表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
39/50

39 人生は一度 (花咲)

 高森の話は、即ち「バク」は存在したとするものだった。「バク」が一周目の田平時雄で、失敗の末に死んだことも聞いていた。だから私が戻った時にも違和感なく対応出来たのだと。


 そうでもなければ辻褄が合わないところもある。このDVDもそのひとつだろう。しかし……




「なあ高森。お前はどうして『バク』の話を信じられると思ったんだ?」


 そうだ。一周目の人生を失敗したので二周目にちょっかいを出しに来たなんて話を、どうして信じたのだろうか。


「それはな、田平。それは俺が、『お前』に救われたからだよ」


 「バク」が修正したのは田平時雄の人生だけではなかったのだ。高森の命も「一周目の今」では、既にないものだった。


 しかし、それも後付だ。私もそうだが、今二周目にいる高森だって、一周目のことなんて知らないはずだ。「俺がお前の命を救ったんだ」なんて言葉を信じる理由にはならない。


「わからないな。お前が一周目で酔っぱらって死んだなんて話を信じるなんて」


「違うよ、田平。よく聞いてくれよ。『バク』というのは『お前』なんだ。分かり辛いと思ったら使わせてもらったけど、俺はお前が言うことだから信じただけだ。『バク』なんて関係ない」


 高森は顔を上気させながら、けれども落ち着いた口調でこう言った。顔つきもさっきまでとは変わっている。私の親友の高森の顔だ。


「さっきのDVD、最後の『バク』のシーン。映っているのはお前だ。『バク』なんてものは居やしないんだよ。わかるか、田平。その前の女が金切り声を上げていたシーン、撮影者は誰だと思ってる?」


「三浦アイだろう。この事件で俺の一周目は終わった」


「違うんだよ、田平。この事件でナイフを握っていたのはアヤさんなんだ。この映像を撮影していたのも三浦アヤなんだよ」


「アヤ?そんなはずないだろう。一周目のこの時、アヤは自殺していたはずじゃないか?」


「アヤさんは自殺なんてしていない。いいか、田平。お前自身ももう薄々分かっているんだろう?一周目も二周目もないってことを。


いいか、人生なんてものはな、逆立ちしようがひっくり返ろうが、一度だけなんだ。それについては金輪際、考えの中に入れるんじゃない。


もう一つ重要なことを教えてやるからよく聞けよ。この事件が起こったは2001年の4月だ。2003年じゃない」


「2001年4月?……俺の時間が『バク』に食われた時じゃないか?」


「そうだ。お前はこの事件で確かにケガを負ったが、傷自体はほんの軽傷だったんだ。時津風もアヤも無傷だった」


「誰も死んでいない?」


「そう。2001年の段階では誰も死んでいない。2003年になって時津風が自殺し、そして三浦アイも自殺した。それが2年前だ。今までに一度も俺も田平も、そしてアヤさんも死んでなんかいない。ただ……」


「ただ?」


「ただお前だけが、2001年のこの事件以降で人が変わってしまった。いや、周りから見たら何も変わっていなかったのかも知れないが、俺にはすぐに分かった。それで聞いた話が『二周目』って話さ」


「その2001年の事件は、表沙汰になったのか?」


「いや。傷ついたのはお前だけで、当のお前がアヤさんを気遣う一方だったからな。全く表沙汰になっていない。


知っているのは、当時者以外では病院に付き合った俺と、松崎さん、そして時津風の当時の彼女だった三浦アイの3人だけだ。


これは想像なんだが、アヤさんが死んだというガセをお前に入れたのは、三浦アイだと思う」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