14
翌日
あのまま放置して帰ってしまったので、あの後どうなったのか知らない。
まぁ、俺との勝負の話は出ないだろう。
遊びとはいえ、決闘を行い、決着がつかなかったのだから体面的には隠しておきたい所だろう。
俺は登校していると僕ッ娘達がいた。
「昨日あの後どうなったんだ?」
「あの後てんやわんやで人が押し寄せてね、大変だったよ」
「そうだそうだ!あの後教官に怒られたんだぞ!!」
「「それは自業自得」」
「うっ・・・シャルはともかく何でアンタまで知ってるんだよ!」
「お前の事だ、だいたい予想はつく まぁ、図星だったみたいだがな」
あの後空気が読めないような事をしでかしたんだろう。
ただでさえ、決闘中に皮肉を気付けないのだから・・・
「で、2人して何の用だ」
俺が聞くと僕ッ娘が俯いてぼそぼそと答える。
「ただお話がしたいなぁって」
「何だ、昨日の事でお前らの教官の所にでも連行されるかと考えていた」
「そんな事は言ってなかったな」
「うん、怒ってはいたけど『彼の立場で隠すのは仕方のない事だ』って言ってたから」
やはり俺の事を調べたか
しかし、俺の事情考えて行動するのは意外だな。
まぁ、コイツ等の成長の為に俺について何か学ばせるつもりなんだろうな。
「本当にお前らはいい上司に恵まれたな」
「うん!でも厳しいけどね」
確かにコイツ等の能力はとてつもなく危険で尚且つ強大だ。
厳しく鍛えておかなければ力の暴走を起こしかねない。
それは能力者の力量によって被害は異なる。
赤城はこの町全体を炎で包むだろう。
そして僕ッ娘は未知数だ。
未知数ほど厄介な物はない。
対策出来ないのだからな。
「どうせその上司に俺と何らかのコミュニティを持てとか言われたんだろう?」
「凄ェ!?エスパーか!!」
「違うよ、きっと教官はこういう観察力や考察力を学べって事だと思う」
「他にも学ばせたい節があるようだが、だいたいがそうだ。僕ッ娘は出来ているな」
「えへへ、そうかな?」
「それが戦闘に活かしきれてないのが欠点だが」
「うぅ・・・」
「アタシはどうなんだ?」
「お前は勿論論外だ、話にならん」
その後も2人の欠点を上げていると学校に到着した。
その頃には2人は力尽きていた。
2人を置いて意気揚々と校舎に入って行った。
「おはよう雅人」
「はぁ、お前は俺といたのに何も学んでいないよな」
「ん?何の話してんだ犬童」
「小崎もいたか、如何にコイツが学習能力の無い事を嘆いていた事だ」
「ただ挨拶しただけなのに・・・」
「そりゃ人間簡単には変われないだろ」
「何度も痛い目に会えば学習してくれると信じていたんだがな・・・」
「うっ・・・頭が・・・」
「学習する以前にトラウマとなって忘却の彼方に消えているだろうな」
確かに昔の俺は少々手加減を知らなかったからな。
だがな
「んなこと俺が知るか」
「酷いや」
「だったら、さっさとトラウマを克服しろ」
「簡単に言うなぁ・・・」
「お前の為になる事だからな」
「というか、どうなんだ春闘祭の首尾は」
「まだまだだな・・・いっそアイツらの教官に鍛えてもらったらどうだ?教官と言われるくらいだ教育する事についてはスペシャリストだろ」
この案は正直言って無理だろう。
僕ッ娘の上司はとても忙しい立場だろうし、見ず知らずの男を鍛える義理は全くもってないのだから。
しかし、あの教官の厳しさ ストイックなところも見習ってほしい物だ。
・・・その教官の部下である僕ッ娘達には全く影響がない事が不思議でならない。
ただ単に言われたことを何も考えずに行っていただけなのかもしれないな。
「確かに!!じゃあ、ちょっとノーエルさん達に聞いてくるよ」
・・・ノーエルって誰だ?
まぁいい、どの道断られる事だし別の事を考えるか。
最悪龍ヶ峰宅の警備をしている者に相手を頼むか。
マリクさんは・・・任務から帰っているだろうか?
後で連絡・・・・・・・・・・ああ、この人だ
思い出した 確かに頭のどこかで引っかかっているような感覚だったがそういう事か。
これは面白い。
これはとても面白い手札に成りうる。
だが、まだ暫くは使わない方がいいだろう。
ある程度警戒を解いてからでないと効果は乏しい。
「雅人!言ってみるものだね OK貰えたよ」
・・・・・は?
アイツ等ちゃんと上司に連絡をいれたんだろうな?
ただでさえ忙しい相手がそんな暇をもらえるとは思えん。
「ちょっと詳しい話を聞いてくる」
俺は僕ッ娘達の所に向かう。
「おい、どういう事だ」
「え!?何々!?」
「お前らの特訓の話だ。先程月島が聞きに来ただろう」
「あれは―――」
「大丈夫じゃない?昨日見に来てくれた訳だし」
僕ッ娘に話を聞くと赤城が遮って話した。
「さっき、ほむちゃんがOK出しちゃって今から教官に確認するところだよ」
「なるほどまだ確定している訳ではないのか」
どういう事だ?
