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「えっと・・・何だか大変な事になっちゃったなぁ」




恐らく僕ッ娘は以前の訓練の事を思い出しているのだろう。

その際に錬にボコボコにやられておもちゃにされている。

月島も同様の気持ちだろう。




「巻き込んですまないが、全国有数の実力者が相手してくれると思ってくれ」



「とか言って、最初僕の事を売って逃げようとしなかった?」



「本当に逃げるのつもりがあったのなら錬様の相手を増やすという手は悪手過ぎる。純粋に錬様の相手をさせるのに役不足にもほどがある。そして石神が不憫でな、生贄仲間を作ってやろうとな」




僕ッ娘が「うわぁ~・・・」と引いていた。

僕ッ娘が何と言おうともう参加は決定しているので諦めるように伝える。




「ほむちゃん大丈夫かな?」



「あっちは結構いい勝負しているだろうな」




2人してあちらに混ざっておけば良かったと気持ちを同じにしていた。






そうして訓練部屋に到着した。




「来るのが遅いぞ」




何となくだが予想はしていた。

俺と僕ッ娘の2人が部屋に向かうことになってから到着するのにかかった時間は約5分

訓練部屋に入ると既に月島と石神が()されていた。




「始める前に行動不能になっている」



「・・・では葵様お願いいたします」



「はい、承りました」




とにかく彼女の力で回復してもらわなければな続けられそうにない

戦闘不能から2人が復帰するのを待つ。




「ま、雅人 初対面で錬さんの相手は些か厳しすぎるんじゃないのかな?」



「ケアに葵様がいて、殺し合いではなく手加減をされている試合なんだぞ?厳しいなんてことはないだろう・・・だが月島の言う事にも一理あるかもしれないな」




俺の台詞に月島だけが明るい顔をする。

僕ッ娘は諦めきった表情を、石神はまだやれるといった表情、錬は何を余計な事を言っているんだという表情。




「じゃあ、初対面じゃない月島だけに相手をしてもらおうか?」




その一言に月島が絶望の表情を浮かべる。




「嫌なら反論するな、そもそもお前には発言権なぞ無い。木刀を持った錬様並に強くなってから言ってもらおうか」




錬の剣の加護は武器の質によっても効果が変動する。

名剣なら強大な力を発揮する、ただの剣ならそれなりの力が、木刀なら制限された力が、木の枝の剣ならしょぼい力が与えられる。

しかし、錬の素の力があった。剣を扱う才能があったようで木の枝でも相手を戦闘不能に追い込める程だ、耐久力の無い枝などでは一撃で意識を刈り取るのが主な行動だ。

今回は竹刀を使ってもらっているが、異能としての効果はかなり低いだろう。




「さて、では全員でお相手願いましょうか錬様」



「ああ、望むところだ」






結果だけを伝えるのなら惨敗と言える。

月島、僕ッ娘、石神は床に転がっていた。

葵も疲れて床に座っている。




「さて、ウォーミングアップも済んだし・・・やろうか犬童」



「流石錬様、体力お化けですね」



「そう褒めるな」



「褒めてないです」




先程までの試合内容は指示として、月島と石神には2人で連携するようにと伝え、俺と僕ッ娘が合わせるといった作戦だった。

勿論初めての連携に慣れない月島と石神だったが、似た能力だったことから3回シバかれてからはいい形にはなって来ていた。僕ッ娘には難易度の高い注文だったが2回目には対応出来ていた事には驚いた。僕ッ娘の能力上他人に合わせる事が多いからだろう。

石神は・・・うん、連携する事に終始慣れなかった様子だ。序盤は月島に激突する事がしばしば、後半は大分良くなった方だ。

石神は後で個別で見てやった方がいいな。




「お前は随分と手抜きしていたな」



「手抜きはしてませんよ、私の攻撃は殆ど当てていた筈ですよ」



「ああ、お前の攻撃全てが効果的だよ。態勢崩しから隙に狙う的確な攻撃がえげつない・・・だがそれ以外働いてないだろ」



「基本一撃離脱型にしないとコイツ等の練習にならないので」



「練習が終わったなら―――やろうか」




壁に立てかけてある木刀を手に取り、竹刀と入れ替える。

コイツ等の練習試合に付き合ってもらった手前、コレを断る事は出来ない。




「わかりました。葵様はあと2回能力は使えますか?」



「少し時間を貰えれば大丈夫よ」



「なら大丈夫そうですね。ではやりましょう」




錬と同じように木刀を手に取る。

両者木刀を構える。その光景を月島、僕ッ娘、石神、葵が真剣に見つめている。



先程の竹刀では剣の加護は軽い身体強化程度であるが、木刀の場合、身体強化が洒落にならない程上がり、剣技の方も補正が入るとか。

以前でもそうだが、剣技だけの勝負では打ち合い2合で負けが確定する。

少し危険な橋でも渡ってみるか。





「では始めましょうか」




その言葉で錬の姿がぶれる。


半歩横に逸れて回避、すかさず剣を斜めに構えると衝撃が加わる。

それにつば競り合いなどせずに受け流す。

受け流した際に錬の態勢が崩れる。そこに一撃を加えたいのだが、以前使った手であり対策済みであるだろう。視線はしっかりとこちらに向けて俺の攻撃を待っている。おそらくカウンター狙いか。

ならば・・・




「なっ!?」




崩し気味の態勢である足を更に足払いで転倒を狙う。

狙い通り、綺麗に転倒してくれた。

予想外の事態で受け身も取れていない。


狙うならここしかないな


転倒した錬に勢いよく木刀を振り下ろした。

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