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拾った責任、とってよ  作者: 滝沢美月
3月25日(水)晴れのち雨
19/35

Vol.19  8日目



 蓮君がうちに来てから昨日で一週間が経った――

 なんだかあっという間の一週間で、このまま残りの一週間もあっという間に過ぎてしまうのだろうと思うと、ちょっともの悲しくなってしまう。

 蓮君のためになにかしたいと思うのに、ただ、日々を平穏に過ごすことしかできない。

 相変わらず、蓮君は自分に関することはあまり話してくれないけど、他愛ないおしゃべりには付き合ってくれる。休みの日は映画の話で盛り上がったし、昨日は私がたまの写真をインスタにあげていることや、蓮君がスィーツ好きってことが分かって甘いケーキやお菓子の話をいっぱいした。

 いま取り組んでる企画で、うちが輸入しているチョコレートとコラボして喫茶店でケーキを出す企画があって、どんなケーキがいいかなって考えるのに、昨日、チョコ系のケーキをいっぱい買って帰ったら、蓮君がすごく食べたそうな顔で見てて。

 さすがに一人じゃ食べきれない量だったし、ケーキ好きなら色々食べて、参考に意見を聞かせてもらいたいなって思ったら、蓮君はすっごく嬉しそうな顔で頷いて、一緒にケーキを食べてくれた。

 仕事を手伝わせる感じになっちゃって申し訳ないなって思ったんだけど、蓮君はぜんぜん嫌な顔なんてしないで。


「俺こそ、こんないっぱいケーキ食べられて役得~」


 って笑ってくれた。

 私もケーキや甘いものは好きだけど、さすがにこの量のケーキを全部は食べられないから、味見ために数口ずつ食べたのだけど、蓮君は「残りもらっちゃっていい?」ってパクパク食べてしまうのだから、驚いてしまう。

 おまけに、私なんか数個目を食べた頃には舌がマヒしだして、だんだん味がよくわからなくなってきちゃったのに、蓮君は敏感にケーキの味を把握して、これはラム酒がきいてるねとか、味の感想を教えてくれた。

 そんな舌の肥えた蓮君を見て、もしかして――って一つの過程が浮かび上がってくる。

 ひたすらチョコケーキを食べ、誤魔化すように紅茶やコーヒーを飲みながら、お互いに好きなケーキ談義を繰り広げた。



  ※



 そんな蓮君とのひとときを思い出しながら、食べたチョコレートケーキのデータを資料にまとめたり、喫茶店とのコラボ企画書に取り組む。

 元々、この企画は桐谷君がとってきた仕事だったんだけど、桐谷君は出張や取引が立て込んでて、私がサポートとして付くことになった。

 今回コラボする喫茶店にはこの企画が決まってから初めて行ったのだけど、一等地のメインストリートに面していて、店内は吹き抜けのニューヨークテイストのおしゃれな雰囲気だった。

 この喫茶店でうちの会社が輸入しているチョコレートとのコラボケーキが売り出されることで、いままでこのチョコレートを知らなかった人が美味しいって思ってくれると嬉しいと思った。

 そうなるように企画書にも熱が入ってくる。

 実際にケーキの案を出してくるのは喫茶店側なんだけど、うちの輸入するチョコレートの特徴やそれを生かせるケーキにするにはどういうのがいいのか、こちらの意見もある程度まとめる必要がある。

 甘いもの好きとしても、俄然やる気がでるというものだった。

 企画書はさくさくと進んでいき、その他の自分担当の仕事もこなしつつ、合間を見つけて出来上がった企画書を桐谷君にも確認してもらおうと思ったのだけど、なかなか桐谷君を捕まえることが出来なかった。

 来週にはまた海外出張が控えてて、営業に走り回っている桐谷君は本社にほとんどいない。

 いたと思っても、すぐに出かけてしまったり、後輩と他の案件の話をしていたりするので、タイミングをつかみそこねていた。

 企画書はほぼ出来上がり、あとは桐谷君の意見などと併せて完成というとこまで出来た。

 桐谷君が戻ってきたらすぐにでも見せられるように準備万端にして、他の作業をしていると、あっという間に定時を過ぎてしまった。

 社員の行き先を書き込むホワイトボードの桐谷君のところには、午後の出先の場所は書かれているけど「直帰」とは書かれていないから、そろそろ戻ってくるはずなんだけど。

 待つにしても、今日やることはだいたい終わってしまって、これ以上、無意味に残業して待つのもどうかなぁと考えていたら、デスクの端に置いていたスマフォが振動する。

 仕事での取引先などとのやり取りは基本、会社から支給されているスマフォで対応していて、今、通知を知らせたのは個人のスマフォだった。

 私は今日中に桐谷君を捕まえるのを諦めて、今日の仕事のバックアップをとり、仕事を切り上げることにする。

 パソコンをシャットダウンさせている間、会社のスマフォで桐谷君にチョココラボの企画書を一緒に見てほしいこと、今日はもう帰るので明日時間を作ってほしいと伝える。

 それから自分のスマフォを開いて通知を確認すると、インスタにメッセージが届いていた。




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