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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
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敗走

「せい!!」

 雄一は、沙紀の一撃でコボルドが倒れるのを確認した。

 コボルドの死体がダンジョンに吸収されて行くのを確認し警戒を解く。

「いやー凄いねぇ、第二階層よりもモンスターがうじゃうじゃいるよー」

 ふいー、とため息をつくみゆきに同意する。

 第三階層に潜って数時間、体感では第二階層の倍以上の頻度でモンスターとエンカウントをしている感覚だ。

 そのすべてが2匹以上の群れを作っているのだから、単純計算でも四倍以上の魔石を獲得していることになる。

 ウハウハ状態だ、リュックサックに掛かる重みが嬉しい。

 しかも本道でこれなのだから、副道に入ればどうなるかとらぬタヌキの皮算用と分かっていながらも想像してしまう。

「今のうちに補給をしておきましょう、お茶をどうぞ」

 二人に飲み物をサーブして自分も一息入れる。

 魔石がザクザク取れるのは嬉しいが、この様子だと昼食をとるのは難しそうだ。

 一端第二階層に戻って休憩を入れた方が良いかもしれない。

 二人に提案すると特に異論もなく受け入れられた、切りの良い時間まではこのまま狩りを続けて行くことにする。

 パチパチッと刺激を受けて鉈に手を掛ける、仲間に目配せをすれば彼女たちも心得たようにそれぞれの獲物を構えた。

 そして更に三度、モンスターの気配を感じ取る。

「は?」

「どうした嵯城君」

 正面にある副道の影からコボルドが2匹、背後にあるそれからコボルドが3匹姿を現した。

 挟み打ちだ。

「先輩たちは後ろの3匹を! 俺は2匹押えます」

「後ろ!? く、本当に居るじゃないか。行くぞみゆき」

「はいはーい」

 先輩たちのことも気になるが、まずは自分の身を守りつつ2匹をなんとかしなければならない。

 幸いにもコボルドの武器はその鋭い爪、武器を持ったこちらにリーチの利はある。

「おお!」

 鉈を振り回し近づかせない様に立ち回る、情けないことだが2匹を相手にしては勝てる見込みがない。

 片方を仕留めている間にもう片方に張り付かれてしまうだろう。

 つまり、頼みの綱は先輩たちなのだがたった今自分が3匹を押しつけてしまったばかりである。



(あれ、これ詰んでね?)

 いやいやと、頭を振って悪い考えを追い払う。

「先輩たち、倒せそうですか!?」

「済まないが、すぐには行けそうにない!」

 予想通りの答えに小さく舌打ちを打つ、また自分はダンジョンと言うものを推し量れなかった。

 そのせいで今度は他人の命までも危機にさらしてしまっている。

 どうしよう、どうすれば良い?

 悩んでいたせいか、コボルドの1匹が脚にしがみついてくるとそのままプロテクターをガリガリと削り始めた。

「こ、の、野郎!」

 コボルドに張り付かれた脚でダンジョンの壁を蹴りつける、その隙にもう一匹が背中に張り付き鋭い爪を背中に突き刺してくる。

「ぐあああ!?」

「嵯城君!? 大丈、きゃあ!?」

 離れたところで沙紀たちの苦戦している声も聞こえる。

 なんとか、体勢を立て直さなければ。

 更に背中を抉られたところで、声が聞こえた。

「あらら、こりゃ寝坊してきて正解だったかもな」

 やたらのんきな男性の声が聞こえたと思ったら、背中に張り付いているコボルドの感覚が消えた。

 次いで男性が、脚に張り付いていたコボルドの頭を掴んでプロテクターごと雄一から引き剥がすと持っていた剣でその喉を突き刺して殺す。

「よー、大丈夫か少年?」

「あ、まだ、先輩たちが、、、」

「あの女の子たち? そっちも片付けたから大丈夫だって」

 腕を引っ張られ、背中の痛みを堪えながら沙紀たちを確認すると地面に座る沙紀にみゆきが駆け寄るところだった。

「あの、貴方は」

「会うのは2回目だな、よう少年」

 以前、ダンジョン館で出会った企業ハンターの男がそこにいた。


「これでよし、っと。治療道具を持ってきてるなんて偉いねぇ。感心感心」

「あ痛っ、ありがとうございます」

 男性にガーゼと包帯を巻いて貰った雄一は、背中の部分がボロボロになったシャツに袖を通す。

 痛手を負ってしまったが、幸いにも沙紀とみゆきに目立った傷はないようだった。

「よしよし、送っていくから魔石を回収して今日は帰りな。そんな怪我でも油断すると死んじまうぞ」

「はい、そうします。でも魔石は貴方が持って行って下さい」

「いーからいーから、持っていけよ。必要なんだろ?」

「すいません、ありがとうございます」

「こんなとこに居たらまたモンスターが寄ってくるからな、さっさと移動しよう」

 男性に先導されながらダンジョンを抜ける。

 改札を通り、空調の効いたダンジョン館に到着したことで緊張が解けたのか三人そろって床にへたり込んでしまった。

「わはは、お疲れさん」

 べしべしと男性に頭を叩かれるが、反抗する気力も湧いてこない。

「すいません、助かりました」

「ん、しっかし第三階層に行くのはちと早かったみてぇだな」

「はい、骨身に染みました」

「だが、その第三階層に一人で来ていた貴方は一体?」

 沙紀の疑問には男性の視線を受けた雄一が答えることにした。

「この人は企業ハンターで、名前は、えーと」

「御劔な、御劔康介。よろしく」

 康介は軽い調子で手を上げて挨拶し、三人もそれぞれ改めて礼を述べた。


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