第二章⑦:埼遂征双(さいすいせいそう)
コーヒーとモンスターエナジーが不味く感じてきた今日この頃
埼玉の中学生達と2度目の戦闘で、ヤクザを雇われて已む無く逃亡を図った真也達。そして、その後もその場を彷徨いていた埼玉の中学生達は警察に2度目の連行され、不戦勝になったという事を翌日に朝の学校で知る。
「馬鹿じゃねぇの!?」
「あいつらほんと猿だよな~」
「んで、どうするか~……こっち呼び出したらまた昨日みたいになるよな~」
「……なぁ、宮本武蔵って知ってるじゃん?」
「あぁ、まぁ……」
仲間のうち一人、歴史に関心のある人がとある策を提案する。
「あれさぁ、約束の時間を守らず半日以上ずらして相手を苛立たせて佐々木小十郎と殺り合ったらしいじゃん?」
「あぁ~、それいいな! 約束の時間を決めて、向こうの敷地内で待機させて、うちらは二時間遅れとかで突撃するか一気に? こっちも竹島とか呼んで20人ぐらいにしてさ」
「その方が早ぇよな!」
「まぁ多分、二時間とか放っておきゃあ向こう怯むっしょ!」
「怯むっつうか油断が生じると思うんだよね~」
「んじゃあまぁ、それでいくか~!」
偉人の策略から作戦を取り入れ、流れが決まったところで真也は埼玉の中学生達の頭角に3度目の電話を掛ける。
「おい猿どもこの野郎っ……!! お前ら……、またお前凶器準備集合罪で持ってかれたって~?」
『ビビって逃げてんじゃねぇぞお前らよぉ……ッ!!』
相手のお決まりの威嚇対して含み笑いしながら、先日車に引かれかけたにも関わらずまた同じように煽り散らす。
「馬鹿野郎てめぇ車が突っ込んでくると思ってねぇんだよこっちもよぉ……やっぱ猿かよお前。こっち10人に対して何人凶器持って走ってきてんだバーカ! 馬鹿この野郎! サ~ル!」
そうして相手の気をひたすら逆撫でして揺さぶりをかける。
『……』
「お~いサル聞いてッか? もういいよ、こっちもそれなりに覚悟を決めたよ。人数を集めて、場所は俺らとお前らの地元の中間地点な、花畑前のデッカイ公園あるだろ? おい聞いてっかこの野郎!」
『……あるな』
「こっちの敷地内だけどビビって逃げんじゃねぇぞこの野郎……、何人でも集めとけ。んじゃあ今日の……またデコ来っから夜中の2時な、デコ助とかあんま巡回しない時間だから2時だ夜中の! 絶対来いよお前。この野郎! 男だったら来いよッ!!」
そう言って真也の方から即座に通話を切る。
「お前らちゃんと睡眠摂っておけよ? 夜中の2時だからな。取り敢えず、まぁ今日も給食食って帰るべ!」
それから昼休みになるまでの間に、各学校の仲間達に電話を掛ける。
「おい、権吾?」
『あぁ、真也君か。どうしたの?』
「いやぁ昨日にさぁ、暴走族んとこ喧嘩しに行ったんだけどヤクザの特攻車に突っ込まれたりで手が付けられなくてさ~、今日の深夜2時に3度目の勝負を仕掛けにいくんだけどちょっと無理そうだから手助けしてくれねぇか?」
『ほぉ~、またやべぇのと絡んでんなぁ』
「まぁな、そっちも竹島とか何人か選抜して来てほしいんだ」
『いいぞ行く! 任せろ! んで喧嘩の原因は何なの?』
「うちの彼女の女友達がさぁ、そいつらんとこの女と一対一で喧嘩してるところ、そこの女の彼氏が出てきて頭カチ割られたらしいんだよ」
『何だそれ!! 舐めてんなそいつら!』
権吾に突如怒りのスイッチが入る。
『ちょっと兄貴にも色々聞いとくわ! どこだそいつら!?』
「どこだっけな~えっと……ーーあ、そうだ埼玉の愚連隊だよ。んでバックでヤクザがついてて、そいつらの鉄砲玉とかも来る可能性があって、うちらも昨日それで引かれかけて逃げてんだよ」
『分かった、その辺の情報聞いとくわ兄貴に』
「おう、あと夜中の2時に集合ってなってるけど向こう卑怯だからさぁ、こっちも卑怯な手を使ってこうと思うんだよ」
『ほう、何するんだ?』
「集合時間からわざと2時間遅刻して、連中の怒りを沸騰させるんだよ。宮本武蔵みたいに冷静さな判断を鈍らせる作戦で行けば、こっちにも勝算はきっとあるだろってことでな。一気に襲撃かけて即行で逃げようと思ってるんだよ」
『あぁそういうことな、了解了解。じゃあ攻撃力とか瞬発力に長けた奴を選抜して5人くらい連れてくわ、何時頃行けばいい?』
