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筋道日(きんどうにち)  作者: 信条 真也
22/22

第三章⑤:騒宿酔叫(そうしゅくすいきょう)

 モンダミン事故の翌日、赤坂こと通称モンダミンと涼太の2人が真也達の特別教室にやってくる。


「昨日ありがとうございました!」


「いや、ありがとうございましたも何も……お前赤坂、大丈夫なの?」


「物凄く……気持ち悪かったです、胃洗浄ってなんですかあれ!? ずっとレロレロしてましたよ!」


 胃洗浄というのは、胃に液体を流し込んで異物と一緒に吐かせる処置のこと。


「まさか人間あそこまでに陥るとはおもわなかったからさ……ビックリしたよこっちも、ごめんな」


 真也は改めて本人へ素直に謝る。


「今後もね? ふざけた罰ゲームがあるかもしれないけども、決して苛めようと思ってやってるわけじゃないからさ俺ら。だからさ、これに懲りずまた遊びにおいでよ」


「楽しくやれればいいんだよ、皆で楽しくやって遊べればいいんだよ俺らはさ。竜村たつむら君と同じで先輩後輩抜きでな、まぁ楽しくやってこうぜ」


 真也達がそう言う間にも涼太は変わらず“押忍! 押忍!“と連呼している。


「お前相変わらず押忍押忍うっせぇんだよ~、何回言ったら直んのそれ?」


「いやこれ咄嗟に出てしまうんですよ~! 道場では、何か言われたら“押忍!“って応えなきゃいけないんで、返事は押忍なんでもう癖なんですよ~!」


「あぁそうなの? んじゃしょうがないね! しょうがないけれども……学校で押忍押忍言ってんのおかしいと思わない自分で? おかしいよね? 客観的に自分の姿を見てみ? 想像してごらん?」


「……?」


「自分の後輩に話しかける度に、そいつが返事を押忍で返してくる。この何か気持ち悪さ……分かる?」


「いやちょっと分かんないです!」


「……まぁいいや! とりあえずそれが平常運転なんだからしょうがないな!」


 皆で下らない話も交えて駄弁る中、さすがにいつまでも新入生の2人に付き合わせる訳にはいかないと真也が赤坂と涼太に教室へ戻るよう促す。


「先生達に怒られるから、2人はもう教室に帰った方がいいよ」


「はい!」


「押忍!」


「……あ、ちょっ涼太! ちょっと待て待て」


 すぐに涼太を呼び止めて真也はポケットからアトマイザーという、小さなスプレー式の香水を手渡した。


「涼太これ、あげるよ」


「ほんとですか!? ありがとうございます!」


 涼太が喜んでいる最中、はじめは自分の香水スカルプチャーを取り出して自身に満遍なく吹きかける。


「おい創、それふりかけか?」


 そう言われんばかりに濃く付けるせいで香りがただの異臭と化してしまうが、創もその香水を赤坂に手渡す。


「お前、意気なことしてんじゃん。着けてみなほら?」


「「ありがとうございます!!」」


 二人は手渡された直後に自分の制服へ除菌スプレーかの如く吹きかけ、それを見た真也は慌てて二人の頭を叩いた。


「おいバカ!! それじゃこの創と一緒だよ? このバカと」


「あ”ぁ”!?」


「こいつと一緒だよ? 香水の付け方ってあんだよ、手首の内側あんだろ? ここにシュシュッて2~3回吹きかけるだけでいいんだよ。んで、それを両手首で混ぜ合わせるように擦った後、耳の下らへんにこうやって付けるだけで十分香るから。臭くて叶わねぇんだよ全身に振りかけてたら」


