1-6 狙撃手、ウォーカー3
不満を叫んですっきりしてからまずドロップを確認する。
ODSは遠距離戦闘が多くなるため、ドロップアイテムは全て戦闘終了時にプレイヤーの前に表示される。
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緑鬼の角×2
緑鬼の力の源。大きいほど強い個体である。
緑鬼の牙×2
緑鬼の牙。その鋭い牙で獲物にかみつく。
緑鬼の耳×1
緑鬼の耳。漢方薬の一種、そこそこの値段で売れる。
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次に今の装備の評価を下す。
「SMLEはいいな、高威力で精度も良い。弾道も距離が出ると少し落ちるけど十分扱えるレベルだ。だけど銃声でモンスター皆アクティブにして寄ってきちゃうのはまずいな。なんか対策しないと。」
そう言いながら薬室を開き、使った分の弾を上から込める。
次に落としたM30を拾い上げつつ評価する。
「流石はショットガンって感じだな、近距離での威力は申し分ない。それにポンプアクションと違って素早い連射が出来るのはそれだけで強みになるな。ただ2発しか撃てないのは辛すぎる。これもなんか対策を考えないと…。」
中折れ式のM30の薬室を開いて廃莢して、新しいショットシェルを2発詰める。
そして最後にM10拳銃を取り出してエキストラクターロットを押して廃莢して、1発づつ弾を込める。
「M10はあれだな、つらいな。38口径ロングコルト弾の弱さを知った気がする。そらアメリカ人皆45口径大好きになるわ。」
文句を言いつつ拳銃をショルダーホルスターに戻す。
「これは効率の良い狩り場を見つけないとすぐに詰むな。とりあえず今の目標は1、新しい拳銃をかう。2、新しいショットガンを手に入れる。3、銃剣を買って近接戦をする。のどれかだな。」
やることを決めてとりあえず立ち上がる。
「さて、なんにせよお金を稼がないとな!」
前向きに物事を考えていこうと決意した。
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その後さらに何戦かしてみたが、とても効率的とはいえず、一度はじまりの町に引き返した。
そもそも1発撃つと有視界範囲の敵ほぼ全てがアクティブになって突撃してくる以上、ショットシェルを10発しか買わなかったのは致命的なミスであった。
とりあえず手に入れたアイテムを売って弾を補充しない分には何も出来ないなでアイテムを買ってくれそうな店を探す。
ちなみにNPCショップだと一定の値段でしか買い取ってくれないので、少しでも高く買ってもらえるようにPCショップを探す。
まわりの店を冷やかしながら歩いてるとドスのきいた声に話し掛けられた。
「兄ちゃん!なんかさがしてるのかい?」
振り向くと、滅茶苦茶ガタイの良いおっさんが道にレジャーシートのようなものを敷いて露店を開いていた。
なにか異様なシュールさを感じるが、どうやらプレイヤーのお店らしい。
渡りに船だったのでおっさんと話をする。
「いやちょうど、素材を売りたくて店を探してたんだけど、どこかいい店を知らないか?」
「ならここで売ってくといい!少し色を付けるよ?」
「そうか!ならお願いしようかな。」
そう言って、そんなに多くないドロップアイテムをトレードウインドウに出す。
それを見た店主のおっさんはぽつりと漏らす。
「草原のアイテムか、正直今ほとんどの奴は草原に居るから草原のアイテムはあふれてるんだよな。」
その一言にまじか、と背中に冷や汗が流れた。
「あんまり数が無いけど、狩りがうまくいかなかったのかい?」
「あー…、なんかリーエンフィールドを撃つと銃声聞いたやつが皆寄ってくるんだよね、スナイパーライフルだと近距離の対処が難しくて……。」
「兄ちゃん、ライフルにフラッシュハイダーつけてなのか?」
「フラハイ?いや、マズルパーツは特にいじってないけど…、効果があるのか?」
「ああ、ゴブリンとかの初級のモンスターは銃声だけじゃあどこのから撃たれてるのかわからないんだ。大雑把に音のした方を振り向くと発砲炎が目にとまってアクティブになるらしい。」
「そうだったのか、マズルハイダーはどこで手に入るかわかるか?」
「そんなの兄ちゃん、どこでも手に入るさ!それこそこの店でもな。このゲームはマズルパーツや他の武器パーツ、後はこのゲームオリジナルのカスタマイズ、そう言ったものを重視しているからな。」
「オリジナルのカスタマイズ?」
「ああ、例えばこの緑鬼のアイテムを使えば【リーエンフィールドVer緑鬼】みたいになるんだ。正確には少し違うみたいだけどな。こういうカスタムをすると威力や射程にボーナスがついたり、特殊なアーツが使えるようになる。」
「アーツ?」
「アーツってのは武器やスキルごとに使える……まあ、技だな。例えば毒を付与出来る弾丸を撃てたり、ライフルから散弾を飛ばせたりするようになるらしい。まあ、クールタイムやMPの消費がアクティブスキルを使うよりも多かったりするらしいけどな。」
「なるほど……。調べたつもりだったけど全然知らなかった。ありがとう。」
「いや、大したことじゃないから気にするな。それより、フラハイは買っていくか?」
「あんなに売るアイテムが少なかったのに買えるのか?」
「買えるさ!マズルパーツは特殊なのを除いて滅茶苦茶安く設定されてるぞ!うちなら150Gだな。」
「ブリティッシュ弾15発分か…。安いなぁ。あ、あとどこかおすすめの狩り場は無いか?」
「そうだなぁ、南の山エリアはどうだ?あそこの素材はまだほとんど出回ってねぇな。」
「そうなのか?」
「ああ、視界が悪い上に、山の上の方からアントっていう蟻人間のモンスター出るんだが、そいつらは山に横穴を掘って巣にしていてな、一度発見されると巣の中から山のようにアントが出てきてプレイヤーよりも高い位置から山のように弓を射ってくるんだ。そうすると射撃に慣れてないプレイヤーはもうてんやわんやになって戦闘にならないらしい。そのおかげか良くないイメージがついていてあまりプレイヤー寄りつかなくなっちまったんだ。」
「なるほど、見つからなければ良いのか。ありがとう行ってみるよ。」
「おう!アイテムが手に入ったら持って来い。相場よりも高く買い取ってやるよ。」
「ありがとう。じゃあまたな。」
そう言って、フラッシュハイダーと少しの弾を買って俺は南の山エリアへと向かった。