはため息をついた。


「私達は魔法使い。それを忘れない様に。魔法とは何かを忘れてしまった人が多いから」

「貴方の魔法とは何?」

「未知を探求する手段」

「それを戦闘に使うのは、どうかと思うけど」

「おかしな話」


 メレダは杖を掌で遊ばせながら、まるで授業をしている先生の様に語り始めた


「生物にとって火は未知だった。その未知を使い、私達は繁栄した。だけどその火は生物を傷付けた。未知を探求した結果齎されるのは、希望と、絶望。それが当たり前。人々を救うと思った未知を探求すれば、不特定多数の生物を死滅させる霧を作り出し、不特定多数の生物を死滅させると思った未知を探求すれば、その膨大な力を利用し夜に昼の様な光を生み出し人々を救った。未知の探求の結果戦闘に使えるのなら、それは当たり前の流れ」


 フォリアにとって、その話は受け入れ易い物だった。


 彼女のお母さんは、正しくその未知を探求する魔法使いの一人であった。あくまでフォリアは、その魔法を母親を殺す為だけに使った。


 そして、彼女は死を愛した。彼女にとって悪であった母親さえも、死に逃れることは出来ずに赤い塗料を噴き出した。その出来事に、彼女は美しさを見出した。


「貴方がどんな考えでも、正直どうでも良い。貴方がカルロッタを愛そうとも、貴方が死を愛そうとも、どうでも良い。ただ、魔法が生まれた理由だけは知れ。一応聞いておく。お前にとっての魔法とは何だ」


 メレダの問い掛けに、フォリアは熟考した。まず考えたことも無かったのだ。だからこそ、杖を降ろして考えていた。


 導き出した答えは、とても単純な物だった。


「カルロッタと一緒にいる為の力」

「……そう。ルミエールはカルロッタの育成に集中してる。貴方の育成は私が担当する」


 メレダは無垢金色に輝く短く小さな杖をフォリアに向けた。


 すると、メレダは短く詠唱を呟いた。


「"()()()()()"」


 短縮された魔法の詠唱は、メレダの周辺に小さく、それでいて美しく力強く輝く様々な魔法の球体が浮かんだ。数十、数百、その数はまだまだ増える。


「それじゃあ始めようか」


 その一声と共に、フォリアは杖を小さく振った――。


「――……さて」


 私は、今八人の研修生と見詰めている。その視線には若干の怒りを滲ませて。


 研修生とは言っても、明らかに私より年上の人がちらほらと。まあ、それはどうでも良い。


 今、私の手元にはある八枚の紙がある。夜通しで作り上げたお手性テストだ。一時間前に始め、三十分前に採点を終わらせた。


「……まあ、そうね。一位から発表するわ。ニコレッタ10点満点。ジーヴル10点満点。その次にドミトリー9点。フロリアンも同じく9点。問題は、その他よ」


 アルフレッドさんは相変わらず教室の隅で眠っている。教皇国での戦いで疲弊したのだろう。それにあの悪名轟くマーカラさんが帰るまで相手をしていたらしい。疲弊も当たり前だ。


「残り四人の最高得点が! 3点! 十問中三問以下しか解けて無いって、どれだけ魔法学の勉強をしてこなかったのよ!」


 魔法学。それは簡単に言えば魔法を作り出す魔力の動きを研究する学問だ。


 主に詠唱、魔法陣を勉強する。これを知らなければ自身の魔法を他者に教えることが出来ない。魔法を極めるなら当たり前に学習するべき事柄の一つだ。


「にも! 関わらず! 貴方達は! 基礎も怪しい人ばかり! おうこら冒険者の知識はこんなに落ちてるのか!!」


 ギルド長は今回は金の卵だらけとか言ってたくせに!


 冒険者試験はおよそ一年ずつ行われる。およそ一年と表現したのには理由がある。ギルドに所属出来る定員は事前に決まっており、そこから前衛と魔法使いに別ける為、まあ人間の魔法使いだと大体百人くらいだろう。


 そして、冒険者試験に合格出来るのは……確か平均五名。そこから研修での実力不足を痛感して最終的に一名が研修を終わらせられれば御の字。そんなことをやっている物だから、歴史上定員オーバーになったことは無い。


 そんな中、ギルド長は今回の合格者十名が研修を終わらせると言っていた。


 そんな期待の中……こいつ等は……!!


