縁日
楽しんで戴ければ幸いです!
「倖広!
縁日行こうよ!」
理舞が言うと、期待を裏切らない返事が返ってきた。
「嫌あだぁ」
「またあ、怠け者お」
ソファーに寝転がる倖広を見下ろして理舞は男物の浴衣を広げた。
「この間、買って来ちゃったんだよねえ」
倖広は面倒くさそうに浴衣を見た。
「へーえ、理舞にしてはまともじゃん」
「いっちばん地味なの買って来たからね! 」
理舞はもう一枚浴衣を出した。
「ワタシのも見て見て」
理舞は紺地に色とりどりの紫陽花の柄が鮮やかな浴衣を広げ肩に掛けた。
倖広は眩しそうに理舞を見上げると言った。
「ああ、似合うよ」
「でしょ、でしょ!
行こうよ、縁日! 」
「やだ」
「このお、ぐうたら男! 」
理舞は倖広の腕を引っ張った。
全く動く気の無い倖広は、例の如く引き摺られ床に落ちた。
膨れっ面の倖広はクローゼットに備え付けの大きな鏡の前にパンいちで立たされ浴衣を着せられた。
黒地に明るめの細い緑の線を施した落ち着いた柄の浴衣は倖広に良く似合っていた。
理舞は倖広の帯を閉めながら言った。
「中学の時かなあ
死んだお婆ちゃんに着付け方を教えて貰ったの
だから、着物も着付けられるんだよ
将来、結婚したら旦那さんとお揃いで着なさい、憶えておけばきっと役に立つからって」
理舞が思い切り帯を引くと倖広の身体がしなった。
「でもお婆ちゃん、着付けを教えてくれた次の年に病気で亡くなったの
哀しかった
とっても優しいお婆ちゃんだったから
お料理もお婆ちゃんに教わったんだよ」
「ああ、だからおばば料理が上手いんだ」
理舞は倖広の後頭部にチョップした。
「痛え」
「おばば料理って何よ! 」
倖広は後頭部を撫でながら言った。
「好きだよ
理舞のおばば料理」
「ならば宜しい」
理舞は笑った。
倖広の着付けが終わると理舞も鏡の前で着替え始めた。
倖広はベッドに座り、着替える理舞を眺めた。
「そう言えば、理舞って両親の話しないな」
鏡に映った理舞の表情が曇った。
「両親とは、いい思い出無いの
二人共、仕事仕事って帰るのいつも遅くて、お婆ちゃんが生きてた頃はそれでも良かったんだけど、亡くなってからはワタシも家に寄り付かなくなったから」
理舞は鏡の前に、斜めに立って浴衣の袂を腕に掛け帯を縛ると上手にリボンを作った。
「そうなると段々両親との関係も険悪になって高校二年の時、当時付き合ってた年上の彼氏と家を飛び出したんだ
でも、その彼氏も直ぐに別の女できて別れちゃった
家に帰る訳にも行かなくて、仕事転々としてこの街に流れ着いて今のクラブで働く様になったの
それ以来両親とは逢って無いんだ」
「そうだったんだ」
倖広は浴衣姿の理舞に見とれて言った。
「浴衣って新鮮でそそられるね」
理舞は倖広を振り返った。
「莫迦ね」
理舞は嬉しそうに笑った。
露店通りは人で賑わっていた。
「慣れない下駄で足の指痛い」
「ワタシも」
倖広ははぐれない様に理舞の手を握って歩いた。
理舞はそれが嬉しくて、はしゃいだ。
露店を見ていた理舞が指を差して言った。
「倖広、あれ取って! 」
指の先には、射的の景品の、ピエロのキーホルダーが台座に置かれていた。
オモチャの鉄砲で玉を当てて景品が落ちれば貰えると云う原始的なゲームである。
理舞がおじさんにお金を払うと、倖広にオモチャの鉄砲が渡された。
倖広は面倒くさそうに溜め息をつくと鉄砲を構えた。
引き金に指を当てると倖広は意識を集中させ、ピエロを狙った。
理舞はその倖広の真剣な横顔を見詰めた。
倖広の眼が鋭く変わる瞬間、玉は発射され、見事ピエロを撃ち落とした。
理舞は手を叩いて喜んだ。
ピエロが床に落ちると、倖広にまたフラッシュバックが襲った。
写真を捲る様に何人もの女の死に顔が倖広の視界にちらついた。
倖広はかぶりを振った。
だが女の死に顔はいつまでも倖広の脳裏に纏わり付いて離れない。
そして……………………………………………
倖広は欲情していた。
ピエロを受け取っている理舞の手首を掴むと倖広は足早に歩き出した。
露店通りを逸れて林の中へと、理舞は小走りになりながら連れられた。
歩きながら前方を見詰める倖広の顔が理舞は意味も無く怖かった。
木陰に入ると倖広は木に理舞を押し付け浴衣の裾を捲って、犯す様に理舞を求めた。
理舞は痛みに口唇を噛み、夢中で倖広にしがみついた。
読んで下さり有り難うございます!
困りました。
着物の着付けは習ったことあるのですが、浴衣の着付けはよく解らなくて、間違っていなければいいのですが……………。
この間、病院で血液検査しました。
クレアチニンの数字が悪くて注意されました。
このまま悪くなると腎臓機能が低下して、透析を受けなくてはならなくなるのでびびってます。笑
水分をよく摂って、塩ひかえろ言われました。
生活習慣病気を付けましょう。
それではまた明日。