「じゃあ夜中の2時過ぎぐらいでいいよ、睡眠しっかり摂って備えるんだぞ」
『分かった』
真也は通話を切り、そういった流れで次々と他校の仲間に召集を呼び掛ける。そしてドMのボクサー、耐久力のヤスと防御力面に長けた仲間も加わって合計で26人集まった。そして真也が指定した公園は、真也達が地形を知り尽くしていて地の利を活かした戦いが出来る。それによって人数差による不利を克服する、朝鮮人達との真っ更な地形で戦った経験から学んだ策略である。
予定通り夜中の2時過ぎにダイサンに集合し、戦略を練り始める。彼らがこれから向かう公園には入り口が二ヶ所しか設置されておらず、そこへ真也達が二手に分かれて挟み撃ちをする。そうすることで相手の意識を一瞬だけ左右に揺さぶりをかけて、隙を作ってから一気に迎撃するというものである。
「早く行くっしょ!」
「うるっせぇ! ちと待ってろ、今作戦会議中だぞ」
「行くっしょ! 行くっしょ!」
「だからうるっせぇっつってんだよ! ちと待ってろ! 取り敢えずまだ2時半くらいだから、こっから15分くらいで着くだろうしあと一時間くらい待つか」
その間にも向こうの頭角から真也のPHSに何度か着信が入る。それにより相手の連中が公園に集まっていることを把握して、ひたすら無視し続けて煽っていく。
「こんなのシカトだよシカト」
その後も着信が鳴り続けて一時間、真也達は見つからないように現地へ向かい始める。
「創、今回は頭使えよ? 相手が何人で来てどんな凶器を持ってくっか分かんねぇからな」
「大丈夫大丈夫、余裕っしょ! 行くっしょ!」
「だからそういうことじゃねぇんだって、ったくもう……行くっしょじゃねぇんだよ興奮し過ぎなんだよお前!」
緊張感の無い会話をしながら歩いてゆき、公園が見えてきたところで双方の入り口へ真也側と創側の13人ずつで分断し待機した。そして創側に言い渡された作戦は、大声が得意の創が朝鮮人達との戦いの時のように声を張り上げて、外見が目立つ竹島と防御力のヤスを引き連れて反対側から狂ったように叫び散らしながら突っ込んでいく特攻である。
注意を創側に向けて背後に隙を作るという、陽動と真也側への合図の兼任だ。
そして身体の大きい仲間3人で向こう側の入り口を塞ぎ、逃げ道を無しつつ残りの10人で攻めるという攻守徹底した分隊を編成する。一方、真也側には少し戦闘力に劣る人達を固めて、真也が先頭でメインを張って他の12人も戦いつつ真也に戦力が集中しないように分散する囮作戦である。
創側が反対側に到着し、創が一人凄まじい叫び声を発して突っ込んでいった。
「てめぇらかこのチョン公ァ!!!」
その合図を聞いて真也側は必死に声を抑えながら爆笑する。
「(創ぇ……! そいつらチョン公じゃねぇぞォ……!)」
「(っはっはっは! あいつチョン公とか言ってっぞ!?)」
「(完全にイっちゃってんじゃねぇか!)」
「(あいつラリってるよね~やっぱ! っハハハハ!!)」
「(笑ってる場合じゃねぇぞ、俺らも行かなきゃ! つか腹筋いてぇ~……)」
真也側は声を押し殺して笑いを堪えつつも創達の反対側から走っていく。するとやはり、40人程の中学生がバットや鉄パイプ等の凶器を持って待ち構えていた。作戦通り40人全員が創側の方を向いていており、真也達が到着するまでに創が真也から教わった通りのやり方で相手を一発ずつ何人も仕留めていた。
「おいやるじゃねぇか創ェエ”エ”エ”エ”!!!」
近距離に到達した段階で今度は真也が叫んで、相手の注意が錯乱し凶器を振る速度が鈍った。そして集団を纏めあげている中心人物の立ち位置はだいたい決まっている為、相手の番格を視認で判断して真也が突っ込み、それに向けて番格が鉄パイプを振りかぶってきた。しかし、相手がその動作に入った時にはもう遅い。振り切るよりも早く、真也の飛び膝蹴りが顎に直撃し番格は一撃でノックダウン。
そして倒れている番格の足で思いっきり踏みつけながら覇気を撒き散らす。
「貴様らァ”ア”ア”ア”ア”!!! 女の頭ブン殴りやがってんの野郎ァア”ア”ア”ア”!!! おいどいつだブン殴ったのは、コイツかァア”ア”!?」
真也に相手の大半が怯む中、一人真也を睨み付ける奴がいた。
「んだてめぇ……」