「おらぁ! 今日の実習は一旦中止だおらぁ! 良いですよねアルフレッドさんおらぁ!!」

「……あ? ……あぁ……何だ……良く分からないが……まあ何でも良いぞ……あー眠……」

「おらぁてめぇらぁ!! まずは魔法学の基本からだおらぁ!! そこの四人は良いが残りの貴方達は先に外に出てておらぁ!!」


 何だか変な口調になってしまっているが、もうどうでも良い。私としてはこの知識量が凡人並みの四人を育成する必要がある。


 好成績を残した四人は外に出ていた。特にやることは無かったが。


「しかし、老耄が俺と同じ点数なのは驚いたな」


 フロリアンがドミトリーに向け馬鹿にする様に笑いながらそう言った。ドミトリーはそれを優しい微笑みで返していた。


「先生からある程度は教わりましたが。しかし一問は間違えていた様ですね。見直しは必要でした」

「師団長の教育方法は優秀な様だ」

「ええ。それは確かですよ」

「……少し、聞きたいことがあるのだが――」


 フロリアンは自らの疑問を解消する為に、ドミトリーに質問を投げ付けた。


「リーグの王が()()()()()()()()()()()()()と呼ばれるのは何故だ?」

「私には分かりかねます。ただ……先生が仰言った言葉の中に答えに近いことは。『彼は星の様だった。夜空に煌々と輝く星々を統べる王。星の輝きの様に、彼はあらゆる人にとって星空だった。そんな彼だからこそ、私は愛してしまった』……と」

「リーグの王が愛したのは親衛隊隊長だけだろう?」

「それはあくまでリーグの王が愛した方ですから。リーグの王を愛した女性なら何人も」

「……もう一つ聞きたいことがある。()()()()()()とは何だ」


 ドミトリーの顔色は一瞬変わった。


「……何処で……それを聞いたのか。まあ、特に隠すことは無いでしょう。国宝十二星座、嘗てリーグの王が十二人に残した国宝です。その物品は、嘗て神々が地上に残した神器と同等、もしくはそれ以上の効力を発揮すると言われています」

「誰が持っている」

「魔法使いらしく、知的好奇心が旺盛ですね。誰が持っているのかは私でさえ知りません。ただ……先生のあの剣は十二星座の一つと言うことは聞かされました。それにメレダ様もルミエール様も恐らく。あくまで噂ですがね。ソーマ様も所有していると言う噂は聞きましたが……どんな物なのかは分かりません」


