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~翌日~
春闘祭の翌日は休み。
昨日表彰などもあったが、龍ヶ峰邸に到着した時点でもう終わっていた。
そして昨夜、僕ッ娘から連絡が来ていた。
明日、学校で話があると。それが今日である。それに対して返事を送っていたのだが終ぞ返事が返ってくる事は無かった。
恐らく、負けてしまった事の報告だろうと予想は付く。
しかし、しかしである。
「時間が指定されていないから早く来てしまった」
学校という場所の指定だけで学校の何処と書かれていなかった。
正門前で待っているが、すれ違う可能性もある。
タブレットを持ってきているので、時間は有効に使える。
やらなければいけない事もコレ1つで出来るので問題はないが、はっきり言って未だに昨日の疲れが抜けきっていない。だから野外で長時間待たされるのは・・・まぁいいか。
「今の俺はそれが全く気にならない程機嫌がいいって事か」
2時間ほど経つと僕ッ娘はやってきた。
俺を見つけると駆け足で俺の元に来た。
「ご、ごめんなさい。」
「それは何の謝罪だ?」
「えっと・・・まずは僕の送ったメール以降連絡が取れなくなった事、時間指定もしていなくて場所指定も曖昧だったので待たせてしまった事、それと・・・・・春闘祭で負けてしまった事です。」
僕ッ娘は俯いて、最後の件は尻すぼみに声が小さくなっていた。
そういえば僕ッ娘と赤城にはこの春闘祭で優勝できなければペナルティを科すようにしていたんだったな。
「まず最初の2件な」
手に持っていたタブレットで軽く頭を叩いた。
「これでいい」
そんなに痛くないだろうに頭を押さえて上目使いでこちらを見る。
「はい・・・」
かなり落ち込んでいるようだ。
春闘祭で敗北し、謝罪をする為に呼んで、遅刻・・・かなり酷い惨状だな。
「春闘祭の件、あれはもう気にしなくていい」
「え・・・?」
僕ッ娘の反応は正しい。前者2件も酷いが、あそこまでお膳立てして生徒会長1人に全員抜きされたのだから。
「そもそも俺が予備メンバーに組み込まれた時点で破綻していた、優勝の目的は月島を宣伝して生徒会に入りやすくする為だったが・・・台無しになった。僕ッ娘と赤城には悪い事をした。昨日の失敗で俺は何も言わん、目的失敗はお前達の所為じゃない」
それを聞いた僕ッ娘は大きく息を吐いた。
おそらく、安堵の息だろう。達成出来なかったら奴隷のように扱き使うというリスクもあるからな
「良かった、怒っているんじゃないかって心配してたんだ。」
「ああ、用件はこれで終わりか?」
正直このやり取りならばメールだけで済ます事も出来たが、こうして直接謝りに来るという所は好ましく思う、呼び出しの際に不備が無ければもっと良かったがな。
「はい、君はこの後予定があるの?」
「ああ、まだ時間はあるが再戦の見届けがな」
僕ッ娘を待っている間にタブレットに連絡が入っていたのだ。
今日の放課後 再戦をするので来てほしいと。
研究施設のタブレットから送られている。俺が龍ヶ峰邸にいなかったため、研究員の誰かを捕まえて送らせたのだろう。
「再戦?」
「プライバシー的にはあまり言えない事だった、忘れてくれ」
龍ヶ峰家の情報はなるべく何事も漏らさないようにしなくてはならないのに、少し気が緩んでいるな。
「君の教え子さんかぁ・・・見学してもいいかな?」
「見学は出来るだろうが、中等部の試合で場違いな雰囲気だろうな」
「年下、中学生に指導してたの?」
大きく目を見開いて驚いている僕ッ娘
確かに学校において友人はかなり少ない。
それなのに中学生を指導しているのに疑問と驚きがあるのだろう。
「以前世話になっていた恩人に頼まれたからな、断れるわけもない」
「お世話になったって事は龍ヶ峰さん?」
「・・・よく分かったな」
「以前君から龍ヶ峰に世話になっていたって聞いてたからね、なんだか馬鹿にされた気分だよ」
俺が言い当てられ、驚いていた事に対して僕ッ娘は拗ねているように返事を返していた。
「それは失礼な事をした。月島を基準に考えてしまったから つい、な」
確かにあの学習能力が著しく低い月島と比べられるのは失礼なことだ。
俺がそんなことをされたら相手をどうしてしまうか・・・想像が出来ない。
「こんな事言ってるけど月島君に悪いよね」
「・・・?何が悪いんだ?」
「あ、うん。君はそうだよね」
一体何を1人で納得をしているのだろう
月島に悪い?一体何に罪悪感を?
「それにしても見学か、本人確認も出来ていないが後々の事を考えるとそれもありか」
「いいの!?」
何をそんなに驚いているのだろうか?龍ヶ峰家が相手だから通らないとかそんなところか
「指導している立場だからな、今後の事を考えて顔を合わせてもいいだろう」
「君が指導した子かぁ・・・きっと強いんだよね」
「現段階だと月島達と試合をすればいい勝負をしそうだな」
月島達に比べると持っている資質は凛の方が大きい。
しかしだ 僕ッ娘、月島、赤城の三人を同時に相手させるには少々分が悪いだろう。
凛側の陣営に足りていないモノは近接戦闘力
奇しくも一番最初に凛が手に入れようとしたものである。その時に限り俺が入・・・俺一人で壊滅させられる可能性があるのにそれは無意味だな。
月島達にやる気を出させる為にどうせなら年下の方が効果的だな
「我ながら馬鹿な発想だが・・・試してみる価値はある・・・か」
「急にどうしたの?」
「いや、何でもない」




