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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
11/14

チームとして

「武器を?」

雄一は聞き返した。

装備を変えれば何か変わるのだろうか。

「ああ、みゆきはそれほど運動は苦手じゃないはず。それなのに先ほどはあまりにも動きに精彩を欠いていた。ならば何かしらの理由があるはずだ」

「そうなんですか? 真鍋先輩?」

「えっとぉ、なんかおかしな感じはするかなぁ。パズルのピースが微妙に合っていない感じ?」

「そうなんですか」

よく分からないが、そういうこともあるのだろう。

試しに、沙紀の槍を持って何度か突き出してみるが彼女は首をかしげる。

「俺の鉈もどうぞ」

そう言って貸し出してみるがこれも上手く振るえていないように見えた。

最後に、新調したばかりのサバイバルナイフを渡す。

「後はこんなのしかないですけど」

「試してみるよ」

鞘から抜いた刃渡り15cmのナイフ、それを手に持つヒュッと風を切るように素早く腕が動く。

「これ、すっごい良い感じかも」

「な? 言ったとおりだっただろう?」

「はぁ・・・・・・、そうみたいっすね」

よく分からないルールがあるのだろうか、と雄一は自分を納得させた。

とりあえず新しい武器で動けるのか改めて試して貰うことにする。

第一階層の副道を改めて探索し小鬼を見つけ、みゆきを先行させた。

「えい、やあ!」

すると先ほどとは別人の様な動きで小鬼に接近し喉を一閃、くるりと回転しながらその背後に回り込み背中から心臓を一突きにした。

「うお」

「どうだ? 言ったとおりだっただろう?」

まるで熟練の暗殺者を思わせる動きをしつつ無邪気に喜ぶみゆき、行動と表情のギャップが半端ない。

しかし戦力になるのであれば雄一にも文句はなかった、これで第二階層へ潜ることが出来る。

「第二階層はどんな場所なんだ、嵯城君」

「こことそんなに変わりませんよ。ただ、たまに厄介なのが出てきます」

「ほう、厄介なのとは?」

「他の小鬼の魔石を食った小鬼ですね、動きが目に見えて早くなって腕力も大人並みになります。今ついてる傷は大体そいつのせいですから、気を付けてください」

「承知した」

「はーい」

以前よりも警戒度を上げて探索を行う。

といってもモンスターと出会う前にはあのパチパチとした感覚があるのだが、気を緩めるよりはいいだろう。

「居た。最初は俺がやりますから相手の動きを見ててください」

頷く二人を背後にゆっくりと小鬼に近づく、相手もこちらに気が付いて威嚇を行ってきた。

雄一は小鬼までの距離と接近するのに必要な歩数を計算し、絶好のタイミングで鉈を振ることができるように間隔を詰めていく。

『GA! GYAGYAGYA!!』

しびれを切らした小鬼が突撃してくるが、落ち着いて棍棒の動きを見切り回避。

がら空きになった小鬼の首に鉈を叩き込む、体勢を崩した相手の頭を蹴り飛ばし起き上がる前にさらに鉈を叩き込んで完全に沈黙させる。

「な、なんだか上の階での倒し方と随分違うな。激しいというか、容赦がないというか」

「こいつら、見かけに変化はないですけどタフさが異常なほど上昇してるんです。なのでできるだけ迅速に一方的に倒す必要があります」

「そーなんだー」

そうなんです、と頷き次の獲物を探す。

その次は蝙蝠と遭遇、これは本人の希望もあり武器の相性も良い沙紀が相手をした。

「やっぱり、リーチがあるのは良いですね。天井近くの相手にも届くのか」

「ふふん、そうだろう?」

試しに、沙紀から槍を預かり何度か構えをとってみる。

沙紀からも指導を受けて槍を突き出すがなかなか上手い具合に行かない、どうもに手が馴染まない様な感覚が雄一には感じられた。

鉈を持ったときの手が柄に吸い付く感覚とは大違いである。

なるほどこれがみゆきの言っていた違和感か、と理解した。

「なるほど、確かに違和感がありますね」

「私も試してみていいだろうか」

「もちろん」

沙紀に鉈を貸して見るが、本人は鉈を持った瞬間に眉をしかめた。

「ああ、なるほど。確かにこれはダメだ」

「持つだけで分かるんです?」

「ああ、これはあれだな。右手で左利き用のハサミを使うときのような感覚だ」

やれないことはないが効率が悪い、と沙紀は鉈を返してきた。

「やはりダンジョンはおかしい、埋めてしまうのが手っ取り早くて確実じゃないか?」

「確かに、地上じゃこんな感覚はなかったですけど」

先輩の相変わらずの意見に苦笑いしながら次の獲物を探す。

沙紀もみゆきもこの階層で危なげなく小鬼を倒すことが出来た、これで実力は雄一ほとんど同じであることが分かった。

雄一が弱いのか、2人が強いのかについては自身の精神衛生のために議論しないでおくことにする。

「どうだ、嵯城君。これで入団テストは合格だろう?」

「テストって、まあ似たようなもんですけど。はい、お二人にはこれから力を貸して貰えると嬉しいです」

「うむ」

「えへへ」

雄一が頭を下げると二人が嬉しそうに微笑む。

本来決めていたとおり、今日はここまでにして切り上げる。

「そういえば嵯城君、今日倒したモンスターの魔石? とやらで大体どれくらいになるんだ?」

「そうですねぇ」

第一・第二階層で獲得ゴブリンと蝙蝠、も魔石とモンスターの素材を思い出しながら皮算用を行う。

これまでの傾向と照らし合わせて、

「5000円に届かないくらいっすかね」

「そ、そうか。5000円以下か」

「確かに、このままじゃ少ないねぇ」

歯に衣着せぬみゆきの物言いに苦笑いを返す。

地上のダンジョン館に帰還し、受付に女性連れであることを冷やかされながら換金を行った。

代金は4328円、雄一の言ったとおりの金額である。

「それじゃ、分けますか」

「いいのか? 今日は私達に付合ったせいで稼ぎが少ないんだろう。全部君の取り分にしても良いんだぞ?」

「約束ですから、『ダンジョンの報酬は頭数で割ること』って決めたじゃないですか」

「その通りだが」

沙紀に反論されるまえに雄一が金額を三等分して二人に押しつける、端数になった金額は貰ったが概ね平等だ。

これは、雄一が「施される」のを嫌がった為に決められたルールである。

二人に養って貰うのではなく、自立して稼ぐ為だと説明をし先輩たちを納得させた。

「それじゃあお二人とも、これからはチームとして宜しくおねがいします。帰りも気をつけて下さい」

「ああ、気をつけて」

「またねー」

お辞儀をして二人と分かれた、明日は用事があるらしいので次に合うのは次の月曜日以降と言うことになるだろう。

雄一は二人の影が見えなくなってから息を大きく吐き、家路へとついた。

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