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時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
31/50

31 バクの残したDVD (花咲)

 私は自宅の棚にあった「ワンピース」のパッケージに収納されていたDVDを視聴した。


 アヤの見つけたDVDのデータが消えていたのを知った時に、これはアヤと一緒に見るべきではないという予感が走った。消したのは「バク」だろう。そしてこの部屋にDVDを残したのも、いわずもがな「バク」である。




 最初のシーンは、見覚えのある「ジャンプ」の職場だった。扉の隙間からの隠し撮りのようだ。映っていたアヤは随分若い印象だった。談笑している相手はどうやら私だ。


「あーあ。あたしも、ちゃんと就活しとけば良かったなあ」


「いや俺も、ちゃんとやってるつもりなんですけどね。結果が出なけりゃ、やってもやらなくても一緒ですよ」


「ねえ。落ち着いたらさ、カラオケにでも行こうよ」


「いや俺、音楽嫌いなんで」




 アヤの「ちゃんと就活しとけば良かった」の話は、何度も聞いた記憶があるし、カラオケに誘われて一緒に行った記憶もある。そうだ、例の「バク」が出たカラオケである。


 しかし、アヤからカラオケに誘われて音楽嫌いなんて断ったことはない。カラオケは好きだし、音楽は大が付くほど好きだ。困惑しながら頭を巡らせて、はたと思い当たる。


 音楽嫌い……「トラフォーマ」か。


「これ、もしかして1周目のビデオか?」


 今の私にとって自分の誇りとも言える「トラフォーマ」の学祭招致だが、1周目ではそれに失敗していたのだ。


 結果として音楽から目を背けるようになっていた、と考えることは出来ないだろうか。




 次のシーンにはテレビで見た顔の時津風と、アヤが仲良さげに歩いているシーンが映っていた。これも盗撮だろう。ブレブレの画像が離れた後ろからついて行く。やがて二人はホテル街に消えた。


 次には、裸の男が、女の服を脱がしている映像が入っていた。男の横顔を見て、まさかとは思ったが、高森に違いなかった。


 時々映り込む局部には無論モザイクは掛かっていない。女の顔はなかなか映らなかった。ワンピースを床に落とされて下着姿になった女のスタイルは、アヤのそれに良く似ていた。私はこれは風俗のアヤの映像なのだと悟った。


 高森の手が女の下着を器用に脱がす。無修正とはいえ固定カメラの映像であり、粗い画素数である。ぼんやりと分かる程度だったが生々しい様子に、映像を見ている理由を忘れて暫くの間見入ってしまった。


 程よく女の官能が高まったのを確認した男が女の背後に位置を変えた。すると女の顔がカメラの方に向く。


 三浦アイ。


 風俗のアヤは、三浦アイだった。「ジャンプ」で働いていた時には、魔性の女だったアヤと、地味なアイが似ていると思うことなど一度もなかったのだが、髪型や化粧の仕方によるのだろう。こうして見ると実に良く似ていた。


「あたしのものをみんな欲しがる子」


 アヤの言葉が蘇る。このDVDは1周目の三浦アイが撮影したものということで間違いないだろう。




 そして、私は次の映像に絶句した。


 これが1周目の悲劇の終焉を呼んだ事件の映像だと確信し、もしこれをアヤが見たらどういう行動を取るのかを想像して「バク」が目論んだ『玉手箱』の意味を思った。


 しかし実際にこれを見たのは2周目の三浦アイだった。1周目の自分が撮った映像を見た彼女は、一体何を思ったのだろうか。

 作品を全年齢対象に設定しているため、原文より性描写をカットしてあります。


 完全版は花咲さんのカクヨムで!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054891802035/episodes/1177354054892528284

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