「「ありがとうございました!!」」


 涼太と赤坂は深く会釈し、教室を出ていこうとした矢先にまた真也に呼び止められる。


「あ、すまんもっかい待ってくれ」


「ん? なんですか?」


「赤坂、お前これからあだ名でモンダミン(・・・・・)な」


 イントネーションは製品名の方ではなく、頭から順に下がっていく呼び方である。



 2人を教室に帰らせた直後、創が自分の鞄から雑誌らしき冊子を取り出して皆に見せるよう合図かのようにソファの前のテーブルに叩きつけた。


「はい皆集合!」


「ん、なになに?」


「あぁ?」


 その雑誌には都内近郊で行けるキャンプ場の紹介するページが載せられていた。


「もうすぐゴールデンウィークじゃん? もうキャンプの季節だと思うんだよね俺は」


「……うん、確かにキャンプの季節だよ?」


「季節は季節だよ」


 イマイチ飲み込めない真也達に向けて、創が呼吸を溜めて言い放った。


「……行くっしょッ!! 行くっしょ皆、行くっしょ!?」


「いやゴールデンウィークに言ったらめっちゃ人混んでるだろ」


 創の上がったテンションへ真也が冷静にツッコミを入れる。


「ま、まぁ確かに……」


「あぁ……」


 上がりかけた士気を下げないように続けて言う。


「まぁ行くのは良いけれども、ゴールデンウィークを敢えて外そう? ゴールデンウィークが終わった翌日から予約取ろうぜ、そしたら多分人居ないと思うだよ」


 真也の意見に皆が賛同し、その日程の予約を取ろうとPHSでキャンプ場に電話を掛ける。そして案の定ゴールデンウィークの期間は満員で、その翌日から空席が目立ってくるらしいので一泊二日で希望通りの日程予約を済ませた。


「よし、じゃあ皆で○日から行くぞ! ゴールデンウィーク明けたら行くぞォ!!」


 予約したのは真也達は近所より少し遠くにあるキャンプ場、電車で片道2時間掛かるが飲み物と食材以外は全て現場で借りられるとのことでそれだけ持っていけば良いという。


「午前中で早めに行った方が良いんじゃね?」


「じゃあもう6時くらいに行かなきゃダメじゃね?」


「んじゃそうすっか」


 朝早くに行かなければならないので午前6時に各自、飲み物と食材分の資金を携えて当日に駅前で集合し、予約した埼玉の奥地にある川が隣接したキャンプ場へ電車を乗り継いで移動する。

 メンバーは創や豪地を含む男10人、飲食の資金以外は真也と創と豪地の三人が持ち、保護者が居ない中で帰れなくなったじゃ済まされないので余分に持ってこれる人は可能な限り持ってきていた。


 乗り継ぎ電車も都内を進んでいる間は順調だったが、都内を出て埼玉への県境けんさかいを通過に差し掛かった頃合いで周囲を見渡すと人の気配が全くしなかった。駅のホームでの停車も毎度やたら長時間待たされるので仕舞いに真也達は苛立ちを覚える。


『えぇ~次は○○駅ぃ……、○○分停車致します。ご迷惑おかけしますがーー』


「なにタラタラしてんだよ!!」


 全員飲み物1つ買わずに1人だけクーラーボックスを持ってきてはいたが中身は空、そして他は財布だけの手ブラな状態で何分もずっと待たされるという経験をしたことがないので尚更苛立ちが募る。

 当時の田舎の電車は洗濯バサミのような形をしたクリップが窓の両端に付いていて、それを持ち上げることによって窓の開閉が出来る仕組みになっている。それにより人が1人容易に潜り抜けられる広さにまで開けられるので、また次の駅でも10分程停車し待たされる間に1つ提案をする。


「ジャンジューで皆のジュース買ってこようぜ!」


 その意に皆が賛成し一斉に拳を前に出す。そして10人のうちの一人、長沢という男が負けて買いに行くことになった。


「おし、んじゃ皆の分のメモ取れーーんで、ややこしいからミロとかはもう無しな? 乗り遅れたらマズイから、もうほんとコーラとかポカリとか皆簡単なのにしろ」


 そうしてドアが開いた瞬間に勢いよくそこから飛び出て長沢は飲み物を買いに走った。だが10本のジュースを買えたとしても、袋も何も持たずで運ぶのは困難なので何分経っても姿を見せない。


