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時間を食べるバク  作者: 花咲 潤ノ助、檜慈里 雅(リレー小説)
12/50

12 繋がらない糸 (檜慈里)

「えー高森くん?なんでこんなとこに?あ、こちらオーナーの松崎さん。って言うか、ここでは元オーナーかな。閉店しちゃったし」


 意外にもアヤは平然としており、高森をよく知っているかのような、度々会っているかのような口振りだった。


「すみません、勝手に入ってしまって。実は田平も一緒なんです」


 高森の野郎、一瞬で仲間を売りやがったな。私は本棚の向こうにいる高森を睨んだ。


「え、時雄もいるんだ?」


「おい田平。お前の彼女と、オーナーまで来られたぞ。さっさと出てこいよ」


 時雄?彼女?


 私は訳も分からないまま、とぼとぼ姿を現す羽目になった。




「オーナー、あの……」


「田平くんか。入院していたと聞いてるよ。もう良いのかい?今日はどうしたんだね」


 何から話せばいいんだ?頭の中で、混乱がさらに激しくなる。


「ちょっと田平は、あれなんで。僕のほうから説明いたします」


 高森が割って入った。頼むぞ営業職、この複雑すぎる状況を何とかしてくれ。


「アヤさんに電話で報告した時も、具体的な病状は言ってなかったんですが、実はこいつ、ちょっと今、深刻なんです。記憶喪失なんですよ」


「記憶喪失?時雄が?」


 アヤがまた、私を呼び捨てにした。


「はい。しかも、ここで働いてた2年間が記憶から丸ごと抜け落ちてしまってるもんだから、この『タイムオフ』にいた記憶が全く無いみたいなんです。


こいつが思い出す切っ掛けを何か掴めないかってんで、二人でここに来てみたんですよ」


「田平くん、それは本当なのか?じゃあここで店長を任されていたことや、三浦くんと一緒に頑張っていたことも?」


 松崎さんがアヤを名字で呼んだことは、私の心を一旦落ち着かせかけた。


 そして、直後また心臓の鼓動がおかしくなる。私がアヤと一緒に?


「時雄。あたしとのこと、どこまで覚えてる?」


「どこまでって……」


 私のアヤとの記憶は、あの理不尽な別れのままで終わっている。


 もし皆の言うことが事実で、本当に私が店長を任され、アヤとよりを戻し一緒に働いていたとしよう。その全てを覚えていないなんて言ったら、アヤはどう思うか?


「それより、あ、アヤはどうしてここに?」


 私は無理やり話題を変えた。試しに呼び捨ててみたが、アヤは全く動じない。


「あたしのほうは、この間から探してる物がどうしても見つからなくて。ひょっとしたら『タイムオフ』に忘れたままかもって、課長に言ってみたの。


そしたら今、鍵持ってるのはオーナーだけだから、わざわざついて来てくださって」


「え?鍵は開いてたけど……っていうか、課長?」


「課長だよ。『ジャンプ』の課長。時雄もあたしも、また一緒に働いてるじゃん!まさか、それも覚えてないとか言うつもり?」

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