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メビウスリング  作者: 楓海
9/11

倖広の想い

楽しんで戴ければ幸いです!

 いつもの様に二人並んでキッチンのカウンターで朝食を食べていた。


 口数が少ない倖広は縁日以来一層口数が減り、言いようの無い威圧感を(にじ)みだしていた。


 倖広は箸を止め考え込んでいた。


 そんな時の倖広は草原で見せた、射る様な鋭い眼光を放ち、(くう)を見詰めている。


 理舞はその横顔を盗み見ながら表現しようの無い怖さを感じていた。


 男相手の商売をしている理舞は色んな男達を見て来た。


 中にはヤクザ系の客もいて、確かにそう云う(たぐ)いの男達は何処か威圧感がある。


 だが倖広が放出する威圧感は(けた)違いに異質なのだ。


 理舞はそう云う男を倖広意外に逢った事が無く、その異質さに戸惑っていた。


 倖広が急に理舞の方に向きを変えると理舞は思わず身を(すく)め、眼を結んだ。


 倖広はそんな理舞を見詰め言った。


「理舞……………………

 オレが恐いの? 」


 理舞は静かに眼を開き倖広を見た。


 倖広は心配そうに理舞を見ていた。


 その顔が幾分理舞の恐怖心を(やわ)らげた。


 理舞は上目遣いで倖広を見()えて言った。


「…………………恐いよ

 縁日であんなことするんだもん

 女なら誰だって恐くなるよ」


 倖広は眼を伏せて言った。


「ごめん………………………

 反省はしてる…………………………」


 余りに従順な倖広の態度に理舞は、倖広に対して少し申し訳ない気がした。


「もう、あんな事はしないでね」


「もう、しない……………………………………」


 まるで叱られた子供の様にしゅんとしている倖広に、理舞はすっかり気を良くした。


「じゃあ、反省のご褒美にご飯食べ終わったら耳かきしてあげる」


 倖広はいつもの様に笑った。





「どうしょう!

 赤ちゃん、できちゃったあ! 」


 帰るなり、理舞は叫んだ。


 近寄って来た倖広は言った。


「赤ちゃんて、人間の…………………? 」


『他に何ができるのよ! 』


 理舞は怒りを(おさ)えて言った。


「殴っていい? 」


「もしかして、原因はオレ? 」


「解んないよお、そんなの…………………」


 理舞は(まゆ)を下げた。


 倖広は真剣な面持(おもも)ちで言った。 


「産んでよ」


「そんな、簡単に……………」


 理舞は戸惑った。


「じゃあ、殺すの? 」


 倖広の言葉に理舞は驚き、眼を見開いて倖広を見詰めた。


 倖広は理舞の肩を抱いた。


「記憶失くしたオレを拾って面倒見る様なお人好しの理舞がそんな残酷な事できない

 赤ちゃんだってきっと、お母さんにちゃんと産んで(もら)いたいよ」


 理舞は眼を伏せた。


「オレはこのままでいいって思ってる

 過去なんて要らない」


 理舞は倖広の顔を見詰め、瞳を震わせた。


 倖広は理舞を強く抱き締めて言った。


「初めて理舞を抱いた時、ずっと欲しくて求めていたものを手に入れたって思ったんだ

 何故かな?

 理舞が居れば何も要らないって思えるんだ………………」


 理舞は倖広の胸に顔を(うず)めて言った。


「そんな簡単な事じゃ無いんだよ

 赤ちゃん産むって事は、ワタシ働けなくなるんだよ

 生活、どうするの? 」


 倖広は理舞の髪に頬ずりして言った。


「オレが働けばいいんだろ?

 仕事見つける、理舞と赤ちゃんの為に」


 理舞はその言葉が嬉しくて、眼を閉じ倖広の背中に腕を回した。


「倖広…………………………………」



 倖広はその日から仕事を探し始めたが、経済状況の悪いこの国で、学歴も素性も解らない倖広に条件のいい仕事は簡単に見つからなかった。


「倖広イケメンなんだから、いっそ、ホストにでもなったら? 」


 お腹が目立ち始めた理舞は笑った。


「無理無理、オレに女の人のご機嫌取りなんてできると思う?

 理舞をしょっちゅう怒らせてるのに」


 倖広は笑った。


「ぜんっぜん無理だね」


 理舞は腹を抱えて笑った。


 倖広は理舞の手を取ると理舞を自分の膝に載せ、膨らんだ理舞のお腹を(さす)った。


「オレ、頑張るから

 いざとなったら、ホストの事も真剣に考えて見るよ」


「うん」


 理舞は倖広の肩に腕を回して頭に頬を寄せた。


 先の見えない将来に不安は有るものの、(あら)たな命の成長は、倖広にも理舞にも大きな幸福感をもたらしていた。


 倖広は求人広告片手に繁華街を、仕事を求め歩いた。


『理舞? 』


 雑踏の中で倖広は理舞を見た気がしたが、直ぐにその女が人違いだと気付いた。


『理舞がこんな処に居る訳無いか』


 倖広は笑った。


 その女は理舞に似てなくも無かった。


 倖広は、友人と別れて歩き出すその女をじっと見詰めた。


『あの女……………………………………………

 オレの過去を知ってる………………………………………』


 倖広は女の後を付けて行った。





 読んで戴き有り難うございます!

 いよいよ、クライマックスに突入です。

 後残す処、二話ですぅ。

 昨日は沢山の方に覗いて戴き有り難うございました。

 小説書くとタバコの本数がはか行くので困りものです。

 タバコ、高い………………………。

 それではまた明日。

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