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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
2/14

ダンジョン準備

「これで俺もダンジョンハンターか」

 夕日に向かってダンジョン免許を翳すとじんわりと、感慨が沸いてくる。

「ダンジョンに潜るには装備を調えないとな」

 雄一は現在、市役所からほど近い位置にあるホームセンターまで足を運んでいた。

 ダンジョンと言うものが世間に浸透して以来、ダンジョンアタックに必要なものは誰でも求めることが出来るようになっていた。

 なんでも、ダンジョン整備法やら迷宮省とか言うものが絡んでるらしいが難しいことは知らん。

 雄一にとって重要なのは、ダンジョンに挑むこととそこで得たものを資金に変えることだけである。

 ホームセンターのダンジョンコーナーには多様なものが置かれていた。

 モンスターを殺す武器になりうる物、スポーツ選手が身につける様なプロテクター、そしてどうやって使うのか想像も出来ない道具類。

 ダンジョン講習でオススメの道具などをメモしておかなければ圧倒されていたことは想像に難くない。

 ここで買うものは主に三種類。

 武器となる獲物に、防具であるプロテクター、そして戦利品をしまうためのリュックかポーチである。

「うげ、武器だけでもこんな値段がするのか」

 ショーケースに飾られているショートソードを眺め、値札に0が5つ以上あるのを確認して目を逸らした。

 他にはプロテクターも、様々な謳い文句と共に目も眩むような値段が設定されている。

 なんとかして高級商品ゾーンを抜け出すと、低額商品のコーナーへ到着する。

 もっと入り口の方に置いておいて欲しい。

「えぇと、武器は何が良いかな」

 ダンジョンで使う初心者向けの武器、文字にするとこれだけだが様々な刃物・鈍器が顔を連ねている。

 講習でもらったパンフレットでは初心者には棍棒がおすすめと書いてあったが、男として鋭い剣にあこがれるもの本音だ。

 しかし、そういった本格的な武器というのは得てして値段が高い。

「刃物、刃物か・・・・・・」

 ぶら下がっている武器を眺めていく中で一つのアイテムが目についた。

「鉈、か」

 それは本来、武器ではなく野山で下草や枝を切り払うためのものだ。

 しかし、その刃は十分鋭くなっており生き物を殺すのには十分な狂暴性を秘めている。

「これも、剣といえば剣だよな」

 値段も、刃物にしては抑え目で良心的である。

 少なくとも扱ったことのないナイフや剣よりはいい働きをしてくれそうだ。

 鉈を買い物かごに入れ次のコーナーへ向かう、防具だ。

 ダンジョンに生息する生物は基本的に敵対的だという、そういった生物群から身を守るための防具も買わなくてはいけない。

 とは言ったものの、全身を覆う甲冑のような防具は買えないしそもそもホームセンターには置いていない。

 そういった専用の道具を買うには専門店に行く必要があるが、自転車で行ける距離にはないし値段的にも手が出せない。

 やはり相応の値段の相応の性能のもので何とかするしかないようだ。

「強化プラスチック製の装備一式。これにするか」

 ヘルメット、胸当て、手甲に脛あてと言うオーソドックスなセットを選ぶ。

 あまりガチガチに防具を着込んで動けなくなってしまってはいけないと考えたからだ。

 そして最後にリュックサックを選ぶ。

 これは戦利品を入れるための大事な選択だ、と言っても破れにくい素材のもので大きさしか差異がないため適当なものを籠に入れた。

 他には小さなピッケル、懐中電灯、ロープなどを購入しホームセンターを出る。

 締めて28,962円、中々に痛い出費だが初期投資として受け入れるしかない。

 買ったもの諸々はリュックに詰め込んで帰宅する。

 玄関に鍵を差し込んで回すが、手応えがない。

「? 開いてる?」

 自宅を出るときは間違いなく締めたはず、そう思いながら玄関を開けると中からパタパタと足音をさせて一人の少女が姿を現した。

「お帰りなさい、お兄ちゃん」

「舞香、お前またウチに来てたのか」

 えへへ、と笑う妹分にため息を吐きながら玄関を上がる。

 舞香は同じ施設で育った仲であり、その中でも自分を兄と呼んで慕ってくれている妹のような存在だった。

 6畳一間のリビングに入りリュックを降ろすと味噌汁の良い匂いがする。

「もうすぐご飯が出来るから、お兄ちゃんテーブル拭いといて」

「お前なぁ、わざわざ飯を作りに来なくても良いって言っただろう?」

 投げられた台拭きでちゃぶ台を拭く。

「だってお兄ちゃん私が作らないとちゃんとしたもの食べないでしょ?」

「だからって舞香が作りに来る理由なんか無いだろ」

 小言を言いつつも、合鍵をせがまれて断れない自分も妹に弱いと思う。

 いーからいーから、と謎の押し切られ方をされてしまいあっという間にテーブルの上に2人分の夕食が準備されてしまう。

 ご飯に味噌汁、そして焼き魚。普通の夕食だ、普通の。

 ただ、この普通がどれほど得がたいものなのか。これまでの生活と、一人暮らしをしてからの生活でどれほど味わったことか。

 夕飯は美味しかったし、舞香のことだお値段もお手頃に抑えているに違いない。

「それで、今日はどこに行ってたの?」

「市役所だよ、ダンジョン免許を取りに行ったんだ」

 そう言うと、ニコニコと箸を動かしていた舞香の手が止まる。

「・・・・・・やっぱり、ダンジョンに潜るの?」

「ああ、前にも言っただろう?」

「お兄ちゃんなら奨学金だって使って学校に行けば良いじゃない。を掛けてまでお金を稼ぐなんて、そんな事する必要ないよ」

「そのお金もいつかは返さなきゃいけないものだろう? だったら俺は、自分で稼いで学校に行きたい」

 心配そうな顔をする舞香に手を伸ばし頭を撫でる。

「もう、こんなのじゃ誤魔化されないからね」

「そう言うなって」

 心配そうな、ともすれば泣いてしまいそうな顔の舞香をなで続ける。

「俺は、普通の生活をしたいんだ。胸を張って、自分の力で生きているんだってそう言いたい。他の人は違うかもしれないけど、俺には命を賭ける価値が十分あると思ってる」

 するととなりにやってきた舞香がギュッっと抱きついてきた。

「ちゃんと帰ってきてね」

「ああ」

「危ないと思ったらちゃんと逃げてね」

「分かった」

「私のこと1人にしないでよ」

「当然だ」

 その日は舞香を納得させて施設へと送り届け休むことにした。

 最後まで心配する舞香を見て、死ぬわけにはいかないと決意を新たにする。

 初ダンジョンアタックは、明日だ。

続きが気になる、面白いと思っていただけた方はページ下の感想・評価をいただけると嬉しいです。



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