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ハンティングダンジョン  作者: でれすけ
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槍と鎚

「おはようございます」

 早朝、雄一はダンジョン館の前で沙紀とみゆきに挨拶をした。

 三人とも荷物を背負い、特に沙紀は90cm程の長い袋を担いでいる。

「おはよう、嵯城君」

「おはよー」

 2人と軽く挨拶を交わしながら、それぞれダンジョン館にある更衣室で装備を調え改めて合流する。

 雄一は前回、刃がボロボロになってしまった果物ナイフの代わりにごついサバイバルナイフを購入し装備していた。

「先輩方、その武器は?」

「ああ、私は槍だ。実家が槍術の道場もやっていてな、私もそこそこの腕前だと自負している」

「私は、よいしょ。倉庫にあったハンマーを持ってきましたー。強そうでしょ」

「はあ」

 初対面からずっとそうだが、随分対照的な二人だ。

 だが沙紀もみゆきも気負った様子はなく自然体である。

「まずは、第一階層でゴブリンと戦って貰います。何匹か倒して貰って戦えるようなら第二階層で狩りをして、今日はそこまでで」

「いいのか? それでは今日の稼ぎが少なくなってしまうのではないか?」

「がっつり稼ぐのは明日以降にします、慣れないダンジョンで無理をするのは禁物だと思うので。『まだいけるはイエローサイン』を心がけましょう」

「分かった私は構わないが」

「わたしも、了解だよ」

 両者の同意を得られた雄一を戦闘に、ダンジョンへと侵入する。

「・・・・・・っ」

「どうした嵯城君、寒いのか?」

「寒いというか、寒気を感じません? あと、誰かに見られているような感じとか」

「いや」

「ないよー?」

 そうですか、と答えてから首をかしげる。

 この奇妙な感覚を覚えるのはどうやら自分だけのようだ、なにか違いがあるのだろうか。

 ともあれまずはゴブリンを見つけなければならない。

「たしか、ここに出てくるのは主にゴブリンというモンスターだったか」

「はい、すばしっこい相手です。身体が小さいので狙うのが厄介な相手でもあります」

 先輩に先輩風を吹かせながらダンジョンの副道へ入っていく。

「嵯城君、そっちは本道と比べて危険だと聞いているんだが・・・・・・」

「そうだと思いますが。まだ第一階層だし、多少は危険を冒さないとゴブリンに全く会えないときもあるんです。なのでこっちに」

「ふむ、わかった。従おう」

 ダンジョンにアタックするときの約束として、四人でいくつか決めた事がある。

 まず、ダンジョンに潜る主体は雄一であること。これはどこで狩りを行うのか主な決定をする役割を担うことになる。

 それに対して、随伴者である沙紀とみゆきは拒否権を持つが2人の意見がそろわないと雄一の意見を翻すことは出来ない。

 あくまで雄一のダンジョンアタックについて行く、と言う体をとっている。

 そして、ダンジョンで得られた報酬は3分割する事もルールに盛り込まれていた。

 これは雄一の自己満足でしかないが、施しを受けるのではなく自分で報酬を勝ち取ると言う意欲の表れであった。

「っと、ゴブリンです。そろそろ見えてきますね」

「・・・・・・本当だ、よく分かったな」

 あの弾けるような感覚を上手く説明できない雄一は曖昧に笑ってから沙紀に先頭を譲る。

 お手並み拝見だ。


 沙紀はダンジョンを駆けた。

 身体が軽い、知らずの内に気分が高揚しているのかもしれない。

「しっ!」

 槍を突き出す目標はゴブリン、その顔面に背筋をバネにした全力の一撃を叩き込む。

 ブチュリ、と肉を潰す感覚を覚え確かな手応えとする。

 槍を引き抜いた残心の向こうで獲物が膝から崩れ落ちるのが見えた。

 完全に倒れ込む瞬間にその身体が地面へと消えるように吸い込まれていく。

 カツーン、と音を残した魔石のみが後に残される。

 短く息を吐いて構えを解くと親友と後輩が近寄ってきた。

「沙紀ちゃん凄いねぇ、一発でやっつけちゃった」

「凄かったです沙紀さん」

 2人に軽く手を上げて答える。

「どうだっただろうか、嵯城君。君のお眼鏡にはかなったかな」

「それはもう何回か戦って貰ってから決めさせて貰います」

「む、思ったより慎重だな。まあ、構わんが」

 槍を担いで再び後輩を先頭に歩き出す。

「そういえば、先ほどは随分早くゴブリンの接近に気が付いていたな。何か仕掛けがあるのか?」

「仕掛けというか、なんとなく分かるんです。こう、「居る!」っていうのがパチッと反応する感じで。ダンジョンの中でだけですけど」

「そうか、便利だな」

 その他にも雑談を交えながらダンジョンの中を進んでいく、はじめは興味深く周囲を観察していたが代わり映えのない風景にすぐに飽きてしまった。

「その、嵯城君」

「なんでしょう?」

「先週は済まなかった、知らずとは言え君に失礼なことを言ってしまって」

「構いませんよ、もう昔のことですから」

 気負った様子のない彼の返答にホッと一息つく、肩に手を置いてくれる親友と目線を合わせて微笑んだ。

「・・・・・・来ます、次は真鍋先輩おねがいします」

「はーい、頑張っちゃうぞー」

 そう言って背中から作業用の金槌を引っ張り出すみゆき。

 付き合いの長い友人だが、まさかこんな武器を持ってくるとは思わなかった。

 人とはかくも分からないものである。


「お疲れ様です」

 雄一は地面に座り、同じく休んでいる2人にお茶の入ったコップを渡した。

「準備がいいな」

「ありがとー」

 自分も喉を潤し人心地つく。

 沙紀の戦闘を見守った後、みゆきにも戦闘を行ってもらったが少々危なっかしい結果に終わってしまった。

「ごめんねぇ鈍臭くて」

「いえ、真鍋先輩のせいじゃありませんから」

 しょんぼり、と言う言葉を体現したかのような態度の年長者に言葉を返す。

 しかしこの後はどうするべきか、流石に危なっかしいみゆきを連れたまま第二階層へ向かうわけには行かない。

「今日はここまでにしましょうか、いったん帰って日を改めましょう」

「そんな、私達がお邪魔してるのにこれ以上迷惑掛けられないよ」

「迷惑じゃなくて心配なんです、俺たちは死にに来ているわけじゃないんだから安全に気を配りすぎるくらいでいいんです」

「うぅ・・・・・・、申し訳ない」

 落ち込む先輩を励ましつつ帰宅する準備を始める。

 しかし、ここで沙紀が手を上げた。

「武器を交換してみる、というのはどうだろうか」



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