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時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
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2 ジャンプの女 (檜慈里)

 檜慈里が担当の回です。お互い、相手の引き出しを探りながら書いている段階ですね。





 アルバイト先、総合アミューズメント施設内のスーパー銭湯。


 パチンコ屋が経営母体なので、時給も悪くなく、就活で忙しいために週2回しか働けていないのがもどかしかった。


 学生なんてものは、金がいくらあってもあるだけ使ってしまうものだ。


 しかも、この「ジャンプ」というセンスの欠片もない名称の大型店舗には、せっかく稼いだ給料を雲散霧消させてしまうような魔性の女が勤務していたのだった。




「アヤでいいよ」


 今思えば誰にでもそう言っていたであろう、甘えるような声。低めの身長に、推定Eカップの胸。休憩時間、思わせ振りにアイスを舐める口元。当時、その女はふたつ年上のフリーターだった。


「あーあ。あたしも、ちゃんと就活しとけば良かったなあ」


 受付に立つアヤのそれを聞いたのは、もう通算5回目だったろうか。


「いや俺も、ちゃんとやってるつもりなんですけどね。結果が出なけりゃ、やってもやらなくても一緒ですよ」


 私は休憩に入るため、タイムカードの打刻に来たところだった。


「ねえ。落ち着いたらさ、またカラオケ行こうよ」


「それが就職祝い、って話になればなあ」


「また、あれ聴きたいんだもん。あれ」


 アヤは「ジャンプ」の同僚6人で飲みに行った二次会のカラオケで、私が酔いに任せて桑田佳祐のモノマネをしたのを、いやに過大評価してくれているらしかった。


 私のほうは絶賛、大学生活の真っ只中。こんな女性ともし二人きりでカラオケ……なんてことになれば、当然その先まで考えてしまう。


 そう言えば、高森も当時は就活の荒波に飲まれて色々と溜まっていたらしく、苦学生の分際で、なけなしの収入を風俗にて発散していると明かしていた。


 その時期、彼は言っていたんだった。アヤという当たりの女性を引いたこと。


 そして名前だけでなく、高森が得意気に情事の仔細を語った際の女の身体的特徴は、ここで私の眼前に立つ和装の女性とほぼ一致していた。


「じゃあ土曜あたり、どうっすか?」


 実質こういう時には男が金を出すという不文律を、我が国の現状は示している。


「ほんと?行こう行こう!誰か呼ぼうか」


「俺はどっちでも」


「そうなんだ。じゃ、二人で行こっか」


 二人で。この展開に、私のほうは期待で色々と膨らんでいた。


 忙しいとか言いつつ、就活なんて結果が出なけりゃ、やってもやらなくても一緒だもんな。私は先程の自身の発言をあらためて肯定した。




 まだ卒業までは時間もある。慌てるような時期じゃない。


 その時は、そう考えていた。

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