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その後、模擬戦の結果は俺の敗北に終わった。
いくら遠距離からの弾幕を作ろうが魔断によって全て処理されてしまえば近距離に持ち込まれるのは時間の問題であった。
その近距離勝負はフィジカル強化されている私兵のプロにそう長くは持たなかった。
模擬戦が終了した際、観戦していた私兵達から健闘の拍手が起こり、賞賛された。「自分達には到底真似できない」と、その言葉を引き金に上官から扱かれる事になったのは必然だろう。
俺は先程の模擬戦のデータから分析を開始する為、上官の扱きは回避が出来た・・・模擬戦自体が扱きな気がしてならないがね。
そして研究室に戻り、他の研究員と共同して模擬戦から得たデータ、着用した際に試験稼働によって得られたデータを集計し、個人に合わせたカスタムしたパーソナルデータなど照らし合わせ、予想外のメリットデメリットを算出していく。
「フィジカルアシストに関しては予想通り副作用は数名の筋肉痛のみですな若」
「若ではないと言っているではありませんか・・・ええ、しかし、まだ派手な行動は上官のマリクしか行っていません。本人の感想では10、20若返った気分だと・・・この後の経過の作用に注意してください」
いくら上官が化け物であってももう年が30を越えている人間である。
副作用や反動でどのような効果が表れるか不明である。勿論自分の身体でも一応使用したが特には何もなかったが自分以外に様々なサンプルが必要だ。
「あの人なら若同様反動無しのスペック以上の性能を引き出せるポテンシャルをお持ちであると思いますがね」
「若の友達の彼は身体的にとても優れたものです。協力を仰げれば更に優秀なサンプルが取れると思われます」
「月島の事か・・・あいつにはまだこの件は話せない。月島は正直過ぎて隠し事は出来ない。この研究は秘密裏に行わなければならないモノばかりだ、情報漏洩の可能性は抑えるに限る」
それは言外に月島は馬鹿正直者過ぎて使い物にならないと言ってるようなものだが、当の言った本人は全くわびれもなく、研究員も気にしない。
「彼がダメなのなら、彼女達はどうでしょう?」
「彼女達?」
「ええ、シャル・ノーエルと赤城 焔、白鐘 シロの三名です。」
「前者二人のことは知りませんが、白鐘 シロさんはこの研究の魔力提供者です。テスターとしても協力を仰ぎやすいのでは?彼女には粗悪品しか提供出来ていないので―――」
「今のところ一つのデバイスで複数の魔法を扱える物は先ほど言った粗悪品しか実現できていないのが現状であり、こちらが開発した物の中で協力者とってはアレが最も望まれる試作品だ。・・・そうだな、アイツに以前渡した試作品の改良型をテスターとして協力を仰ぐのも悪くない」
しかし、ここで問題となってくるのが奴の危機管理である。
俺は常駐戦場の意識で周囲に気を回しているが、他人にそれを強要するものではない。ただでさえ俺自身に敵が多く、唯一の男性権力者の龍ヶ峰を監視している勢力もいないはずがない。
そんな中、無力にも等しい白鐘がこの件に巻き込まれるようになったら定期的な魔力供給がなくなる。
それはとても困る、アイツの魔力はとても質が高い。アイツ自身に適正属性が無いからかここの試作品の試験で予想される結果より高い数値を出す結果が多い。勿論他の魔力源の物と比較してでの結果である。
「そうですよ、是非協力を仰ぎましょう!!」
「そう簡単な話ではないのだぞ」
「む?」
「若が行動に移さないという事は何かしらの問題がある筈だからだ、およそその解決策をいくつか用意されててその中で今何がベストかを考え中だと思うぞ」
「・・・当たっているから何とも言えんな、解決法は主に2つ。お蔵入りのアレを完成させる事、龍ヶ峰が所有する公共施設を増築してそこで秘密裏に研究場として参加してもらう。」
「それでその2つのそれぞれのデメリットとは?」
「お蔵入りは・・・アレが完成された際、完全に犯罪に使われる事間違い無しだからだ。それにものがバレた際、絶対に奪いに強襲してくる。そして公共施設の増築だが・・・龍ヶ峰から更に資金を借りなければならない、龍ヶ峰の資金運用は完全に見張られていると思われるから避けたい所だ」
そこで手が上がった研究員、他の研究員と比べここでの仕事は日が浅いがそれでも研究員として信頼できる者だ。手を上げたのは発言を求めているのだろう。
「前にも言いましたが発言に許可を求めなくてもいいのですよ?」
「いえ、まだ私は新参者ですから・・・それで先程話に出ていたお蔵入りとは具体的に何なのでしょうか?」
「ああ、確か君がここに来る前の試作品でしたからね」
「テーマとしてはステルス化です」
「ステルス!?透明になれるという事ですか!?」
「ええ、まぁそうですね。」
「その試作品も完成したはいいですが先程の理由で結局お蔵入りですからね」
「私兵の兵装に加えれば更なる強化につながるのでは?」
「・・・上官はともかく、ただの私兵クラスに与える事は出来ない。人間何が引き金で暴走するかわかった物ではないですからね」
「研究のし甲斐がありましたな」
そうして研究談義していると別室の研究室から人が出てきた。
そして俺を見つけると俺に声をかけ、近寄ってくる。
「若、丁度良かった。先程まで飛行魔法に関して研究を進めていまして、この資料を見てください」
「ほぅ、飛行魔法ですか・・・確かに面白い構想ですね。試作品を作る価値はありますね」
「お!このノリは深堀研究ですな?」
ここではある程度個人が研究した資料を俺に見せ、通った資料は研究員総動員でその仕事に当たらせ深堀し、試作品を作り上げていく。
勿論、深堀作業で消滅する案も勿論あるがそれは比較的に少ないと言える。
「飛行魔法ですか・・・ロマン溢れますな」
「さぁ、仕事仕事!!」
「あ、それと若 対ヴィスタ用の完全防備部屋が出来たとの報告が上がりました」
その報告に俺の部屋で寝ていたヴィスタが俺に飛び掛かってきた。
先程報告の部屋は、このヴィスタが全力で動く事が耐えうる設計の部屋であり、今までの部屋は一度ヴィスタの全力を出し切る前にひび割れなどが起こり、最硬の部屋を用意した。
「では早速試すとするか」
その一言にヴィスタはきゃんきゃん鳴きながら俺の足元をぐるぐる回る。
とりあえずは―――
「一時間後に部屋の点検を行ってもらうように手配してくれ」