 フロリアンは未だに納得はしていないが、ため息と同時に好奇心を奥へ締まった。


 ジーヴルとニコレッタはそんな二人を無視しながら、きちんと実習を重ねていた。自分達の魔法をこの短い期間で改良し、より良い物へと昇華させて行く。


 ジーヴルがニコレッタに向けその長い杖を向けると同時に、その左腕を動かすことが出来なくなった。


 その場で左腕は空中で静止しており、そこから動くことは決して無かった。


 その杖の先からどうにか魔法を放ち、青薔薇の蔓が一本ニコレッタに向けて伸びた。しかし、その伸びた蔓さえも動きを止めた。


「うお、すご。範囲も広がって魔法も止められる様になってる。もう拘束魔法と呼ばれる物じゃ無いくらいには」

「ありがとうございます。カルロッタさんの助言通りに改良してみました」

「この場合はカルロッタを褒めれば良いのかどうか……。……少し、助言をするなら杖を向けた先にまだいること。あのまま背後に回れば絶対に攻撃することが出来ないし」

「成程……参考になります」

「それと、これはちょっとアレだけど……止める部分を心臓とか、肺とかにすれば殺すことも可能」

「良くそんな残酷なことが思い付きますね!?」

「眼鏡ちゃんが優し過ぎるだけ」

「そう……なんでしょうか?」

「……それより、魔法解除して。動けない……」

「あぁ……! 忘れてました!」


 ニコレッタの魔法が解除されると、ジーヴルの左腕が動き出した。


「やっぱり自由に動かせるって素敵!」


 左腕をぶんぶんと回しながら、ジーヴルは満面の笑みで言っていた。


 その様子を見ていたフロリアンは、ジーヴルに少しだけの違和感を抱いていた。その違和感に好奇心を抱いたが、それを外に出すことはしなかった。


 今は自分の実力を磨くことに集中したかった。


 カルロッタがやった様に、ソーマがやった様に、空中に魔法陣を刻む行為を練習していた。


 見える魔力の糸を作り出すことには成功している。だが、本来体の中で行う魔力の操作を体外で行うことの難易度は凄まじい物だった。


 それを見兼ねたのか、ドミトリーは話し掛けた。


「何やら奇怪な魔法を使おうとしている様ですが」

「何だ老耄。まさか使えるとは言うなよ」

「いえ、それで魔法を使うことは出来ませんが――」


 ドミトリーは右手の指先を立て、そのから蒼い火を出した。その火は糸の様に細くなり、やがて形を作った。


 それは"蒼焔(シー二イプラーミャ)"を表す魔法陣だった。


「自らの魔法を魔法陣として描くのは知識が必要ですが、貴方にはそれが充分にある様ですね」

「……出来るのか」

「いえ。これはあくまで形を作っただけ。貴方がやろうとしているのは、魔法陣を刻み魔法を放つことでしょう。魔法を発動させる時には、どの様な魔力を使いますか?」


 ドミトリーは意地悪そうに、しかしフロリアンに期待の眼差しを向けながら鼻髭を左手で弄っていた。


「……その人物の中にある純粋な魔力」

「そうです。これは魔法で形作ったに過ぎないので、ここから魔法を放つことは出来ません。しかし、貴方はそうでは無さそうですね。何事も柔軟に考えることが重要ですよ」


 ドミトリーは蒼い炎で作り出した魔法陣を左手で握り、僅かな黒い煙が手から噴き出し消えた。


「勿論その人物だけの魔力の特徴はあるでしょう。より顕著に表されるのは属性ですが。独自で作り上げた魔法と言うのはその人の魔力的な特徴に沿っているからこそ、他の人が使えば魔力消費は相当な物でしょう」

「まず個人の魔法を模倣する人物の方が少ないだろう。カルロッタが規格外なだけだ」

「……一応ではありますが、模倣出来る様にすることは可能です。それが受け継がれて来た魔導書に記された物です。ただ……個人の感覚で作り上げ使用している魔法を記すのは困難ですので、結局魔導書で受け継がれる魔法は()()()()()()指南(・・)()に記された物から大きく掛け離れる物は少ないです」


 その話を聞いていたニコレッタが小声ながら、会話に入った。


「基本的魔法術指南書に……掛け離れている物を魔導書として記したとしても、他人にとってはあまりに使い難いので結局後世まで長く残ることは無いでしょう」


 ジーヴルもその会話に割って入った。


「と言うか基本的魔法術指南書に書かれてる属性魔法の最上級魔法を扱える人物も歴史上少ないけど、結局残ってる。使えれば相当な戦力になるんでしょ」

「当たり前ですよ」


 ニコレッタはそう答えた。


「消費魔力も必要な魔力操作技術も段違いですが、その分歴史上の実績は相当な物ですから」

「リーグの王も良く使ってたし。まあそれよりも良く分からない魔法を使っている記録が多いけど」

「首都を滅ぼした火、森を海にした水、海を埋めた土、毒に侵された地を救った空気、これが一番有名でしょうか」

「魔導書を残せないことは理解出来る。けど少しはどんな魔法かも残して欲しいんだけど……リーグのお偉いさんはあんまり王の話はしないし……」

「辛い過去なのでしょうか」

「まあ、良く女好きって言われてるし、惚れさせた人が多かったんでしょ」


 その間違いを訂正する様に、ドミトリーはまた口を開いた。


「いえいえ、確かに多くの女性がリーグの王に好意を抱いているのは正しいですが、女好きと言われると少し違います。リーグの王はその大勢の中で唯一愛したのがルミエール様です。他の女性にもある程度の親愛はあったでしょうが」


