買い物
宜しければお楽しみ下さい!
「倖広、買い物行くよ」
「買い物? 」
ソファーに寝転がっていた倖広は起き上がって理舞を見た。
「そうそう
着替えやパジャマ、スマホも買わなきゃ
服買ったら、スーパーに寄るよ」
「いいよ、面倒くさい」
倖広はまた寝転がった。
「ダメダメ
行くの」
理舞が倖広の腕を引っ張ると、動くまいとする倖広は床に落ちた。
「死んだ振りしてもダメ
行くよ」
倖広は深い溜め息をつくと諦めて起き上がった。
「まずは銀行行ってお金下ろして、モールへレッツゴー! 」
理舞は元気に手を上げた。
タクシーに乗って銀行まで行くと、理舞はタクシーを降りてATMでお金を下ろして戻って来た。
「さあ、買うよお、倖広の服」
理舞はワクワクと顔を輝かせてフロントガラスを見ていた。
ショッピングモールに着くと、早速紳士服のテナントに入り、理舞はウキウキしながら服を選び始めた。
「ねえ、これ素敵」
理舞はビビッドピンクのシャツを倖広の胸に当てた。
倖広はそれを見て一抹の不安を憶えた。
「オレ、ピンク嫌い…………………」
「あら、いや?
じぁあ、これは……………? 」
次に理舞が手に取ったのは真っ黄色のフリルだらけのシャツで、倖広は思わず額に手を当てた。
「理舞、オレを笑い者にしたいわけ? 」
「何よ、その笑い者って!
素敵じゃないの、このシャツ」
「何処がだよ!
お笑いタレントだって、もう少しマシな物着てるよ! 」
「ワタシの趣味が悪いって言いたいの! 」
「いいとは言えないだろ! 」
「しっつれいな人ね、この理舞お姉さまの何処が趣味悪いって言うのよ! 」
「色彩センスゼロ! 」
店の店員が飛んで来て言った。
「お客様、こちらなんかはいかがでしょう」
店員は黒生地に白く細い線の入ったチェック柄のシャツを持って来て倖広に見せた。
「地味過ぎない? 」
理舞は不満そうに言った。
「オレはこっちがいい」
倖広は店員からシャツを受け取り言った。
理舞は口を尖らせた。
「折角、この理舞お姉さまが素敵にコーディネートしてあげようって思ってたのに」
「理舞にコーディネートされたら仕舞いに泣き化粧されそうだ」
「なによ!
ワタシがコーディネートしたらピエロになるって言いたいの! 」
「よく、お解りで」
「いいわよ、このお姉さんに選んで貰えば!
選んだら着替えてね、その泥棒みたいな格好じゃ、柄悪いから! 」
理舞はふくれてレディース売り場の小物を見始めた。
ひと通りの物を選ぶと、倖広は黒のパーカーに黒いパンツとカーキ色のテイラードジャケットに着替えた。
理舞は何処からか、だて眼鏡を持って来て倖広に掛けた。
「あなた顔がキレイ過ぎるから」
倖広は鏡を覗き込んで髪を軽く指ですきながら言った。
「有り難う、理舞
オレもこの女みたいな顔、あまり好きじゃ無い」
倖広が笑い掛けると、理舞はぎこちなく笑って、倖広の腕を掴んだ。
「まだ怒ってるの?
いいじゃない、理舞は料理が上手なんだから」
理舞は倖広の肩に額を押し付けて笑った。
倖広のスマホや下着、身の周りの物をひと通り買うとレストランでお昼を食べ、食品売り場へ行った。
理舞はカートを押す倖広に訊いた。
「何食べたい? 」
「今食べたばかりだし、何が好きなのかオレ自身も解んない」
「そうよねえ
何を買えばいいんだろう? 」
理舞は遠い眼をして店内を見回した。
「理舞が作ってくれるなら、オレ何でも食べるよ」
その一言で理舞のテンションは上がり、買い物が一気に捗った。
家に帰ると理舞は慌ただしく食品を冷蔵庫にしまい、仕事へ行く支度を始めた。
キッチンのカウンターに数枚の千円札を置くと言った。
「今日は、適当にピザでも取って食べて
ワタシ、仕事あるから行くね」
倖広は出掛けようと玄関に向かう理舞を後ろから抱き締め言った。
「理舞が居ないと不安だから、早く帰って来て」
理舞は満面の笑顔を倖広に向けて、出掛けて行った。
読んで下さり有り難うございます!
楽しんで戴けたら嬉しいです。
ここ3日くらい忙しくて、寝る暇も無く、さすがに今日は死にました。笑
更新できるかなあと心配でしたが、できて良かったです。
スマホに打ち込んでいる内に元気取り戻しました。
有難いですね。
ゲリラ雷雨のせいで停電になってますが、皆様のお宅は大丈夫ですか?
早い復旧、切に願います。
それではまた、明日。