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翌日
俺はいつも通り登校していた。
すると校門前に人だかりが出来ていた。
「またか」
俺が人だかりに近づくと人垣が割れ、モーゼの十戒の如く道が開かれた。
因みにその人垣は男のみだったりする。
「おいおい、確かに今まで高確率で乱入してたが恒例化しないで欲しいな。で、何があったんだ?」
「見ての通りの決闘だよ」
「有良か、この騒ぎの発端はなんなんだ?」
「ちょっと騒いだ男子に女子がブチ切れた、以上。」
「はぁ・・・仕様もない事で決闘を起こすんだな」
「そりぁ、どこかの誰かさんが参戦した決闘で無敗を誇っているからね。男子もびくびくしなくなったのが気に食わないんだろ」
ああ・・・頭痛がする。
俺はこんなことの為に乱入しているわけではない
「毎回毎回私達を邪魔してる様だね」
「私達?」
「前回私の友達を負かしたそうじゃないか」
「だから?」
確かに俺は理不尽な事であるならば参戦していた。
「仇討ちに来た!!」
「ほぅ・・・それは悪い事をした そうか、死んでしまったのか・・・なんと情けない」
「生きてるわよ!!勝手に殺すな!!」
「いや、仇討ちって言ったのはおまえだろう?」
「く、いつも変な事言って・・・」
能力は相手が上 なら少しでも有利に働くように状況を作るのは必要な事だ。
「はぁ、それにお前友達とか言っているが本当はそんなに仲良くないだろ。お前はただ俺と戦う大義名分が欲しいだけだろ?」
「う、うるさい 黙れ・・・」
「そして手柄が欲しい、友達の為じゃなく自分の為に」
「違う、私は友達の為に・・・」
煽るのは大体これくらいでいいか
「まぁいい、相手してやるよ。おい どうせ、俺を代理に立てるだろ?」
当事者の男子に確認を取る。
その男子は首を縦に振った。
この高校での決闘にはルールがある。
お互い大きな怪我を与えてはいけない事や勝者は敗者に命令権を一回使う事が出来る等、ありきたりなルールだ。
女子高だったので男子と女子が決闘する際にはハンデとして男子を1人参戦叉は代理を立てる事が出来る。
というルールが最近追加された。
「私は違う、自分の為じゃない・・・友達の為なの。私は負けない!」
「はいはい、じゃあ、始めようか」
「【我、内なる力をこの手に顕現す】」
相手の女は手の平から火の玉を作り出す。
はぁ、己の手の内、能力を簡単に晒すとは・・・馬鹿な女だ。
女子はポケットから小瓶を取り出す。
「これで終わりよ!!」
それを俺に投擲した。
「はぁ・・・」
俺は女子に接敵する
勿論、小瓶から余裕を持って避ける。
それからは簡単だった。
油断せずに女子に近づくとギャアギャア騒ぎ始めた。
どうやら万策尽きたらしい、万策とも呼べない物だったが・・・
女子は降参の意を見せない為、後頭部を蹴って気絶させて終わりだ。
因みに命令は男子が馬鹿な事を言おうとしたので張り倒した。
そして命令は俺がする事になり、『この高校に在学中は男子に害意のある魔法は使わない事』となった。
「はぁ、策とも言うのもおこがましい。能力を見せびらかすだけで標的対策をしないとは・・・」
「へぇ、じゃあ、貴方は対策されたいって事かしら?」
別の女子生徒が現れたか、消耗狙いの奴らは今までいたが、今回は消耗してない事が外野からでも分かる筈、それなのに声をかけて来たか・・・
「風紀委員・・・いや、風紀委員長がお出ましか 俺に何か用ですか?」
眼鏡をかけ、制服の袖に風紀委員長と書かれた腕章
「何か用?ですって?・・・貴方はこの学校の風紀を乱している自覚あるのかしら?」
「いや、無い」
全くもって身に覚えがない
「自覚無いのね・・・貴方のせいで女子が荒れているのよ」
確かにそれなら自覚はある。
俺が決闘で勝ち続けているからだろう
「へぇ、で?俺が何をしたのが原因なんだ?」
「え?それは貴方が調子に乗っているからよ」
コイツ日本語が通じているのだろうか?
「俺が調子に乗ってる・・・ねぇ。まぁ、俺が勝ち続けている事で女子共が荒れてるのは知っている」
「知っているなら――――」
「それのどこがいけないんだ?」
「な!?」
「風紀委員長様が直々に俺の所まで来てるんだ。俺は相当な校則違反を犯したんだろう・・なぁ、俺は自覚が無いんだ、どんな校則違反したか教えてくれよ」
「こ、校則違反!?」
簡単に言えば、制服が乱れているや素行が悪いなど、そういう事を注意する話になっているが俺は何にも当てはまらない。
「なぁ、教えてくれよ」
「そ、それは・・・素行が悪いのです」
「素行が悪いか・・・自分で言うのも何ですが授業には真面目に取り組んでいますし、色々な先生方には相談に乗っていたりするのですが彼らから素行が悪いとは言われた事が無い」
そう、俺は弱みを作るわけにはいかない なら強みにしてしまえば問題はない。
教師陣は俺の味方が多い
魔法を教えている教師と言っても魔法を使えない人もいる。
彼らはそこに負い目を感じている。
そしてこの話題はお前らに牙をむく。
「先生の話によると最近授業を真面目に受けない女子が多いそうですよ。あれ?俺何かに構ってる場合じゃないんじゃないですか?」
「なぁっ・・・」
以前から聞いてはいたのだろうがどう対処していいのか分からず、まずは目障りな俺の所に来たのだろう。
だが俺が自分より風紀を乱す案件を指摘すれば、コイツは動揺する。
何故俺が相手を煽るかというと、魔法を使うには集中力を使う。
相手を揺さぶり、動揺している状態では満足に魔法は使う事も出来ないし、相手の行動も単純になり読み易い。
「うるさい!うるさい!!」
出た、頭の弱い奴はここで面白い発言が聞ける。
「男は這いつくばっていればいいんだ!私達の的になっていればいいんだ!!生きていていても何にも役に立たないクズが私に楯突くな!!」
女の周りに風が生まれる。
コイツ風使いか、なるほどな、能力"は"強いだろうな
だが使い手がこれじゃあ能力が気の毒過ぎるな。
「それがお前の本音か・・・そんな考えじゃあ、お前が風紀を乱す存在じゃないか」
「うるさい!!アンタなんか消えちゃえ!!」
女子は風を纏ってこちらに突進する
流石は風紀委員長 魔法を詠唱無しで使えるのかだが、攻撃が単調すぎる
そんな攻撃当たると思っているのか?
「こんな奴が俺達より格上だと思われていると思うと不愉快だ」
風紀委員長というからには奥の手を使うか、勝負を濁すくらいは考えていたが、それは必要無さそうだな。
突進してきた女子の足を引っ掛け、体が宙に浮く。
「クズに敗北するお前は一体何なんだろうな?・・・堕ちろ」
俺は嘲笑い、絶望した女子の顔に踵落しをきめてこの騒ぎは幕を降ろした。