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月島が相手をしているもう片方
相手チームの残り二人は敵の拠点を目指していた。
しかし、その行く手はすぐに遮られる。
「目の前に炎、という事はこっちに貴女が来たのね」
「私的にはあっちの男の子の方が良かったかな」
2人の目の前に炎の壁が出現し、後ろから赤城が現れた。
「アタシじゃお気に召しませんでしたかね先輩」
「貴女はただの炎使い、結構対策を練るのは簡単なのよ」
「先輩、今アタシご機嫌斜めでね。あんまりこういうの好きじゃないんだけど先輩達に八つ当たりするね」
「なんと身勝手な後輩だろうね、いいわ。でもその八つ当たりで自分が砕けないようにね」
「あんまり挑発するな、後輩でもアレは組織の上位者だっけ?」
「その情報は確かなの?ただのお飾りにしか見えないけどね」
「今までで私の情報が間違っていた事がある?」
「ま、まぁ、無いけどさ」
「へぇ、そっちの先輩は物知りだね」
「情報の重要性は知っているからね」
その態度、アイツに似ているからねぇ・・・無性にむかつく。
「へぇ、先輩達に調べられるなんて随分慎重だね」
「ええ、犬童の参加するチームだもの下調べして用心するに越した事は無い」
「またアイツか・・・もういいや、始めようぜ先輩方」
「そうね、貴女に時間をかける訳にはいかないからね」
「言ってくれるね、じゃあ、アタシもちょっと本気出すから先輩死ぬんじゃないよ」
もう何も考えず、特大の火柱を生み出した。
この特大の火柱の範囲は半径20m近く、火柱を生み出した際に先輩2人が避けた気配はなかった。
元々避けさせる範囲で生み出した訳ではないので身動きが出来ない程度の火傷を負わす火力にした。火柱であるが故に自身も範囲に入っているため、アタシにもダメージはある。
とはいってもすぐに走れない程度の痛みというたけで少し休憩を取ればまた行動可能になる。
火柱を消すとそこには勝負相手の先輩方2人が倒れていた。見たところ全身やけどで大きな怪我はなさそうだ。
「あ~あ、いくらアタシ切り札の内の一つを使ったからってその有り様はないんじゃないか?・・・アイツなら即対応して反撃されると思ってるのにな」
いくらアタシがイラついてたからって切り札を使うことはなかったなぁ・・・多分アイツからも火柱は見えただろうし、この技はもう通用しそうにないな。
さて、月島の方はどうなったかな
~月島side~
「流石身体強化系の異能なだけあるわね」
「逃げてばかりじゃ私たちには勝てないよ」
確かに先輩の言う通り逃げているだけじゃだめだ。
何かしないと・・・
「はい、足元がお留守ね」
「うわっ!?」
足元に現れた氷に足を取られ転んでしまった。
異能を使っての移動中だった為、全身擦り傷だらけになってしまった。
「これで終わりよ」
まずい、避けないと!!
とにかく回避の為、地面を転がった先に障害物があり、それに頭をぶつけた。
そんな痛みの中、先程まで自分のいた所に氷塊が出来上がっていた。
「危なかった・・・?」
先程頭をぶつけた物がてっきり石か何かだと思っていたが、剣だった。
・・・さっきぶつけたのが刃の部分だったら頭が切れていたのかな、運が良かった。
「仕留めそこなったか」
「速く合流しないといけないんだからさっさと片付けてよね」
「わかってるって、あれ?武器なんて持ち込んでたんだ」
「え?」
いつの間にか僕の手にその剣が収まっていた。
僕いつの間に剣を抜いたのかな?
剣の見た目は特にこれといった特徴のない剣だ。
多分前回この場所を使った人の落し物かな?
この試合会場は他の学校や組織が借りる事もあり、軍事演習などに使われる事もある。
その時に付けられた傷がいたるところにある。剣が落ちている事も稀にあるのかもしれない。
「僕のじゃないけど少し借りさせてもらおう」
「慣れない武器を実戦で使おうなんて愚かな事ね」
多分、前回と同じように僕と先輩達との間には氷の壁がある筈、僕の拳で罅割れが限界だったけど、この剣でなら突破できるかもしれない!!
先輩達に異能で接近すると・・・
「ぐえっ!!」
氷壁が何処にあるか、わからずぶつかってしまった。
「ねぇ、さっきの見えた?」
「いえ、見えませんでした」
「まさか、スピードが上がった?」
そんな話をしているが月島には聞こえず、自覚もなかった。
「透明の氷が厄介だ・・・なら!!」
再度異能を発動させ、加速そして自身の目の前に剣を突きだす。
剣に氷の感触が伝わった時に剣を振りぬく。
氷の壁を綺麗に両断する事が出来た。
「よし、これならいける」
しかし、その先に先輩の姿は無く、別の方向に先輩がいた。
「あらら、ちょっとまずいかも」
「これで決める!!」
異能で先輩方に接近し、剣を振りかぶる。
「なんてね」
「うわっ!?」
地面が氷結して滑ってしまった。
「はい、これで詰み」
先輩が月島の腕と脚に触れる。
「ぐぅ・・・!?」
触れた月島の腕と脚が凍り付いてしまった。
この瞬間、僕の敗北が決定された。
「くそ、ダメだったか・・・」
「まぁ、後輩君にしては良くやった方じゃない?」
「そんなことよりさっさと拘束して合流を」
先輩の手が僕に迫ってくる。
あの手に触れられ、凍らされれば僕の負けだ。
僕が負ける?雅人以外で?こんな形で?出会ったばかりの人達に?先輩だから仕方ない?
そうじゃない、僕は雅人に任されたんだ。こんな所で負けられない!!
僕は剣と一緒に凍りついた腕を振るう 異能を使って。
「何!?」
僕の振るった腕が風を起こし、その風圧で先輩を押し返す。
「何が起こったの!?」
「凍らせた腕を振って風圧で押し出した。まさか彼の異能でそんな事が出来るとはね」
僕自身こんなことが出来るなんて思っていなかった。
・・・何か引っかかるけど今はこの機を逃す手はない!!
僕は凍らされていない足を使い、異能を駆使し高く跳び上がる。
「その足で動けるの!?」
「今度はこっちの番です!!」
更に異能を使い、二人に垂直落下
片足での跳躍の為、直接攻撃が当たらなかった。だけど落下した威力で土埃が立ち周囲が見えなくなっていた。
相手の動きをよく感じろ。
見えた!!
自身が感じた所に駆け出し剣を振るう。
剣を振るうと鈍い音が鳴る。どうやら未だに剣が凍り付き、鈍器のようになっていたようだ。
土煙が晴れると先輩は倒れており、もう一人は手を上げて降参の意を示していた。
そうして試合終了の合図がかかる。