「おいおいもう閉まるんじゃねぇか?」


「やべぇよ!」


「ったくもうーー」


 呆れた真也は窓を開けて鼓膜が張り裂けんばかりの大声でホームに向かって叫んだ。


「おい長沢遅ぇぞお前ッッ!! もう閉まるぞォッッッ!?」


『はい、ドア閉まりま~す』


 言っている間に乗車口のドアがゆっくりと閉ざされていく。


「ィヤバイ!! おい長沢閉まったぞォオ!!?」


 するとようやく姿を見せた長沢が血相変えてジュースを投げ捨て、必死に床を蹴って真也達のいる窓に向かって全力で走ってきた。


「ヤバイ! ……やばい、ヤバイよ!!?」


「いいから長沢ほら掴まれ!!」


 真也を窓から思いっきり手を伸ばして長沢へ差しのべ、掴んだ瞬間に電車内へと力一杯引きずりこんだ。


「クリフハンガァアアア!!ーーっと、はぁ……はぁ……」


 間一髪で間に合ったところで真也達は結局、手ブラなまま目的地の駅へ午前9時頃に到着した。


「ーーんじゃあ薪とかは向こうで用意されてるから取り敢えず2日分の食材と、クーラーボックスに氷と詰めれるだけの飲み物。あとで買い足すの面倒だからジュースと酒……プラス、必ず水を多めに入れろ」


 そうして各飲み物と食材をバランス意識して買ってクーラーボックスへ満タンに詰め込むのだが、中学生で飲めないにも関わらず何故か酒の割合が多い。


「……まぁいいよ、好きなようにやれよ」


 酒についてよく分からず飲まない真也は、呆れながらクーラーボックスの蓋を閉じる。



 その後は無事キャンプ場へ到着し手続きを済ませ、テントを借りてレンタルした場所へ向かうとそこは10人分ともあって予想以上に広い空間だった。


「ーーさて、まずテントな~? 自分達が寝る2人用とか3人用のテントがあるだろ? 俺は2人用のやつを一人で寝るから!」


 真也はすかさず2人用のテントを独り占めに確保する。


「理由はな、お前ら9人居るけど誰も飯作れねぇだろ?」


 皆は率直に頷く。


「じゃあ飯作れんの誰だ? この10人全員分の食事で昼、夜、明日の朝、昼ってここ出るまで飯作んの誰だ?」


「「「お前しか居ないよねぇ」」」


「だろ? んじゃ俺が一人で休息を取れるように2人用のテントを俺が使うからな、文句ある?」


「いや文句はない」


「その代わり、人数分のテントしか用意されてないから4人用の所に5人で寝ろよ?」


 そうして誰も意を唱えることはなかったので、各自そのままテントを張っていく。


「ーーよし出来た!」


「んじゃ俺飯作るために火を起こしとくからよ、皆テキトーに遊んでこいよ」


 そう行って7人は気ままにバラけて行ったのだが2人だけ真也の元に残った。1人は虫取がしたいと言って虫取り網を持って森の中へと入り、3人は釣りがしたいと行って川へ向かう。そして残りの3人は探検したいと言って手ブラで周辺を歩き回った。

 中でもお馬鹿な創と豪地ごうじは、


“川どこまで行けるか俺らちょっと行ってくるわ”


 と言っていきなり川へ飛び込んで流されるまま下っていった。


「釣りしてる人の邪魔すんなよ~?」


 2人のはっちゃけ具合に慣れてる真也は軽く注意しつつ見送って調理を開始する。彼の予定では1日目の夕食は酒飲みながらのバーベキュー、翌日の朝に軽食で昼のカレーも同時に作ると決めている。



