第三章④:一跳飲濯(いっしゅういんたく)
約一年振りに更新
「よし、ワンバンやるか!」
真也達のいるダイサン(第三団地の金網張られたグラウンド)に後輩の1年生涼太が仲間3人を連れて現れ、計14人でサッカーボールを使ってワンバン(※第三章3の後半を参照)を始ることになった。
そして始める際に真也は靴を脱いで素足となり、靴の重さを無くすことによってボールに早く追いつけるよう準備する。
彼らが行うワンバンには『お決まりのショット』というのがある。真也がトスをもらい、サッカーでユースに選ばれた経験のある創に綺麗な打ちやすいトスを渡す、それをライナーでボレーシュートかの如く狙いを定めた奴を落としていく。その流れを2年半に及び行っていた為、最早やり慣れた手口で彼らにとってはアイコンタクトで十分通る手法である。
その『お決まりのショット』で二人は初心の涼太に集中攻撃を仕掛け、僅か数分で残機を2つ減らす。
「もうなんすかあれぇ……、あんなの取れるわけないじゃないっすか! 速すぎますよ今の球ぁ……」
そう文句は言うのだが、持ち前の気合いで次こそ取ろうと意気込む姿勢は揺るがなかった。
「次お願いします!! 次は負けませんよ!?」
「お前らが勝てるわけねんだからよ~、まぁ頑張りな?」
創は笑いながら涼太に言い、それでも1年生の4人は汗だくになりながら頑張る姿勢を見せる。だが一番気合いを見せていた涼太の残機が先に0になる。そして順に他の1年生3人も落とされて1年生全員は当然敗北した。
「お前らもう皆いなくなっちゃったな~? こりゃ皆罰ゲームだなぁ」
「どうすっか罰ゲーム?」
「う~ん、まぁ最初だから金網フェンスに手つけさして、ケツ向けさして全員でシュートで良いんじゃね?」
「あ、それでいっか!」
そうして1年生4人は金網フェンスに横並びで後ろ向きに立たされ、真也達3年生10人は全力シュートでそれぞれ10回ずつ1年生に喰らわせた。そのシュートを毎回最初に行うのは、狙ったところに必ず当てられる創である。
「んじゃ、涼太のあそこ……後頭部いくから! っはっはっは!」
ボールから10メートル離れたところで走り出し、PKの要領で豪速球を命中させた。
「っ! いってぇええええ!!」
身構えて力入れていたものの、初球でいきなり後頭部を狙ってくるとは思わず直撃部分を抑えて丸くなる。振り返る涼太の額には金網の跡がついていた。
「創君勘弁してくださいよ~! 後頭部は無しですよー!!」
涼太の額にあるL字のようなマークに皆笑いこける。
「じゃあ涼太は当たったから外れていいよ~」
真也がそう言って涼太は金網フェンスから離れ、その後も他の1年生3人には引き続き創以外のシュートが打たれる。
「いてぇ!」
「いって!」
「いだだだ!」
彼らが痛みを訴えるが、創以外の3人はシュートが差ほど上手くないので後頭部などの痛いところには当たらず、大臀部などの比較的痛くない箇所にしか当たらない。
「涼太は可哀想だから抜いてやったけど、お前らそんな痛くないだろケツくらいじゃ」
「それくらい頑張って耐えろ~」
それから3年生のシュートが一通り終わって、最後に残った真也がボールの前に立つ。そして正式なボールの蹴り方を知らない彼は前蹴りの要領でボールを親指の付け根に当てて、トーキックで真っ直ぐ飛ぶようボールを打ち放つ。
「う”ぉ”へ”ぇッ!!」
そのボールが1年生の赤坂という少年のボディに入る。しかし、痛ましい声を挙げながらも彼は立ち上がった。
「いやぁ~、今の利きましーー」
「はい、次行くよ~」
「マジっすか、まだやるんすか!?」
「やるに決まってんじゃん、当たり前でしょ? 遊びに来たんでしょ~、永遠ワンバンだよバ~カ! 永遠ワンバン、分かった? 永遠にやるの! 誰かが死ぬまでやってんだ俺らは、まだこれ甘い方だぞ?」
「これで甘いんすか!?」
