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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
4/14

ダンジョン戦闘

 雄一がダンジョン内を歩いているとパチ、とまたも眉間でなにかがはじける感覚がある。

 もしや、と思い周囲を警戒してみてみると案の定天井で休んでいる蝙蝠を見つけることが出来た。

(この不思議な感覚は、敵が近くにいるときに発生するものなのか)

 理屈は分からないがありがたい、そもそもダンジョンが謎の塊なのだから細かいことを気にしてもしょうが無い。

 ただ、この幸運を逃す訳にはいかないと。そう思った。

 足下に落ちている石を拾って投げる、蝙蝠は迷惑そうに回避するとそのまま羽を羽ばたかせこちらに向かって飛んで来る。

「せい!」

 気迫を込めて鉈を振るうが、ヒラヒラと蝶のように飛ぶ相手は余裕と言った様子で回避されてしまう。

 今度は突撃をしてくる蝙蝠に腕を盾にしてガードするが、蝙蝠の足についている鋭い爪がジャージごと肌を浅く切り付ける。

「っ!? おりゃあ!!」

『GYA!?』

 腕を盾にしながら鉈を突き出すと確かな手応えが返ってくる。

 動物の肉を裂く嫌な感覚だ。

 死に物狂いで鉈を振り回す、そのうちいくつかが蝙蝠に当り対象は落下するとすぐに粒子となって地面に吸い込まれた。

 勝利だ、だが手傷も負った。

「いたた。く、手当を・・・・・・」

 リュックから消毒液とガーゼを取り出すと適当に傷口に振りかけて傷を覆う。

 戦闘が終了し緊張がほぐれたせいか、今更ながらにズキズキとした痛みが襲ってきた。

 初めての手傷、と言うものがこれほどまでに心を締め付けるものなのかといっそ冷静になった頭で考える。

 このままではすぐに死ぬのではないか、次にダンジョンに吸収されるのは自分なのではないか。

 ・・・・・・顔の半ばまで地面に埋まった自分の姿を想像してしまい、ゾッと足下が抜け落ちてしまうような感覚に陥る。

「しっかりしろ、しっかりしろ俺! ハンターになったんだろ、ならお前は狩られる側じゃない」

 パシン、と自身の顔をはさむように叩いて気合いを入れ直す。

 拾い上げた鉈を鞘に戻し戦利品を拾い上げ、さらに奥へ進む。

 自分の命を担保にすることは百も承知でここに来ているのだ、今更恐れるなんてことあってはならない。


 しばらくは静かな空間が続いたが、唐突にあの何かが弾ける感覚が訪れる。

 ダンジョンの壁に背を付けて、曲がり角をのぞき込む。

 居た、人影だ。

 正確には小学校の高学年ほどの背丈をした人型の生物の影がある。

 小鬼(ゴブリン)、講習で見せられたごく一般的なモンスターとして蝙蝠と共に紹介されていた存在だ。

 小柄で非力、比較的倒しやすい相手だとされている。

「よし」

 気合いを入れて一呼吸置いてから、路地を飛び出して小鬼に吶喊する。

『GI!? GUAAA!!』

 こちらの姿に気が付いたゴブリンが、手に持っていた棍棒を振り上げ威嚇してきた。

 その隙に1歩2歩と間合いを詰める。

 ゴブリンの振りかぶった棍棒を躱して鉈を振るう、鈍い刃は小鬼の顔に当たり無惨に切り付けた。

 ・・・・・・ダンジョンに生息するモンスターが血を流さなくてよかったと心から思う。

 出なければ今頃はモンスターたちの返り血でとてもじゃないがまともな格好では居られなかっただろう。

『GIGA。GIGIIIIIII・・・・・・』

「まだ生きてるのか」

 地面に倒れ伏し、苦痛にもがいている小鬼のそばに立ちその首筋へ鉈を振り下ろした。

 ゴブリンの身体がダンジョンに飲み込まれた後、一息を吐いて壁に寄りかかる。

 これまでの蝙蝠とは異なる、明確に人の形をした生物を殺したというのに予想していたような精神的ダメージは襲ってこなかった。

(やはり血が出ないせいだろうか)

 そんな事を考えつつ戦利品を確認する。

 ゴブリンからはビー玉サイズの魔石が獲得できた、残念ながらモンスター素材はドロップしなかったようだ。

 これが、もっと手強いモンスターになれば魔石も大きくなっていく。

 何故か、魔石の大きさとモンスターの強さは比例しているらしくダンジョン7不思議

 に数えられるんだとかなんとか。

 腕時計を確認すると14時を少し回ったとこだ、もう少し探索を続けられるだろう。

 その後、蝙蝠を三匹・小鬼を二匹見つけ狩ることが出来た。

 なるほど、近隣のダンジョンの中でも初心者向けと言われるわけだ。


「お帰りなさい、あら怪我してるの?」

「ええまあ、でもかすり傷です」

 ダンジョン館へ戻った雄一はその足で換金所に足を運んだ。

 受付に傷を見られたことを何故か後ろめたく感じながら、戦利品を提出する。

 蝙蝠の魔石5個、小鬼の魔石が3個。モンスター素材は蝙蝠の牙が3本にゴブリンの角が1本である。

「あら? 初めてにしては良い戦果じゃない。今鑑定するから待ってってね」

「はい」

 そう言われて待つこと十数分、呼び出されて行くと提示された金額は初期投資の半分にも満たない金額だった。

 命を賭けて稼いだにしては多いのか少ないのか、分からない金額だ。

「残念かもしれないけれど、これが適正な報酬よ。いくら命を賭けても儲けが全く出ないことがあるのがハンターなの」

 そう言った受付はそれでも優しく笑って続けた。

「ここのダンジョンでも深くに潜れば稼ぎはよくなるし、他のダンジョンだともっと色んなモンスターから魔石が取れるわ。これで腐らないで無理はせずにがんばってね」

 受付に手を振られダンジョン館を後にする。

 なんにせよ、まずは生き残ったと言うことを実績にしよう。

 そう考えて上を向く。

 日がすっかり傾いた空には一番星が光っていた。


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