 同日の夜、夕食を終えて遊び疲れた皆は篝火を囲んで座り思い出話や雑談にふける。しんみりとしたムードの中、暫くしてまばらに各々が酒を飲んで泥酔し始めた。


「§※∂∈∧∬ンダァオラァアアッッ!!!」


 創は川に向かって呂律が回らないまま意味も分からず叫んでいる。


「(もうダメだこいつら……)」


 バーベキューを終えてからも真也が肉なり焼きそばなり焼いて皆で食べる、中学生オンリーにも関わらず大人の飲み会みたく豪勢な物を飲み食いして過ごした。

 午後9時頃、皆の食事を作って疲れた真也は早めの就寝を皆に告げる。


「んじゃもう俺寝るから、クーラーボックスに入っている明日の食材には絶対手ぇつけんなよ? 食べても良いけど、今日食べていいのはこれだけだからね?」


 念のため余分に食料を分けて与えてから自分用のテントに入る。


「んじゃ俺は先に寝るから。明日早く起きて、お前ら潰れてようが何しようが朝早くに飯作ってやッから。その代わし大人しく俺のことを寝かせろよ?」


 皆が頷いたのを確認し、テントの扉を閉めて就寝しその日の一日を終えた。




 翌日、テントの扉のファスナーを開けて外を見渡すと凄まじい光景が最初に目に飛び込んできた。


「んぁ~……?」


 3~4人が周辺で横たわり、他のテントの幾つかが骨組み崩れて潰れていた。


「お前ら何やったの!? おい創ェ!!」


 真也は慌ててテントから飛び出て、真っ先に創の元へ近づいて叩き起こそうとビンタする。


「起きろ創!!」


「んぅ~……う~ぅん……気持ち悪ぃ、あぁ気持ち悪ぃ~。あぁ~放っといて放っといて!」


「お前気持ち悪いじゃねぇよ、何があったのか説明しろ」


「あぁ……あんま覚えてない、よく覚えてなぃ~……もうちょい寝かしてぇ」


 他にも数人の呻き声が耳に届いて、創に限らず横たわる皆が二日酔いみたく酔い潰れていたことを知る。その周りは食べかけの食材や酒の缶、食器等が散乱していてまるで台風が通り過ぎたかのように酷い有り様である。


「食べ物を粗末にすんじゃねぇ!」


 そう真也は一人でブチ切れながら朝の調理に取りかかろうと、頭の中で切る食材について考えながらクーラーボックス開けると……その中は1つ残らず空っぽだった。


「え”ぇ”!?」


 昨晩十分に入っていた筈の食材が1つ残らず無くなっていた、空虚な空間を目にして真也の思考が一時停止した。


「…………あ”れ”ぇ”!? 何で!?? 俺、昨日言ったよなあいつらに……?ーーおい創ェェエッ!!」


 自問の末、追い討ちをかけるかのように創の顔面を往復ビンタして叩き起こす。


「おい取り敢えず話せ!! 何があったのこれ!? お前クーラーボックスの中、全部空だよ?」


「分”か”ん”な”い”……わ”か”ん”な”い”わ”か”ん”な”い”! 気持ち悪ぃ~、もう触んないで」


「触んないでじゃねぇよテメェ! お前言っただろ!」


 真也は説教し始めるがいつまでもそうしていても仕方がない。そう思って早々に創を手放しつつ、困惑しながらテント周辺を頭抱えて歩き回る。


「うわどうしよ~……、飯無ぇじゃねぇか。米はあるけど……飯盒はんごうで取り敢えず米炊き始めっか」


 そういって一先ず人数分の米を炊き始め、その後も引き続き皆の元へ聞き込みに回っていると1人がしゃがれた声で一方向を指差しながら言った。


「がわ”……川ァ”!」


「何だ川って!」


 隣接した川は途中で高低差10mほどの崖のようになっていて、その上の方にいる真也達は下の方を見渡せる。川の深さは上流側が足元埋まる程度で大きめの岩も至るところに配置されているので、川ァ川ァと絶えず連呼している仲間のことも気になり川へと足を運ぶ。


「何のRPGだよこれ……ド○クエじゃねんだぞ! ヒントが無さすぎるよこれぇ……」


 ぶつくさ文句を呟きながら川を辿って見下ろす。すると、なんとその川の両隅にある岩にニンジンや肉のパックが引っ掛かっていたり、カレーのルーの箱が崖に刺さっていたりと周囲一帯で大胆に食材が散らかっていたのだ。


「……誰か投げたろこれ。あ”ぁ”~、もうやだ」


 完全にキレた真也は皆が横たわっている方へ振り返り、酔い潰れていようが何であろうがお構い無しに蹴り入れるなり叩き起こそうと歩を進める。その第一人者として川ァ川ァと連呼していた仲間にまず軽く蹴りを入れる。