確かに赤城は突っ走る事はあるが相棒である僕ッ娘の意見を無視するとは思えない。
「私達がお願いすれば問題ないでしょ」
「そうかなぁ・・・」
「・・・・・そうか、では連絡を取るなら人目を避けた方がいい」
とりあえず、2人して教室を出て行った。
俺は月島に事付けて教室を出た。
そしてアイツ等は非常階段にて連絡を取っていた。
「あ、教官ですか?折り入ってお願いがありまして」
どうやら連絡を入れているのは僕ッ娘の様だ。
他はその後ろにいる。
「お願いと言うのが僕達と月島君に訓練を付けてくれませんか?」
やはり俺の予想は間違っていなかったか。
どうやら話はまとまり上司は引き受けてくれるそうだ。
「どうやら引き受けてくれるようだな」
「え!?盗み聞きしてたの!?」
確かに盗み聞きする気はなかったがそうなったのは事実だ
「する気はなかったが聞こえてしまったな それは謝ろう。先程言い忘れた事があってな」
俺はそう言いながら僕ッ娘達に近づく。
「べ、別に聞かれて困るような事じゃないから謝らなくてもいいよ。言い忘れた事って何?」
「ああ、そのことな」
俺はソイツの襟首を掴み上げる。
「お前は誰だ」
「ッ!?」
俺はそこから首に持ち替え、床に叩き付ける。
「かはっ!!」
「ちょっとほむちゃんに何するの!?」
「お前は黙れ おら、答えろよ」
僕ッ娘の制止を振り払い、コイツに言い放つ。
「何の事よ、私は赤城――」
俺はコイツが言い終える前に顔を殴る。
「で、お前は誰だ?」
「だから私は赤城」
「まだ言うか、では、炎出して見せろ」
「ッ――――」
「まぁ、出せる筈もないか」
心臓部に拳を放ち、吐血して気絶した。
そうすると赤城の姿が霞み、別の姿へと変わる。
「ほむちゃんじゃない!?」
「はてさて、厄介な事になったな」
これは俺を狙ったものか、春闘祭に関してなのか。
或いはValkyrieを狙ったものなのか・・・
本当に面倒な時期に仕掛けてきてくれるな。
「この女に見覚えはあるか?」
赤城に変装していた奴の頭を蹴飛ばして聞く
それに対して僕ッ娘は首を横に振る。
「それより本物のほむちゃんは何処?」
「どこかに拉致 監禁されてるだろうな」
「そんな・・・」
朝会った時はまだ本人だったはずだ。
ならば俺と別れてから入れ替わった事になる。
「俺と別れた後、2人はずっと一緒だったのか?」
「え?・・・教室に来る前にトイレでわかれたけど」
「じゃあ、そこに行くぞ」
とりあえず、このクズは常備してある捕縛セットで縛り、近くのロッカーに突っ込んでおく。
そこにいる可能性は低いが、それでも完全に手が無くなる訳ではない。
確実に追える方法は1つある。
僕ッ娘の案内で赤城と別れたトイレに到着
まずは扉に近づき、壁に耳に当て中の音に耳を澄ませる
・・・・・・・・・・・・・
「声や音はしない・・・か」
「ほむちゃん・・・」
親友を心配しているのか
理解出来ないな。
「僕ッ娘は外を見張っていろ」
「え?僕も一緒に――」
「ダメだ」
もしこれが罠だった場合2人とも身動きが取れなくなるのは非常に避けておきたい。
どちらか片方が動けなくなったとしても敵は片方に意識が行く。
その時間があれば俺は何とか出来るし、俺に刺客が来るのなら返り討ち可能だ。
「でも女子トイレだよ」
「有事にそんな些細な事気にするのか?」
「些細って・・・」
「お前はちっぽけなプライドと赤城の命どちらが重要か・・・考慮する必要があるか?」
「ッ―――・・・・」
コイツはこのような異常事態に慣れていない、だから常識に捕われ、己の行動を制限してしまっている。
「・・・わかった」
「それでいい」
俺は女子トイレを隙間程度に開け、目視にて中を確認する。
それから隙間から体を滑り込ませる。
それから個室を1つ1つ音を立てないように調べていく。
やはり、もう撤収済みかもしれないな・・・ん?
ある個室は僅かではあるが壁がへこんでいたり、争った形跡があり、最近ついたものだ。
扉の死角になっている場所には少なくない血痕の跡がある。
「どこのドイツがやったか見当はつかないが・・・本当にやってくれたな」
これだけの血の量だ、闘春祭に出れたとしてもまともな働きが出来るかどうか怪しい。
だが、これで俺狙いの可能性は低くなった。
今、一番有力なのはValkyrieに対する妨害だ。
本当ならこれはValkyrie達だけで解決しなければならない問題だ。
しかし、俺を邪魔したという事実は確かだ。
なら、俺の行動は自ずと決まった




