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翌日
拠点を変え、いつもと登校する道ではない為、すこし新鮮さを感じながら登校する。
勿論、これから起こるであろう事態についても思案している。
そして校門のど真ん中に陣取っている知り合いを見つけた。
「よぅ月島、どうしたんだ?こんな所に突っ立って」
「雅人、聞きたい事があるんだ」
「どうしたんだ いきなり改まって」
「雅人・・・君は何をしてたのか分かっているのか?」
「何をしたか、だと?・・・何の話か見えないな」
俺はまだ何も始めちゃいない、始める為の準備を進めているだけだ。
コイツが俺を怒るような事・・・・ダメだ、心当たりが多すぎて皆目見当がつかない。
「一体朝から何を騒いでいるんだ?」
「昨日、ここで起きた事を忘れたとは言わせないぞ」
「昨日の朝?ああ、あの下らない事か」
「く、くだらない・・・だと?」
「お前があの生徒会長に何を言われたか知らないがその件について俺に非はない」
「確かに会長からきっかけは女子生徒からだと聞いたが、何もあそこまで人を傷つける事無いじゃないか!!」
「傷?傷が残るような事はしてないと思うが」
「違う!身体の事じゃなく心の話だ、彼女はショックで口も聴けない状態なんだぞ!?一体何をしたんだ!!」
やはりコイツ、正確に昨日の事を把握していない。
コイツの悪い所は人の言う事を愚直にも信じる事だ。
信じる事について悪いとは言わない、しかし、コイツは一部も疑わないのだ。
「だいたい会長から何を言われたか分かった・・・お前自身それを確かめたのか?」
「確かめる?」
「お前は他人から聞いた事を事実だと鵜呑みにするのか? 何故自分で確かめようとしない」
「そ、それは・・雅人に直接聞けばわかる事だ」
「話にならん」
俺は月島を素通りし、校舎に向かうがその月島に腕を掴まれる。
月島を見返すとこちらを睨んでいた。
「雅人、ちゃんと話してくれ」
俺は月島の腕を振りほどき、今における事実を告げる。
「この話は放課後にしろ、でなければ―――」
学校の鐘が鳴り響く。
「遅刻するぞ」
「いつの間に!?」
既に周りには殆ど人がおらず、HR5分前の鐘なので急がなければならない。
「俺は遅刻しても構わんが、お前は転校したてで遅刻するわけにはいかないだろう?」
「くっ・・・雅人、あとでちゃんと話そう」
「ああ、放課後にな」
月島は走って昇降口に向かってしまった。
それに対して俺は急がない、月島にああは言ったが勿論遅刻するつもりは毛頭ない
確かに今から普通に行けば遅刻するだろう。
HR開始の鐘が鳴る。
ギリギリで月島が教室に入ってくる。
そして月島がこちらを見て驚いていた。
俺は扉の前で呆けている月島を中に入れ、 (鍵を)閉めた。
「よぉ月島、早々にギリギリの登校か?」
「何で雅人が僕より先に教室に・・・」
「この教室は中央階段からもっとも遠い、だが非常階段を使えば大幅なショートカットになる」
落ち込んでいる月島に小崎が話しかける
「ん?なんだ月島は馬鹿正直に校内の階段から上がってきたのか?損な事してんな」
憐みの目をされていた。
この会話を聞いて周りからも生暖かい目で見られていた。
その事に気づき、顔を赤くし、俺に文句を垂れる。
「何で教えてくれなかったんだ!」
「いや、聞かれなかったしな。それに周りに殆ど人がいなかったが、いない訳じゃない 彼らは少し急いでいた程度だ。勿論小崎もいた」
「え、バレてた!?」
「俺を隠し撮りしようなんざχ年早い、勿論わかっているな?」
「今月はピンチなんだ、何としても売り捌くぜ!!」
小崎は俺から離れ、教室から逃げ出そうとする。
扉に手をかけたがしかし、扉は開く事はなかった。
「ん?鍵かかってやがる!?」
