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翌日は休校になった。

学校側から暫くは校舎の復旧作業で学校へは立ち入り禁止という事らしい

当たり前な話だ

まだ駆除していないヴィスタがいるのだ。

学校側には話は通しているかもしれないが、生徒側にはまるでこの話は来ない。


まぁ、ご察しの通りヴィスタがいない事が原因である。

それに実は教師側からは秘密裏に報告されていた。

脅迫しているからではない、信頼を得ているからだ。

そして保身に走っている部分もあるのだろう。

そんな事はどうでもいいな。

ヴィスタを躾けていたのだが、思いのほか呑み込みが早い。

優秀である、たまに遊んでやらなければ拗ねる事を含んでも優秀である。

そしてこのヴィスタは大きさを3通り変えられるようだ。


最初に見た巨体

大型犬より少々大きい程

そしてこの超小型犬である。


実体は小型犬の方らしい。

まぁ、精神年齢から考えて幼いのは予想はついていた。

因みに名前は付けない・・・面倒だからではない

毛の色は銀と灰色に変色できるようなので、灰色にした。初対面が銀色だったからだ。


そして更に面白い事が分かった。

一夜を明かすとヴィスタは小規模でありながらも魔法を使えたのだ。

その事について意志疎通を試してみると もともと向こうの世界では魔法は使えたそうだ、この世界に来た時は使えなかった。

この事を考えるとこの世界に来た当初は魔力を失うのではないだろうか?この世界では魔力は睡眠を取ることで回復可能である。

それがヴィスタにも適用され、この世界に来た際に何らかの条件で魔力を失っていたのしたら・・・

それならこのヴィスタの説明は出来る いや、それを決めるのは早計だ。


様々な事を調べ、1日は簡単に過ぎていく。

勿論元々の魔力研究も進めている。魔力のサンプルも手に入った事で更に改良の余地が見つかった。


次の日は外出する事にした。

勿論ヴィスタを連れて行く、首輪にリードをつけて。

嫌がると予想していたが思いのほか抵抗は無くすんなり収まった。




「さて、外に出る訳だが・・・」



「ハッハッハッハッハッハ!!」




尻尾をブンブン振っている。

とても嬉しそうだ。




「散歩に行く訳じゃないからな、研究所に行くだけだ」



「・・・ク~ン」



「・・・本当に何故人間の言葉を理解できるのだろうな?、まぁ、適当に案内くらいはしてやる」




沈んだ雰囲気から興奮したテンションになった。

それからヴィスタを落ち着かせてから出発する。


それから少し周辺の地域を巡り、目的の施設に入る。




「犬童さんペットでも飼ったんですか?」




ここで一緒に研究に勤しんでいる研究員だ。




「ええ、自分も一人暮らしになったのでペットでも飼い馴らそうかと」



「で、今日はどうなされましたか?」



「例の魔力蓄積装置に魔力が溜まりました、ですのでこれからそれを使って今持っている武器を改良しようかと」



「おお!?あのデバイスを満タンにしたというのですか!?」



「ええ、少々戦闘で使用してしまったので満タンという訳ではないが十分な魔力はあります」



「そういえば犬童さんの学校にヴィスタが出たとニュースでやっていましたな」



「世間話もそれくらいにしましょう」




奥から他の研究員が出てきた。




「五十嵐さん、自分がいない間に何か進展はありましたか?」



「いや、進展といえる進展はないな。あの|魔力収入源(侵入者)からはもうあまり魔力の期待はできないな」




昔、龍ヶ峰邸で玄一の暗殺をしに来た刺客を退け、捕縛していたのだ。

刺客は勿論女性である。

薬物を使い、植物状態にし、刺激を与え漏れ出る魔力を回収していたのだ。

それは長続きする事はないとわかっている。

だから代案を考え、実行したのだ。

これからは安定し、尚莫大な量の魔力が手に入る。




「では、作業を始めましょう」




この日でたくさんの試作品を作り、失敗作を作り、日が暮れて行った。




「様々な物が出来ましたね」



「これはいくつか成功作と言っても過言ではないのでは?」



「いえ、これらも実戦で試さない限り、成功作とは言えません」



「では、これも変わらず若が―――」



「若はやめてほしい、自分は龍ヶ峰の人間ではないのですから」



「いいではないですか、玄一様に養子縁組申し込んだら受けてくださいますよ」



「はぁ、その話はやめましょう。引き続き自分が試作品のテスターを引き受けます」



「今日はもう遅いので犬童さんはこれくらいで上がってください」



「ええ、お言葉に甘えて今日はこれで上がりましょう、皆さんお疲れ様でした」



「はい、お疲れ様です」




そう言って研究施設から出て行った。






研究員side


犬童が去った後に彼らは話し合っていた。




