ダンジョンアタック2!
「それじゃあ、行ってくる」
雄一は荷物を背負い、舞香にそう伝える。
今日は二度目のダンジョンアタックの日であった。
「あ、ちょっと待って!」
「うん?」
何をするのかと思えば、舞香は石の様なものをとりだしてこちらに向かってカチカチと二回打ち鳴らしてきた。
「切り火っていう、昔の人がやってたおまじないみたい。戦に行く人に厄がつきませんようにっていう」
「戦って訳じゃないが、ありがとうな」
と言ってダンジョンへと自転車を走らせる。
ダンジョン館にある着替えスペースで装備を装着しチェックを行う。
前回と比べ、雄一は左腕全体を覆うようなプロテクターを追加していた。
蝙蝠に襲われた部分をカバーすると同時に、盾としても使えるようにするためである。
これもまた「ダンジョンノート」に記される出費になってしまったが、守りを固めることに関して舞香は文句を言わなかった。
「よし、行くか」
受付のお姉さんに手を振られながら雄一はダンジョンへと戻ってきた。
またしてもあの不思議な感覚、背筋がゾワゾわとする感覚と誰かに見られているような視線を感じる。
これには慣れそうにもないな、そう思いながら本道に沿って深淵を目指した。
目下の目標は2つ、魔石を回収する数を増やすことそして魔石の買い取り単価の上昇である。
その2つを手っ取り早く満たすため、雄一はダンジョンの第二階層へと挑むことにした。
ダンジョン第二階層、そこでは上層とは異なり武器の扱い方を心得たモンスターが登場するようになる。
と言っても、棍棒を振り回すだけから狙って振る様になる程度の誤差だ。
本来ならこの一層と二層の境目にガーディアンと呼ばれる固体も居るそうなのだが、既に倒されていたのか見当たらない。
近所のダンジョンで出現するモンスターの情報を仕入れ、自分の命を天秤に掛けたチキンレースを行うことにした。
そして副道を歩くこと数分、パチと例の感覚に襲われゴブリンを見つける。
『GI?』
こっそりと背後から近づき、振り向いた瞬間その首に鉈を振り下ろす。
速やかにダンジョンへと吸収された小鬼のドロップ品を拾い集めるるが、これでは危険度が分からないことに気が付く。
やはり正面から戦ってみるべきか、しかしそれもなんだか怖い気がする。
とりあえず、不意打ちが出来る間はそうしようと心の中で決めて行動に移す。
『GA!GYAGAGA!!』
パチ、とモンスター発見の感覚と同時にゴブリンの鳴き声がする。
慌てて声のした方を確認すると、ゴブリンが怒りに満ちた顔でこちらを睨んでいた。
「見られてたのか」
どうやらゴブリンというのは仲間意識があるようで、目の前で仲間が殺されると怒り狂って凶暴になるらしい。
上層で複数体のゴブリンを相手にするのを避けていた理由がこれだが、今はちょうどいい練習相手になるだろう。
棍棒を引きずる様にして接近してくるゴブリン、対してこちらは鉈を引き絞るように後ろに構えた。
顎にめがけて振り上げてくる棍棒を左腕の鎧ではじき鉈を突き出す。
ゴブリンの肋骨に阻まれた刃先がガチリ、と音を鳴らすが肉を切っただけではこいつらは止まらない。
切り返すように振り下ろされた一撃を回避してバックステップで距離をとる、そのまま距離が開きお互いの間合いが振り出しに戻った。
思ったよりもゴブリンが手強い、だがそれ以上に自分が動けていると言う感覚も伝わってくる。
ここに来て、内なる闘争本能でも目覚めたというのだろうか。
(今考えることじゃないな)
そう思い直し、再びゴブリンへ意識を集中させる。
もう一度突進を繰り返してくるゴブリン、芸がないのか先ほどと同じ攻撃でしかもよたよたと足取りは頼りない。
今度はこちらも前に出て向かい打つ、一歩二歩と勢いを付けてから鉈を振るうと人間で言うこめかみの部分に鉈がヒットする。
ザックリと頭部を切られたゴブリンは、しかし消える様子はなくピクピクと地面で痙攣を繰り返していた。
予備の武器である果物ナイフをとりだして、ゴブリンの心臓部に深々と突き刺す。
グチャリ、と言う嫌な手応えとともにゴブリンの身体がビクンと震えるとスッとダンジョンの床に吸い込まれていった。
戦闘終了だ、念のために周囲を確認するが増援の影はない。
「思ったより動ける、なんだろうなこの感覚は」
それでも安全は第一だ、極力不意を突けるように行動しつつ小鬼や第一階層より出現率の低い蝙蝠を討伐していく。
ふと、この調子なら更に奥まで行くことが出来るのではないかと言う考えが頭をよぎる。
「いや、まだ早い。まだ早い。焦るなよ俺」
三階層からはモンスターの密度が跳ね上がると市役所のホームページには載っていた、ほぼすべてのモンスターが群れを成して襲いかかってくると言う。
複数を相手に出来る手段がない現状では手を出すべきではない。
その後、本道で1度昼休憩を取り再び副道へ引き返す。
ゴブリンの死体を積み重ね魔石を回収していく、確かに第一階層よりも数が多くて稼ぐにはちょうどいい場所だ。
リュックの中にジャラジャラと魔石を溜めて地上へ帰還することにした。
「はい、こちらが今回の買い取り金額よ。頑張ったわね」
提示された金額は初日の倍ほどもあるものだった、思わず目を剥いて驚いてしまった。
「今日、ダンジョンの狩り場を変えたでしょう? 前回と比べて、質が少しだけ上がって数が多くなっていたわ。第二階層辺りかしら」
「はい、そうです」
「二回目で階層を変えるなんてチャレンジャーね。でも第三階層には行っちゃダメよ? あそこはレベルが違うから」
まるで見てきたかのように言う受付の迫力に押されて頷く、元々行くつもりもない場所だ。
「それと、稼ぐようになるならダンジョン口座の開設をオススメするわ。ダンジョン免許と紐付けすればクレジットカードみたいに使えるから便利よ」
すぐに出来るからね、と言われてお願いすることにした。
5分ほどで設定が終わったらしく声を掛けられる。
「それじゃあまた来てね、ここのダンジョンは人気がないから常連さんになってくれると嬉しいわ」
そう言う受付に挨拶をしてダンジョン館を後にする、家で待って居るであろう舞香にいい報告が出来そうだとほくほく顔で帰る雄一だった
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