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石神達と別れてからヴィスタ達に与えている部屋に向かうと、案の定2匹は興奮状態だった。
「落ち着け、そんなに興奮している状態でお前達の相手なんて出来ない」
散歩にしろ、模擬戦にしろコイツ等が手加減をしてくれなければ全くもって相手にならないのである。
コイツ等は賢く、少しずつ難易度を上げていって貰っているのだが、未だにコイツ等に対して優位に立ったことが無い。
何でこんなに強いのにあんなクズな奴らに狩られているのか疑問である。
勿論、原因も判明しているから理解は出来るが、何故そんな仕様になっているのかの原因が一切分からない。
俺の言葉に対して2匹は興奮が抑えられないらしい。
これは覚悟しなければならないだろう。
「・・・今回は模擬戦にするか、どっちから来るんだ?」
コイツ等に与えた部屋はコイツ等の戦闘に使う部屋でもあるのでコイツ等もそれを理解しているのか、必要以上に破損させたり、魔法で汚したりしない。
その時点で手加減してもらっているのだが、それでも未だに勝てない。
どうやら狼の方のヴィスタが来るようだ。
「きゃんきゃん!!」
「さて、―――やるか」
子狼はまず小型の状態で立体駆動で突撃を仕掛けてくる。
それは想定内なので避け際に膝蹴りを叩きこむ。
俺の中でいい攻撃が入ったと思っていたがしかし、子狼はゴムボールのように跳ね続けて再度こちらに突進を仕掛けてくる。
俺の攻撃はコイツにあまり効いていない。打撃攻撃は先程のように跳ねて衝撃を逃がしているからだろう。
ならこれの攻撃はどうかな?
「ぎゃう!?」
遊び感覚で油断し切っているからか簡単に決める事が出来た。
肘と膝の間に挟み込むように叩き付けた。この攻撃は衝撃を逃がす事が出来なかったようだ。
今回はいいダメージを入ったと見ていい。
しかし、善戦出来たのはそれだけだった。それからは一方的である。
「前回とは違うやり方だったな、今回も楽しかったよ」
今回も敗北したが、このヴィスタの新しい動きが見れた。それだけでも十分な収穫だ。
次回はもう少しコイツの動きについていけるだろう。
次は蜘蛛との模擬戦だ。
蜘蛛との模擬戦は狼よりもっと難易度が高い。
実際には戦闘回数が少ない事が原因であるし、そもそもコイツと出会うまで蜘蛛相手に戦闘を行うと想定していない。
狼型のヴィスタは獣型で一応戦闘の想定内である。・・・蜘蛛型とか本当に想定外だ。
「今回もいつも通りの条件でやるからな」
正直に言うと蜘蛛らしい戦いをされると割と瞬殺される。
まず蜘蛛の糸を使われると絶対回避をしなければならず、その時点で後手に回ってしまう。
そしてこの蜘蛛身体能力も狼と得意不得意の違いはあれど、あまり遜色がない。
瞬発力、跳躍力は蜘蛛が上回っている。その分持久力や耐久性などは子狼を下回る。
蜘蛛は壁や天井へ跳躍して俺を翻弄していく。
ただ速いだけなら既に月島の異能で慣れている。
「シャァァ――!!」
背後から前足の鎌腕を振り下ろすが、予想出来ていた事なので回避。
その後、蜘蛛に回し蹴りのお返しをする。
蜘蛛は盛大に吹飛ぶ。瞬間的な機動力に長けている蜘蛛はその装甲が脆い。
そのまま畳み掛けたい所なのだが・・・
「お前いつの間に仕掛けていたんだ」
俺の左腕と右足に蜘蛛の糸で絡め捕られていた。
少し抵抗して動いてみるが、外れない。
魔断の刃物を使えば切れるのだろうが、研究段階でナイフしか製造出来ていない。
「――俺の降参だ」
模擬戦終了後、蜘蛛の糸から抜け出し、ヴィスタの様子を見る。
見る限り2匹のヴィスタはある程度満足してくれたようだ。
さて、これから飯を軽く済ませたら、月島達と合流してあっちの特訓もしなければな