開錠し、扉を開ようとするが開錠する際のタイムロスで俺が追い付かない訳がない。
小崎を捕縛し、隠し持っていたカメラを没収する。
「返せ犬童!そのカメラにいくら掛かってると思っているんだ!!」
「ふむ、この型だと10万は軽く飛ぶな、それに改造までしてあるな、視界補正がかなりかけてあるな お?このパーツなんて7万するんじゃないか・・・合計20万くらいだな」
「おうよ!!そのカメラは20万3980円だ」
「そうか」
小崎は懇願のポーズで俺の前に跪く。
「小崎・・・俺がそんな事すると思うか?」
「うん」
俺の手にしていたカメラがガシャンと音を立ててスクラップへと変貌した。
「のののぉぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」
「さすが小崎 分かってるじゃないか」
「わかりたくなかったよ!!」
俺は周りにバレないように小崎にアレを使う事を伝えた。
小崎は一瞬驚きを顔に出したがすぐに元の顔に戻った。
「それは悪い事をした、後で俺が使っている試作品をくれてやろう」
「マジか!?」
「ああ、ちゃんとテストが済んだらな」
「犬童の試作品、楽しみにしてるぜ」
月島に向き直り、先程の話を続ける。
「話が逸れたがお前に言いたいのは他人の話しを信頼するのはかまわないが信用するな、根も葉もない噂に騙される事もある。自分の見たものは信憑性は高い。百聞は一見に如かずという言葉もあることだしな。俺はお前にこれ以上は何も話すことはない、何かあるなら放課後にな」
それ以上は月島をいない者として扱い、放課後まで無視し続けた。
まぁ、その事について怒りを感じていたようだが諦めたのか大人しく放課後まで待つだろう。
放課後の間に月島を唆すだろうから俺は小崎に放課後のあとの話をした。
そんなこんなで放課後
場所は校庭
「おいおい、放課後から少し時間を空けた筈なんだが・・・なんでこんなに外野がいるんだ?」
「僕だって知らないよ 雅人が呼んだんじゃないのか」
俺が指定した場所に大勢の生徒が集まっていた。
中には教師も居たりする。
何やってんだか・・・
まぁ大体の予想はついている。
コイツが能力者だと知り、尚且つこれだけの人数を誘導できる者
まぁ、邪魔をしないなら問題はない
「さぁ雅人、放課後まで待ったんだ。話してくれ」
「ん?話?何の話だったかなぁ?」
「とぼけるな!!雅人が傷付けた女の子の事だ」
「俺が傷付けた・・・ねぇ」
確かにコイツが言っている件も覚えている
だがコイツは何も知らなさ過ぎる。
正確に俺が何人壊してきたか、俺以外知る者はいないだろう。
俺と協力してきた龍ヶ峰でさえ正確に把握していない。
「雅人、本当に覚えていないのか?」
「じゃあ、逆に聞くがお前は今まで殺した害虫を覚えているか?」
その言葉を聞き、月島は拳を固く握りしめる。
「雅人、本気でそんなことを言っているのか」
「害虫を害虫と呼んで何が悪―――」
俺が言葉を言い切る前に月島が俺に拳を振るった。
相変わらず訓練しているのか、その拳は鋭かった。
俺も油断していたが、予想していなければ諸に食らっていたかもしれない。
月島も自分の拳に反応出来ると思っていなかったのか、唖然としてしまっていた。
「なるほど、話し合いじゃお前が納得しないから実力行使に出たのか」
「ち、違う!!」
「おいおい、そう否定するなよ。俺は嫌いじゃないぞ、そういう考え」
「?」
「己の欲望に忠実でな、最も人間らしいじゃないか。それにお前は暴力が有効だと思ったんだろう。俺はお前と殴りあって勝った事はなかったからな・・だが今は違う。」
今度は俺から月島に殴りかかる。
月島も殴りかかった俺に対する型を用意していた
「ほんとお前は分かり易い奴だな」
月島の間合いに入る瞬間拳を引っ込め、月島の懐に入り、肘での打撃を打ち込んだ。
所謂フェイクである。