1-4 狙撃手、ウォーカー
目を開くと、陳腐な表現だが中世ヨーロッパのような町並みが広がっていた。
どうやらここは町の中心の広場のようでとても開けた円形の空間の中央にこれまた大きな噴水がある。
そして何より目につくのはこれでもかと言う人、人、人の山だった。
それに加えてとてつもない喧騒が耳に届く。
「西の草原に行きます!パーティー募集中です!」
「ヒーラーの人を募集してます!」
「何でも良いから素材売ってくれえ!NPCの倍で引き取るぜ!」
MMOを初日からプレイするのは初めてだからこんなに騒がしいのが普通なのかわからないが、お祭りのようでなんだかこっちまで楽しくなってくる。
そんな喧騒を楽しんでいると、視界の左上に手紙のマークが黄色く点灯した。
どうやらフレンドチャットが届いたようだ。
『町の教会前集合な まどか』
どうやらお呼びのようなので視界の右下にあるミニマップを便りに教会まで行ってみる。
教会までは少し遠く、スミス達の出店やNPCの店を冷やかしながら歩く。
どうやらNPCの店には初期武器がいくつか売っているのと、弾もそれなりの数売っているみたいだった。
他にも初心者向けの回復アイテムや銃剣を始めサーベルや棍棒なども売っていて、銃以外にも攻撃手段があることを意図せずではあるが知ることが出来た。
逆にプレイヤーの店はまだほとんど商品がないがこれも後一時間もすればドロップアイテムで一杯になるだろうと予想できる。
そんなことを考えているといつの間にか教会の前についてしまっていた。
教会前は人があまりいなくて、広場の喧騒とした雰囲気とはまた違った空気感があった。
すると教会前に女性5人の集団を見つけた。
その5人のうち1人がこちらに気がついたらしく手を振っている。
「あれ?外見いじってないの」
とまどか?らしき人物に聞かれた。
「一応髪の色と目の色変えたけどそれ以外はね。てかよく気がついたな。」
「伊達に彼女じゃありませーん!」
と茶化してくるキャラクターは金髪に初期装備のもっさりした服に身を包んだまるでアメリカ人の代名詞のような見た目をしたまどかだった。
「ほらこれ私の彼氏!本当にいるんだよ!」
と教会前の4人に話しかける。
「本当にいたんだ」
「バーチャルじゃないのか」
「もしかしてNPC?」
など4人は口々に言う。
それに対してまどかが
「ちょっとぉ!本物だよ!」
アホなやりとりを見ていて気がついたがこのゲームは1パーティー5人だから俺は入れない。つまりこいつは自慢したいがために俺を呼び出したのか…。
仕方ない聞くことだけ聞いてさっさと狩りに行くかな。
「なぁ!ええっとなんて呼べば良い?」
「私?私は『マドカ』って名前にしたからそれで呼んで!」
「マドカ?まんまだな、わかった。あとおすすめの狩り場は?」
「西の草原エリアかな?ただ誤射のFFに気をつけてね!あとは南の海エリアは銃の耐久値減るの速いから気をつけて!」
「あいよ、ありがとうな。なんかあったらまた連絡してくれ。」
俺はそう言い残すと来た道を引き返していった。
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今俺は来る途中に見かけたNPCの店にいる。
スキル構成の中に散弾銃とダブルウェポンがあったからわかると思うが、おれは狙撃銃と散弾銃の二丁持ちをしたい。
中距離から遠距離は狙撃銃、近距離は散弾銃というロマン溢れる装備だ。
そのためにはまず散弾銃を手に入れる必要がある。
そこでさっき見たNPCの店に立ち寄ったのだが、
「うぐぐぐ……。」
何を唸っているのかというと、なんと散弾銃の値段が2500Gもするのだ。弾の代金や回復アイテムを買うことを考えると少し悩ましい値段設定なのだ。
下級AIを積んだNPCの「いかがなさいますか?」を6回ほど聞いたときに俺はふと思いついた。
「そうだ!俺はエンジョイ勢。つまり楽しければそれでいい。ならば回復アイテムは後回しでショットガンを買おう!」
そう言って販売リストにあるSauerM30ダブルバレルショットガンLv.1を購入した。
Sauer M30はドイツで作られた水平二連装式のショットガンで、素早く二発撃つことが出来るのが大きな特徴だ。
すると視界の左上にSauer M30のチュートリアルを行いますか?とでたが、無視して弾の購入をする。
拳銃の弾は特殊なのを除いて無限に設定されているが主武器はそうではない。
なので12ゲージショットシェルと.303ブリティッシュ弾を購入する。
ちなみにこのゲームショットガンはどの時代どの国のものでも12ゲージで統一されてるくせにライフルとかはその銃に合うものじゃないと撃てないとか言う謎仕様なのだ。
12ゲージを10発、ブリティッシュ弾を40発買ってちょうど500G。
もう所持金はない。
これで背水の陣になってしまった。
と、ここでリーエンフィールド用の銃剣を買うのを忘れていたことを思い出した俺は、念のため値段を見ると…。
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銃剣:リーエンフィールド Lv.1…………………………3500G
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その値段の高さにうなだれるのであった。