「・・・若には報告しませんでしたが我々をスカウトしに来た企業がありましたな」



「ええ、確かに大企業でしたが我々はもう誓いましたからなぁ」



「はい、若と龍ヶ峰についていくと」



「にしても若もまだまだお若い、若という呼ばれ方に反対するとは可愛いものじゃ」




研究員たちは笑いあう。

彼らはそれぞれ大企業に勤めていたが魔法が世界に伝わり、女尊男卑の世の中になった際に切り捨てられた者達なのだ。

無職でさまよっていた所を犬童の目に留まり、採用されることになったのだ。

しかも、その後ろ盾が龍ヶ峰というビックネーム それぞれの研究に不自由ない環境を整えてくれた。

それに犬童という少年は魔法を解析し、対策もしくは我々も使用できないかと模索し、とうとう魔法の使用に成功した。




「それにしても若の才覚はずば抜けていますな」



「ええ、まさか魔法の使用に媒体の使用を考えるとは驚きだった」



「いやいや、あの魔力収入源も驚きでしたな」



「確かに、生きた人間から魔力を吸収させる為だけに生かしたとか」



「確かにここの生活は外に出れない分不便ではあるが、我々は生粋の研究者であるから研究さえ満足にできれば不満はないな」



「確かに、飯も勝手に用意されてるし」



「どちらかといえば今の状況が前より待遇がいいですな」



「全くだ!!」




研究者たちの馬鹿笑いはしばらく続き、この施設に木霊した。




side out






それから学校の休校が解けるまでその施設に通い続けた。

実質休校の期間は3日間であり、結局あの魔女達はヴィスタの追跡に失敗したと知らされた。


そして学校にて




「さて・・・俺に何か用か?」




今現在(HR前に)俺は月島に捕まっていた。

捕縛ではなく話をする意味でだ。




「すまなかった」




頭を下げる月島

何やら反省しているようだ




「気にするな、あんな事は些細な事だ 水に流すさ、俺達は友達だからな」



「雅人・・・ありがとう」




ああ、気にするなよ。

お前が馬鹿したおかげで事が上手く運んだんだからな。

それに・・・




「そうだ月島、俺昨日から犬を飼い始めたんだ」



「そうなのか、確かに雅人は昔から人より動物が好きだったからな」



「まぁな、お前も好きだろ動物」



「うん、今度会わせてよ」



「ああ、今度会わせよう」






白鐘 白 side


「ん?」




学校が再開し登校していると前に犬がお座りをしてこちらを見ていた。

こちらが犬を認識するとトテトテと私に向かって歩いてきた。

犬が私の足元に立ち止り、咥えている物を見せる。




「これは・・・魔法蓄積装置」




魔力蓄積装置を受け取ると、これと一緒に手紙が同封されていた。


『これを読んでいるという事はコイツが連絡手段として機能しているという事だろう

今後はコイツを通して連絡する。

5日後にコイツがやって来るからその時に先程の魔力蓄積装置を回収する

また試作品の運用もしているから上手くいったら使えるものをやろう。


この紙は日の光を1分浴びると勝手に燃え上がるので注意するように』



読み終わると紙の下の方に火が付き、ゆっくりと燃え始める。




「手の込んだ事ね」




コレを運んできた犬はこちらを見て尻尾を振っていた。

犬の頭に手を置き、嫌がらない事を確認してから撫でる




「君は可愛いのに、君のご主人様は全く可愛くないね・・・少し怖いくらいかな」





side out






とあるHRにて

教師が教壇に立ち、何か連絡事項がある様なのだ。




「さて、前回ヴィスタに関して色々あったが今回またこのクラスに転校生が入ることになった」



「男子ですか女子ですか?」



「今回は女子だ、入って来てくれ」




教室に入ってきたのは金髪の異国の者だった。




「初めまして皆さん、シャル・ノーエルです。よろしくお願いいたします」




初々しい雰囲気の転入生に男子が歓喜し、雄叫びを上げていた。

数人を除く。




「おい犬童、俺の情報網に引っかからないなんておかしい、お前知ってたなら事前に教えてくれよ」



「いや、俺も今朝・・・HR直前に教えられたんだ」




普通は編入手続きなどでコイツの情報網に引っかからない訳がない

それに俺でさえ直前に教師陣から秘密裏に教えてもらったのだ、その際俺の事について少し伝えるように頼んだ

いつもは事前に報告がある筈なのだが、それがない。

それは教師達も事前に知らされていないという事、学校側からしても急遽決まった事なのだろう。

・・・コイツただの転校生じゃない

これは少し活動を控えめにして様子見だな。

もしかすると『Valkyrie』の人間かもしれないな




「はいはい、騒ぐのはHRが終わった後な、まだ連絡事項があるからな―――――よし、静かになったな。もう知っている者もいるがこの時期は春闘祭がある。その出場選手を決めなくてはならない。」




