1-5 狙撃手、ウォーカー2
早速西の草原に来た俺はまず狙撃銃の使い心地を試すことにした。
背中に負い紐でショットガンを背負い、アクティブスキルの【隠蔽】を発動させ茂っている草むらに隠れる。
バックパックを地面に置きそのうえに狙撃銃を乗せ伏せ撃ち(プローン)の態勢になる。
狙撃手が心がけるのは体を隠すことだけではない。
例えば草むらから銃口が出ていればそれだけでも、ばれやすくなってしまうし、スコープの向いている方向に太陽があればスコープに太陽の光が反射して相手に場所がばれてしまう。
草むらなどが無くただ伏せるにしても、明るい場所は何色の服を着ていても見えやすくなってしまうので木で出来た陰に伏せたりするのは基礎的な知識になる。
ちなみに【隠蔽】のスキルはMPを一定量消費することで発砲するまで体の色が周囲に同化するスキルだ。
スキルレベルが上がると隠蔽率が上がり消費MPも減少する。
なのでスキルレベル1ではお守りレベルでしかない。
しかしこのODSのスキルは反復使用でレベルが上がっていくので可能な限り使っていく。
隠蔽が効果を発揮したら今度は【鷹の目】を使う。
このスキルは自分を中心に一定範囲内を視認状態にすることができる。
このゲームでは発見したものにはスキルなどを使ってタグなどを使うことが出来る。さらに視認状態にした相手は視界の右下に表示されるミニマップに敵は赤い点で表示されるので後ろからの不意打ちを防ぐ目的もある。
鷹の目で視認状態にした敵に【スポット】を行うすると視界に赤い付箋のようなものが浮いている。
それらは全て緑色のゴブリンの上についていた。
その数は全部で5。
鷹の目の範囲がまだ狭く、半径50m位しかわからないので長距離の索敵は自分の目ですることにしてとりあえず一番近くの38m(赤い付箋には距離が書いてある)に照準を合わせる。
狙撃銃として入手した銃には全てスコープが最初からついている。
スコープを覗いてレティクルの中心にゴブリンの胸の中心が来るようにする。
確かにこのゲームには生物タイプの生き物にヘッドショット判定があるのだが、まだ銃の癖もゼロインもわからないのでキャリブレーションを兼ねて胴体を狙う。
ゲームなので無いと思うけど、例えば5㎝ずれたとしよう。
頭を狙っていたときに5㎝ずれると頭の小さいゴブリンの場合頭の横をかすめてとんでいってしまう。しかし胴体なら急所ではないが、弾は当たる。
そう言った意味を込めて胴体の中心部をスコープ越しに睨みつける。
大きく息を吐いて人差し指以外は完全に脱力させる。そしてゴブリンの動きが止まったところを撃つ!
タァッーン…。
音を遮るものがない草原では発砲音が遠くまで響く。
弾着しゴブリンが倒れるのを確認する前に素早くボルトを引いて次の弾を薬室に送り込む。
音に気がついた四体のゴブリンが棍棒を振り回しながらこちらにかけてくる。
伏せうちでは素早く動く相手を撃つことが出来ないので片膝立ち(ニーリング)をして一番遠くに居るゴブリンの腹を狙ってすかさず撃つ。
タァッーン…。
弾着するのを確認するまもなく、SMLEを地面に置き背中に背負っているM30を構える。
二番目にて前にいたゴブリンはもう目の前まで迫っていた。
俺はたまらず、構えることもせず腰撃ち(ヒップファイア)して一体を地に沈め、3体目はしっかり狙い十分に引きつけて撃つ。
バスンッ!という音とともに吹っ飛んだゴブリンには目もくれずM30を手放しショルダーホルスターからM10を引き抜きゴブリンに撃つが1発では斃れず、撃鉄を起こして二発目を撃とうとすると、十分に近づいていたゴブリンは棍棒を振り回してくる。
それを回避しつつ2発目、3発目を叩き込み、4発目でようやくポリゴンのかけらになって空中に散っていく。
2、3歩後ずさり、そのまま尻餅をつくと
「ハァァ」
と大きくため息をつき
「38口径よええええ!そらアメリカ人も9㎜不振になるわ!」
と不満を漏らした。