「だから最初に言ったじゃん、今はまだ出てきてないだろ? 肩パン、肩蹴り、ケツキック……こんなの当たり前だからね? まだ俺ら差が2年近くある訳だから、その辺は多目に見てやるよ最初のうちは」
2年間ずっとやってきた3年生に、今日初めてやる1年生が勝てるわけないと真也達は笑う。
「んじゃ次どうしよっか? まず罰ゲーム決めてからやろうな?」
すると創が即座に案を述べる。
「じゃ次は~、使いっぱで良いんじゃね? 皆のジュース買ってこいよで良いんじゃね?」
その案に皆が賛同し2回目のワンバンが始まる。
「でも俺らが負けてもちゃんと後輩の分も買ってこいよ? これ1抜けな、1抜けした奴が罰ゲームな」
「それはもうガチでやろうぜ、さっきのは無しな」
「さっきの無しって何ですか!?」
涼太はすかさずツッコミを入れる。
「いいんだよ! 取り敢えず話は聞いとけ、な?」
「お、押忍……!」
「取り敢えず一人抜けたら俺らも罰ゲーム、今からは本気っつうことで」
「あれガチじゃないんですか!?」
「当たり前だろ、手ぇ抜いてやってるに決まってんじゃん。1年と3年でそんぐらいの差はあるよやっぱり~、しょうがないよそれについてはーーそれについてきたらまたレベルが上がるんじゃないんですかね? 人間としてねぇ」
真也は含み笑いしながら教師のような言い回しで答える。
「押忍、分かりました……じゃあよろしくお願いします!」
「よし、じゃあ第二回戦……始め!!」
真也が手でボールを宙へ舞い上げて、涼太の頭上目掛けて滑空していく。
「おし、涼太いけ!」
「押忍ッ!」
涼太は胸でトラップして一旦受け止めて上段回し蹴りを当てる。それが対面にいた真也や創の方に飛んでいくと思いきや、勢いよく飛んだ先が真横にいた涼太の友人である赤坂の顔面であった。
「ッブァ!!」
被弾した赤坂が起き上がった時には顔面が真っ赤に晴れ上がっていて、サッカーボールの縫い目模様にアザができていた。
「もう涼太と赤坂、顔すげぇぞ!」
「「「っはっはっは!!」」」
「赤坂の残機はこれで残り2な? あと全員3」
10人以上いてストック制となれば、人数減らす為に最初にストック減った人が必ず狙われて赤坂が先に脱落。
「じゃあ先輩、何飲みますか!?」
「んじゃ俺ポカリ」
「コーラ」
「ペプシ」
といった具合に皆がバラバラで赤坂に注文し、その最後に真也が頼んだのがーー
「……ミロ」
「……はいぃ~!?」
「いいからミロ買ってこいよ自販機で、ミロな? 分かったかミロだぞ? 知ってんだろ?」
彼の言うミロとは、CMでよくやっている水や牛乳に混ぜて飲むカフェオレのような市販カルシウムの粉がパックに入っている商品のことである。当時はそれが自販機に缶ジュースとして極少数の規模で売っていたらしい。
「自販機に缶で売ってッから、探して買ってこい!」
真也の無茶ぶりに爆笑する3年生達は、そのミロの缶ジュースが売られている自販機の場所を知っている。その場所はすぐ近くにあるのだが、そこへ至るまでにいくつもの引っかけがある。
団地の側に数台並んでいる自販機やコンビニ、それら周辺にある表通りの販売場所には何処にも置かれていない。
唯一置いてあるのはそれらの真逆を通ってずっと奥にある団地の裏路地にひっそり構えている自販機1台だけだ。
「おし、じゃあ行ってきます!!」
赤坂は紙のペンを常備している友人から借りてメモを取り、急いでその場から駆け出す。
「ーーあいつ遅っせぇな~」
「何やってんだあいつは」
当然ながら赤坂はいつまで経っても戻ってこなかった。
当時はポケベルの時代が過ぎ去ってPHSが学生の間で流行った。基本メールのやり取りで通話を控えると月額が約1300円と安い。しかし、少し間違えて通話を沢山かけ続けると飛躍的にその請求額が上がる。
「昨日PHSの請求が来て、16万とか書いてあってパパにめっちゃボコボコにされた……」
