1-31 前哨狙撃手、ウォーカー2
さて、大木に隠れてから既に数分が経過した。
相手は一向に撃つのを辞める気配はしない。しかしそれは俺にいくつかの大きなヒントを与えてくれた。
まず1つに、相手はあんまり腕の良い狙撃手ではないと言うことだ。
理由は幾つかあるが、まず場所を変えずに延々と打ち続けていることだ。
狙撃手は位置を発見されると弱いというのは常識で、距離によっては簡単に詰められて排除されてしまうし、そうでなくても位置の解っている狙撃手の視界に入らないように移動するのは難しくはない。
次に装弾数だ。
奴は5発ほどの弾をそこそこの間隔を空けて発砲した後に大きく間隔を空けてまた5発撃つというサイクルを繰り返している。
つまり5発撃ってリロードしているのだ。
弾薬を無限に持ってるのか知らないが、ここまで無駄うちして大まかな場所まで教えてくれるなんてなんて親切な敵なんだと思いながらボルトを少しだけ後退させプレスチェックをする。
弾がしっかり入ってることを確認して、相手がリロードするタイミングに合わせて大木の根に銃を依託させて伏せながらスコープレンズ越しに相手を探す。
するとレンズの向こうの茂みでチカッと何かが光って近くの地面にバスッと弾着した。
光った場所を見ると緑のゴブリンがライフルをこちらに向けて迷彩ネットを被っているのが見えた。
「あいつか。」
俺は静に呟くと息を吐ききって照準をゴブリンにあわせて引き金を引いた。
バスンッ!
とリーエンフィールドが音を立てて独特なマズルファイアをあげ、その炎越しにゴブリンにだが当たったのが見えたが、当たったのは相手の左肩だった。
「くそっ頭外した。」
慌てて撃ったので多分、がく引きになっていたと思う。
がく引きとは引き金を引くときに余計な力が入って撃つ瞬間に照準がぶれることである。
ボルトを引いて二発目を撃とうとスコープを覗き込むと、被弾エフェクトをキラめかせたゴブリンは円筒状のグレネードをこちらに向かって投擲してきた。
お互いかなり距離があったのでゴブリンよりに1対3くらいの所に落ちた手榴弾はシューッと音を上げながら白煙をまき散らしてお互いの姿を隠してしまった。
無駄だと解って入るモノの真っ白な視界の中、さっきと同じ所に一発撃ち込んでみるが、なんの手応えもないのですぐに移動されたのが解った。
このまま同じ所に居座っていると俺だけ場所がばれたままになるので、すぐに俺も場所を移動してまた隠れる必要がある。
スコープをキャリングハンドルのようにつかんで中腰のまま移動を始める。
今いる場所は他の場所に比べると若干低くなっているので少しでも高い場所に移動する。
茂みを意識して探していると、リーエンフィールドを持っていない左肩に弾丸が直撃した。
そのすぐあとにバスンッ!という射撃音が響いてくる。
「くそっ、もうばれたのか!」
すぐに木の裏に隠れさっき使った2発分ボルトを引いて込めていく。
「このままだと長丁場になりそうだ。」
再び木の陰から伏せながら索敵をしてぼやく。
リアルの時間もバイトがあるから少し気にしなくちゃいけないのが辛い……。
と思いながら視界の右上を見ると時間は16:42と表示されていた。
「やばっ、バイト!」
完全に意識がそっちに向くと同時にドンッという衝撃が顔面に伝わり視界が真っ赤に染まって行くのを感じる。
これは、まさかの。
「ちくしょう、覚えとけよおおおおおお!」
森林フィールドに俺の断末魔とケタケタケタというゴブリンの笑い声がこだました。
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ゲームを始めたときと同じ噴水の前に戻された俺は、デスペナで失ったアイテムとお金のことを気にしつつもバイトの時間が迫っているためすぐにログアウトした。
体調崩して書けませんってよく見るけど、あれって本当に何も思いつかなくなるからマジでヤバい。(体調崩してました……。)




