第7話 また俺なんかやっちゃいました?
「実は私はね、エルフなのよ」
ステフの言葉に俺は驚愕した。
いや、一瞬驚愕はしたけどそれはすぐにおかしいと気づいた。
「いやいやステフ、俺はエルフを見たことはないけど知ってるぜ。エルフの耳は一目見ればわかるほどに長く尖ってるんだろ?」
エルフはどこかの森に里を作ってそこで暮らしていると聞いたことがある。
人間と交流を持ったり人間と共に暮らしているエルフはごく一部だとか。
大きな特徴としては人間よりも長寿、少なくとも倍以上は余裕で生きるということと長く尖った耳だそうだ。
でもステフの耳にはその特徴が無い。
「そうなのよね。長い間森の外で、というか幼い頃から人間の街で暮らしていたから発達しなかったの。でもほら、よく見てみると少し耳が尖っているのがわかるわよ」
ステフは耳が見えやすいように髪をかきあげ、俺の方へ顔を近づけた。
彼女の鼻腔をくすぐるような甘い香りに思わずくらっとし、俺は彼女の扇情的なうなじから目が離せなくなり……って違う違う!
急に顔を近づけられてつい動揺してしまった。
気を確かに持ってもう一度ステフの耳を見ると、確かに少し尖っているようだがよく見ないとわからない程度であった。
「本当だ、ちょいと尖ってるな」
「でしょ? 私はエルフなの。数百年は優に生きるわ。だから私が60歳を超えているからといってもまだまだ若いのよ? だから私が美少女だと自称してても何ら問題ないのよ、わかった?」
あ、今こいつ自称と自ら白状したな。
ニックさんの方を見ると苦笑いをしている。
「ニックさん、ステフは昔から自分のことを超絶天才美少女魔法使い(笑)とか言ってたんですか?」
「う、うむ、そうだったの。確かにステファニー殿は魔法は言わずもがな他の分野に関しても才能を発揮するまさしく天才であったし容姿も今と変わらず昔から特段優れておった、おったのだがの……」
「性格が残念ってか?」
「ほっほっほ、言い得て妙じゃのぉ!」
俺はニックさんと意気投合し2人で大きな声で笑った。
偉い人は怖かったり固い奴ってイメージがあったがニックさんはわかる人じゃないか。
さすがは元冒険者、陽気な人だ。
俺が腹を抱えて笑っていると急にニックさんが青い顔をして俯いていた。
「あれ、ニックさんどうかされましたか? 気分が悪いのでしたら誰か人を呼びましょうか?」
俺は笑い疲れて乱れてしまった息を整えながらニックさんに問うたが依然青い顔をして俯いたまま何の反応も無かった。
「ニックさん、ニックさん? 本当に大丈夫ですか!? おい、ステフ! ニックさんの様子がおか……し……いぞ…………?」
助けを求めようとステフのほうを見た俺はようやくニックさんがなぜ青い顔をしていたのか理解した。
あぁ、これは完全に怒っている。さっきの比じゃない。
口角は上がっていても目が笑っていない、額の青筋がとてつもなく浮かび上がっている気がする。
これはあれだ。後ほんのわずかでも刺激してしまうと大噴火を起こしてしまう火山だ。
冷静にいこう、そう冷静にだ。焦ってはいけない。
次の俺の発言で全てが決まってしまう。
まずは敬語、これは絶対だ。
そして素直に聞くんだ、何をそんなに怒っているのか、どうかその怒りを収めてくれないかと。
大丈夫、俺はやればできる。
「あ、あれれ? また俺なんかやっちゃいました?」
言葉を発した瞬間、あぁ失敗したなと思った。
その後火山は轟音を上げて大爆発を起こし、俺とニックさんは共にそれを鎮めようとめちゃくちゃ頭を下げた。
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