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その後、俺は呆れ果てて帰ろうとしたが僕ッ娘が急に思いだし、月島と共に引き止められた。
僕ッ娘が思い出していなかったら確実に帰っていた。
あれからべリア教官が戻り、子供達も沈静化し、俺達は訓練を行っていた。
訓練の最中に赤城も軽くだが参加した。
どうやら怪我も完治した訳ではなく、本人も本調子ではないようなのだ。
だが、赤城自身訓練には参加したがっており本人のやる気は十分に垣間見える。
訓練が一区切りした時にべリアから今回の件について少し聞かれた、勿論嘘偽りなく話した。
その際にべリアは終始隠す事無く溜息を付き続けていた。
「こうも簡単に侵入を許すとはな・・・情けない限りだ」
「この組織のトップが不在の際の代理を決定した方がいいのではないのですか?」
俺はそう進言したのだが、べリアに一瞬睨まれた。
まぁ、睨まれた理由に心当たりがないわけではないので気にしない。
「確かに君の言い分には一理あるな」
「じゃあ、実力的に灰崎さんになるなかな?」
「いや、あれは性格上無理だろう。あの人が部下を的確に指示を出している所を想像できん」
べリアも僕ッ娘も想像してみたのか、苦々しい顔をしている。
その表情が何よりもの答えである。
「俺は灰崎と一緒にいたモモさんとういう人物を推薦する」
「ああ、朝比奈 百々か。確かに彼女はそういうのに長けてはいるのだろうが彼女自身が少々不安定だ」
灰崎から聞いた常時発動型の能力は己の精神を蝕むだろう。
だからこそやる意味がある。
「・・・まぁいい、君の言う意見を少し検討してみよう」
「所詮は部外者の発言だ、深くは考えないでくれ。取り合えず今日の訓練は終わりにしよう」
月島と僕ッ娘は安堵し、赤城は何やらまだ訓練し足りないといった顔であった。
そんな時べリアから声をかけられた。
「近日様々な方面において活躍している人物が相次いで暗殺紛いな事に合っている、君も気を付ける様にな」
俺の事を心配して言ったのか、裏がある言い方なのか・・・
「活躍している人物が対象というのなら自分は大丈夫でしょうね」
「いや、大丈夫ではないだろう」
暗殺されるのは慣れている。
今までで何人の暗殺者を処理したか覚えていない。
その殆どの・・・いや、全ての暗殺者は生きて返しはしていない。
大抵、生け捕りに魔力搾取の為に生かしているに過ぎない。
今では白鐘から定期的に供給出来ているので暗殺者に利用価値は少ない。
今でも暗殺者は来ているが早々に駆除している。
「ま、暗殺者が来てもどうとでもなる」
「それは慢心ではないのかね?」
「暗殺の知識はなかなか深いモノでね、下に見ている訳じゃない。ある意味尊敬しているがそれに沿った暗殺者は殆どいない。悲しいね」
「雅人 暗殺に興味があったのかい!?」
「暗殺の対象にされていたからな、暗殺されない為にはまずは暗殺について知る事は当然だろ。にしても暗殺はとても興味深いモノだ。」
その言葉に1名を除く全員から引かれてしまったが気にするような事ではない・・・ん?何故僕ッ娘は目を輝かす?
そんなこんなでValkyrieの施設から月島を置いて出ていく。
アイツには個別にべリア教官に指導をお願いしている。
あの人のスパルタ指導で少しは変わってくれる事を願おう。
翌日
相も変わらず、変わらない日常を送る
学校に向かい、月島に会うが、どうもいろいろと元気がない様子だ。
相当厳しい訓練を行ったのだろう。
その訓練の巻き添えを食らったのだろう。僕ッ娘も元気はなく、机に沈んでいる。
変わった事と言えば赤城が戻って来たことくらいだ。
放課後になってからやっと月島が本格的に再起動し始めた。
「雅人・・・君は知っていたね」
俺はニヤリと笑う。
「お前はそれでも甘いと俺はそう思うんだがな」
「あれで?」
「ああ、それでもお前には足りない」
月島はうげぇ…という顔になる。
それに俺は更に嘲笑う。
そう、足りない。訓練なんぞで足り得る筈がないのだ。
「だがお前は知らなくていいかもしれないな」
「え?」
「いや、なんでもない 忘れろ。そういえばお前昼休みに気付いた事はいるか?」
「ん?昼休み?」
「気付いてないならいい・・・」
「何の話をしているの?」
僕ッ娘も復活したのか こちらに先程の話の内容を聞いてくる。
「雅人が言うには 昨日のベリア教官の扱きでも満足出来ないみたい」
「え⁉︎」
「アンタは受けてないからそんな事が言えんだ‼︎」
赤城まで喰いついてきたか、まぁ、まだコイツは本調子じゃない分軽めの筈だが
「アンタもアタシ等と同じ教官の訓練受けたらそんな事が言えるわけがない」
「確かに ほむちゃんの言う通りだよ。 君も教官の訓練に参加するべきだよ!」
その言動に対して月島は目を瞑りながら頷いている。
「お前達は春闘祭に向け、特訓しているが俺は特に何も無いのに相手させるのも失礼だろ。」
「大丈夫‼︎灰崎さんが連れて来いって言われてるから」
「嫌過ぎるお誘いだな」
心当たりが無いわけではない、あるとすれば ただ俺との戦闘がしたいという可能性、次に俺が前日 朝比奈 百々を推薦した事。
その2点だ。
どちらにしても絡まれる事が確定しているので面倒事には変わりないのだ。
「俺の言っている迷惑はベリア教官についてだ 無敗騎士も忙しいだろうが組織上位の人間に不要な負担をかけるわけにもいかないだろう?」
「逃げるのかい?」
それは挑発のつもりか?
短絡過ぎて幼稚過ぎる。
それで引っかかるのは煽り耐性の無い奴だけだ
「そもそも俺自身が参加するメリットがない」
言ってしまえばこれである。
正直俺の行動に有益性を突き詰めた言動は最近ない。
これではあまり説得力は無いな。
「あの~、ちょっと言いづらいのだけれども・・・」
「何だ?」
僕ッ娘が遠慮しがちに発言する。
何故かとても嫌な予感がしてしまう。
「最近の灰崎さんを見てて、とても君と戦いたがっていたよ」
「そう言われてもな、俺が行く理由にはならない」
「多分だけど・・・近い内に灰崎さんが君に突撃してくると思う」
「・・・・・」
有り得る。
容易に想像出来てしまっている俺がいる。
ふざけるな、あんな化け物を定期的に相手するなんて冗談じゃない。
だが、こちらの意図せぬ場所で突撃をかまされるよりはマシだ。
「何故そうなった・・・」
俺は頭を抱える。
そして早急に対処法を模索する。
しかし、どれも行きつく先は戦闘が前提条件が必須事項となる。
唯一戦闘を避けられるとしては無敗騎士の上司にあたる人物を味方につけるしかないな。