そう言って男女問わずアザだらけで登校してくる生徒はそれなりにいたという。
暫くして涼太のPHSに一通のメールが届いた。
『ミロが無いって伝えて、他は全部買ったけどミロが無い』
メールが届いてから20分、30分と経っても一向に戻ってくる気配が無い。
「もういい加減、喉乾いたし次の試合やりたいし暇だし……教えてやっか」
真也は涼太に通話を掛けさせて、繋がってからそのPHSを手に取る。
「オォイッ……この辺にミロ売ってねぇの当たり前だろう? 一ヶ所しか無いんだから」
『そうなんですか!?』
「そうなんですかも何も、お前ミロが自動販売機に置いてあるの見たことある?」
『いや、無いです。だから買ってこいって言われてビックリしたんですよね……』
「でもあるんだよね実際、一ヶ所だけーーで、ある場所だけどお前……あそこ行ったろう? 中央の駄菓子屋の前の自動販売機が密集してるところ。そのあとセブン行ったんじゃないの?」
『あ、そうです!』
「じゃあお前それ完全にミスってるよね、真逆だから取り敢えず一旦うちらんとこ戻ってきてみ?」
真也はそう言って困惑する赤坂をダイサンへ戻ってこさせ、彼が戻ってきたところの真逆の方角を指差す。
「あの路地抜けてって右曲がれば、1個目の角の先にある自販機にミロ置いてあっから。マジでそれ買ってきて?」
赤坂は徒労の末に他のジュースを一旦置いて、指示通り裏路地を通ってミロを購入し戻ってきた。
「旨ぇ……あんめぇ」
手に取るなりミロを一気飲みした真也は皆を集めて次の試合に取り掛かる。
「ーーさて、ここまでは練習だからな~、良いかぁ?」
「「「今までのが練習っすか!? うちらとレベルが違いすぎますよ~!!」」」
後輩達は口を揃えて言う。
「まぁそれはしょうがないよ、俺らだって中1の時はお前らくらいだったし。それでもやるっつったのがお前らだろ? やるっつって今更やめますは無ぇかんな? とことんやるんだからなお前」
「お、押忍ッ!」
「じゃ次はどうすっかなぁ~、いきなり肩パンとか肩蹴りはマズイから~……ケツキックかなぁ。肩パンと肩蹴りは許してやろうぜ? 怪我して腕上がんなくなっちまうからさ」
「まぁしかも真也が殴ったら、肩に刺青入ったみたいな青アザできるからさぁ~。俺も左腕上がんなくなったもんねぇ2~3日ねぇ」
「体格差もあるし、吹っ飛んでってどんな大怪我すっか分かんねぇから取り敢えずはケツキックで済ましてやろうよ」
「そうだな、んじゃ次は何人で決める~?」
「いつも通り1人でいいだろ」
「……1人……1人ねぇ、……1人に13発。まぁしょうがないよね、修行だと思って14人いるんだからーーよし、次行きますよ? よぉ~い……アクシォン!」
映画監督のような癖のあるイントネーションで真也がふざけながら合図し、今度はボールを思いっきり地面に叩きつけた勢いで宙に浮かせて3回目のワンバンが開始される。
今度は3年生同士も潰し合いとして身構えているので、皆の視線が先程までのふざけ具合とは大きく異なる。そして何を思ったのか創が真也を標的に捉えた。
「っちゅ、バカ野郎お前……!! おいふざけんなよ!」
そこから他12人を他所に、二人での笑いながらの猛攻が始まった。
「勝負だ!」
「勝負だじゃねぇだろお前……修行つけてやる為にッ!」
言いながらボールを蹴り返し、交互に宙へと舞い上げる。
「勝負なんだから、たまにはお前も負けなきゃいけねぇだろうが」
ふざけた口調で真剣にボールを蹴り返し、その際に創がもう一人のサッカーが上手い3年生に2人に目で合図を送る。それを真也は見逃さずに危機を察知する。
「(うわやべっ!)」
創を含む3人はトライアングルを描くようにボールをパスし、真也の死角を狙って不意を突いて失点を喰らわせた。
「おいぃ、ふざけんなよマジで~! ッウェッヘッヘ……!」