 ドミトリーは多種族国家リーグ出身である。そして、魔法の指導としてリーグの王と近しい場所にいたメグムに教わっているからこそ、そのリーグの王の像がはっきりとしている。


 すると、四人はヴァレリアの大きな怒号が聞こえた。


「……色々大変そうですね……」


 ニコレッタはヴァレリアの怒号に少しだけ怯えながらそう呟いた――。


 ――ギルド第三育成地域にて。


 そこでは、魔法使いでは無い冒険者試験に合格した剣士等の研修の為に用意された場所である。


 その中にある険しい山々が連なる場所で、軽装で、しかしその背中にきちんを剣を背負っている五人が岩の崖をその身一つで攀じ登っていた。


「おーい! 頑張れー!」


 その崖の上から、シロークが呼び掛けていた。


「無茶だー! 死ぬー!」


 この崖をその身一つで登っている一人である青年が、上にいるシロークに向けてそう叫んでいた。


「頑張れー! 僕には出来たんだからー!」

「出来る訳無いでしょうが!! もう手に力が入らなーい!!」

「落ちたら死ぬよー! 頑張れー!」

「嫌だー! 死にたくなーい!」

「これにも意味はあるんだ! こうやって鍛えることで、剣を握る握力が強まって滅多なことが無い限り手から剣が落ちることは無い!」

「剣を握る前に死ぬー!」


 その光景を眺めながら、シロークは呑気に剣の手入れをしているだけだった。


「クライブの世話もしないと。それに……何処かでカルロッタに会いたいな。ヴァレリアだけ会えてるみたいだし」


 すると、シロークは突然後ろを振り向いた。そこには、風にマントを靡かれている眼鏡を掛けている男性がいた。


 その両方の手首と足首には黒い金属の輪を付けていた。


 腰には二本の長剣を携えており、シロークに話し掛けた。


「お嬢様」

「貴族として扱うのは辞めて欲しいって言ったはずだよ。僕は騎士なんだ」

「偶然とは言え、貴方はまだ我が主である主人のお嬢なのです。そして私は未だに貴方をお嬢様としか見ていません」

「むぅ……」


 シロークはその頬に空気を溜めて膨らませた。


「……その様な顔をしたとしても、考えは変わりません。それよりも……ソーマ様からの伝言です。『前の強襲事件に現れたジークムントと名乗る人物の素性を、君達の仲間であるカルロッタ・サヴァイアントが知っている可能性がある。その為、それに近しい人物であり親しい仲の君達に頼む。ただし、カルロッタにはあくまでこの事情を隠す様に。これと同じ伝言をヴァレリア・ガスパロットにも伝える。例に――』……いや、この後は単なるお巫山戯でしょう。あの方は良く分からないお巫山戯をする……」


 その男性は気苦労で疲れているのか眼鏡を外し目を手で抑えていた。


「一応伝えてくれるかい?」

「……分かりました。……『例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。尚、このメッセージは五秒後に自動的に消滅する』……です」

