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時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
42/50

42 眠れる魔物 (檜慈里)

 あらゆる可能性を考えてみるしかないだろう。




 まず、松崎さんが黒幕で、何らかの方法で私の記憶を飛ばし、またはつくり変えて、意のままに操った可能性。


 その結果、時津風と三浦アイは死んだ。それがもし私の仕業だったとしたら?


 しかし問題はその「動機」だ。


 例えば、アヤは本当に愛人で、松崎さんが相当に入れ込んでいたとして、時津風の存在が邪魔だった?いや。それなら私も消されていなければおかしい。


 愛人のアヤを通じて、何らかのまずい情報が時津風に漏れ、松崎さんは強請られていた?


 それも違う。そもそも目的が「時津風を消す」ことなら、私の記憶を云々など大掛かりに過ぎる。松崎さんはパチンコ店のオーナーだ。所謂アングラとの関わりもあるんだろう。わざわざ私を操る必要性があるとは思えない。




 アヤではなく、三浦アイが松崎さんの愛人だったとしたら?しかし結果として三浦アイも亡くなっている。


 ワイドショーでは青酸カリの入った紅茶を飲んだとされていた。報道が事実なら、おそらく自殺で間違いない。


 というのも、青酸カリ=シアン化カリウムというのは「それと知らずに」飲んでしまえるような類のものではないからだ。


 本来はメッキに使われる物質であり味も匂いも強烈、保存も密封が必要となる。もし何者かが無理やり飲ませたのであれば、その痕跡を警察が見つけられないとは考えにくい。


 三浦アイが時津風を殺したか否か?それとは別に、三浦アイ自身は自殺で間違いないだろう。




 つまり、


「松崎さんは私を操っていない」


「松崎さんは私を何らかの理由で利用したが、そのことと二人の死は直接的に関与しない」


 そのどちらかだ、と考えることにする。




 しかし松崎オーナーもドリル佐藤もアヤも、言動に不審なところは今までひとつもなかった。


 それを私の前で見せたのは、高森だけだ。


 なぜ高森は「ジャンプ」の内情や、前店長の佐藤さんのことまでよく知っていたのか?バクが何を高森に話し、何を企み、高森はそれに何をもって応えたのか?


 今の段階で言えることは、高森が何かを握っている。それは間違いない。




 そして高森は、私の親友だ。私が記憶を失っているなら陥れることも簡単だったはずなのに、ずっと協力してくれていた。そう、あいつは味方なのだ。


 だとしたら、高森が私に真実を告げない理由は?それも私を案じてのことなのか。


 私の人生が「二周目」という怪情報を、高森は意図的に隠していた。それはバクとの約束だったのかも知れない。高森は「バクの田平時雄」も信じてくれたのか。


 ……それとも、それを私に「伝えてはいけない理由」が、別にあった?


 例えばもし私がそれを知り、歩きだしてしまったら、「眠れる魔物」が目覚めてしまうような?

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