ダンジョン登録
「ご用件をお伺いします」
雄一は市役所のカウンターに着くと、手に持っていたチラシを見せた。
「あの、ダンジョンへ潜るための資格が欲しくてきました」
「ダンジョンハンターの資格ですね、少々お待ち下さい」
受付は手元の端末を操作するとカードリーダーを差し出してきた。
そこへ住民カードを通すと、相手側に自分のパーソナリティが表示される仕組みになっている。
「近藤 雄一様ですね、担当致します中蓋と申します。本日はダンジョンハンターにご応募いただき有り難うございます」
いくつか質問にお答え下さい、と言われ居住まいを正した。
「まず、ダンジョンハンターを目指す理由をお伺いしてもよろしいですか」
「生活費を稼ぐためです」
雄一には親がいなかった、13年前の「ダンジョン災害」によって親を失いそれから施設で生活をするようになった。
高校に進学し、寮生活をするに当たって問題点が浮上した。
金がないのである。
正確には、親の貯金とダンジョン災害での見舞金があるがいずれ尽きてしまう金である。
高校に通うためにも定期的に、一定の金額を稼ぐ必要が雄一には迫られていた。
他にも、いくつか質問を受けた後に順番待ちのカードを渡される。
「本日の13時から、ダンジョンハンター希望者向けの健康診断と講習があります。ご参加いただければダンジョン免許が発行されますのでそちらに出席してください。会場は2階です」
「はい、有り難うございます」
「ダンジョンはこの地球とは異なる世界へとつながる門であると考えられています」
健康診断の後、市役所の会議室で行われる講習で講師はそう切り出した。
「また、生物のように内部が変化したり生物を生み出したりと謎の多い存在でもあります」
そう、発見から10年以上経っているのにダンジョンと言うものはその全貌を明らかにしようとしない。
明かりもないのに真っ暗にならない洞窟、いくら掘っても地上にたどり着くことはなくその穴も時間が経てば元通りに復元してしまう。
世界中の学者が匙を投げ出すのが、ダンジョンというものだった。
そして何より、モンスターと呼ばれる生物だ。
13年前、世界中にダンジョンへのゲートが発生。それと同時に内部にいた生物群が地上にあふれ出した事件。
当然地上は大パニック、凶暴なモンスターたちによって全世界で100万人を越える死者を出す世紀の大事件となった。
それらのダンジョンモンスターは地球の生態系にも大打撃を与えたあと、いつの間にか世界絵と馴染んでいった。
そして各国が行った(非人道的な物も含む)研究によりいくつかのことが判明する。
それは、モンスターと呼ばれる生物も繁殖を行うことだったり。
ダンジョンから採れる結晶、通称魔石が莫大なエネルギーを秘めていることだったりする。
そう、エネルギーである。
モンスターの体内や、ダンジョンの壁部分で入手出来る魔石に特定の周波数の超音波を当てることで熱を発することが分かった。
世界は文字通りに沸いた。
長らく問題視されていたエネルギー問題に解決の糸口が見えたとされるからだ。
ダンジョンは現在のエネルギー鉱山と呼ばれる様になる。
「こうして、日本でも10年ほど前にダンジョン整備法と共に迷宮省が設立されます」
しかし、そう上手く行くことばかりではなかった。
第一に、地上で繁殖したモンスターには魔石が生成されないと言うこと。
そして魔石を回収するにはモンスターを殺す必要があると言うことだった。
前者はともかく後者は大変である。
モンスターは当然生物だ、殺そうとすれば全力で抵抗をする。
そのため各国では様々な方法が模索されていた。
ある国では軍隊を用いて効率的に、ある国では国民を動員し物量作戦で攻略を行った。
この国では、多くの国で採用されている方法。つまりは自主的にダンジョンへアタックする者を募り、彼らから買い取る「ハンター制度」を採用した。
雄一が応募したのも、この一般ハンターとしての登録である。
これは、ダンジョンで採れた魔石を国が買い取ることで需要と供給が発生するシステムであり研究材料としても価値が高いことから報酬が高く設定されている。
報酬の高さ、それが雄一が他のアルバイトではなくダンジョンハンターを志した理由でもある。
また、魔石の研究を行う企業は数多く。それに伴い企業がダンジョンアタックを行ったりダンジョンで使えるアイテムの開発を行ったりする用にもなりダンジョン副次産業の発展にもなった。
有名なスポーツブランドがダンジョン用の武器や装備を作っていると言うことがある。
などなど、ダンジョンの歴史と危険性を聞かされたあとで、同意書にサインをすればダンジョン免許が発行される。
「ダンジョンで活躍することも大切ですが、皆さんの命も大切です。くれぐれも重大な怪我を負うことの無いように気をつけて下さい」
講師がそう言ってダンジョン講習は打ち切られた。
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