「ほ、本当に単なるお巫山戯だ……!!」


 シロークは絶句していた。


「カルロッタに聞くだけなのに捕まるって!? カルロッタに聞くだけなのに殺されるって!? まずまず当局って?! 自動消滅は!?」

「分かりません。あの人は時偶に訳の分からないことを口走るのです」

「……色々、気になることは多いけど。まあ、分かった。頑張ってみるよ」

「カルロッタ・サヴァイアントの話は主様から良く聞いています」

「会ってみればより、お父さんの言ったことが納得出来るはずさ。それに彼女は、僕の命を二度助けてくれた恩人であり、信頼出来る仲間だからね」


 シロークはにっこりと笑っていた――。


 ――私は、天井を見ていた。


 何でだっけ。ああ、そうだ。思い出した。確か……ルミエールさんに鍛えられて……えーと、それで……どうなったんだっけ……。


「カルロッタ? 生きてる?」


 ああ……そうだった。確か、ルミエールさんにそれはそれはもう、ボロ負けしたんだった……。


 ……魔力はもう尽きた。頭が痛い。それにもう体も動かすのが怠い。私は、ルミエールさんに一撃も入れることが出来なかった。


 それを感じていると、喉にも違和感を感じた。


 いや、正確には喉では無い。その喉を通る空気、そして空気を溜める肺に違和感を感じる。


 何時も通りの呼吸が難しい。これは……あれだ。魔力の過剰使用の所為だ……。


 その呼吸は、息切れ程度では無かった。もう肺の中に一切の空気が送れない。少しすれば私の頭の中におかしな感覚がぼーっと広がり、やがて視界が回り始めた。


 すると、ルミエールさんが倒れている私の顔を覗き込み、僅かに開けている口の中に何かを入れた。


 その何かが分からない。視界が揺れていて分からない。


「噛んで」


 口があまり動かない。


 私の口の中に置かれた何かを取り出し、それをルミエールさんは噛み締めた。それを口から出して、また私の口の中に入れた。


「飲み込んで。汚いけど」


 私は何とか舌の上に乗った何かを飲み込んだ。


 しばらく、私の視界はぐるぐると回っているだけだった。だが、やがてそれは静まり始めた。


 呼吸も、正しく出来る様になった。


「気分はどう? 少し無理をさせ過ぎたね」

「……魔力が殆ど無くなりました……」

「だろうね。()()()()()()?」

「……何と無く……」

「カルロッタは典型的な理論派だからね。追い込んで追い込んで、ようやく掴めたでしょ? けど死にかけるまでに追い込んだのはごめんね」

「……いえ……お師匠様はここまで追い込んで来ることはしなかったので……新鮮な体験ですから……頭痛い……さっき食べさせたのは何ですか……?」

「あれ? 食べたこと無い? あれを食べると魔力の酷使の疲労が少しだけ癒やされるんだよ。ああ、そっか。カルロッタの魔力だと疲労することが少なかったのかな? と言うかまずそこまで魔力を酷使することも無いしね」


 ルミエールさんはその無尽蔵にある知識を披露していた。


「本当はあの実はあんまり食べさせない方が良いんだけど、さっきのカルロッタは危険な状態だったからね。あの実は疲労をあくまで先送りにするだけ。明日も相当な頭痛に悩まされるよ」

「……いやです……」

「それに関しては、本当にごめんなさい。貴方の限界を勘違いしてたから。明日は魔法の使用を制限した方が良いよ」

「……分かりました……」


 何とか体を起き上がらせると、まだ頭がくらくらする。何とか立ち上がれはしたが、誰かに触れられれば簡単に倒れてしまいそうだ。


 ルミエールさんに支えて貰いながら、私は毛布の上に寝かされた。


 この人の笑顔はとても優しい物だ。お師匠様とはまた違う優しい笑顔。


 お師匠様はもっとこう……なんて言うんだろう……。優しくて、だけどこう……うーん。言葉で表せない何かがある。この人は、優しい。深い愛を、その瞳から感じる。


 だけど……寂しそうだ。とても深い喪失感を感じる。その喪失感を優しさで誤魔化している様な……何と言うか……。


 ……この喪失感は、お師匠様からも感じたことがある。


「今は休んでて。寝てても良いよ」


 ルミエールさんの優しい声に、私は自然と瞼を降ろしていた。その瞼の上に、温かい感覚が乗った。恐らくルミエールさんが私の顔の上に手を置いているのだろう。お師匠様も良くやってくれた。


 こうして貰うと、何だか落ち着く。眠くなる。


 ……とても、温かい……それに……お母さんがいるならこんな人が良い……。


「お休み()()()()。良い夢を」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


ここからは個人的な話になるので、「こんな駄作を書く奴の話なんて聞きたくねぇよケッ!」と言う人は無視して下さい。


今回の話は何だかゆったりとしてましたね。……そんなにゆったりしてましたかね?


まああれです。息抜きの話と思って下さい。カルロッタに関係している人物を誰かが隠し撮りしたみたいな話です。


……次から他の人達をちゃんと活躍させます。


いいねや評価をお願いします……自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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