「てめぇ何だこの野郎っ……!」
真也はその一人に向かって左足で至近距離へ踏み込み、振り子のように勢いついた上半身の力を利用して思いっきり相手の顔面を振り抜いて殴り飛ばし撃破する。
「うるっせぇ黙ってろこの猿! おい次誰だ相手になんのは!? 何人でも良い掛かってこいやオラァ!!」
創側は馬乗りになったりしてニヤけながら狂ったように相手を殴り続け、相手側が戦意喪失し悲鳴を上げながら散らばるように逃亡していった。そして横になっている番格だけが置いてきぼりになっているところを真也が近寄って何回も踏みつける。
「おい起きろ猿……、死んだフリしてんじゃねぇよこの野郎……。俺は熊か? 熊なのか?」
太乙氏が口にしていた口癖を間に挟みながら、真也は笑って胸ぐら掴み往復ビンタで追い討ちをかける。
「女の頭カチ割りやがって、嫁に行けなくなったらどうすんだ……!? 漢として貴様を許さない……」
「すいませんでしたぁああ! 勘弁してくださいぃ……」
番格は号泣し始める。
「勘弁してくださいもクソもねぇねんだよ、小便小僧がよぉ……。てめぇ誰に喧嘩売ったか分かってねぇみてぇだなぁ……、てめぇの仲間のお猿さんやゴリラさんはもう出て来れねぇようにしてあっからさぁ~」
「うぅ~……」
「さてここで問題です、仲間のいなくなった1匹のお猿さんはこれからどうなるでしょう? ーー1、熊さんにお花畑を見せてもらう。ーー2、熊さんのお仲間達にお花畑を見せてもらってお星になる」
「勘弁してくださいィ!」
「これが俺達のやり方だよ、貴様ら何回も何回も馬鹿だなぁ~デコに捕まりやがって。これでいいか? てめぇらの負けでいいかおい? 認めるかァ……? この2択が君に迫ってくるけどどうする?」
「もう負けでいいです……勘弁してください……」
「あぁ、じゃいいよ許してやるよ。その代わり一切うちの女の友達の泉と瑞穂に手ぇ出すんじゃねぇぞ、そして足立区に関わんじゃねぇ! 喧嘩売ってきたら貴様らを殺しに行くからな~また、分かったか?」
そう言って真也は最後に思いっきり番格の頬をブン殴って、歯を折ってから胸ぐらを離して立ち上がる。
「おーっし解散ー! 皆よくやったー!! 襲撃成功!」
「「「ッハッハッハァ!! おっしゃあああ!!」」」
仲間達は勝利に高揚して高笑いを上げる。
「おっしデコ来っからよぉ、即行で逃げんぞー! ダイサン行こうぜ!」
皆スッキリした顔で脱力してその場を走り去った。
「んじゃ皆にジュース奢ってやるよ~!」
ダイサンに着いた直後に真也がそう言い始める。
「え、お前金持ってんの?」
「いらねぇよ金なんて!」
真也は自動販売機の出口から上に向けて片腕を突っ込み、真也の身体が瞬発的に力入って一度揺れると中から缶やらペットボトルやらジュースが溢れ出てきた。これは、当時の自動販売機には防犯対策が施されておらず、とある一ヶ所を中指で引っ張ると全部のストッパーが外れて流れ出てくるというやり方である。
「ほら何本も出てきたから何本も飲めオラァ!」
「すっげぇ何だそれー!?」
「んで、タバコ吸いたい奴いる~? 全部奢ってやるから俺が~、タバコの買い方教えてやるよ~!」
真也はタバコの自販機の裏に回る。
「タバコの買い方は、こうやるんだよ」
真也は全体重乗っけて側刀蹴りを入れ、大きな衝撃を受けた自動販売機は出口からまたタバコが溢れ出てきた。
「好きなの持っていけ皆~」
「お前何でこんなこと知ってんだよ~!」
ダイサンにいる真也や創といった四区中側は皆知っているのだが、他校の竹島やヤス達は皆驚愕している。
「こういう風に買うんだよ、タバコとジュースって」
「嘘だろお前~!?」
「マジでちょっと俺もやってみたいんだけど!」
「いいけどタバコはそんな簡単に落ちてこないよ~、やってみ? 思いっきりタックルでも何でも良いから」
そしてタックルして自販機が揺れるも、タバコは1つも落ちてこない。
「これどうやんの!?」
「いやだから、お前の体重の乗せ方が足んねぇだけだよそれ。俺の蹴りをもう一度見とけよ~」
真也は再び自販機の裏で3mくらい離れてから、助走付けて真ん中辺りに側刀蹴りを入れて20箱ほど落ちてくる。
「こうやって、この辺りを狙って攻撃すりゃあ落ちてくるんだよ」
