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それからは特訓自体はノンストップで続けさせた。
剣を扱うにあたってそもそも基礎を知らないので錬の扱きの合間に基礎を教える。
錬の教え方も中々様になっている。
「君達は中々教えやすいな」
「そうですか?」
「ああ、予め犬童から3人の特徴を聞いていたのもあるからかな」
確かに指導してもらうのだからして貰う側の情報はあった方が断然いい。
春闘祭で約束を取り付けた翌日に資料を送っていた。
目を通してくれていたようだ。
「な、内容が気になるな・・・どんな風に言われてるんだろう僕」
「えっと・・・僕ッ娘さんは――」
「シャル・ノーエルです!」
何を大声で言っているのだろう?俺に僕ッ娘と呼ばれているのに、錬には呼ばせたくないのか?
俺に対しては・・・もう諦めているという訳か
「失礼、シャルさんは他の2人に比べると基礎身体能力は著しく低いが、能力でカバーしている事と、犬童にしては珍しく学習能力が凄く高いって褒めてたよ」
「え、えへへ・・・///」
確かに学習能力や向上心に対して褒めてはいたが、ダメな点を指摘していた内容の方が多く書いた。何故そこを指摘しないんだ
「赤城さんは身体能力が高く、反射神経に関しては群を抜いているとか。能力も炎で応用が効きやすい」
「反射神経?アタシが?」
どうやら自分では気づいていなかったらしい。
というか剣についても記載した筈だが、そこにも触れないのか
錬の教育方針は褒めて伸ばすようだ
「月島君に関しては・・・・」
「え?何ですか!?」
「簡単にまとめると基礎能力と潜在能力が大きいが、現在はとても残念・・・かな」
「うぅ・・・再開してから雅人に褒められた記憶がない」
「そんな事を言うのなら、お前が活躍している姿を見せてくれ」
「はい、頑張ります」
そんなやりとりをして錬と僕ッ娘、赤城に笑われてしまった。
その後は訓練を再開して、時間が過ぎて行った。
「これで少しは皆剣を扱えるようになったな」
皆、大の字に倒れていた。
錬は涼しい顔をし、葵は少し汗をかいているだけ。
俺自身は見て、アドバイスをしているだけなので何ともない。
「葵様から回復を受けているんだろう、さっさと立て」
「いやいや、雅人。回復されてても疲れは溜まるんだよ?」
「立ち上がっていないのはお前だけだ」
僕ッ娘と赤城は立ち上がっていた。
「少しずつだけど、剣が使えるようになってきてるのが分かるから、僕はまだ頑張りたい」
「シャルが頑張ってんのにアタシがへばってるわけにもいかないね」
2人は気合を見せてくれている。
「月島、お前は気持ちの時点でこの2人に劣っている。この2人を見ても尚休憩が欲しいか?」
月島は頭を掻きながら立ち上がる。
「そうだね、皆に負けてられないね」
「じゃあ早速、再開しようか」
そうして特訓は続く。




