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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
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ダンジョン挑戦

 日曜日の朝、雄一は家から最寄りの場所にあるダンジョンの入り口にやって来た。

 時刻は朝の6時。

 ちらほらと通勤と思わしき人が背後を通り過ぎていく中で、ダンジョン館を見上げた。

 ここは、かつてダンジョンの入り口が発生した場所を国が買い取りその後頑丈うなシェルター状の建物で覆ったものだ。

 24時間体制で管理されているダンジョンの入り口のほか、ダンジョンで入手した物の換金や現在の換金レートの確認、果てにはダンジョンで書いた汗を流す為のシャワールームまで完備されている建物だ。

 中に入ると清潔感のあるタイル張りの内装が出迎えてきた。

 右手にはダンジョンに向かう改札、左手には換金所と書かれたカウンターが並んでいた。

 まずはカウンターに近づいて声を掛けてみる。

「すいませーん」

「はーい、あら随分若いお客さんね。どうしたのかしら?」

「実は、初めてダンジョンに潜るのですがどうしたらいいかわからなくて」

 そういうと受付の女性は納得したように2・3度頷いて反応した。

「それで声を掛けてきたわけね、関心関心。いいことだと思うわ」

「そうなんですか?」

「ええ、たまーに来る大学生なんて『換金』しか言わないからちょっと怖いのよね」

 ふふ、と笑った後に受付の女性が一枚の紙を取り出して渡してきた。

 何やらモンスターの名前と金額が書かれている。

「これはね、モンスターの素材買取表よ」

「モンスターの素材?」

「そ。モンスターを倒すとその死体はすぐにダンジョンに吸い込まれていくの、けど魔石と体の一部が洞窟の中に残されるわ。それも買い取りを行っているの」

「魔石だけじゃないんですね」

 ええ、とうなずく女性。

 どうやら魔石、モンスターの体内にある結晶を買い取っているのが国なのだが、モンスターから入手できるアイテムは専門に研究する企業が買い取ってくれるらしい。

「生け捕りにしてくるとすっごい値段が付いたりするんだけどね。君は無理しちゃだめよ?」

「わ、分かりました」

「ちなみに、そこに書かれている素材は全部が第一階層の確認済みモンスターだからね。戦いを挑むときの参考にして、気を付けていってきてね」

「はい、ありがとうございます」

 国はエネルギーの安定した供給のためにダンジョンへの積極的なアタックを推進している。

 一時期、「健康な若者はダンジョンへ行こう」というスローガンまでできたほどである。

 ただ、政府が望んでいるほどダンジョンハンターの数は多くないとされている。

 命がけ、ということもあるがダンジョンというよく分からないものに触れたくないのが国民の心情であろう。

 月に何名ダンジョンで死にましたなんてニュースを見れば行きたくなくなるのは当然だ。

 現在、ダンジョンに潜るのはボランティア感覚で参加する学生か企業の後押しを受けて挑戦している企業戦士くらいの物だろう。

 そんな新聞で読んだ情報を思い出しながら、雄一はダンジョン改札の前へと付いた。

 雄一は改札の向こうにあるダンジョンの入口をにらんだ。

 特に意味はないが、意気を高めるためだ。

 駅のホームにあるような改札にダンジョン免許を当てて通過すれば、そこはもう地上のルールは通用しない。

 理不尽と死が肩を組んでくる、文字通りの異世界だ。

 チリチリとした肌を刺すような感覚。

 誰かに見られているかのような居心地の悪さ。

 そしてゾクゾクと背筋に走る悪寒。

 すべてが地上とは違う超常の空間であることを身体に叩き込まれたような感覚だ。

 思わず竦む脚に活を入れ、一歩踏み出す。

 洞窟の内部は照明がない代わりに壁や天井から突き出した水晶が光っており照明が必要ないくらい明るい。

 そして気温が低い、ともすれば吐く息が白くなるのではないかと思うほどだった。

 迷宮には二通りの攻略方法があると講習では聞いていた。

 まずはより奥へより深くㇸ続くダンジョン攻略の正道ともいえる本道。

 そして、地面の中を横に広がる副道。

 それぞれにメリットデメリットがあった。

 本道は他のハンターが良く通る分モンスターは少ないが安全だ、副道は反対に道が複雑になっておりモンスターも多い。

 雄一は本道を進み、適当なところで副道へ足を踏み入れる。

 自身の境遇を考えれば悠長な作戦を取っている暇はない、お金はいくらあっても足りないのだから。

 スタスタとダンジョンの中を歩いていると、パチリと眉間で何かがはじける感覚がした。

 眉の間をさすってみるが異常はなさそうだ。

 と、確認しているとバサバサと羽ばたく音が聞こえた。

 なにかと思い周囲を見回してみると、巨大な蝙蝠が空を飛んでいるのをみつける。

 大きい、大型犬くらいはありそうな印象だ。

「うわあ!?」

 襲い掛かってくる蝙蝠に驚いて手で追い払いつつ、腰に鉈を装備していることを思い出して取り出す。

 鉈を大降りに振ると、翼を傷つけたのか蝙蝠が落下しもぞもぞとうごめく。

「この、死ね! 死ね!」

 蝙蝠の頭に二度、三度と鉈を振り下ろすとその体が光の粒子に変換され迷宮に吸い込まれるように消えていく。

 地上ではとても見られるような光景ではないが、どうやらめちゃくちゃに叩く内に致命傷を与えたらしい。

 蝙蝠のいたところにはパチンコ玉ほどの大きさの紫色の結晶と、蝙蝠の物らしき牙が落ちているだけだった。

 どうやらこれが魔石とモンスターの素材というものらしい。

「なんというか、あっけなかったな」

 そんな考えを、頭を振って思考から追い出す。

 今だって先制攻撃がもっと鋭ければ死んでいた可能性だってあるのだ、油断大敵だと心に刻む。

 戦利品をリュックに仕舞い深呼吸、思ったよりも乱れていた脈拍を落ち着かせる。

「よし、次だ」

 リュックに腕を通して再び歩き出す。

 迷宮を歩く時のコツとして、太い道を選ぶとよいという。

 迷宮は本道が一番太く広い通りになっており、そこから伸びる副道は広範囲に複雑に伸びていく代わりに末端に向かって段々と細くなっていく作りになっているようだ。

 つまり、行きは細い道に向かって帰りは太い道に向かって行けば迷うことは滅多にない。

 そう、滅多にないらしい。気をつけておこう。

 さらに歩いている内に、腕時計が12時を指したので休憩することにする。

 どっこいしょとダンジョンの床に小さなビニールシートを敷いてその上に座る。

 リュックサックから弁当箱をとりだして開くと、舞香の作ってくれた食材が顔を見せた。

 水筒からお茶を汲み、冷えたご飯を流し込みながら手早く済ませる。

「ごちそうさまでした」

 舞香に感謝を贈りつつ、また荷物をしまう。

 ここまでの戦利品は先ほどのコウモリのみ、これでは昼飯の弁当代にもならない。

「気合い入れていくか」

 雄一はパン、と手を打ち合わせて気合いを入れた。

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