第5話 Sランク冒険者
俺はステフを追って冒険者ギルドの受付まで来たのだが……。
「こ、困ります! そんなに一遍に持って来られても受け付けることはできません!」
ほれみろ、受付のお姉さんも困ってるじゃないか。
弟子の俺に見栄を張りたいのはわかるけど他人を困らせるのはよろしくないな。
よし、ここは俺が師匠の代わりに謝ってこの場を収めよう。
「あ、すみません。今すぐ戻して来ま――」
「問題ないわ、ほら」
ステフは受付のお姉さんに黒色のギルドカードを提示した。
はて? 黒色なんてあったか?
F、Eランクは銅色。D、Cランクは銀色。B、Aランクは金色のギルドカードだったと記憶していたんだけど暫く来ないうちに規格が変わったのか?
「え、えええええSランクッ!? 申し訳ございません! すぐにギルドマスターを呼んで参りますので少しお待ちください!!」
えす? Sランク? 冗談だろ?
受付のお姉さんの声が響き渡ったせいでギルド中がざわつき、冒険者が一斉にこちらへ信じられないといった視線を向けている。
チラリとステフの方へ目をやると得意げに鼻を鳴らしてこれでもかと言わんばかりのドヤ顔を俺に披露していた。
成り行きで弟子入りした師匠が思っていたよりもとんでもなかった件について。
これは俺も態度を改めるべきなのか?
「ふへへへ。ス、ステフ師匠! すごいお人だったのですね」
「ふふん、だから私は超絶天才美少女魔法使いって言ったでしょ? それとその気持ち悪い猫撫で声と口調、手を揉む仕草は今すぐやめてちょうだい」
うっ……俺の強い者には徹底的に媚びていくスタイルを気持ち悪いと一蹴されてしまった。
「バカタレがッッ!! 大声で冒険者のランクを叫ぶ奴があるかッ!! こっちの部屋まで丸聞こえじゃったわい!!」
奥の部屋から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
それから少しして奥から髭を蓄えた初老の男が出てきた。
多分この人がギルドマスターでさっきの声の主だろう。
「私このキーストリア冒険者ギルドのギルドマスターを任されておりますニック・マクレイと申します。よろしければ奥でお茶でも飲んで行かれませんか?」
おぉ! 色んな人生経験を積んで権力を持ってそうなギルドマスターがこんな年端もいかない女の子に対してとんでもなく腰が低いぞ。
「そうね。手短に頼むわ」
ステフもこのギルドマスターの態度をさも当然のように受け入れている。
ステフの大物感がすごいな、いや実際に大物なんだろうけどさ。
俺は目の前で起こっていることに興奮しながらもステフと一緒に奥の部屋へと案内された。
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