「おい起きろコラァ……! お前らに昨日言ったよな? 絶対手ぇつけんなって。……何で川に落ちてんだお前? しかもこんな高ぇとこから……お前投げただろ!」


「投げ……投げたと思う……ごめん、投げたと思う……」


「はいもう全員集合……、全員集合ッ!!」


 真也が号令で皆をかき集める。


「お前ら今から酔っぱらってようが何しようが知らねぇ……お前らが死のうが何しようが知らねぇよ、取り敢えず食材取りに行ってこっちに投げろ」


 そう言って全員を川に向かわせて食材を投げさせ、真也がその食材をキャッチしていくと結果的に昨晩残しておくよう注意した分の食材が丸々戻ってきた。要は何を思ったのか酔った勢いでクーラーボックスに入っていた食材を1つ残らず誰かが投げ捨てていたのだ。

 無事食材が戻ったところで真也は忙しない朝を迎えつつ食事を作り始めた。


「はぁ……朝っぱらから面倒ごと起こしやがって」


 真也は普段から弟の為に料理を沢山作っていて、包丁を持ってきていないので持参したコンバットナイフを包丁代わりに玉ねぎを切っていく。当然ながら結構切りづらいのだが、雑でもいいやといった具合に手際良くジャガイモやニンジンの下ごしらえも済ませていく。

 その後も具材を鍋で煮てカレーのルーを入れ、隠し味に残っていたビターチョコレートを入れてよく煮立たせて朝一に昼用のカレーを完成させる。そうすることで荒熱を取って昼頃にまた温めることにより丁度良い仕上がりになるのだ。


 続いて朝食は残りの焼きそばや肉を焼いて、白米と一緒に皆で食べる。しかしその中でもやはり食べられない者が何人かいた。


「触”る”な”ァ……触”る”な”ァア”ア”ッッッ!!」


 その何人かはうずくまりながら嗚咽を吐いている。


「旨ぇ……旨ェ!!」


 酔いから復帰した側は皆笑顔をほころばせながら食事を掻き込み、その様子を眺めていると朝の騒動があったとはいえ素直に嬉しさが込み上げる。


「旨ぇか? っはっはっは」


 そうして和気藹々と朝食で賑わった。




「ーーんじゃ釣り行ってくる~」


 食事を終えて何人かが釣り竿を持って川に向かった。


「さて……、昼過ぎになったらここ出なきゃいけねぇから昼飯食ったら俺らここを出るからね」


 昼前には戻るよう皆に伝えて、また時間まで各自で遊びに出掛けていった。その中でも創と豪地がまた二日酔いにも関わらず川へ遊びに飛び込んで、下降にある激流の場所に流されていった。

 その様子を軽く見届けてから目を離し、昼前まで自由行動して暫く過ごしていたがいつまで経っても2人が戻って来なかった。


「何やってんだあいつら……」


 集合時間になった頃に二人が戻ってきて、事情を聞くとどうやら豪地が更にまた下降の激流へ流されていたらしく、創が陸から走って追いかけて救助していたらしい。


「お前水泳やってるやつが川で流されて死にかけてんじゃねぇよバ~カ」


 二人の出来事を笑いのネタにカレー食べながら皆で談笑し、誰一人怪我も無く無事にキャンプ場を出た。その後、疲れ果てた皆がふらついた足取りでバス停の見える位置まで歩いてきて、その彼らの横を一日に数本しか通らないバスが追い越していった。


「やべぇ、あのバスじゃね?」


「っ! ちょ、ダッシュッッ!! あれ乗りそびれたら何時間も来ねぇから!!」


 疲労が溜まりきった身体に鞭を打って、皆でバスを追いかける。バスは当然彼らより先にバス停へと到着し、そこに誰も待機していなかったのですぐにまた発車していった。

 必死に後を追うが、疲労感もあって流石に追い付けないと思った真也は10人のうち一番足が速い仲間に指示を出す。


「お前次のバス停まで走ってなんとか追い付け! そんでちょっと待ってもらうよう頼んでこい!!」


 足の速い仲間は頷いて走る速度を上げて何とか追い付き、バスの運転手もドアミラーで彼らの姿が見えていたのですぐに止まってもらえた。

 そうして彼らは保護者同伴せず中学生だけでのキャンプという初体験を満喫し、その1日の思い出を胸に刻んだ。



つづく

不定期更新につき、次回の更新日は未定です

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