知らなかった者たちもいたのか、ざわめきが拡がる。




「今週中に春闘祭の選手を最低3人登録しなければならない。だから1限の私の授業を繰り上げてこの時間中に大体クラスの考えを固めておけ」




言うだけ言うと教室の端に椅子を持って行き、本を読み始める教師。


確かに教師としてはどうかと言えるが、これはこれで生徒からは人気がある様なのだ。

実際俺もこのようなタイプは嫌いじゃない。




「犬童 お前はどうすんの?」



「小崎か、そうだな・・・どうするか、月島はどうするんだ?」



「え?僕?」



「ああ、お前の異能は戦闘向けだろう。ここで功績をあげて目立っておけば、周りはお前を認め、生徒会に入る際に反感は少ないだろう」



「うわぁ~、すげぇ打算的だな」



「こいつは目的を設定するはいいが複雑な事だと何から手を付ければいいかわからない奴だからな」



「まるで僕が馬鹿みたいに言うじゃないか」



「お前の頭はどうでもいい、俺はお前を生徒会に入るのを手伝うと約束したからな。それなりにお膳立てはするさ」



「雅人・・・」



「おいおい、そんな情けない声出すな」



「・・・月島の頭の事についてはスルーなんだ」




さて、馬鹿な雑談で時間を潰し、再度行事の進行具合を確認する。


・・・何故か転校生が進行役になっていた。

まわりの反応から大体察する。

どうやらクラスの中心に置いて周りの顔を覚える事・・・主に困ってあたふたする姿が可愛いらしいからだそうだ。

そして誰も手伝わない所が腹立たしい。




「月島、行ってこい。同じ転校生同士だし、アレはあの様子では流石に1人じゃ無理だ」



「そうだね、ちょっと行ってくる」




月島がシャルに手伝いを申し出た。

どうやら申し出を受けたようだ。


少し眠いし寝るか・・・




机で俯せになったが5分も立たずに揺すられる。




「犬童 起きろ、呼ばれてるぞ」



「ん?なんだ小崎」



「代表の月島からご指名がかかったぞ」



「は?」




人の視線が俺に集まる。

何故こうなった。




「何の指名だ」



「春闘祭のメンバーに決まってんだろ」



「雅人がいれば心強いんだ」



「断る」



「そこを何とか」




はぁ、ならば利害の話をしてやるか




「なぁ月島よ、よく考えてみろ。俺は敵が多い必然的に俺がいるチームが狙われる。勿論生徒会の奴等も狙ってくるだろう」



「確かに今まで色々やってきたからなぁ」



「何他人事でいる お前も共犯の場合も多いだろうが」




小崎は口笛を吹いて素知らぬ顔だ。

睨むと額に汗が浮かぶ、まぁ戯れはこの辺でいいか




「だから俺が参加すると碌なことはないぞ」



「協調性も皆無だからな」



「お前は黙ってろ」




小崎の奴今回はやけに突っかかってくるな

そんな事を疑問に思っていると馬鹿が爆弾を投下した。




「でも雅人だったら何とか出来るだろ?」




・・・・・・・・・・・・・




「お、おう、清々しい程に他力本願で 清々しい程にクズいな。本当に怒りを通り越して呆れたよ」



「酷いなぁそんないい方しなくとも」



「いや、酷いのはお前だからな?」



「本当に仲が良いんだね」




・・・・・・・




「誰だお前」



「あ、初めましてシャル・ノーエルです」




彼女はわざわざお辞儀をして自己紹介をした。




「いやいや、犬童今日転校してきてただろ?」



「ああ~・・・こんな顔だったか?」



「犬童、お前も最低のクズだぞ」



「なんだ知らなかったのか?」




何故か笑われてしまった

ウケを狙ったわけではないのだが・・・




「それにしても君は出来ないとは言わないんだね」



「ん?何の話してんの?」



「さっき月島君が彼に丸投げした時に出来ないとは言わないんだなぁと思ったの」




・・・・・・・・・・




「そうなのか雅人!?」



「確かにできない事もないが俺は出ない」




先程協力すると言った、だからなのだ。

実際に俺が協力した場合、たとえ月島が活躍して勝利しても俺がいる事で(マイナス)に映ってしまう。

月島だけの場合だと能力者として周りから認められるだろう。




「確かこの学校には決闘という制度があったよね」



「シャルちゃん、まさか・・・」



「僕と決闘してくれないかな」




先程まで騒がしかった教室に静寂が訪れた。

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