そして笑いながら余裕をこいていたが、次もまた同じやり方で失点し残機がたった1つになり罰ゲームまでのリーチがかかる。
「……んまぁいい、覚えとけよお前ら!」
「「やべぇ~! っはっはっは!」」
その後も初めて仲間数人から不意打ちを受けた真也は翻弄されるがまま、先輩がやられて爆笑し喜んでいる1年生達を前に隙を突かれてワンバンで初めての敗北を味わう。
「ほら……涼太、お前から来い」
「あ、良いんすか!?」
金網フェンスに手をついて真也はグラウンドの方へ、腰を入れて絞めるように尻に力を入れて背を向ける。そうすることで衝撃を軽減し大して痛くないダメージにまで抑えられるのだ。
そうして1人一発、全力キック13発が真也の尻へ次々と打ち込まれる。
「うっ……! とぉ~、よし来い! フンッ!」
そうして12人が順番に蹴り込んで、最後に創が本気の回し蹴りを喰らわせる。
「ゼェヤッ!!」
「ん”ぅ”! っと~、お前ら全っ然痛くねぇよ。痛くも痒くもねぇよ……! ーーちょっと痛かったけどね? いや次いくぞお前ら!! 覚えとけよオラァ!」
痩せ我慢で威勢を張って次の試合の罰ゲームを決める。
「んじゃあ取り敢えず長沢、お前今からセブンでモンダミンをパクってこい。いいか? モンダミン、お口くちゅくちゅモンダミン♪ のやつな? モンダミンをパクってこい」
「分かった行ってくる」
3年生の長沢はセブンイレブンへ向かい、手慣れた様子で僅か2分程の短時間でモンダミンを万引きし戻ってきた。彼は未だ一度も捕まったことが無いらしい。
「持ってきた」
「おうナイス~!」
「どうすんですかそのモンダミン?」
「モンダミンお口くちゅくちゅするんじゃないんすか?」
「いやぁそうじゃないんだよね~、何のためにやるか分かる?」
涼太達は少し考え込む。
「……う~ん、それ口臭とか口の中の細菌を取るやつですよね? しかもスゴい激臭しますよね?」
涼太が問いかけると、真也が嘲笑し答える。
「これ……飲み物なんだよねぇ」
そう言い放った瞬間に1年生全員が青ざめる。
「の……飲み物!?」
「飲み物じゃないですよそれ! お口くちゅくちゅするやつでーー」
「違う、これは飲み物。いい? これは飲み物です、次負けた奴……モンダミン一気飲み。よ~い?」
真也は有無を言わさず、形振り構わずスタートする。
「これもう打ち合わせとか無しな! 普通にやれよ!?」
そう言って真也達は絶対に負けたくないと1年生4人の方へとパスを回し、何度3年生の方へ回っても結局1年生の方へ回ってくる。なので1年生4人が仕舞いには諦めて自分等の間で潰し合うことになり、必死に仲間を蹴落とすデスマッチが始まる。
端で見ている3年生達は腹を抱える中、順調に各々の残機が減っていって最初に残機を失った赤坂がまた脱落し罰ゲームを受ける羽目になった。
「いやぁ残念ながらね、君負けてしまったから……吐くなよ絶対?」
モンダミンを手渡されて赤坂の両手が震える。
「これ本当に飲むんですか……? これ飲み物じゃないですよぉ……、これ飲んだらヤバイですってぇ」
泣き入る赤坂に周囲は爆笑し、その中で淡々と真也は告げる。
「いや罰ゲームなんだからしょうがないよねぇ……。モンダミン……飲みましょう」
「「「一気! 一気! 一気!」」」
引くに引けない赤坂は外装ビニールを剥がす。
「はぁ……はぁ……じゃあ、行きます……行きます……行きます! 行きます!」
「行きますってお前何回言ってんだよお前ェ! 早くしろ~!」
「行きます……! 飲みます……行きます……! 行きます!」
「っだから早く飲めよぉ遅っせぇなぁ~、たらたらしてんじゃねぇよ飲めよこのクソガキ」
「い”き”ばぁす”!!」
覚悟を決めた赤坂は500mlの容器を上に向けて口に流し込み、一口目にいった瞬間に鼻と口から勢いよく透き通った水色の液体を吹き出した。
