仲間
「それでそんな怪我をしてきたというわけか」
雄一はまたしても生徒会室へ呼び出されていた。
今度は放送での呼び出しだったが。
「あの、沙紀さん。説教なら昨日散々受けたんで勘弁して貰えませんかね」
「ほう、君にそう言うことをしてくれる人が居たとは。少し安心したよ」
前回とは異なり相手は生徒会長の席に座った状態だ、何故か隣に生徒会の先輩も控えている。
彼女は確か、真鍋と言う名前の三年生出会ったはずだ。
「いやなに、今回は説教をするために君を呼び出したわけではないんだ」
「それじゃあ?」
「ああ、私の覚悟というか。決意を見て貰おうと思ってな」
そう言って掌大のカードを取り出した、真鍋先輩も同様のカードを見せてくる。
それは見たことのある、雄一も持っている物だった。
「ダンジョン免許?」
「そうだ、我々も先日ダンジョン講習を受けてきた。これで君と同じダンジョンハンターというわけだ」
そう宣言する沙紀に反論するように口を開いた。
「俺はダンジョンに遊びに行ってるわけじゃないんです。この怪我だってほんとにすぬかと思って出来た傷なんですよ」
「君には金持ちの道楽に見えるかもしれないが私は本気だよ。先週、偉そうなことを言ってしまったが君はダンジョンに潜るのを止めないというじゃないか」
「そりゃあ、やめるつもりはありませんけど。だからって沙紀さんがハンターになる意味が分かりませんよ」
「まずは君と同じ立場になってみよう、と言うことだ。・・・・・・これだと、上から目線に聞こえてしまうかもしれないが誓って君を見下しているわけではないことも付け加えておく」
「つまり、俺をダンジョンに行かせない為に自分がダンジョンに行くんですか? なんだか矛盾してません?」
「そうかもしれないな。だが、君のことをもっと知らねばならないと私は感じた。だからその為に必要なことをするだけだ」
「なんだって生徒会長がそこまでするんですか」
そう聞くと沙紀はふ、と微笑んだ。
「言っただろう、私は全校生徒の姉であるつもりだと。弟を心配するのは当然のことだろう?」
「・・・・・・俺は姉なんて持った覚えありませんよ」
思わず顔を手で覆ってため息をつく。
沙紀は微笑んでいるが、彼女が自分で決めた事を覆そうとしない性格だと言うことはなんとなく予想が出来た。
「まさか、真鍋先輩もダンジョンに潜るつもりなんですか?」
「沙紀ちゃんだけじゃ心配だもの、沙紀ちゃん熱くなりやすいから見張り役が必要かなーって」
予想以上のふわっとした理由に、思わず頭を抱える。
「いや、みゆきに関しては私もついてくるなと言ったんだがな」
バツが悪そうに顔を背ける沙紀、ミイラ取りがミイラになってないかと思う雄一だった。
「とにかく、我々もダンジョンハンターとなりアタックする権利が得られたと言うわけだ。やめろというのならばまずは君がダンジョンに行くのをやめたまえ」
「んな無茶苦茶な・・・・・・」
「それと、君がダンジョンに潜る時は可能な限り我々も同行させてほしい」
「なんでですか」
げっそりと疲れ果てた顔で聞き返す。
下手をするとダンジョンで意識を張り詰めさせているときよりも疲れたかもしれない。
「うん、私もダンジョンについて勉強をしてみたのだが。どうやらダンジョンハンターというのは通常、パーティと呼ばれるチームを作って挑戦するらしいじゃないか。ならば君を一人で行かせるよりは十分健全であろう、と言う判断だ」
「はあ、確かにそうかもしれませんけど」
「もっとも、我々も予定が入る可能性があるから毎回ついて行くわけには行かないがな」
ちょうど、ダンジョンで強敵と出会いこれからの探索に不安を感じていた時期でもある。
沙紀と真鍋の両名が『使える』のであればそれは願ってもない戦力になるだろう。
「でも、戦えないのに無理してついてこられても困ります」
「もちろん、その時は潔く諦めて君を説得する側に戻るさ」
「説得そのものは諦めてくれないんですね・・・・・・」
何故か胸を張ってそう言う先輩に雄一は再びため息をついた。
「俺の方からも条件を出させて貰います、それでもいいですか?」
頷く二人をみて、雄一はいくつか条件を提示した。
「お兄ちゃんおかえ――、り?」
「ただいま、舞香」
舞香は兄が帰ってくる気配で振り向き、凍り付いた。
「やあ、お邪魔するよ」
「お邪魔しまーす」
兄が 女を 連れてきた。
しかも美少女だ、兄と同じ高校の制服を着ていると言うことは学校での知り合いだろうか。
突然の状況に困惑しながらもお茶を人数分用意しちゃぶ台へサーブする。
「嵯城君、この子は妹さんかな?」
「同じ施設で育った妹分です、なにかと世話を焼いてくれてます」
「ほほう」
にやりと笑うカッコイイ系、思わず兄の脇腹を肘で突いて聞き出す。
「お兄ちゃん? この人たちは?」
「ああ、学校の先輩で。えー、なんというか一緒にダンジョンに行くことになった人たちだ」
よろしく~、とゆるふわ系の方が手を振ってきたので会釈を返しておく。
「どういうこと! 状況が全然わかんないんだけど!?」
「はっはっは、そう揺するな舞香よ、お茶が零れてあっついあっつい」
「それについては、私から説明しようか」
上品にお茶を飲んでいたカッコイイ系、三代先輩がそう口火を切った。
ダンジョン否定派であること、故に兄がダンジョンに潜るのが心配だと言うこと。
そして心配するならいっそ、一緒に潜ってしまおうと考えたことを聞かされる。
「兄を宜しくおねがいします、三代先輩」
「沙紀で構わないよ、舞香」
そして両者はがっちりと握手をした。
わーいと拍手をする真鍋先輩と、何処かやさぐれた様な兄が対照的だった。
「本当はあたしがついて行きたかったんですけど、ダンジョンに潜るのは16歳からじゃないと無理だって聞いて心配してたんです」
「うんうん、嵯城君もこんな妹を持てて幸せ者め」
はっはっはと大物の様に笑う沙紀。
こうしてダンジョンノートに新たに2人の名前が刻まれるのであった。
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