「すげぇな~やっぱお前は~」
その後も他校の仲間が教えてもらいながら順番ずつ練習して遊んでゆき、一通り落ち着いたところで先程の戦闘について語った。
「これで埼玉は潰したな~」
「次の敵は何処になるんだろうな、楽しみだな~」
「俺らは今後何があっても一生友情を続けていこうぜ」
そう真也が告げて皆で固い誓いを立る。
「あいつらは今回警察に何度も捕まってて、相手が俺らだと多分バレてっから口裏合わせるぞ」
“うちの知り合いの女子生徒が、向こうの頭角に鉄パイプで頭カチ割られたので素手で仇を撃ちに行った”
「ーーといった感じで、警察に呼び出されたときは正直に答えろよ? んで俺に呼び出されたと言っとけ、俺が全責任取るから。んで、召集をかけられたのでやりましたって言うんだぞ? “向こうが凶器を持っていた為、自己防衛で殴りました”と正直に伝えればいいから、その指示を出したのも全て束岡ですって言え」
仲間達が頷いて、徐々に空が明るみを帯びてきたところで解散し自宅で昼過ぎまで爆睡したのであった。
第三章につづく
前回の後書きで、親知らずが痛いと言っていた続き
その日の9時前に近所の歯医者さんに着いたのだが、何故か診療時間前なのに扉が開いていた。中を覗いてみたらそこに患者がかなり並んで座っていた。
「どうされました~?」
看護師の一人が真也氏に問いかける。
「結構前にかかったんですけど、親知らずが痛くて~早く抜きたいんですよね~」
看護しに問われた途端、真也氏は突如自分の右の下顎をニコニコしながら殴り始めた。看護師達が慌てて駆けつけて止めに入る。
「落ち着いてください! 一旦落ち着いてください! 順番に治療しますので……」
「いやぁ昨日の夜からずっと痛くて~……こうやって殴ってないと痛みが和らがないんですよ~」
真也氏はひたすらに自分の右顎を笑顔で殴り続け、周囲の患者も完全にドン引きしている。
「あとどんくらいかかりますか~?」
「あと1時間くらいかかりますね……」
「一時間も待ってらんないんすよ~、待ってる間ずっとこうやって殴ってなきゃいけないんですか~?」
「いや殴っても治まりませんから取り敢えず落ち着いてください!」
「んじゃペンチ貸してください、自分で引っこ抜くんで」
「いやいや出来るわけないでしょう!」
「そう言われても痛すぎてもうずっとこうして殴ってないと~……、家にいる間は俺、痛み和らげる為に歯磨き粉飲んでたんですよ~」
「……は?」
「いや飲んでたっつってもね? ベロに付けて親知らずんとこにグッと押し付けるんすよ、そしたら痛みが急に一時的に引いたんすよ~マジでピュオーラすげぇんすよ! ここ歯磨き粉売ってます?」
「……え、えぇ……」
「じゃあそれ貰えます? 飲むんで」
「315円になります……」
「あいよ~!ーーはぁ~歯磨き粉旨ぇ~……」
真也氏が座って顎殴るのを止め、歯磨き粉加えて旨い旨いと吸い始める。その様子に周囲はドン引きしてる患者と大いにウケてる患者がいた。そのうちの一人のおじさんが真也氏に声をかける。
「あんちゃん、だいぶ肝座ってんな~。久々にあんたみたいな奴見たわ~」
「そっすか?」
歯磨き粉を吸いながらクーラー効いてる部屋に居たら、1時間半も寝落ちしていた。スタイルと顔が美形の看護師に起こされて、その人に惹かれながら診察室に入っていった。真也氏は薬が効きにくい体質なので、余程強烈な薬を打っても聞かないので強烈な麻酔を打つように頼んで数本打ってもらった。
そして胸の大きい看護師によって麻酔から、虫歯の神経を1本抜くまでの作業を行ってもらい、その間にその看護師の胸が、肩幅の大きい真也氏の肩に触れまくる。真也氏は“おっぱい当たってますよおっぱい!”と何度も叫んでいて周囲の看護師が必死に笑いを堪える。
そして治療を終えて会計を済ませて後ろで何人もの患者と医者に笑われながら帰宅した。
「1200円であれやってもらえるなら、キャバクラより良いかもなぁ~……」
以上、真也氏の日常奇行その1でした。また彼が何かやらかしたら2を書く……かも?
監修の方が今週から出張で、多忙によりお互いの合わせられる時間帯が取れなくるので二ヶ月ほど休載します。申し訳ございません
第三章は約二ヶ月後となりますが、次回もお楽しみに!




