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俺は机上の書類を片付けていると面白い内容の書類に目がいった。
「要するにヴィスタの出現を予測してほしいって事か」
書類を簡潔に言えばそういう内容になる。
俺はどこかでヴィスタ発生は自然現象、所謂、自然災害 地震などと同列として扱っていたのかもしれない。
そのヴィスタの発生した原因を調べた事は無かった。
魔法の道具化、又は兵器化する事に夢中でヴィスタに関してすっかり失念していた。
・・・身近にヴィスタが居るのに何故気付かなかったのだろうな。
その当のヴィスタは俺の足元で丸くなって眠っている。
・・・こんなへんちくりんな生き物そうそういないだろうな。
だが、今のところヒントは0、ヒントとなる手がかりがこの子狼では・・・厳しいにも程がある。
「これならまだ魔法察知機の構想を考えた方が有意義か」
この狼が喋る事が出来たら大きく発展しそうなのだが・・・このヴィスタが言葉を発したら直ぐ様始末しなければならなくなる。
この生き物が言語を使う事が出来るのだとしたら、情報漏洩を防ぐため殺処分だ・・・と言ってもコイツの実力ならば俺から逃げる事は容易だろう。
「この狼だけじゃヴィスタの反応は正確には計測出来ないな、そうなれば他のヴィスタのサンプルが必要になる。となるとまたヴィスタを手懐けるか?いや、捕獲した方が手っ取り早い。しかし、ヴィスタはこの狼しか相手にしていないが優秀な可能性がある」
「何を独り言をぶつぶつと言っているんだ」
「この書類を見てください」
俺は上官にヴィスタの出現予測に関しての書類を渡す。
上官はその書類に目を通す。
「確かにヴィスタの出現予測が確立すれば大幅に被害を抑えられると思うが、それは予測しようがないだろう」
「魔法の道具化はある程度見通しは付いたので、今度はそちらに着手するのもいいと思いまして。とりあえず手がかりがあれば本格的に研究しますよ」
「ほぅ、で、その手がかりとは具体的に何なのだ?」
「ヴィスタの捕獲 又は懐柔出来た場合ですね」
上官は俺の足元に目を送る。
要するに、手がかりは既にあると言いたいのだろうが大体は察しているのだろう。
「上官のご察しの通りサンプルが1つだけでは比較が出来ませんので新たに現れるのを待つのが現状ですね」
そういえば何か忘れている気がする・・・こんな気分になるのは初めてだ。単なる物忘れな感じではない。
何か、思い出す事が出来れば色々と進みそうな気がしてならない・・・
「どうした?まだ何かあるのか?」
「いえ、何でもありません」
俺は思い出す事を一旦やめ、仕事に戻ろうとしたが既に仕事はやり終えていた。
そして俺はタブレットを持ち、席を立つ。
「上官の魔道具の個人調整を行いましょうか、他の私兵達のは済ませていたので残るは上官と当主のみです」
「そうか、では頼む」
「調整には使用しなければならないのでお相手しますよ」
「それはお前も魔道具を使うのか?」
「ええ、使いますよ」
と言っても俺専用に持っているのはワイヤー機械と二丁銃 キャンセラーのみで、そのキャンセラーは今回はとても不向きであるし、ワイヤーは立体駆動する為の物で屋内ではまず使用する事は無い 実質使えるのは二丁銃のみになりそうだ。
「それと申し訳ないのですが、彼らの件もございますのでインカムを付けた状態でお相手します」
「ああ、別に構わん。こちらとしては手伝ってもらう側なのだからな」
俺は一度、小崎に連絡を入れ 上官との相手の準備をする。
「そろそろこの銃も改良し頃だな」
「そういえばその銃はどのような性能なんだ?」
「左右の銃で機能が違います。右は防衛用、左は攻撃用で、左右それぞれリボルバーの形をしていますが弾は必要ありません」
