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龍ヶ峰 葵と交代する。


「そちらの進捗具合はどうですか?」



「思ったより筋がいい、これは面白い逸材だ」




剣の加護というぶっ飛んだ異能を持っている錬がそこまで月島を評価するというのは予想外だった。

月島は元々体術のみで戦うスタイルであるのだが、それでは中遠距離相手には苦戦を免れない。

体術で足りないリーチを補う為に一般的な剣術、その後槍術などなるべく月島に合う武器種を探していくつもりだった。

そのつもりだったが錬がここまで高評価するなら剣術を集中的に鍛えて貰うのも悪い手ではない。




「お前は今まで体術メインだったが、剣術も扱えれば戦闘の幅が広がる。だから扱えるようになれ。あと継続戦闘の意識もそろそろ持て」



「継続戦闘?」



「1回の戦闘に全力集中しているが、その後に戦闘が無いとは限らない。怪我をしないような立ち回りを意識することから始めればいい」



「今まで全力全開だった人間がいきなりは難しいでしょう」



「すぐに出来るとは思っていない だが、手を付け始めていないと人間は忘れる」



「継続戦闘云々はともかく、怪我をしないように戦うのは正しい事だ。剣の扱うのであれば峰打ちの仕方も覚えさせよう。実際に結構使用頻度が高いからな」




確かに実戦の殺し合いでなければ峰打ちにする必要が出てくる。

それは相手を殺す事より難しい事、しかし、月島には相手を殺す覚悟がある筈も無く、峰打ちの技術は月島にとって必須技能と言える。




「私の見立てでは月島様は目がいい方ですが、それを活かし切れていないように見られます」



「確かに手加減しているとはいえ、俺と打ち合えているのが証拠だな」



「今まで使った事がなかったんですが、何だか剣を使うのがしっくり来てて・・・自分でも驚いてます」




今まで月島を鍛えていた筈が、別の鍛える予定になかった人間が育ったりしていた。

そして肝心の月島の成長は微々たるものだった・・・

全くと言っていい程労力に合わない成長度合いだ。

ここに来てやっとまともに伸び代を感じる事ができている。




「今回はお前に合った武器を見つけ、剣のエキスパートから師事してもらえている。十分な収穫・・・と言いたい所だが、さっさと使い物になってもらわなければ話にならん。そしてこれくらいで躓くようならお前の目標の生徒会も夢のまた夢だ」



「生徒会に関しては僕からお願いした事だし、それに自分でも剣の上達が実感できる。それがとても楽しいよ」




そりゃ、剣の加護を持っている錬が相手をしているのだから上達はある程度見込める。

勿論、ふざけていないというのが前提であるが・・・




「とにかく、本人が楽しんで取り組む事が出来ているのなら上達も早いでしょう」



「手加減しているとはいえ、俺と剣で相手をしていて楽しいか、それは初めての感想だな。」




他からは悪くない印象である。

このまま錬に師事させるのがいいだろう。

今まで錬に対して弟子入りを希望する者は数多くいた。

しかし、長続きする者は終ぞ現れなかった。




「もう弟子を取る事は無いと思っていたけれど、これは・・・」



「よし月島、お前錬様の弟子になれ」



「え!?でも龍ヶ峰さんは忙しい方なんだろ?」




基本龍ヶ峰の人間は忙しい

だが、それは大人の話だ。

錬、葵の両名は実はそこまで忙しい訳ではない。

社会勉強という事で色々と飛び回っているだけだ。

実際に時間を作ろうと思えば融通の利く立場にいる。




「使用人の我々も協力すれば錬様の時間を作るのは容易かと」



「ああ、時間的には問題ない。月島君は鍛え甲斐がありそうだ 喜んでやるよ」



「よ、よろしくおねがいします!!」




話が一段落したのを見計らっていたのか、参加している使用人とは別の私兵(しようにん)が知らせを伝えにきた。

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