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「一本獲れたと思ったのですが・・・それはズルくないですか」
振り下ろした木刀は半ばから折れて先が無くなっていた。
俺が振り下ろした木刀は剣の加護を纏った無理矢理の態勢で放たれた錬の木刀の突きによって折られてしまった。
「いや、いつもは真剣でやっていたことだったが・・・木刀で出来たのは初めてだ」
「どういうことですか?」
どうやら今までは武器に力を纏わせるという行為は真剣でしか出来なかった様で、以前木刀に試した時は木刀が使い物にならないくらい派手に四散したそうだ。
そこから考えられることは2つ
1つ目は木刀の質が良質な事
2つ目は龍ヶ峰 錬の異能が強化又は進化した
恐らくは2点目が濃厚だ
「・・・とにかく続行不能ですし、私の敗北という事ですね」
「こちらが用意した武器が破損してしまったからには決着なのだが、それは勝ちを譲られるのは気に入らんから引き分けとしようか」
その言い分だと暫くしない内に決着を付けようと言われるのが目に見えているが、その際もコイツの鍛錬に付き合ってもらう事にすれば採算がとれるだろう。
「もういい時間ですし、切り上げましょう。月島、お前は泊まり込みだから終わりじゃなくて休憩だ」
先程まで近くで俺と錬の試合を見ていた月島は驚いた顔を、そして石神は慌てて辺りを忙しなく見回している。
「あのすみません、今何時ですか?」
「今は19時ね、何か用事があったの?」
試合が終わったのを見計らって入ってきた葵が今の時間を告げる。
「友達のお見舞いに行く予定だったんです!すみません失礼します!!」
そう言って走り去ろうとした時、一度止まり、俺の元までやって来た。
「あの、明日も来てもいいですか?」
「ええ、構いません。ですが、私が相手出来るのは手が空いている時に限ります」
「はい!!・・・・えっと、あの・・・」
元気よく返事をした後、まだ何か言いたいのかこちらを見て何か言い淀んでいる。
その場合はこちらから聞き出すのが手っ取り早い
「はい、なんでしょうか?」
「あの、これからお見舞いに行く友達に会ってくれないでしょうか」
・・・・・・・・・・・・・
「それは一体どういう意味ですか?」
「私の友達、今不登校なんです。心ちゃんっていう子で、能力の関係で周りから敬遠されてしまって、敬遠されるだけなら良かったのですが、そのままいじめにまで発展してしまってからはもう手の施しようが無く」
周囲から排除されるほどの能力者となると公害的な力か、常軌を逸した力、悪用が容易な力、どれも使い方次第だ。
しかし、何故俺に会わせようとするのか疑問だ。
「何で彼に会わせたいんだい?」
俺が聞きたい事を僕ッ娘が聞いてくれる。
「それは・・・犬童さんなら力になってくれると思ったからです」
「「「「「え?」」」」」
「以前、貴方に助けられた事がありまして」
「・・・記憶にないな」
「はい、私は助けられたその他大勢の1人でしたから」
その他大勢を助けた覚えも無い。
大勢を助ける?その記憶すら無い、可能性があるとすれば・・・・・本当に心当りがないな、人違いではないか?
その件は置いといて、イジメにまで発展する能力とは気になるな。
今日までの予定は全て消化しているのでスケジュール的には問題は無い。
「この後の予定は無いので付き添いとして同行は可能だ」
「いいのですか?」
「え!!行くんですか!?」
「ああ、問題無い。月島の鍛錬は錬様に頼んでいる。サボれると思うなよ」
ビクッと反応する月島
恐らく暫くは休めると思っていたのだろうが、きっちりと扱かれてくれ