そう、この銃は対なのだ。銃に弾は無くそれぞれのシリンダーには属性のフィルターが存在し、シロの魔力―――無属性の魔力が通る事によりフィルターの属性に合わせた魔法を生み出す事が出来る。
そして俺が使うのは主に強化とまだ未使用だが回復だろう。他のシリンダーは相手と真逆の魔法属性の魔力をぶつけてやれば、上手くいけば消滅、悪くて大幅な威力軽減だ。
攻撃用は強化のシリンダーや属性を銃弾のように打ち出すものだ。この銃の使用はまだ控える事にしている、男の無能力者が魔法を使う決定的な場面を見られると厄介だ。
以上の事を簡単に移動をしながら上官に説明する。
訓練場には他の私兵もいたが、場所を開けてくれるそうだ。
「これから犬童と模擬試合をする、お前らも学ぶ点もある筈だ、よく見ておけ!」
「さすが教官」
「その呼び名はやめろ」
早速公開訓練室、特殊加工の素材で作られた上下左右透明な部屋での試合だ。
障害物は無い、正直障害物の無い真正面からの試合等普通は学ぶに値しない。相手に気付かれ無いうちに終わらるからだ。
だが今回は魔法兵器の運用テスト・・・正直かなり俺が不利なんだよな。自分用の分も面倒くさがらず作ればよかったか?
今更言っても遅いな。
「では始めるとしよう」
先に動くのは俺のつもりだったのだが、動き始めたのは同時だった。
俺が今回私兵に提供した魔法兵器は『フィジカルアシスト』だ。そして上官にはそれ+『魔断』である。
フィジカルアシストの恩恵を持った上官に対して接近戦は不利、遠距離と言いたいが魔断を使われれば魔力を伴った攻撃は無効化される。
まぁ、性能テストだからそのように実演してみるか。
一度距離を取りたい所だが、まずは接近戦をお望みの用だ。
上官は月島みたいに単純ではない、素でやり合っても危うい、ここは反撃は視野に入れない方がいいか。
全て回避か受け流しを視野に上官の攻撃をやり過ごす。
おいおい、確か上官はまだ魔法兵器は使用したことなかったんだよな?それでこの動きが出来るって、化け物め・・・
「流石少尉が開発しただけはある、それなりに使える性能だ」
「自分は階級に含まれない特殊な位置にいるので誤解を招くようなことはやめてください」
「それだけお前の存在はこの組織で欠かせないモノになったという事だ」
こんなやり取りをしているが格闘戦の真っ最中だ。
そしてこのやり取りは所謂時間稼ぎ、少しずつだが回避が間に合わなくなり受け流しの確立が増えてきている。確実のこの兵器を物にしてきている、現状維持は愚策か。
俺は銃を抜くふりをした際の上官のほんのわずかな隙に距離を空ける。
「本当にお前は人間の機微に鋭いな」
「上官でなければ反撃できるのですけどね、化け物ですか」
「そういうお前が化け物だろう。」
そう言いながら上官は魔断搭載のナイフを取り出す。
多分、遠距離対策だろう。あの魔断搭載のナイフは攻撃と言うよりも防御に重きを置いた武器だ。
あれは魔法を切り裂くナイフ、具体的には魔法の構成を切り裂くものである。
「ではその魔断の性能テストを行いましょうか」
俺は二丁銃を構え乱射する。
上官は既に構え終えており、銃弾を切り距離を詰めてくる
「銃の扱い方がぞんざいだ、もっと的を絞れ」
「いえ、これで合っていますよ」
「ッ!!」
上官は咄嗟の回避行動に出る。
「言わなきゃ当たってたかな?」
上官の判断は正しく、その回避は完全ではなく脇腹付近に軽く被弾していた。
「その弾丸曲がるのか!?」
「いえ、どちらかと言えば跳弾ですね」
実はこの魔弾、無属性のまま打ち出すと物に当たると反射するのだ。
それも反射数は最高二回、跳弾するまでの時間がカギなのだと俺は踏んでいる。要実験だな。
それにしても弧を描く弾丸も悪くない。銃改良する際に試してみよう。




