表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
30/50

30 初期化 (檜慈里)

「三浦アイって、2年前の事件の?あいつがアヤの親友だって?」


「親友……そう。昔は本当に、そう思ってたんだよ。あたしだけかも知れないけどさ」


 辻褄が合わない。「ジャンプ」で働いていた時も二人に接点はほとんど無かったし、むしろ仕事上の会話はよそよそしかったはずだ。


 そうか。原因はあいつ、時津風直哉。


「アヤは元彼を、三浦アイに奪われた?」


「うん、そういうこと。それでいて悪びれもせず、次は時雄も奪おうとして、最期の最後まで、あたしに縋りついてきた」


「そんな奴に、なんでDVDを?アヤの大切な物なんだろ?」


「……自分でもわかんない。でもアイはDVDの存在を知ってて、それを見せてって必死に言ってきたの。誰がDVDの話をアイにしたんだろう?って考えたらね、時雄しか思い浮かばなかったし」




 バクが全てを仕組んだ可能性。


 それなら、バクは三浦アイに時津風直哉を殺させ、三浦アイ自身をも自殺に追い込むほどの何かを握っていたということになる。


 無論、バクが直接的に手を下した可能性も依然としてある。


「貸したのは、いつか覚えてる?」


「言いたいことはわかるよ。それが二人の、結末に関わってるっていう可能性だよね?でも、わかんない。アイがDVDを観たのは、直哉が死ぬ前なのか、後なのか」


「……貸したのが、まさに殺害の日の前後あたりだった、ってことか」


「うん。直哉の体は電車にバラバラにされてて、どのタイミングで亡くなってたのかを警察が調べることも出来なかったみたいで」




 いや。それが二人の死に関わっていたか否かを問うよりも、私はもっと単純に、知りたかった。


「アヤ。DVD、観よう」


「うん。ずっと怖くて、開けることもしなかったんだよ、あたし。でも今の時雄には、それが必要な気がしてる」




 アヤの部屋。もう大体の勝手は知っていたが、机にある鍵つきの引出しをアヤが開けたのは初めてだった。本当に大切だと思ってくれているのだろう、DVDのパッケージは袋を二重に被せてあった。


「これだよ。はい」


 私はパッケージを受け取る。


 その瞬間、ひとつの衝撃を感じたが、私はそれを心にしまっておいた。


「これが、バクの……よし、再生しよう」


 プレイヤーに入れ、二人とも固唾を飲んでテレビ画面を注視する。


 何も表示されなかった。


「……おかしいな。アヤのパソコン借りてみていい?」


「わかった。あたし、機械はあんまりわかんないからね」


 デスクトップPCで、ドライブ内のDVD-RWデータを表示してみる。


「ない。ないぞ!これ……初期化されてる!?」


「えっ!?あ、アイが消しちゃったってこと?」


 三浦アイがデータを消したか。あるいは、元から何も入っていなかったか。あるいは……




 しかし私はそれより重要な事実を、既に思い出していた。


 全く同じ「ワンピース」のDVDパッケージが、私の自宅の棚にも置かれていることを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