「う”ゥ”ぉ”エ”ェ”ェ”エ”エ”ェ”エ”ッッ!!!」
「ってお前吐くなっつっただろうが!」
「これ飲みもんじゃなーーオ”ェエ”ォェ!! ……飲み物じゃないですゥ……!」
「そうじゃないんだよ、漢だったら全部飲むんだよ! いや飲めるところまででいいや、全部ってぇと凄い量あるからなぁこれ。とにかく飲めるところまでで良いから気合い見してみろよ」
「……す~~っ!」
気合い再び容器を上に傾けた赤坂は大きい一口で5~6回ほど溜飲し、その勢いのまま反射して吐き出した。
「ゥォ”オ”ロ”ロ”ロ”ッ!!!」
地面に緑色の透き通った水溜まりが出来上がり、その傍らで赤坂は嗚咽を吐きながら転げ回る。
「ヴぉえぇ……気持ち悪い……気持ち悪い気持ち悪いオ”ェ”エ”エ~ェ!!」
その痛ましい様子が時間経つに連れてみるみる悪化していく。顔が真っ青になり、延々とえずいて流石に爆笑していた皆も心配し始める。
「これやばくね……?」
「やべぇなこれ……、涼太お前あそこの近くに水野病院ってのあんだろ? ちょっと病院連れてってやれ、これやべぇよ。胃の洗浄かなんかしとかないとやべぇかもしんねぇから取り敢えずお父さんとお母さんに病院行くって連絡して、何があったのかとかは適当に誤魔化せ、医者の診断が終わったら俺に連絡くれよ?」
そう言って後輩連中を病院へ向かわせる。
「いややべぇな、モンダミンやり過ぎたな……」
暫く待って涼太からPHSで連絡が入る。
『今、病院で治療してるんですけど……“何飲んだんですか?“とか、“何か変なものでも食べました?”って聞かれて、即答でモンダミンを罰ゲームで一気飲みしたんですよコイツっつったら……“何をやってるんですか!!“って怒られて……。今は胃の洗浄をやってるみたいなんですよ』
「分かった、それ後で両親にも連絡しといて。それで俺の連絡先教えといて、俺に責任あるし謝罪するからさ」
話している間に胃の洗浄を無事完了し、皆が自宅に着いたかなと思ったタイミングで真也が赤坂の家に連絡して母親らしき声が応答した。
『はいはいもしもし?』
「あの、赤坂君と同じ中学校3年の束岡と申します。この度は息子さんにご迷惑おかけして、大変申し訳ございませんでした。お父さんはいらっしゃいますでしょうか?」
『あぁ居ますよ~』
「あぁでは代わっていただけますかね?」
『かしこまりました~ーーはい、もしもし』
赤坂の父親の声が入ってきて、真也は再度同じ挨拶と謝罪を告げるとその父親は途端に笑いだした。
『う~ん、もうその話聞いたら爆笑しちゃったよね~。面白いことやってるねぇ! モンダミン一気飲みをうちの息子がすると思わなかったね~』
「いやぁでもこういった罰ゲームを設けて俺らよく遊んでるんですけども~」
『まぁ若いうちは何でも好きなようにやったほうがいいよ~! うちの子も良い経験になったでしょぉ、先輩達と遊ぶことによって学ぶことも色々あると思うから今後ともよろしくお願いしますね』
「こちらこそ、再度本当に本当にすみませんでした!! 今後とも何かあったらまた僕が責任持って全部やりますから、何卒よろしくお願い致します」
『君ほんと礼儀正しいねぇ』
「いやそんなことないですよ」
『気に入ったわぁ、今後ともよろしくお願いしますね』
赤坂の父親は中学生に大してもきちんと礼儀を持って接するような形で、互いにとても好印象を持って通話を切る。
この日を境に赤坂は、“モンダミン”というあだ名で呼ばれるようになった。
つづく
真也氏の後輩である竜氏が今作を読んでいただいていたらしく、続きが読みたいとのことで真也氏が数十年振りに剛柔流空手の道場へ通い始める9月2日までに前回までの全話を改稿し更新しました。
次の更新がいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。では!




