風の精の聖なるお仕事 ~自分の役目を正しく果たしたからか、女子のささやかなご褒美で報われる。風の強い日にハ-フパンツが見られて嬉しい人限定~
住宅街で起こる小さな出来事。
あなたは風の精だ。美少女姿に見えるが、肌も長い髪も、青みを帯びている。
曇り空の淀んだ雰囲気に合わせて、あなたは普段よりも強い風を起こさないといけない。
あなたがいる路地では、二人の女子学生がこちらに向かって歩いている。横に並んでいる女子達は、紺色の制服姿だった。
地上一メートルほどの宙に浮かぶあなたの姿は、人間には見えない。あなたは正面に向かって、口から強めの風を流す。
あなたが本気を出せば、一点に強風を集中させて、女子達の長めのスカートを舞い上がらせることだって可能だろう。
しかし、あなたは『強風の精』ではなく、『風の精』だ。あくまでも適切な強さを順守して風を流すことが、与えられた仕事である。
あなたの生み出す風で、女子達の紺色スカートは揺れる。強風でなくても、人間にとってはそこそこ気になる強めの風だった。
「今日って、風、強いよね」
あなたから見て左側の少女が言った。黒髪を後ろで一つに束ねている。
「でも大丈夫だよ、下にハーパン穿いてるから。ほら」
あなたから見て右側の、セミロングの黒髪の少女が、歩きながら長めのスカートをたくし上げた。
彼女は、白い靴下と膝の上にある、紺色のハーフパンツを丸見えにさせる。スカート内側に入れている、白いブラウスの裾さえも見えていた。
「こんなところで見せてないでよ、恥ずかしい」
「大丈夫だって言ったでしょう? 私達以外に誰もいないし、問題ないよ」
大胆な格好のまま少し歩いた後に、たくし上げ少女はスカートから両手を放す。スカートの裾はそっと落ちた。
あなたの存在が気づかれることなく、二人はあなたのいる地点を抜けて行った。
あなたは風を吹くが、正面にはもう誰もいない。
「ちょっと、いーい?」
「どうしたの?」
あなたは話していた二人のほうを振り向いた。
「ハーパン穿いてるか確認してあげる!」
「きゃあっ!」
たくし上げをしていた女子が、髪を束ねた女子のスカートを横からめくり上げたのだった。
宙を舞う長めのスカート。紺色のハーフパンツの一部が、あなたの目にも一瞬見えた。
「やめてよ、もうっ!」
スカートを押さえて抗議する、髪を束ねた女子。
隣を向いて笑顔を見せる、セミロングの髪の女子。
風のせいではなく、女子の力によって、ハーフパンツは二度も晒された。
二人のやり取りを微笑ましく見送った後、風の精のあなたは再び正面へと適度に強い風を吹かせた。
(了)
最後までお読み下さり、ありがとうございます。他にもハーパン作品はありますので、まだ読んでいなければ、そちらもどうぞ。